書肆侃侃房
株式会社書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)は、福岡市を拠点とする日本の出版社。2013年に刊行を開始した新鋭短歌シリーズは短歌界、とくに歌集出版のあり方に革新をもたらした[3][4]。 短歌の新人賞である笹井宏之賞、小説の新人賞であることばと新人賞を主催。
書肆侃侃房 | |
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正式名称 | 株式会社 書肆侃侃房 |
現況 | 事業継続中(2024年4月時点) |
種類 | 株式会社 |
出版者記号 | 9980675, 902108, 86385 |
取次会社 | 地方・小出版流通センター |
取次コード | 4699 |
法人番号 | 9290001079501 |
設立日 | 2002年4月[1] |
代表者 | 代表取締役社長 池田雪 |
本社郵便番号 | 〒810-0041 |
本社所在地 |
福岡県福岡市中央区大名2-8-18 天神パークビル501号 |
ネット販売 | あり |
主要出版物 | 新鋭短歌シリーズ、現代歌人シリーズ |
定期刊行物 | ねむらない樹、ことばと |
出版以外の事業 | 書店「本のあるところ ajiro」[2] |
関係する人物 | 田島安江(創業者、現会長) |
外部リンク | http://www.kankanbou.com/ |
https://twitter.com/kankanbou_e |
概要
編集文学ムック『ことばと』や、「新鋭短歌シリーズ」「現代歌人シリーズ」「現代短歌クラシックス」などの歌集[5]、海外文学や、紀行ガイドシリーズ「KanKanTrip」を刊行している。 文学ムック『たべるのがおそい』に掲載された今村夏子「あひる」が第155回芥川賞候補、宮内悠介「ディレイ・エフェクト」が第158回芥川賞候補に選ばれる[6]。文学ムック『ことばと』に掲載された千葉雅也「マジックミラー」が第45回川端康成文学賞を受賞する。 創業20周年をむかえた2022年には、『左川ちか全集』などが評価され、第38回梓会出版文化賞を受賞した[7]。 短歌の新人賞「笹井宏之賞」と小説の新人賞「ことばと新人賞」の2賞を主催しているほか、福岡市天神で海外文学と詩歌の書店「本のあるところ ajiro」を運営している。詩人でもある田島安江が創業した[8]。短歌の世界に続々と新風を吹き込み、現在の「短歌ブーム」に至る礎を築いた出版社の一つ[9]。PR誌として「ほんのひとさじ」を発行している。
沿革
編集- 2002年 書肆侃侃房を設立
- 2010年 Read cafeを薬院にオープン
- 2011年 笹井宏之歌集『ひとさらい』『てんとろり』出版、「KanKanTrip」刊行開始
- 2013年 「新鋭短歌シリーズ」刊行開始
- 2015年 「現代歌人シリーズ」刊行開始
- 2016年 文学ムック「たべるのがおそい」創刊、「韓国女性文学シリーズ」刊行開始、PR誌「ほんのひとさじ」発行開始
- 2018年 短歌ムック「ねむらない樹」創刊[10]、「本のあるところ ajiro」を北天神にオープン[11]
- 2019年 短歌の新人賞「笹井宏之賞」を創設[12]。福岡市民文化活動功労賞を受賞[13]。ウェブ連載ページ「web侃づめ」開設[14]
- 2020年 文学ムック『ことばと』創刊[15]、「ことばと新人賞」創設[16]、「現代短歌クラシックス」刊行開始
- 2022年 創業20周年をむかえる。第38回梓会出版文化賞を受賞
- 2023年 「現代短歌パスポート」刊行開始
主な出版書
編集文学ムック
編集- ことばと(編集長:佐々木敦)
- vol.1(2020年4月刊行)
- vol.2 特集=ことばと演劇(2020年10月刊行)
- vol.3 特集=ことばと音楽(2021年4月刊行)
- vol.4 特集=ことばとからだ(2021年10月刊行)
- vol.5 特集=ことばとわたし(2022年4月刊行)
- vol.6 特集=ことばと戦争(2022年10月刊行)
- vol.7 特集=ことばとことば(2023年11月刊行)
- たべるのがおそい(編集長:西崎憲)
短歌ムック
編集- ねむらない樹(編集長(編集統括):vol.1〜田島安江、vol.5〜藤枝大)
- vol.1「特集:新世代がいま届けたい現代短歌100/ニューウェーブ30年」(2018年8月刊行)
- vol.2「特集:第1回笹井宏之賞発表!/ニューウェーブ再考」(2019年2月刊行)
- vol.3「特集:映画と短歌/短歌の言葉と出会ったとき」(2019年8月刊行)
- vol.4「特集:第2回笹井宏之賞発表!/短歌とジェンダー」(2020年2月刊行)
- 別冊『現代短歌のニューウェーブとは何か?』(2020年2月刊行)
- vol.5「特集:短歌における「わたし」とは何か?/学生短歌会からはじまった/くどうれいん(工藤玲音)」(2020年8月刊行)
- vol.6「特集:第3回笹井宏之賞発表/黒瀬珂瀾/現代川柳の衝撃/2020年の収穫アンケート/『林檎貫通式』を読む」(2021年2月刊行)
- vol.7「特集:葛原妙子/川野芽生」(2021年8月刊行)
- vol.8「特集:第4回笹井宏之賞発表/渡辺松男の世界/2021年の収穫アンケート」(2022年2月刊行)
- vol.9「特集:詩歌のモダニズム」(2022年8月刊行)
- vol.10「特集:第5回笹井宏之賞発表/15年目の笹井宏之」(2023年2月刊行)
短歌
編集- 現代歌人シリーズ
- 千葉聡『海、悲歌、夏の雫など』
- 松村由利子『耳ふたひら』
- 笹公人『念力ろまん』
- 佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』
- フラワーしげる『ビットとデシベル』
- 岡井隆『暮れてゆくバッハ』
- 駒田晶子『光のひび』
- 江戸雪『昼の夢の終わり』
- 吉田隼人『忘却のための試論』 第60回現代歌人協会賞受賞
- 瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end.』
- 渡辺松男『雨る』
- 木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』
- 光森裕樹『山椒魚が飛んだ日』
- 倉阪鬼一郎『世界の終わり/始まり』
- 谷川電話『恋人不死身説』
- 紀野恵『白猫倶楽部』
- 野口あや子『眠れる海』
- 林和清『去年マリエンバートで』
- 伊波真人『ナイトフライト』
- 雪舟えま『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』
- 加藤治郎『Confusion』
- 大森静佳『カミーユ』 第12回日本一行詩大賞受賞
- 今橋愛『としごのおやこ』
- 服部真里子『遠くの敵や硝子を』
- 吉岡太朗『世界樹の素描』
- 吉川宏志『石蓮花』 第70回芸術選奨文部科学大臣賞、第31回斎藤茂吉短歌文学賞受賞
- 岡野大嗣『たやすみなさい』
- 楠誓英『禽眼圖』第1回塚本邦雄賞・次席
- 荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』 第11回中日短歌大賞受賞
- 大口玲子『自由』 第48回日本歌人クラブ賞受賞
- 黒瀬珂瀾『ひかりの針がうたふ』 第26回若山牧水賞受賞
- 魚村晋太郎『バックヤード』
- 山崎聡子『青い舌』 第3回塚本邦雄賞受賞
- 山田航『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』
- 中島裕介『memorabilia/drift』
- 大塚寅彦『ハビタブルゾーン』
- 新鋭短歌シリーズ
- 第一期(監修:東直子、加藤治郎)
- 第二期(監修:東直子、加藤治郎、大塚寅彦)
- 第三期(監修:東直子、加藤治郎、江戸雪、石川美南、光森裕樹)
- 第四期(監修:東直子、加藤治郎、山田航、林和清)
- 第五期(監修:東直子、山田航、内山晶太、黒瀬珂瀾、藤島秀憲、藤原龍一郎)
- 笹川諒『水の聖歌隊』 第47回現代歌人集会賞受賞
- 久石ソナ『サウンドスケープに飛び乗って』
- 手塚美楽『ロマンチック・ラブ・イデオロギー』
- 伊豆みつ『鍵盤のことば』
- 藤宮若菜『まばたきで消えていく』
- 奥村知世『工場』 第28回日本歌人クラブ新人賞受賞
- 木下侑介『君が走っていったんだろう』
- 上篠翔『エモーショナルきりん大全』
- 櫻井朋子『ねむりたりない』
- 水野葵以『ショート・ショート・ヘアー』
- 上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』
- toron*『イマジナシオン』
- ユニヴェール
- 現代短歌クラシックス
- 飯田有子『林檎貫通式』(初版:BookPark、2001年)
- 石川美南『砂の降る教室』(初版:風媒社、2003年)
- 正岡豊『四月の魚』(初版:まろうど社、1990年)
- 佐藤弓生『世界が海におおわれるまで』(初版:沖積舎、2001年)
- 盛田志保子『木曜日』(初版:BookPark、2003年)
- 千葉聡『微熱体』(初版:短歌研究社、2000年)
- 今橋愛『O脚の膝』(初版:北溟社、2003年)
- 渡辺松男『寒気氾濫』(初版:本阿弥書店、1997年)
- 染野太朗『あの日の海』(初版:本阿弥書店、2011年)
- 内山晶太『窓、その他』(初版:六花書林、2012年)
- 五島諭『緑の祠』
- 小島なお『乱反射』(初版:角川書店、2007年)
- その他
詩
編集俳句・川柳
編集日本文学
編集- 夢野久作『ユメノユモレスク』
- 今村夏子『あひる』 第5回河合隼雄物語賞受賞
- 村田喜代子『耳の叔母』
- 澤西祐典『雨とカラス』『文字の消息』『別府フロマラソン』
- 大前粟生『回転草』『私と鰐と妹の部屋』
- 松波太郎『カルチャーセンター』
- 川野芽生『月面文字翻刻一例』
- 高原英理『観念結晶大系』『うさと私』
- 佐川恭一『舞踏会』
- 片島麦子『レースの村』
- 相川英輔『雲を離れた月』
- 上村渉『うつくしい羽』
- 明利英司『瑠璃色の一室』
海外文学
編集- 韓国女性文学シリーズ
- 韓国文学の源流シリーズ(長編)
- 韓国文学の源流シリーズ(短編選)
- 1(1932-1938) 『オリオンと林檎』(朴花城、李孝石、金裕貞、李箕永、朴栄濬、朴泰遠、玄徳、李泰俊)
- 3(1939-1945) 『失花』(李箱、李孝石、蔡萬植、金南天、李無影、池河蓮)
- 現代台湾文学選
- 徐嘉澤『次の夜明けに』
- モナ・アワド『ファットガールをめぐる13の物語』
- アルフィアン・サアット『マレー素描集』
- ジョゼ・サラマーゴ『象の旅』
- アン・カーソン『赤の自伝』
- アンネマリー・シュヴァルツェンバッハ『雨に打たれて』
- ツェワン・イシェ・ペンバ『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』
- チョン・ヨンムン『ある作為の世界』
- ト・ジョンファン『詩集 満ち潮の時間』
- 劉暁波『詩集 牢屋の鼠』『詩集 独り大海原に向かって』
- 劉霞『詩集 毒薬』
エッセイ・ノンフィクション
編集- くどうれいん『うたうおばけ』
- 東山彰良『Turn! Turn! Turn!』
- 瀬尾夏美『二重のまち/交代地のうた』
- 北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』
- 佐々木敦『絶体絶命文芸時評』
- テレニン晃子『ゆりちかへ ママからの伝言』
- Y氏『福岡穴場観光』
- オガワカオリ『全国もなかぼん』
- 棚沢永子『東京の森のカフェ』
紀行ガイド
編集- KanKanTrip
- 大西久恵『ラダックと湖水の郷カシミール』
- 三尾章子『ルーマニア、遥かなる中世へ』
- 大澤麻衣『イギリスの小さな教会』
- 青目海『リスボン 坂と花の路地を抜けて』
- Sanna『スウェーデン 森に遊び街を歩く』
- 前野りりえ『ニューカレドニア 美しきラグーンと優しき人々』
- 大洞敦史『台湾環島 南風のスケッチ』
- 河野友見『イギリス鉄道でめぐるファンタジーの旅』
- 中川正道/張 勇『涙を流し口から火をふく、四川料理の旅』
- 塚口肇『90日間ヨーロッパ歩き旅』
- 江濱丈裕『カンボジア・ベトナム・ラオス 長距離バスでめぐる世界遺産の旅』
- やまだトシヒデ『韓国に遺る日本の建物を訪ねて』
- Sanna『バルト三国 愛しきエストニア、ラトビア、リトアニアへ』
- 吉貝渉・吉貝悠『おとなの釜山 歴史の迷宮へ』
- オノリオ悦子・岸澤克俊『光の街、リスボンを歩く』
- 徳永千帆子『麗しのウィーン、音に魅かれて』
- 戸谷美津子『聖地サンティアゴへ、星の巡礼路を歩く』
- YUKA『モロッコ 邸宅リヤドで暮らすように旅をする』
- 安樂瑛子『汗と涙と煩悩のチベット・ネパール・インド絵日記』
- ヤマサキタツヤ『来た見た食うた ヤマサキ兄妹的 大台南見聞録』
- Sanna『ブルガリア 悠久の時を刻む』
- 山本佳代子『イスタンブール 東西の歴史が織りなす魅惑都市』
- 沙智『ヤンゴンの休日 黄金郷のスローライフ』
脚注
編集- ^ 『日本の出版社:全国出版社名簿 2016-2017』出版ニュース社、2015年、p. 164 ISBN 978-4-7852-0155-5
- ^ "会社案内."公式サイト. 2024年5月6日閲覧。
- ^ "若い歌人を発掘「新鋭短歌シリーズ」10年…SNSのブームを後押し「裾野広げた」."読売新聞オンライン:九州発(2023年7月15日付). 2024年5月6日閲覧。
- ^ 田中槐"夢からうろこ:月のコラム「書肆侃侃房の存在感」."砂子屋書房HP(2019年1月4日更新). 2024年5月6日閲覧。
- ^ 現代短歌ロード
- ^ 芥川賞:九州の雑誌から候補作に 今村夏子さん「あひる」 - 毎日新聞
- ^ 『左川ちか全集』など評価 「書肆侃侃房」に梓会出版文化賞
- ^ webひとまち結び「「地方出版社の時代」を切り開いた、社員全員が著者と“つながる”出版社」2021年12月1日2023年10月27日閲覧。
- ^ 一例として読売新聞オンライン「「新鋭短歌シリーズ」10年…SNSのブームを後押し」2023年7月15日付他。2023年10月27日閲覧。
- ^ 短歌ムック ねむらない樹、創刊 書肆侃侃房
- ^ 書肆侃侃房 海外文学、短歌・詩に特化 天神に本屋開店 /福岡
- ^ 笹井宏之賞 福岡の出版社が創設 早世の歌人顕彰
- ^ 福岡市文化賞・福岡市民文化活動功労賞受賞者 が決定しました
- ^ ウェブ連載ページ「web侃づめ」を始めます。
- ^ 文学ムック「ことばと」創刊のお知らせ
- ^ ことばと新人賞を創設します。
外部リンク
編集- 公式サイト
- 書肆侃侃房 (@kankanbou_e) - X(旧Twitter)