日本道路公団
日本道路公団(にほんどうろこうだん、英語: Japan Highway Public Corporation、略称:JH)は、かつて日本に存在した、主として日本の高速道路・有料道路(高速自動車国道及びバイパス道路)の建設、管理を行っていた特殊法人。
Japan Highway Public Corporation | |
本社(現NEXCO東日本 本社) | |
略称 | 道路公団、JH |
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後継 | NEXCOグループ |
発足 | 1956年4月16日 |
廃止 | 2005年10月1日 |
種類 | 特殊法人(公団) |
法的地位 | 日本道路公団法(廃止)に基づく |
目的 | 高速道路、自動車専用道路の管理運営 |
本部 | 東京都千代田区霞が関3丁目3番2号 新霞が関ビルディング |
概要
編集1956年(昭和31年)4月16日に日本道路公団法に基づき設立された[1]。公団の資本金は全額日本国政府が出資した。
その後、数十年間にわたり日本の有料道路の建設及び管理に当たってきたが、1990年代になり、天下り、談合、道路族議員の暗躍、ファミリー企業、随意契約など、隠れた利権の温床として、負債が雪だるま式に膨らむ「第2の国鉄」と言われ、自由主義経済の原理に反する特殊法人の異常な実態が明らかになるにつれ、道路関係四公団(当公団と首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団)は「その代表例」として、世論の非難を浴びるようになった。
不透明な利権を排し、無責任な放漫経営体質を改める目的で、2001年(平成13年)の小泉内閣発足とともに民営化の計画を始め、2002年(平成14年)12月に道路関係四公団民営化推進委員会を設置。6日に内閣総理大臣宛の「意見書」を提出し、本格的な民営化の議論が始まった[2]。
その後、委員の大半が途中辞任するなど紆余曲折を経て、2004年(平成16年)6月9日に道路関係四公団民営化関係四法案(高速道路株式会社法、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律、日本道路公団等民営化関係法施行法)が可決・成立され、民営化が決定した[2]。
2005年(平成17年)6月1日に、道路関係四公団民営化関係法令が公布され[注釈 1]、同年10月1日に道路関係四公団民営化会社[注釈 2]と日本高速道路保有・債務返済機構が発足した[3]。 この日の日本道路公団分割民営化に伴い、同公団の業務のうち、施設の管理運営や建設については、東日本高速道路(NEXCO東日本)・中日本高速道路(NEXCO中日本)・西日本高速道路(NEXCO西日本)に[4]、保有施設及び債務は他の道路関係四公団とともに独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構に分割・譲渡された。これら会社・機構の発足とともにほぼ50年続いた当公団は解散した[4]。
なお、公団解散直前のコーポレートスローガンは「ヒューマンロードで未来を結ぶ」だった。
業務
編集高速自動車国道の設計・建設、有料道路の管理のほか、以下の業務を行うものとされていた。
旧道路整備特別措置法によると、国土交通大臣は日本道路公団のみに対し、高速自動車国道法に規定する整備計画に基く高速自動車国道の新設又は改築を行わせ(施行命令)、料金を徴収させることができた。したがって、高速自動車国道を有料道路として管理できるのは日本道路公団だけだった。
公団は、これらをふまえて策定した工事実施計画書や料金及び料金の徴収期間につき、あらためて国土交通大臣の認可をうけ、建設・管理した。
財務及び会計
編集公団は事業年度毎に国土交通大臣から、予算等の認可、財務諸表の承認をうけた。一方、資金の借入のほか、道路債券の発行をおこない、政府の貸付や債券引受、さらには債務保証も認められた。 公団が民間企業同様に試算した平成16年度末の資産合計は33.0兆円、負債合計は28.6兆円であった。
汚職事件
編集1998年 大蔵OB贈収賄事件
編集1998年、公団の外債発行に対し野村證券から賄賂を受け取ったとして、公団の経理担当理事(大蔵省OB)が野村證券の元副社長らと共に贈収賄の罪で逮捕された[5]。
2005年 橋梁工事官製談合事件
編集2005年、元公団職員が発注先に天下りし、OBによる談合組織「かずら会」を組織しての官製談合を行なっていた橋梁談合事件が発覚[6]。 2004年度公団発注の新東名高速道路の橋梁工事について、公団副総裁と理事は分割発注を職員に指示し、これにより公団に損害を負わせた背任行為が摘発された。
歴代総裁
編集日本全国の支社・建設局・管理局一覧(民営化前日まで)
編集支社
編集建設局
編集管理局
編集管理していた道路
編集民営化前日までに管理していた道路は以下のとおり。
高速自動車国道
編集一般有料道路
編集高規格幹線道路
編集- 深川沼田道路(深川留萌自動車道)
- 苫東道路(日高自動車道)
- 百石道路(A' - 東北縦貫自動車道八戸線)
- 秋田外環状道路(秋田自動車道、A' - 東北横断自動車道釜石秋田線)
- 琴丘能代道路(秋田自動車道、A' - 日本海沿岸東北自動車道)
- 湯沢横手道路(A' - 東北中央自動車道)
- 仙塩道路(三陸自動車道、三陸縦貫自動車道)
- 矢本石巻道路(三陸自動車道、三陸縦貫自動車道)
- 仙台東部道路(A' - 常磐自動車道)
- 仙台北部道路(A' - 常磐自動車道)
- 米沢南陽道路(A' - 東北中央自動車道)
- 東水戸道路(A' - 北関東自動車道)
- 圏央道(首都圏中央連絡自動車道)
- 京葉道路(A' - 東関東自動車道館山線)
- 千葉東金道路(首都圏中央連絡自動車道)
- 富津館山道路(A' - 東関東自動車道館山線)
- 安房峠道路(中部縦貫自動車道)
- 東海環状自動車道
- 伊勢湾岸道路(伊勢湾岸自動車道、A' - 第二東海自動車道、近畿自動車道名古屋神戸線)
- 京都第二外環状道路(京滋バイパス、京都縦貫自動車道)
- 京都丹波道路(京都縦貫自動車道)
- 京奈道路(京奈和自動車道)
- 湯浅御坊道路(A' - 近畿自動車道紀勢線)
- 米子道路(山陰道、A' - 山陰自動車道)
- 安来道路(山陰道、A' - 山陰自動車道)
- 江津道路(山陰道、A' - 山陰自動車道)
- 広島岩国道路(A' - 山陽自動車道)
- 今治小松道路(今治小松自動車道)
- 高松東道路(高松自動車道、A' - 四国横断自動車道)
- 椎田道路(A' - 東九州自動車道)
- 宇佐別府道路(A' - 東九州自動車道)
- 武雄佐世保道路(西九州自動車道)
- 佐世保道路(西九州自動車道)
- 延岡南道路(A' - 東九州自動車道)
- 隼人道路(A' - 東九州自動車道)
- 八代日奈久道路(南九州西回り自動車道)
- 鹿児島道路(南九州西回り自動車道)
- 南風原道路(那覇空港自動車道の一部区間)
地域高規格道路
編集- 東京湾横断・木更津東金道路(東京湾アクアライン)
- 第三京浜道路
- 横浜新道
- 横浜横須賀道路
- 新湘南バイパス
- 京滋バイパス
- 第二京阪道路
- 第二神明道路
- 南阪奈道路
- 広島呉道路
- 日出バイパス(大分空港道路)
その他の道路
編集- 八王子バイパス(国道16号)
- 西湘バイパス(国道1号)
- 小田原厚木道路(国道271号)
- 箱根新道(国道1号)
- 東富士五湖道路(国道138号)
- 西富士道路(国道139号)
- 八木山バイパス(国道201号)
- 長崎バイパス(国道34号)
- 関門トンネル(国道2号)
その他自動車交通施設
編集- 日比谷自動車駐車場
- 福岡中央自動車駐車場
民営化以前に引継ぎがなされた道路
編集- 阿蘇登山道路 - 1970年7月1日、熊本県・阿蘇登山有料道路
- 磐梯吾妻道路 - 1972年1月1日、福島県道路公社
- 第二磐梯吾妻道路 - 1972年10月20日(開通と同時)、福島県道路公社
- 伊勢道路 - 1973年8月1日、三重県道路公社
- 白浜道路 - 1981年6月1日、和歌山県
- 知多半島道路 - 1983年6月1日、愛知県道路公社
- 大島大橋 - 1987年6月1日、山口県道路公社
- 尾道大橋 - 1988年2月1日、本州四国連絡橋公団
- 北九州道路 - 1991年3月31日、福岡北九州高速道路公社・北九州高速4号線
- 北九州直方道路 - 1991年3月31日、福岡北九州高速道路公社・北九州高速4号線
- 浦戸大橋 - 1997年2月1日、高知県道路公社
- 日光宇都宮道路 - 2005年6月28日、栃木県道路公社
- 真鶴道路 - 2005年9月30日、神奈川県道路公社
- 若戸大橋 - 2005年9月30日、北九州市
このほか以下の渡船施設を一般有料道路として管理していたが、いずれもすでに事業譲渡または事業廃止されている。
ロゴマーク
編集脚注
編集注釈
編集参照
編集- ^ 全国高速道路建設協議会(編)『高速道路便覧 2007』 2007, p. 13
- ^ a b 全国高速道路建設協議会(編)『高速道路便覧 2007』 2007, p. 19
- ^ 全国高速道路建設協議会(編)『高速道路便覧 2007』 2007, p. 20
- ^ a b 武部健一 2015, pp. 227–228.
- ^ 『日本国家公務員労働組合連合会』(プレスリリース)大蔵省による官僚汚職事件の全容解明と腐敗構造の改革をもとめる、1998年1月28日 。
- ^ “橋梁談合 道路公団発注分も OBと三菱重が調整・決定”. しんぶん赤旗. (2005年5月29日)
- ^ “橋梁談合 内田道路公団副総裁を逮捕 分割発注指示「官製談合」に発展”. しんぶん赤旗. (2005年7月26日)
- ^ “内田元副総裁の有罪確定へ 旧道路公団の橋梁談合”. 共同通信. (2010年9月25日)
- ^ “旧道路公団元理事の有罪確定へ 橋梁談合事件で”. 共同通信. (2010年7月22日)
- ^ “橋梁談合・初公判 天下り、受注に直結 検察指摘メーカー大筋認める”. しんぶん赤旗. (2005年12月17日)
- ^ 『鋼橋上部工事の入札談合事件に係る刑事告発を受けての指名停止措置の加重について』(プレスリリース)国土交通省、2005年7月1日 。2012年1月18日閲覧。
- ^ 日本道路公団のCI(「STEP-21!」)活動について - 道路行政セミナー1991年11月号
- ^ 日本道路公団からのお知らせ - 建設月報1991年11月号
参考文献
編集- 全国高速道路建設協議会(編)『高速道路便覧 2007』(第23版)全国高速道路建設協議会、2007年8月。
- 武部健一『道路の日本史』中央公論新社〈中公新書〉、2015年5月25日。ISBN 978-4-12-102321-6。
関連項目
編集- 道路関係四公団
- 財団法人道路施設協会 - 1965年5月27日に設立。日本道路公団が管理する高速道路上のSA・PAの運営・管理を一手に引き受けていた公益法人(財団法人、一部の高速道路、SA・PAを除く)。赤字の道路公団に対して、道路施設協会は黒字だったため、専門家から批判を浴びた。国土交通省(建設省)の天下り先の1つでもあった。1998年9月30日付けで道路サービス機構(J-Sapa)とハイウェイ交流センター(HELLO SQUARE)に事業が分割された。
- 財団法人道路サービス機構(J-Sapa)
- 財団法人ハイウェイ交流センター
- ※上記2団体は共に1998年10月1日に設立(道路施設協会の法人格は道路サービス機構が継承)。上記の道路施設協会と同様、同じく日本道路公団が管理する高速道路上のSA・PAの運営・管理を引き受けていた公益法人(一部を除く)。国土交通省(建設省)の天下り先の1つでもあった。共に2006年3月31日付で、大部分の事業をネクセリア東日本(東日本高速道路のSA・PA運営子会社)・中日本エクシス(中日本高速道路のSA・PA運営子会社)・西日本高速道路サービス・ホールディングス(西日本高速道路のSA・PA運営子会社)に事業を譲渡し、高速道路交流推進財団に改称(法人格は、道路サービス機構を継承)。
- ハイウェイカード - かつて発行していた高速道路の通行料用のプリペイドカード。2006年3月31日をもって利用停止。
- 高速道路
- 一般国道
- NEXCO(全て株式会社)
- 日本高速道路保有・債務返済機構
- KDDI - 前身である日本高速通信にトヨタ自動車と共同で出資していた。1998年に国際電信電話と合併してKDDとなる。
- 日本急行バス - 建設省と共に設立に関与した。
- 内閣総理大臣顕彰