アルピーヌF1Alpine F1)は、フランスの自動車ブランド「アルピーヌ」の名を冠したF1コンストラクター。前身ルノーF1チームから改称し、リニューアルして誕生した。運営はアルピーヌ・レーシング Ltd.。

アルピーヌ・ルノー
フランスの旗 Alpine
エントリー名 BWT・アルピーヌ・フォーミュラワン・チーム
チーム国籍 フランスの旗 フランス
チーム本拠地
主なチーム関係者
テクニカルディレクター
公式ウェブサイト https://www.alpine-cars.co.uk/formula-1.html
以前のチーム名称 ルノーF1チーム
2025年のF1世界選手権
ドライバー
リザーブドライバー
シャシー A525
エンジン ルノー E-Tech RE25
タイヤ ピレリ
F1世界選手権におけるチーム履歴
参戦年度 2021 -
出走回数 90
コンストラクターズ
タイトル
0
ドライバーズ
タイトル
0
優勝回数 1
通算獲得ポイント 613
表彰台(3位以内)回数 6
ポールポジション 0
ファステストラップ 1
F1デビュー戦 2021年バーレーンGP
初勝利 2021年ハンガリーGP
2024年順位 6位 (65ポイント)
(記録は2024年最終戦アブダビGP終了時)
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2025年現在のエントリー名は『BWT・アルピーヌ・フォーミュラワン・チーム』(BWT Alpine Formula One Team)[1]

概要

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2020年まで「ルノーF1チーム」として参戦していたフランスの自動車メーカー・ルノーは、翌2021年シーズンより傘下の自動車メーカー・アルピーヌの名を冠した『アルピーヌF1チーム』にコンストラクターの改変を発表[2]。運営をルノー・スポールからアルピーヌ・レーシング・リミテッド(アルピーヌ・カーズ)に改称し[3][4]、ルノー・スポール会長ジェローム・ストールは退任[5]、チーム代表だったシリル・アビテブールも解任して組織を一新した。

設立初期の人事ではアルピーヌ本社のCEO(当時)ローラン・ロッシが指揮を執り、ダビデ・ブリビオ(元スズキMotoGPチーム代表)や[6]オトマー・サフナウアー(元レーシング・ポイントおよびアストンマーティンF1チーム代表)[7]らを招聘するなど有力な幹部を配置。車体やエンジン製造それぞれにテクニカルディレクターを配して、より効率的な分業化を強めている。

なおパワーユニットを供給しているアルピーヌ・レーシング社(Alpine Racing SAS)は、フランス・ヴィリー=シャティヨンに所在。かつてのルノー・スポールのエンジン開発部門であり、1970年代からエンジン・パワーユニットの開発を担当している。イギリスエンストン英語版でチーム運営、F1車両の車体を開発しているアルピーヌ・レーシング社(Alpine Racing Ltd.[8]。かつてのベネトン・ルノーF1チーム・ロータスF1チーム)とは法人として別会社となっている[9]

他の有力チーム同様、自社傘下のドライバー育成組織としてアルピーヌ・アカデミーを持つが、近年は育成ドライバーが他チームに流出するケースが多く(オスカー・ピアストリ/周冠宇など)、運営体制が問題となっている。

シーズン

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2021年

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今シーズンよりアルピーヌF1チームとして参戦。ドライバーは残留するエステバン・オコンと、今季からF1に復帰するフェルナンド・アロンソ[1]

オコンが、第11戦ハンガリーGPルイス・ハミルトンを抑えて自身とチームの初優勝を飾った。

2022年

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メインスポンサーとして、前年までアストンマーティンF1のスポンサーだった、オーストリアのBWTを迎える。それに伴いエントリー名も「BWT・アルピーヌF1チーム」となった。アストンマーティンF1からは他にもオトマー・サフナウアーが移籍しチーム代表となる一方で、エグゼクティブディレクターのマルチン・ブコウスキー、アドバイザーのアラン・プロストらが離脱するなど、チーム首脳陣の入れ替えが進んだ[10]

シーズン半ばにはアロンソが同年末でチームを離脱しアストンマーティンに移籍する意向を発表。それに伴いチームは育成ドライバーのオスカー・ピアストリの昇格を一度は発表するものの、ピアストリは「アルピーヌF1とは有効なドライバー契約を結んでいない」としてマクラーレンと契約済みであることを発表した。最終的に同年9月、国際自動車連盟(FIA)のドライバー契約承認委員会(CRB)が「ピアストリとマクラーレンとの契約が有効である」と認めたため、チームは代わりのドライバー探しを余儀なくされる[11]。結局チームは、既にアルファタウリとの契約延長を発表済みであったピエール・ガスリーを引き抜くことを決め、同年10月にガスリーとの複数年契約を公表した[12]

2023年

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ドライバーはオコンが残留し、アルファタウリから移籍のガスリーとコンビを組む。しかし成績は中位から抜け出せない状況が続く。

6月、アメリカの投資家グループに、アルピーヌF1チームを運営するアルピーヌ・レーシング・リミテッドの株式の24%を売却し、2億ユーロ(約312億円)の出資を受けることを発表した。なお、今回の投資家グループによる出資はイギリス・エンストンのアルピーヌ・レーシング・リミテッドに対してのみであり、フランスでF1パワーユニットの製造を手がけるアルピーヌ・レーシングSASは引き続き、ルノーグループが株式の100%を保有する[9]

7月に入ると、チームは矢継ぎ早に体制変更を発表する。7月10日にはアルピーヌのモータースポーツ担当副社長にブルーノ・ファミンが就任[13]。続く7月21日にはアルピーヌ本社のCEOがローラン・ロッシからフィリップ・クリーフに交代することが発表され[14]、さらにその翌週の7月28日にはチーム代表のサフナウアー、スポーティングディレクターのアラン・バーメイン、最高技術責任者(CTO)のパット・フライの3人がベルギーGP後に退任することも明らかにされた[13]。後任の暫定チーム代表にはファミンが就く[13]

2024年

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ドライバーはオコンとガスリーが残留。新車A524の重量過多とルノーPUのパワー不足、そして後述するチーム体制の混乱[15]により開幕から不振が続いていたが、第21戦サンパウロGPでオコンとガスリーが雨絡みの混乱をかいくぐってダブル表彰台を獲得してから[16]チームは勢いづき、終盤2戦にガスリーが入賞してランキング6位を確保した[17]。最終戦アブダビGPを前にオコンとの契約を解除し、翌年のレギュラードライバー契約を結んでいたリザーブドライバーのジャック・ドゥーハンを一足早くF1デビューさせた[18]

この年もチーム体制の変更が相次いだ。5月、空席だった技術部門のトップに、元フェラーリのエンジニアで3月にマクラーレンを離脱したばかりのデビッド・サンチェス英語版が就任することを発表。新設される「エグゼクティブ・テクニカル・ディレクター」として、パフォーマンス、エンジニアリング、エアロダイナミクスの3部門を統括する立場となる[19]。6月、前身のベネトンやルノーでチーム代表を務めたフラビオ・ブリアトーレがエグゼクティブ・アドバイザーとして15年ぶりの古巣復帰を果たした[20]。7月、暫定的にチーム代表を務めていたブルーノ・ファミンが8月末にその座を退くことが発表された[21]。後任はFIA F2選手権FIA F3選手権などに参戦しているハイテック・グランプリ英語版のオーナーで36歳のオリバー・オークスが務める[22][23]

7月に入り、2026年以降に使用される新パワーユニット(PU)の開発から撤退し、2026年からはメルセデス製PUのカスタマー供給を受ける方針が度々報じられ、7月23日にはル・フィガロが「ヴィリー=シャティヨンにあるPU部門の従業員に対し、新PUの開発中止決定が伝えられた」と報じた[24]。その後PU開発継続を望む従業員によるストライキなどの動きもあったものの、結局9月30日に「2025年限りで自社PUの開発・製造を終了し、2026年シーズンからは他社からPUの供給を受ける」ことを正式に発表した。なおヴィリー=シャティヨンのファクトリーは「ハイパーテック・アルピーヌ」と名前を改め、次世代技術の開発拠点として再編される[25]。11月12日、メルセデスのPUとギアボックスを2026年から使用すると発表した[26]

2025年

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ドライバーはガスリーとドゥーハンの2人がレギュラードライバーを務める。またリザーブドライバーとしてフランコ・コラピントポール・アロン平川亮と契約を結んだ[27][28](なお平川は同年4月に離脱しハースに移籍した)。また、従来燃料・オイル類を供給してきたBPカストロールがアウディF1(ザウバー)と組む事になり、2月にはイタリアのEni(かつてのアジップ)との提携を発表し、2026年以降同社から再生可能燃料の供給を受けることとなった。メルセデスPUで通常使われるペトロナス製燃料ではなく、独自の燃料を使用することで優位性を確保する狙いと見られる[29]

車両ギャラリー

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パワーユニット型(2021年)

グラウンドエフェクト型(2022年 - )

戦績

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シャシー パワーユニット タイヤ No. ドライバー 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 Pts. WCC
2021 A521
[30]
ルノー
E-Tech 20B
1.6L V6 t
P BHR EMI POR ESP MON AZE FRA STM AUT GBR HUN BEL NED ITA RUS TUR USA MEX SÃO QAT SAU ABU 155 5位
14   アロンソ Ret 10 8 17 13 6 8 9 10 77 4 11 6 811 6 16 Ret 9 912 3 18 8
31   オコン 13 9 7 9 9 Ret 14 14 Ret 910 1 7 9 1013 14 10 Ret 14 89 5 4 9
2022 A522 ルノー
E-Tech RE22
1.6L V6 t
P BHR SAU AUS EMI MIA ESP MON AZE CAN GBR AUT FRA HUN BEL NED ITA SIN JPN USA MEX SÃO ABU 173 4位
14   アロンソ 9 Ret 17 Ret9 11 9 7 7 9 5 10DNS 6 8 5 6 Ret Ret 7 7 19 518 Ret
31   オコン 7 6 7 1416 8 7 12 10 6 Ret 56 8 9 7 9 11 Ret 4 11 8 817 7
2023 A523 ルノー
E-Tech RE23
1.6L V6 t
P BHR SAU AUS AZE MIA MON ESP CAN AUT GBR HUN BEL NED ITA SIN JPN QTA USA MEX SÃO USA ABU 120 6位
31   オコン Ret 8 14 1518 9 3 8 8 147 Ret Ret 89 10 Ret Ret 9 7Ret Ret11 10 1014 4 12
10   ガスリー 9 9 13 1413 8 7 10 12 1015 Ret Ret 113 3 16 6 10 129 67 11 713 11 13
2024 A524 ルノー
E-Tech RE24
1.6L V6 t
P BHR SAU AUS JPN CHN MIA EMI MON CAN ESP AUT GBR HUN BEL NED ITA AZE SIN USA MEX SÃO USA QAT ABU 65 6位
31   オコン 17 13 16 15 1113 1015 14 Ret 10 10 1211 16 18 9 15 14 15 13 1815 13 213 17 Ret14
61   ドゥーハン 15
10   ガスリー 18 Ret 13 16 1315 129 16 10 9 9 1012 DNS Ret 13 9 15 12 17 1214 10 37 Ret 59 7
2025 A525 ルノー
E-Tech RE25
1.6L V6 t
P AUS CHN JPN BHR SAU MIA EMI MON ESP CAN AUT GBR BEL HUN NED ITA AZE SIN USA MXC SAP LVG QAT ABU 6* 9位*
10   ガスリー 11 DSQ12 13 7 17
7   ドゥーハン Ret 1320 15 14 Ret

関連項目

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脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b 2025 FIA Formula One World Championship Entry List” (英語). FIA (2025年1月9日). 2025年2月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月11日閲覧。
  2. ^ ルノーが2021年から『アルピーヌF1チーム』に名称変更。マシンカラーも一新へ | F1 | autosport web”. AUTO SPORT web (2020年9月6日). 2021年1月14日閲覧。
  3. ^ 2021年F1エントリーリスト:レッドブルの正式チーム名に「ホンダ」が加わる”. autosport web (2021年3月24日). 2021年3月24日閲覧。
  4. ^ ルノースポール・カーズをアルピーヌ・カーズに再編”. レスポンス (2021年5月11日). 2021年6月1日閲覧。
  5. ^ ルノー・スポールの社長が2020年限りで退任。F1フルワークス復活に貢献”. motorsport.com (2020年12月16日). 2021年8月11日閲覧。
  6. ^ スズキ戴冠後にアルピーヌF1へ移籍……「断っていれば後悔しただろう」とダビデ・ブリビオ”. motorsport.com (2021年3月3日). 2022年2月22日閲覧。
  7. ^ アルピーヌF1、新代表サフナウアーの加入を正式発表。新体制構築で、PU開発責任者に元FIA上級職員が就任”. autosport web (2022年2月18日). 2022年2月22日閲覧。
  8. ^ ALPINE RACING LIMITED”. GOV.UK. 2023年11月22日閲覧。
  9. ^ a b アルピーヌF1、ハリウッド俳優も参画するアメリカの投資家グループに株式の24%を売却。約312億円を調達”. autosport web. 2023年6月26日閲覧。
  10. ^ アルピーヌF1チーム離脱についてプロストがコメント。正式発表前の情報漏洩に不快感 - オートスポーツ・2022年1月18日
  11. ^ ピアストリを失ったアルピーヌF1「新ドライバーは追って発表」レッドブル首脳はガスリーをめぐり交渉中と認める - オートスポーツ・2022年9月3日
  12. ^ ガスリーのアルピーヌF1加入が正式発表、2023年からの複数年契約を締結。アルファタウリはデ・フリースと契約 - オートスポーツ・2022年10月8日
  13. ^ a b c アルピーヌF1がサフナウアー代表をはじめとする上級職員3人の離脱を発表。パット・フライはウイリアムズに移籍 - オートスポーツ・2023年7月28日
  14. ^ アルピーヌ、組織改編に続いてCEO交代を発表。ローラン・ロッシが退任し新CEOにフィリップ・クリーフ就任 - motorsport.com 2023年7月21日
  15. ^ 【F1開幕戦バーレーンGP予選の要点】ワークスチーム、アルピーヌ最下位の衝撃。懸念された三重苦が現実に”. autosport web (2024年3月2日). 2024年11月13日閲覧。
  16. ^ 【F1第21戦の要点】コンストラクターズ6位に急浮上。雨と幸運が生んだアルピーヌのダブル表彰台”. autosport web (2024年11月4日). 2024年11月13日閲覧。
  17. ^ アルピーヌF1、“最遅チーム”からランキング6位獲得の大マクリ。ガスリーは望外の結果に「シーズン序盤は考えられなかった」”. motorsport.com (2024年12月9日). 2024年12月23日閲覧。
  18. ^ アルピーヌF1、アブダビGPでドゥーハンの起用を発表。カーナンバーは61。オコンは即座に契約解除で、ハースでの仕事をスタートへ”. motorsport.com (2024年12月2日). 2024年12月23日閲覧。
  19. ^ アルピーヌF1、マクラーレンを離れたサンチェスの獲得を正式発表。“3本柱アプローチ”の技術部門を監督へ - オートスポーツ・2024年5月2日
  20. ^ 元ルノー代表ブリアトーレがF1に復帰。アルピーヌF1チームのエグゼクティブ・アドバイザーに就任”. autosport web (2024年6月21日). 2024年7月25日閲覧。
  21. ^ アルピーヌF1、ブルーノ・ファミンが8月末にチーム代表を退くと発表”. autosport web (2024年7月26日). 2024年7月27日閲覧。
  22. ^ アルピーヌF1、新たなチーム代表にオリバー・オークスを起用。ルノー・グループCEOの直属に”. autosport web (2024年7月31日). 2024年8月1日閲覧。
  23. ^ 36歳のF1チーム代表が誕生! アルピーヌがオリバー・オークスの起用を発表。夏休み明けから新体制始動”. motorsport.com (2024年7月31日). 2024年8月6日閲覧。
  24. ^ Formule 1 : Alpine lâche Renault et se tourne vers Mercedes - ル・フィガロ 2024年7月23日
  25. ^ ルノーがF1エンジンプログラム終了を正式に発表。アルピーヌは2026年からカスタマーチームに - オートスポーツ・2024年10月1日
  26. ^ アルピーヌ、2026年よりメルセデスのパワーユニットとギヤボックスを使用へ。複数年契約を締結”. autosport web (2024年11月12日). 2024年11月13日閲覧。
  27. ^ 平川亮がアルピーヌのテスト兼リザーブドライバーに就任。日本GPでのFP1出走も明らかに - オートスポーツ・2025年1月9日
  28. ^ アルピーヌがコラピントを獲得、テスト&リザーブドライバーに起用。ウイリアムズとの合意が成立し、複数年契約を締結 - オートスポーツ・2025年1月10日
  29. ^ イタリア大手エネルギー会社エニがF1に復帰。ルノーと提携、アルピーヌF1の公式エネルギー&燃料パートナーに - オートスポーツ・2025年2月14日
  30. ^ ルノー改めアルピーヌF1、ニューマシン『A521』の暫定カラーリングを公開。新車発表は2月”. jp.motorsport.com. 2021年1月15日閲覧。

外部リンク

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