旧国名
概要
編集令制国が行政体として機能しなくなってからも、その名称と区画は地理区分として長く用いられてきたが、明治以降は、戸籍や郵便などの地名表記から外されたため、急速に廃れることとなった。
現代では、離れたところにある同じ地名を区別する際に用いられる他、府県名が郡名や都市名に由来するものが大半であるため、それで呼ぶことを嫌う場合や地域において用いられている。たとえば、長野県を県庁所在地である長野市が所在する北信地方以外では意識的に「信濃」あるいは「信州」と呼ぶケースがある。
「旧」と付くが、それに代わる新しい国名というものがあるわけではない。国家としての国名との混同を避ける、もしくは戸籍や郵便などの地名の表記において、府県名が令制国名に代わるもののように使用されたために、そう呼ばれているだけである。ちなみに府県は藩に代わって設置された行政区画である(廃藩置県)。
また、法令によって廃止・禁止されたわけでもないので、現在も当然使用可能であり、「旧」と付ける必要もない。住所の表記としては、明治から昭和初期頃まで「神奈川県相模国三浦郡横須賀町」のように、道府県名と郡名の間に旧国名を入れる(従来の表記の頭に道府県名を付ける)表記方法が残存していた[1]。
旧国名対応表
編集地方区分(畿内+七道)
編集畿内
編集摂津+河内+和泉+山城(山背)+大和
東山道
編集陸奥+陸中+陸前+岩代+磐城+羽前+羽後+下野+上野+信濃+飛騨+美濃+近江
北陸道
編集若狭+越前+加賀+能登+越中+越後+佐渡
東海道
編集常陸+安房+上総+下総+武蔵+相模+甲斐+伊豆+駿河+遠江+三河+尾張+伊勢+伊賀+志摩
山陰道
編集丹波+丹後+但馬+因幡+伯耆+出雲+石見+隠岐
山陽道
編集播磨+美作+備前+備中+備後+安芸+周防+長門
南海道
編集阿波+讃岐+伊予+土佐+紀伊+淡路
西海道
編集豊前+豊後+筑前+筑後+壱岐+対馬+肥前+肥後+日向+大隅+薩摩+琉球
地方名
編集国と都道府県の関係は地域により様々で、複数の国にまたがる県(静岡県・三重県・兵庫県など)と、複数の県にまたがる国(武蔵国・丹波国・肥前国など)の両方がある。国と県の範囲が一致するところ、国を分断する形で県境が引かれたところもある。
複数の国にまたがって設けられた県では、国名が県内の地方区分として意識され、行政区分にも引き継がれることがある(例:岐阜県庁下部組織の飛騨地方振興局、兵庫県庁下部組織の但馬県民局など)。また、山梨県(甲斐国)や富山県(越中国)、滋賀県(近江国)、奈良県(大和国)、徳島県(阿波国)、愛媛県(伊予国)、高知県(土佐国)、熊本県(肥後国)のように県と国の範囲が一致するところでは、旧国名が県の別称として用いられる[注 1]。旧国名は歴史と伝統のイメージを備えているので、観光宣伝や郷土愛を喚起する場面で用いられることがある。
地名に旧国名が使用される事例
編集北海道の振興局名に取った旧国名
編集北海道の振興局(2010年4月1日に支庁より再編)では、根室振興局・釧路総合振興局・十勝総合振興局、石狩振興局、日高振興局、胆振総合振興局、後志総合振興局、渡島総合振興局が旧国名に由来する名称である。このうち日高振興局は範囲が日高国と一致する。なお、北海道条例においては振興局の所管区域指定に旧国名が用いられているものもある。例えば上川郡と中川郡は複数の振興局に所在し、特に天塩国上川郡と石狩国上川郡は同じ上川総合振興局に所属する(しかも隣り合っている)ため、現在でも旧国名を用いて区別することがある[2]。
市町村名に冠した旧国名 (重複の回避)
編集明治時代に市町村を統合した時には、同じ郡の中に同じ名の町村がある場合には重複しないように改名させたが、違う郡ならそのままにした(例:群馬県東村)。市は、数が少ない事もあって、全国で同じ市名が生まれないようにさせた[注 2]。この原則は、市の数が増えた後代にも引き継がれた。
そして、その手法としてよく用いられるのが、旧国名を冠して重複を回避する手法である。この際、後から市制を敷いた方が旧国名を冠する事が多い。この例には、群馬県の太田市に対して茨城県の常陸太田市、山形県の村山市に対して東京都の武蔵村山市、新潟県の加茂市に対して岐阜県の美濃加茂市、千葉県の旭市に対して愛知県の尾張旭市、福岡県の旧八幡市(現在は北九州市の一部)に対して滋賀県の近江八幡市、長野県の長野市に対して大阪府の河内長野市、福島県の郡山市に対して奈良県の大和郡山市、静岡県の旧清水市(現在は静岡市清水区の一部)に対して高知県の土佐清水市、福井県の大野市に対して大分県の豊後大野市がある[注 3]。新潟県の旧高田市(現在は上越市の一部)に対しては岩手県の陸前高田市、奈良県の大和高田市、広島県の安芸高田市、大分県の豊後高田市の4市があり[注 4]、このうち、安芸高田市は高田市が消滅した後に市制を施行した。同様の事例には埼玉県の旧大宮市(現在はさいたま市の一部)が消滅[注 5]した後に市制を施行した茨城県の常陸大宮市がある。また、特殊な例としては鹿児島県の川内市が宮城県の仙台市と同音の「せんだい」であったことから合併に際して旧国名を冠し薩摩川内市となった事例がある(周辺自治体が編入合併のイメージを嫌ったことも理由)。
和泉国(大阪府南西部)では、和泉国が「泉州」と呼ばれる事や「和」を除いても同音である事から「泉」の一字を冠している(例:滋賀県の大津市に対して泉大津市、栃木県の佐野市に対して泉佐野市)。
茨城県ひたちなか市は勝田市と那珂湊市の合併に際して重複回避に準じた命名法則を取っているが、那珂市の成立はひたちなか市の成立よりも後である。また、兵庫県の篠山市は他に同名の市が存在しないにもかかわらず丹波篠山市に改名している。
市町村名に用いられた旧国名(その他)
編集重複回避以外にも旧国名を用いる場合があり、この場合、旧国名の一字を取ったものが多く、旧国名の方が冠する側になったものもある。
その目的は数種に分類され、旧国内における方位を示すもの(例:東近江市、南丹市、泉南市、南あわじ市、雲南市、阿南市、西予市、日南市、南さつま市)が最も多く[注 6]、国府を表すもの(例:甲府市、防府市)、地形を表すもの(例:武蔵野市、相模原市、紀の川市、筑紫野市)、その他(例:上越市、城陽市、京丹後市)などがある。
上越市の「上」は「上方」(関西の旧称)の「上」と同じく京都に近い方位を意味し、この場合は「南西」にあたる。城陽市の「陽」は「南」とほぼ同義であるが、方位以外の意味も籠められており特徴がある。京丹後市は、合併6町の中に旧「丹後町」があり、他5町への配慮から重複がないにもかかわらず京都府の「京」を冠している。京丹波町も同じような理由。
他に、2つの国の一字を合わせたものとして常総市(市域の大半は下総国、東町と水海道川又町のみ常陸国)や南房総市(全域安房国)などの例もある[注 7]。なお、上越市の「上越」は前述の通り「越後国の上方寄り」を意味しており、「上野国と越後国」を意味する「上越」(例:上越新幹線)とは意味合いが異なる。
旧国名の一字を取る場合、一般に別称である「○州」の一字を取るが、例外に伊豆国(豆州)の伊東市、周防国(防州)の周南市がある。
仮名表記のかほく市は河北郡が由来とされるが、「加北」とも取れる。実際同市は加賀国の北端に位置する。
市町村名に取った旧国名
編集市町村の中には、属する国の名をそのまま名乗るものがある。明治時代以前の日本には、国の中に国と同じ名を持つ郡はあっても、同じ名を持つ町や村は存在しなかったので、そのほとんどは近代以降に作られた新地名ということになる。
旧国名を名乗る条件は特にないが、当該市町村の中にかつて国府や一宮が存在したことや、国名と同名の郡であることなどが暗黙のうちに条件とされる傾向がある。しかし、これらの条件を何ら満たさない事例も多数あり、特に平成の大合併期には、その名称決定に論争が起きた事例も少なくなかった。その際、命名を正当化する理由としてよく挙げられるのが「妥協案が他にない」というものであり、命名時に特定の市町村を優遇しないための妥協的名称としての側面も持っていると言える。
釧路市、出雲市、北見市、備前市、長門市、美濃市、伊勢市、筑後市、豊前市、日向市、和泉市、根室市、土佐市、加賀市、摂津市、石狩市、播磨町が古い例で[注 8]、平成年間(20世紀末)からさらに増加し、伊豆市、伊豆の国市、甲斐市、下野市、飛騨市、越前市、伊賀市、志摩市、丹波市、淡路市、美作市、阿波市、若狭町が加わった。なお、摂津市と土佐市はそれぞれ町政施行時の名称が三島町と高岡町であり、既存の市名との重複回避が市制施行時に旧国名を採用した理由となっている。 このような場合でも、ただ「出雲」や「長門」などとだけ言えば出雲国や長門国を指すことになる、あるいは何を指すのか判然としないので、その市町村を指すときには常に「市」や「町」を付けるのが通例であるが、地域名として用いられることがほとんどなくなっている場合にはその限りではない(「摂津」など)。また、北海道の根室市・北見市・石狩市・天塩町等については旧国名を使用していた期間が短かったことから、逆に「国」を付けない場合は現存する自治体の方を指すことが多い(但し、釧路市は高知県土佐市と土佐町のケース同様、同名の釧路町と区別するために「市」を付ける)。
文字面を変えて実質的に旧国名を取ったものにはむつ市、いわき市、さぬき市、奥州市、甲州市がある。なお、日立市は常陸国に位置するが「常陸」の国名は「日高見国(東北地方の旧称)への道」を表す「ひたかみのくにへのみち」が「ひたち」へ転訛し、徳川光圀が現在の日立市一帯において朝日が昇る様の見事さを讃えて「日立」の当て字をしたことに由来すると言われている。
国名と一致する郡名をその郡の一部が名乗ったものには、伊予市、土佐町、さつま町(旧薩摩町)などがある。これらはみな広域地名をその一部を占める市町村が取ったものである。
以上と異なり、合併によって旧国の範囲と完全に一致するようになって付けられたのが、佐渡市、対馬市、壱岐市である。いずれも島全体が一つの国であったもので、明治以降に分割され発足した市町村が平成の大合併により再び一島一自治体に集約された結果である。
離れたところにある国と同じ地名の市町村もある。埼玉県の日高市は諸説有るが日和田山と高麗郡の頭文字を取ったもので北海道南部の日高国(或いは、その国名の由来となった日高見国)とは関係せず、高知県の安芸市も土佐国安芸郡が由来であり広島県西部の安芸国とは関係しない[注 9]。一方、群馬県(上野国)伊勢崎市と神奈川県(相模国)伊勢原市は共に伊勢神宮の分社を当地に建てたことに由来する名称であり、間接的ながらも伊勢国に関連している。
大和市、大和町、大和村はまた異なる事情を持つ。「大和」はとりわけ戦前における町村合併時の新地名として人気があった名で、旧国の大和国ではなく、日本の別称としての「大和」を町村が名乗ったものである。
なお政令指定都市の区としては、安芸区(広島市)、駿河区(静岡市)がある。
旧国名を採用した日本の市区町村一覧
編集※印は平成の大合併で新しくできたものを示す。
- 北海道北見市(北見国)
- 北海道釧路市(釧路国)
- 北海道釧路郡釧路町(釧路国)
- 北海道根室市(根室国)
- 北海道天塩郡天塩町(天塩国)
- 北海道石狩市(石狩国、石狩川から)
- 北海道沙流郡日高町(日高国)
- 北海道日高郡新ひだか町(日高国)※
- 青森県むつ市(陸奥国)
- 岩手県陸前高田市(陸前国)
- 岩手県奥州市(陸奥国)※
- 秋田県雄勝郡羽後町(羽後国)
- 福島県いわき市(磐城国)
- 茨城県常陸太田市(常陸国)
- 茨城県ひたちなか市(常陸国、常陸那珂港から)
- 茨城県常陸大宮市(常陸国)※
- 茨城県常総市(常陸国・下総国)※
- 栃木県下野市(下野国)※
- 群馬県伊勢崎市(伊勢国、伊勢神宮から)
- 千葉県南房総市(安房国・上総国・下総国、房総半島から)※
- 東京都武蔵野市(武蔵国)
- 東京都武蔵村山市(武蔵国)
- 神奈川県相模原市(相模国)
- 神奈川県伊勢原市(伊勢国、伊勢神宮から)
- 新潟県上越市(越後国)
- 新潟県佐渡市(佐渡国、佐渡島から)※
- 石川県加賀市(加賀国)
- 石川県かほく市(加賀国、河北郡から)※
- 石川県鹿島郡中能登町(能登国、能登半島から)※
- 石川県鳳珠郡能登町(能登国)※
- 福井県丹生郡越前町(越前国)
- 福井県越前市(越前国)※
- 福井県南条郡南越前町(越前国)※
- 福井県三方上中郡若狭町(若狭国)※
- 山梨県甲府市(甲斐国)
- 山梨県甲斐市(甲斐国)※
- 山梨県甲州市(甲斐国)※
- 長野県上水内郡信濃町(信濃国)
- 岐阜県美濃市(美濃国)
- 岐阜県美濃加茂市(美濃国)
- 岐阜県飛騨市(飛騨国)※
- 静岡県伊東市(伊豆国、伊豆半島から)
- 静岡県賀茂郡東伊豆町(伊豆国、伊豆半島から)
- 静岡県賀茂郡南伊豆町(伊豆国、伊豆半島から)
- 静岡県賀茂郡西伊豆町(伊豆国、伊豆半島から)
- 静岡県伊豆市(伊豆国)※
- 静岡県伊豆の国市(伊豆国)※
- 静岡県静岡市駿河区(駿河国)※
- 愛知県尾張旭市(尾張国)
- 三重県伊勢市(伊勢国、伊勢神宮から)
- 三重県度会郡南伊勢町(伊勢国) ※
- 三重県伊賀市(伊賀国)※
- 三重県志摩市(志摩国)※
- 三重県北牟婁郡紀北町(紀伊国)※
- 滋賀県近江八幡市(近江国)
- 滋賀県東近江市(近江国)※
- 京都府相楽郡南山城村(山城国)
- 京都府城陽市(山城国)
- 京都府京丹後市(丹後国)※
- 京都府南丹市(丹波国)※
- 京都府船井郡京丹波町(丹波国)※
- 大阪府摂津市(摂津国)
- 大阪府泉大津市(和泉国)
- 大阪府泉佐野市(和泉国)
- 大阪府和泉市(和泉国)
- 大阪府泉南市(和泉国)
- 大阪府河内長野市(河内国)
- 大阪府南河内郡河南町(河内国)
- 兵庫県加古郡播磨町(播磨国)
- 兵庫県丹波市(丹波国)※
- 兵庫県丹波篠山市(丹波国)
- 兵庫県淡路市(淡路国、淡路島から)※
- 兵庫県南あわじ市(淡路国、淡路島から)※
- 奈良県大和高田市(大和国)
- 奈良県大和郡山市(大和国)
- 和歌山県紀の川市(紀伊国、紀ノ川から)※
- 鳥取県西伯郡伯耆町(伯耆国)※
- 島根県出雲市(出雲国、出雲大社から)
- 島根県雲南市(出雲国)※
- 島根県仁多郡奥出雲町(出雲国)※
- 島根県隠岐郡隠岐の島町(隠岐国、隠岐諸島から)※
- 岡山県備前市(備前国)
- 岡山県美作市(美作国)※
- 岡山県加賀郡吉備中央町(吉備国)※
- 広島県広島市安芸区(安芸国)
- 広島県安芸高田市(安芸国)※
- 広島県山県郡安芸太田町(安芸国)※
- 山口県長門市(長門国)
- 山口県防府市(周防国)
- 山口県周南市(周防国)※
- 山口県大島郡周防大島町(周防国、屋代島(周防大島)から)※
- 徳島県阿南市(阿波国)
- 徳島県阿波市(阿波国)※
- 香川県さぬき市(讃岐国)※
- 愛媛県伊予市(伊予国)
- 愛媛県西予市(伊予国)※
- 高知県土佐清水市(土佐国)
- 高知県土佐市(土佐国)
- 高知県土佐郡土佐町(土佐国)
- 高知県高岡郡中土佐町(土佐国)
- 福岡県筑後市(筑後国)
- 福岡県豊前市(豊前国)
- 福岡県筑紫野市(筑紫国)
- 福岡県朝倉郡筑前町(筑前国)※
- 長崎県壱岐市(壱岐国、壱岐島から)※
- 長崎県対馬市(対馬国、対馬から)※
- 大分県豊後高田市(豊後国)
- 大分県豊後大野市(豊後国)※
- 宮崎県日向市(日向国)
- 宮崎県日南市(日向国)
- 鹿児島県南さつま市(薩摩国)※
- 鹿児島県薩摩川内市(薩摩国)※
- 鹿児島県薩摩郡さつま町(薩摩国)※
- 鹿児島県肝属郡南大隅町(大隅国) ※
既に消滅した自治体
編集- 山形県東村山郡出羽村(現・山形市、出羽国)
- 福島県磐城市(現・いわき市、磐城国)
- 福島県常磐市(現・いわき市、常陸国・磐城国)
- 福島県安達郡岩代町(現・二本松市、岩代国)
- 埼玉県入間郡武蔵町(現・入間市、武蔵国)
- 埼玉県入間郡西武町(現・入間市、武蔵国)
- 千葉県君津郡上総町(現・君津市、上総国)
- 千葉県香取郡下総町(現・成田市、下総国)
- 東京都伊豆村(現・三宅村、伊豆国)
- 神奈川県津久井郡相模湖町(現・相模原市、相模国、相模湖から)
- 石川県鹿島郡能登島町(現・七尾市、能登国、能登島から)
- 長野県下伊那郡南信濃村(現・飯田市、信濃国)
- 長野県上水内郡信州新町(現・長野市、信濃国)
- 長野県上水内郡信濃村(現・信濃町、信濃国)
- 長野県上水内郡信濃尻村(現・信濃町、信濃国)
- 静岡県田方郡中伊豆町(現・伊豆市、伊豆国、伊豆半島から)
- 静岡県田方郡伊豆長岡町(現・伊豆の国市、伊豆国)
- 愛知県尾西市(現・一宮市、尾張国)
- 愛知県西春日井郡尾張村(現・小牧市、尾張国)
- 三重県志摩郡志摩町(現・志摩市、志摩国)
- 三重県員弁郡北勢町(現・いなべ市、伊勢国)
- 三重県度会郡南勢町(現・南伊勢町、伊勢国)
- 三重県度会郡南島町(現・南伊勢町、志摩国)
- 三重県度会郡紀勢町(現・大紀町、紀伊国・伊勢国)
- 三重県北牟婁郡紀伊長島町(現・紀北町、紀伊国)
- 三重県一志郡伊勢地村(現・津市、伊勢国)
- 三重県飯南郡伊勢寺村(現・松阪市、伊勢国)
- 滋賀県坂田郡近江町(現・米原市、近江国)
- 京都府相楽郡山城町(現・木津川市、山城国)
- 京都府船井郡丹波町(現・京丹波町、丹波国)
- 京都府竹野郡丹後町(現・京丹後市、丹後国)
- 大阪府河内市(現・東大阪市、河内国)
- 兵庫県養父郡南但町(現・朝来市・養父市、但馬国)
- 兵庫県出石郡但東町(現・豊岡市、但馬国)
- 兵庫県津名郡淡路町(現・淡路市、淡路国、淡路島から)
- 兵庫県津名郡北淡町(現・淡路市、淡路国、淡路島から)
- 兵庫県三原郡西淡町(現・南あわじ市、淡路国、淡路島から)
- 兵庫県三原郡南淡町(現・南あわじ市、淡路国、淡路島から)
- 鳥取県東伯郡東伯町(現・琴浦町、伯耆国)
- 鳥取県西伯郡西伯町(現・南部町、伯耆国)
- 島根県八束郡東出雲町(現・松江市、出雲国)
- 島根県邑智郡石見町(現・邑南町、石見国)
- 岡山県都窪郡吉備町(現・岡山市、吉備国)
- 岡山県浅口郡吉備村(現・浅口市、吉備国)
- 岡山県英田郡作東町(現・美作市、美作国)
- 広島県豊田郡安芸津町(現・東広島市、安芸国)
- 山口県玖珂郡周東町(現・岩国市、周防国)
- 山口県豊浦郡長府町(現・下関市、長門国)
- 徳島県阿波郡阿波町(現・阿波市、阿波国)
- 愛媛県伊予三島市(現・四国中央市、伊予国)
- 愛媛県東予市(現・西条市、伊予国)
- 高知県土佐郡土佐山村(現・高知市、土佐国)
- 高知県幡多郡西土佐村(現・四万十市、土佐国)
- 佐賀県東松浦郡肥前町(現・唐津市、肥前国)
- 長崎県上県郡上対馬町(現・対馬市、対馬国、対馬から)
- 鹿児島県薩摩郡薩摩町(現・さつま町、薩摩国)
- 鹿児島県曽於郡大隅町(現・曽於市、大隅国、大隅半島から)
府県名に取った旧国名
編集明治初期に設置された府県には旧国名を取ったものがある。越後府、甲斐府、佐渡県、飛騨県、三河県、摂津県、河内県などであるが、いずれも短期間で廃止あるいは改称されている。
この節の加筆が望まれています。 |
駅名
編集JRとその前身である日本国有鉄道は、同じ地名が重複しそうな時には、後から置かれた駅名に旧国名を頭に付けることを原則とする[注 10][注 11]。富山県の小杉駅と神奈川県の武蔵小杉駅、東京都の大塚駅と愛知県の三河大塚駅、広島県の府中駅と大阪府の和泉府中駅、北海道の砂川駅と大阪府の和泉砂川駅、全国に複数存在する中山駅に対する千葉県の下総中山駅などである。兵庫県の播州赤穂駅などもこれに準じるが、同駅以外は播磨新宮駅のように「播磨」を冠している[注 12]。これは現在の播州赤穂駅から少し離れた場所に存在した赤穂鉄道(国鉄赤穂線の開業に伴い廃止)の播州赤穂駅が観光地の最寄り駅として全国的に知られていたことによるものであり、旧国鉄では飯山鉄道を戦時買収により接収して飯山線とした際に信州浅野駅など「信州」を冠する3駅をすべて「信濃」に改称させるなど「〜州」の名称を忌避する傾向が強いとされる。また、前掲の例の中で武蔵小杉と和泉砂川は国有化により旧国名が付けられた。
私鉄でも、特に国鉄線との連絡運輸が行われる場合には旧国名をつけて区別される場合があった。前掲の例でも、和泉府中駅は前身の阪和電気鉄道時代からこの駅名であった。一方、社名やその他の語を付けて区別することもあり、群馬県では旧国名の「上野(こうずけ)」を冠した場合、東京と群馬県を結ぶ幹線である旧国鉄・JR東日本高崎線のターミナル駅である東京都の「上野(うえの)駅」と混同する恐れがあるため、上信電鉄の場合上州富岡駅のように「上州」を冠しているが、旧国鉄及びJR東日本では前述の例に倣って「上野」と「上州」のいずれも用いず群馬藤岡駅のように現在の県名を冠する駅名を付けている。また、岩代国で「岩代」を冠しているのは福島交通の岩代清水駅のみで、旧国鉄及びJR東日本では安積永盛駅のように旧郡名、会津高田駅のように旧郡名由来の地方名、磐梯熱海駅のように路線名を冠しており、とりわけ岩代国西部(会津四郡)で「会津」を冠している駅名が多い[注 13]。全体としては国鉄より後に開通した私鉄の駅が旧国名をつけて国鉄(JR)の駅と区別することが多いが、福井鉄道福武線花堂駅とJR西日本越美北線越前花堂駅のように私鉄より後に開通した国鉄(JR)のほうが旧国名をつける例外も存在する。
旧国名に一致する市町村名を駅名にする場合には「市」などを尻に付ける。例として美濃市駅、伊勢市駅、出雲市駅、長門市駅、播磨町駅などがある。例外として、大阪府の摂津駅は市名と一致する旧国名が[注 14]、福島県のいわき駅は旧国名をひらがな化した市町村名がそのまま駅名になっている。旧国名に一致する市町村名が存在しない事例では和歌山県の紀伊駅があり、紀伊の国府が置かれていたことに由来する名称である[注 15]。
茨城県と神奈川県にそれぞれ存在する大和駅、及び千葉県にある日向駅、三重県にある播磨駅、大阪府にある淡路駅、奈良県にある磐城駅・但馬駅・石見駅、和歌山県にある岩代駅、福岡県にある伊賀駅、そして前述の高知県安芸市にある安芸駅は、外の地域の旧国名と同じ名称の駅名となっているが、旧国名と駅名との間に関係はない(なお、宮崎県日向市の駅は前出の例に従い日向市駅である)[注 16]。
旧国名を付けた駅名は、近隣住民などから通称として旧国名なしで呼ばれる場合もある。事業者側でもそのような扱いをしている場合があり、たとえば近鉄では、2004年ごろまで車内放送・駅構内放送・方向幕では旧国名を省略していた(例:大和西大寺 → 西大寺)。また、近鉄の高田市駅は開業当初には高田町駅であったが、大和高田市が1948年に市制施行した際、既に大和高田駅が別に存在したことから敢えて旧国名の「大和」を略したままの改称に踏み切っている。なお近鉄にはかつて養老線の美濃高田駅もあり、名古屋側では区別のために大和高田駅を大和高田と旧国名を省略せずに呼んでいた。なお、2004年以前でも伊賀神戸駅や伊勢若松駅のように、例外的に旧国名を省略していなかったケースもあった(伊賀神戸駅に関しては、かつては鈴鹿線の鈴鹿市駅が「伊勢神戸」だったため区別するという意味合いもあった)。
国鉄・JR四国・近鉄では、駅名標では旧国名が小さく表記されている。なお、近鉄では駅名標に限らず駅・車内の案内表示類では全て旧国名が小さく表記されている(2004年以前から旧国名を省略せずに案内していた一部の駅を除く)。
旧国名を採用した日本の鉄道駅一覧
編集ナンバープレート
編集自動車のナンバープレートでは、以下のナンバーに旧国名が使用されている。カッコ内はナンバーを所管する運輸支局・自動車検査登録事務所。
- 釧路(北海道運輸局釧路運輸支局本庁舎)
- 北見(北海道運輸局北見運輸支局)
- いわき(東北運輸局福島運輸支局いわき自動車検査登録事務所)
- 相模(関東運輸局神奈川運輸支局相模自動車検査登録事務所)
- 飛騨(中部運輸局岐阜運輸支局飛騨自動車検査登録事務所)
- 伊豆(中部運輸局静岡運輸支局沼津自動車検査登録事務所)※ご当地ナンバー
- 三河(中部運輸局愛知運輸支局西三河自動車検査登録事務所)
- 尾張小牧(中部運輸局愛知運輸支局小牧自動車検査登録事務所)
- 和泉(近畿運輸局大阪運輸支局和泉自動車検査登録事務所)
- 出雲(中国運輸局島根運輸支局)※ご当地ナンバー
上記の他、2つの国の一字を合わせたナンバーは以下の通りである。
これらのうち、釧路ナンバーは根室国と千島国を、和泉ナンバーは河内国の一部を含んでいる。一つの都道府県に複数の運輸支局・自動車検査登録事務所がある場合、管轄区域をあまり考慮せず、単に所在地の都市名から名称を取ることが多く、釧路・和泉の場合は、所在地が旧国名をそのまま名乗る市であったに過ぎないと言える。
注釈
編集- ^ 他県への編入合併その他の理由で完全には一致しないが栃木県(下野国)・群馬県(上野国)・長野県(信濃国)・香川県(讃岐国)なども同様である。また、複数の国で構成される県であっても中心となる藩の通称から「薩摩」が鹿児島県(薩摩国と大隅国で構成)全域を指すというケースもある(全域が大隅国に属する大隅諸島と奄美群島、薩摩と大隅の間で帰属に複数回の変遷があるトカラ列島を包含する総称が「薩南諸島」であるなど)。
- ^ なお、東京都府中市と広島県府中市は同一名称であるが、それぞれ「武蔵府中」「備後府中」と通称される。郵便局(集配局)は前者が武蔵府中郵便局、後者が府中郵便局である。平成の大合併に際して名称に重複が生じた北海道伊達市と福島県伊達市に関しては「胆振伊達」「岩代伊達」のように呼ばれることは余り無い(「岩代伊達」は福島県伊達市の新市名募集では第16位であった)。
- ^ 現存しないものには伊予三島市(現在は四国中央市の一部)がある。
- ^ 陸前高田市・安芸高田市は、「たかだ」ではなく濁らない「たかた」と読む。
- ^ ただし現在も大宮区として区名にその名を残している。
- ^ 現存しないものには尾西市(現在は一宮市の一部)、東予市(現在は西条市の一部)がある。また、合併交渉決裂により誕生しなかったものには武南市(川口市・鳩ヶ谷市・蕨市の合併による新市名となる予定であった)、南泉州市(大阪府泉南市他4市町の合併による新市名となる予定であった)、西和市(奈良県北葛城郡と生駒郡に属する7町の合併による新市名となる予定であった)が、合併交渉決裂をさけるために予定を変えたものには西近江市(前出の東近江市と異なり、広域地名としては全く浸透していないとの批判を受け高島市に変更して市制施行)がある。
- ^ 現存しないものには常磐市(現在はいわき市の一部)がある。
- ^ 現存しないものには磐城市(現在はいわき市の一部)、河内市(現在は東大阪市の一部)がある。
- ^ 現存しないものには三重県上野市(うえのし、現在は伊賀市の一部)がある。同市と上野国(こうずけのくに、現在の群馬県)とは表記が同じであることを除いて全く関係しない(伊賀上野に由来するという説がある東京都台東区の上野も同様)。
- ^ 三河安城駅と安城駅や武蔵浦和駅と浦和駅のように、同一地域にある駅を区別するためにつけられることもある。
- ^ 瀬田駅 (熊本県)と瀬田駅 (滋賀県)のように重複を考慮しない場合もある。
- ^ 2008年開業のはりま勝原駅のみ旧国名を平仮名で表記している。類似のケースには、茨城県のひたち野うしく駅や愛媛県のいよ立花駅などがある。
- ^ 過去には岩代熱海駅(1965年に磐梯熱海駅へ改称)と1972年に全線廃止された川俣線の岩代飯野駅・岩代川俣駅の3駅が存在した。
- ^ この駅とは別に摂津市駅も存在する。
- ^ 現存しない駅には駿河駅(現在の駿河小山駅)があった。
- ^ 現存しない駅には群馬県の日高駅と石川県の下野駅(読みは「しもの」)がある。
- ^ 一例として『月刊古地図研究』(日本地図資料協会)1990年12月号付録の1878年(明治15年)陸地測量部作成による測量図(復刻)など。
脚注
編集関連項目
編集外部リンク
編集- 駅名接頭・接尾語考 - 旧国名 - デスクトップ鉄のデータルーム