出版社
概説
編集書籍や雑誌などの企画、制作(本や雑誌に載せる内容の作成。作家やライターなどへの依頼・手配。編集、校正など)、印刷会社への印刷の発注、取次への手配などを行うほか、出版する本・雑誌の販売促進・宣伝も行う。また1995年にWindows95が登場しWindowsが普及するようになってからは、出版物の電子化(フロッピーディスク化、CD-ROM化 等)も行い、2000年代にインターネットの利用が一般化してからは書籍や雑誌のコンテンツをネット上で有料で提供する出版社も現れた。
日本標準産業分類ではかつて製造業に分類されていたが、2002年の改定以降は情報通信業の映像・音声・文字情報制作業(G41)に分類するよう変更された[1]。
印刷会社が受注生産であるのに対し、出版社は原則的に見込み生産である(自費出版・カスタム出版の請負などを除く)。
オックスフォード大学出版局、東京大学出版会などのように、大学が大学出版局を持っているところもある。また新聞社が出版事業も並行的に行っていることもある。
欧米では国境を超えた激しい市場競争があり、メディア・コングロマリット化が進んでいる。
日本の出版社の多くは東京一極集中の傾向にあるため、それ以外の地方を本拠とする出版社を地方出版社と呼ぶこともある。地方出版社としては、無明舎出版(秋田県)などが挙げられる。
個人で運営する「ひとり出版社」を起業する編集者もいる。経営リスクは高いが、自分の好きな本を企画できる利点もある[2]。
世界の特に巨大な出版社グループとしては次の名が挙げられている[3]。
- レレックス・グループ (RELX group) - イギリス、アメリカ、オランダをまたぐ多国籍企業であり、巨大なメディア・コングロマリット。
- ベルテルスマン(Bertelsmann)、 ドイツ) - 傘下にペンギン・ランダムハウスがある。
- ピアソン (Pearson PLC、イギリス)
- ヴォルタース・クルーワー(Wolters Kluwer、オランダ)
- アシェット・リーブル(Hachette Livre、フランス)- 世界3位の出版社とも。
- 一ツ橋グループ (日本) - 傘下に小学館や集英社がある。#日本の節でも挙げる。
- ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(Wiley。アメリカ)
- シュプリンガー・ネイチャー (Springer Nature。ドイツ)
- ハーパーコリンズ(HarperCollins。アメリカ)
中小や零細の出版社まで含めれば、世界の出版社の数は膨大である。
英語圏の出版社
編集英語圏の出版社は特に販売される冊数が多いのでここで扱う。
アメリカの大手5社をBIG5(ビッグ5)と呼ぶ。ペンギン・ランダムハウス、サイモン&シュスター、ハーパーコリンズ、マクミラン出版社、アシェット・ブック・グループの5社である。2020年に司法省などが許せば、ペンギン・ランダム・ハウスがサイモン&シュスターを買収する話があった。合併が成功すれば、アメリカで刊行される本の3分の1が合併した会社からの物となった。2022年に司法省が多様性や作家の収入に影響が出るとして、反トラスト法による合併阻止に動いた[4][5]。
- ペンギン・ランダムハウス(ドイツのベルテルスマン傘下) ‐ 2013年にイギリスのペンギンとアメリカのランダムハウスが合併した。
- サイモン&シュスター(コールバーグ・クラビス・ロバーツ傘下)
- ハーパーコリンズ(ニューズ・コープ傘下)
- アシェット・ブック・グループ(フランスのアシェット・リーブル傘下)
- マクミラン出版社(ドイツのホルツブリンク出版グループ傘下)
- マーベル・コミック(ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下)
- スカラスティック
- ジョン・ワイリー・アンド・サンズ
その他、各国の主な出版社
編集日本
編集販売冊数によるランキングでは2025年現在、集英社、講談社、小学館、KADOKAWA、学研プラスが日本の「五大出版社」と呼ばれている[6]。
日本の出版社を50音順に挙げた一覧は日本の出版社一覧を参照のこと。
次に、日本の出版社の歴史を知るために創業が古いほうから挙げる。
なお、江戸時代には出版社は版元と呼ばれていた。詳細は版元を参照のこと。
以下は明治期以降に創業した出版社である
- 有斐閣 - 1877年(明治10年)に東京・神田一ツ橋通町の古書街で創業し2年後の1879年に出版業に進出。人文社会系の学術書を中心とした出版社となった。
- 中央公論新社 - 1886年(明治19年)に京都・西本願寺の有志が集まり「反省会」として創立し、翌1887年に『反省会雑誌』を創刊(後に『中央公論』と改題)、社名も中央公論社と改名。特に『中央公論』は大正デモクラシーを牽引する総合雑誌として部数を伸ばした。だが1990年代に経営危機に陥り、読売新聞グループ本社の傘下に入った。
- ぎょうせい - 1893年創立。法令関連の出版物を手がける。
- 新潮社 - 1896年に創業。月刊誌『新潮』、『週刊新潮』など、様々な出版物を手がける。
- 講談社(音羽グループ)- 1909年創業。1958年から現社名。
- 岩波書店 - 1913年に岩波茂雄が設立。学術書を中心に、『広辞苑』や岩波文庫、岩波新書など刊行。
- ダイヤモンド社 - 1913年に創業。経済誌『週刊ダイヤモンド』など、様々な出版物を手がける。
- 小学館(一ツ橋グループ)- 1922年創業。
- 文藝春秋 - 1923年に創業。月刊誌『文藝春秋』、『週刊文春』など、様々な出版物を手がける。
- 旺文社 - 1931年創業。学習参考書を発行。
- NHK出版(NHKグループ) - 1931年設立。NHKと連携した出版物を手がける。
- 音楽之友社 - 1941年に誕生した音楽関連の出版社。当時の音楽関連の出版社「月刊楽譜」「音楽世界」「音楽倶楽部」の3社が統合され誕生した。
- 医学書院 - 1944年創立。医学・医療領域の専門書出版社の大手。
- KADOKAWA(KADOKAWAグループ) - 1945年に角川書店として創業。新刊刊行点数の日本最大手。
- Gakken(学研グループ) - 1947年創立。児童書・学習参考書、医学書・看護書、保健体育・道徳の教科書などを手がける。
- 双葉社 - 1948年に創業。『週刊大衆』、『クレヨンしんちゃん』など、様々な出版物を手がける。
- ゼンリン - 1948年創業。住宅地図の最大手。
- 世界思想社教学社 - 1948年創業。学術専門書・教養書の世界思想社、学習参考書の教学社の2つのブランド名を持つ地方出版社。
- 昭文社 - 1960年創立。道路地図や旅行ガイドブックの出版社。
- 日経BP(日経グループ) - 1969年に設立。経済誌『日経ビジネス』など直販誌・市販誌の雑誌メディアと、ビジネス書籍を手がける。
- 宝島社 - 1971年に設立。付録付き雑誌・ムックが主体の出版社。
- リクルート(リクルートグループ) - 求人情報誌、販促情報誌の大手。
- JTBパブリッシング - 旅行ガイドブックの出版社
- 文芸社 - 自費出版社
- 星雲社 - 出版取次と契約できない出版社(発行元)対して、出版取次との取引を代行している流通責任出版社(発売元)
- 扶桑社 - フジサンケイグループ
- ウェッジ - JR東海グループ。東海道・山陽新幹線のグリーン車に搭載されているオピニオン系雑誌「Wedge」と旅行雑誌「ひととき」を発行。
- 文溪堂 - 岐阜県羽島市と東京都文京区に本社を置く図書教材、児童書を扱う出版社。
- 新興出版社啓林館 - 教科書の啓林館、学習参考書の新興出版社、児童書の文研出版の3つのブランド名を持つ地方出版社。
- ひかりのくに - 児童書・保育図書を取り扱う地方出版社。
- 京阪神エルマガジン社(神戸新聞グループ) - 日本雑誌協会に加盟する唯一の地方出版社。
- メディコム - タウン情報誌「月刊タウン情報トクシマ」を発行する地方出版社。
- シティ情報ふくおか(アプライド傘下) - タウン情報誌「シティ情報ふくおか」を発行する地方出版社。
- 漫画週刊誌の出版社
上ですでに挙げたが、集英社(週刊少年ジャンプを出版)や講談社(週刊少年マガジンを出版)が特に大手。 週刊誌に掲載した漫画を、コミック本として再出版することも行っており、その部数も膨大である。
なお、2000年代に入り、漫画週刊誌の出版社がゲーム事業に乗り出すことが活発化している。 漫画週刊誌の編集部は従来、まだ無名の若手の漫画家の中から才能のある人を"発掘"し、つまり見つけて支援し、育てて、その作品の全部ではないが一部の作品がヒット作品となり、大きな利益を生み出すというビジネスをしてきたわけだが、その長年のノウハウを活かして、若手のゲームクリエイターの中から才能のある人を何名も発見し、契約を交わしゲーム制作に必要な費用を出資し、ゲーム制作に集中してもらい、そのゲーム作品の中から、全部ではないにしても一部が大ヒット作品となれば、契約書で決めておいた比率でその売上の一部が自社収益となり大きな利益となる、というビジネスモデルを考えているようである[7][8]。漫画の読者層とゲームのプレーヤーの層は重なる部分も大きいので、相乗効果を狙う手法も無いわけではない[8]が、そのような限定的な効果よりも、純粋に、自分たちが持っている若手育成のノウハウを活かしてゲーム市場の膨張の波に乗って大きな利益を上げようとしていると考えて良い。コンピュータゲーム市場の規模は、2010年代に映画市場の規模をとうに超え、なお成長を続けており今後も伸び続けてゆくと予想されているので、その波に乗ろうとしているのである。
- 教科書類の出版社
- 新聞社系の比較的新しい出版社
スペイン語圏
編集- Planeta(プラネット・グループ)
ドイツ
編集フランス
編集イタリア
編集韓国
編集などのほか
- ソウル大学出版文化院 - ソウル大学の出版局
など
台湾
編集- 東立出版社(Tongli Publishing)
- 長鴻出版社(Ever Glory Publishing)
- 尖端出版(Sharp Point Press)
- 青文出版集団(Ching Win Publishing)
- 台湾角川(Kadokawa Taiwan)
中国・香港
編集香港
編集- 玉皇朝出版集団(King Comics)
- 天下出版(Comicsworld)
出版関連団体
編集出典
編集- ^ “日本標準産業分類_統計分類・用語の検索_政府統計の総合窓口”. 2024年11月5日閲覧。
- ^ 【文化時評】「ひとり出版社」の愉楽『日本経済新聞』朝刊2021年4月11日12面
- ^ “The 10 Largest Publishers in the World”. publishersweekly.com. 2025年2月15日閲覧。
- ^ “米大手出版社、ペンギン・ランダムハウスとサイモン&シュスターの合併は業界の多様性欠如、作家の不利益につながると司法省が提訴”. Media Innovation (2022年8月31日). 2025年2月8日閲覧。
- ^ “米司法省、大手出版2社の合併は「作家の収入減を招く」と主張”. 新潮社 Foresight(フォーサイト). 2025年2月8日閲覧。
- ^ “くまざわ書店、2022年出版社別販売ランキングを発表”. 新文化オンライン. 2025年2月15日閲覧。
- ^ 鴫原盛之(しぎはら もりゆき). “講談社と集英社が本気で「ゲーム開発支援」 出版大手の人材の発掘・育成ノウハウは成功するのか”. Yahoo!ニュース. 2025年2月15日閲覧。
- ^ a b “なぜ集英社がゲーム事業に取り組むのか”. Note, Mori Michiharu. 2025年2月13日閲覧。
- ^ a b c d e “韓国の出版15社の歴代最高ベストセラー…日本の現代小説の威力見せる(2)”. 中央日報. 2025年2月15日閲覧。
関連項目
編集出版業界誌
編集- Buchmarkt ‐ ドイツ
- Börsenblatt‐ ドイツ
- 新文化通信社 ‐ 日本
- 文化通信社 ‐ 日本