ヴェネツィア国際映画祭
イタリアで毎年開催される映画祭
(ベニス国際映画祭から転送)
ヴェネツィア国際映画祭(ヴェネツィアこくさいえいがさい、Mostra Internazionale d'Arte Cinematografica)[注釈 1]は、イタリアのヴェネツィアで毎年8月末から9月初旬に開催される映画祭である。カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭と並んで三大映画祭のひとつとされ[1]、世界の映画祭で最も長い歴史をもつ[2][注釈 2]。
ヴェネツィア国際映画祭 | |
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リド島における映画祭会場(2010年) | |
イベントの種類 | 映画祭 |
初回開催 | 1932年 |
会場 | ヴェネツィア リド島 |
主催 | ヴェネツィア・ビエンナーレ |
公式サイト | |
備考: 世界三大映画祭のひとつ。 |
歴史
編集最も歴史の古い国際美術展であるヴェネツィア・ビエンナーレの第18回(1932年8月6日)の際に、映画部門として開始された。国際映画祭としては最初ともいわれる。初回の最優秀賞は観客の投票で決められた。1934年から1942年までは、最高賞が「ムッソリーニ賞」であった。第二次世界大戦のために1940年から1942年は参加作品が激減する。戦後も低迷していた中、1950年代に多くの日本映画を世界に紹介した。
1979年から1982年にカルロ・リッツァーニがディレクターを務めた間に、現在のプログラム構成に繋がるプログラミングが行われ、再度脚光を浴びることとなった。長らくマーケット部門を持たず商業よりも芸術の映画祭として続いてきたが、2002年にマーケットが設けられるなど、商業映画の比重は次第に高まっている。
2006年の映画祭は、国際映画製作者連盟 (FIAPF) 公認の国際映画祭のうち、上映作品数で第41位(115本)、来場者数では第10位(174,000人)であった。
賞
編集- 金獅子賞:最高賞 GOLDEN LION for Best Film
- 銀獅子賞:監督賞 SILVER LION – Award for Best Director
- 銀獅子賞:審査員大賞 SILVER LION – Grand Jury Prize
- 審査員特別賞 Special Jury Prize
- ヴォルピ杯(俳優賞)
- マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)MARCELLO MASTROIANNI AWARD for Best Young Actor
- 脚本賞 AWARD FOR BEST SCREENPLAY
- ルイジ・デ・ラウレンティス賞(新人監督賞)LION OF THE FUTURE – “LUIGI DE LAURENTIIS” VENICE AWARD FOR A DEBUT FILM
- 栄誉金獅子賞 GOLDEN LION for Lifetime Achievement
- 監督・ばんざい!賞 Jaeger-LeCoultre Glory to the Filmmaker Award
- オリゾンティ賞(監督賞・作品賞など)Orizzonti section
独立賞
編集映画批評家連盟、ペンクラブ、文化団体などが公式賞からは独立して授与する作品賞・監督賞など[4]。
- FIPRESCI賞(国際映画批評家連盟)
- FEDIC賞(イタリア・シネクラブ連盟)[4]
- フランチェスコ・パシネッティ賞(イタリア映画記者組合)[4]
- SIGNIS賞(SIGNIS、前身はOCIC賞)[5]
- クィア獅子賞
- ロベール・ブレッソン賞
過去に存在した賞
編集主な日本に関係した受賞
編集- 1938年 - 田坂具隆監督『五人の斥候兵』がイタリア民衆文化大臣賞を受賞。
- 1951年 - 黒澤明監督『羅生門』が 金獅子賞を受賞。
- 1952年 - 溝口健二監督『西鶴一代女』が国際賞を受賞。
- 1953年 - 溝口健二監督『雨月物語』が銀獅子賞を受賞。
- 1954年 - 黒澤明監督『七人の侍』と溝口健二監督『山椒大夫』が銀獅子賞を受賞。
- 1956年 - 市川崑監督『ビルマの竪琴』がサン・ジョルジョ賞を受賞。
- 1958年 - 稲垣浩監督『無法松の一生』が金獅子賞を受賞。
- 1960年 - 小林正樹監督『人間の條件』がサン・ジョルジョ賞を受賞。
- 1961年 - 黒澤明監督『用心棒』で三船敏郎が男優賞を受賞。
- 1965年 - 黒澤明監督『赤ひげ』でサン・ジョルジョ賞、三船敏郎が男優賞を受賞。
- 1967年 - 小林正樹監督『上意討ち 拝領妻始末』が国際映画批評家連盟賞を受賞。
- 1982年 - 黒澤明が栄誉金獅子賞を受賞。
- 1989年 - 熊井啓監督『千利休 本覚坊遺文』が銀獅子賞を受賞。
- 1991年 - 竹中直人監督『無能の人』が国際映画批評家連盟賞を受賞。
- 1995年 - 是枝裕和監督『幻の光』で中堀正夫が撮影賞を受賞。
- 1997年 - 北野武監督『HANA-BI』が金獅子賞を受賞。
- 1999年 - 小泉堯史監督『雨あがる』が緑の獅子賞(シネマ・アヴェニーレ賞)を受賞。
- 2002年 - 塚本晋也監督『六月の蛇』がコントロ・コレンテ部門 審査員特別賞を受賞。
- 2003年 - 北野武監督『座頭市』が銀獅子賞を受賞。
- 2003年 - ペンエーグ・ラッタナルアーン監督『地球で最後のふたり』で浅野忠信がコントロ・コレンテ部門 男優賞を受賞。
- 2004年 - 宮崎駿監督『ハウルの動く城』が技術貢献賞を受賞。
- 2005年 - 宮崎駿が栄誉金獅子賞を受賞。
- 2011年 - 園子温監督『ヒミズ』で染谷将太と二階堂ふみがマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。
- 2011年 - 塚本晋也監督『KOTOKO』がオリゾンティ部門でグランプリを受賞。
- 2015年 - 長谷井宏紀監督『ブランカとギター弾き』がランテルナ・マジカ賞を受賞。
- 2020年 - 黒沢清監督『スパイの妻』が銀獅子賞を受賞。
- 2022年 - 是枝裕和がロベール・ブレッソン賞を受賞。
- 2022年 - 鈴木清順監督『殺しの烙印』がクラシック部門 最優秀復元映画賞を受賞。
- 2023年 - 濱口竜介監督『悪は存在しない』が銀獅子賞(審査員大賞)と国際映画批評家連盟賞を受賞[6][7]。
- 2023年 - 塚本晋也監督『ほかげ』がオリゾンティ部門 NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞[8]。
- 2023年 - 相米慎二監督『お引越し』がクラシック部門 最優秀復元映画賞を受賞。
日本作品の出品記録 (2000年以降)
編集年 (授賞式) |
作品名 | 監督 | 部門 | 結果 |
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2000年 (第57回) |
BROTHER | 北野武 | コンペティション外 | — |
通貨と金髪 | 望月六郎 | 「新しい視点」部門 | — | |
1999・大島渚・映画と生きる | 合津直枝 | — | ||
PAIN/ペイン | 石岡正人 | 国際映画批評家週間 | — | |
2001年 (第58回) |
害虫 | 塩田明彦 | 現代映画部門 | ノミネート |
少女〜an adolescent | 奥田瑛二 | 国際映画批評家週間 | — | |
2002年 (第59回) |
Dolls | 北野武 | コンペティション部門 | ノミネート |
六月の蛇 | 塚本晋也 | コントロ・コレンテ部門 | 審査員特別賞受賞(塚本晋也) | |
水の女 | 杉森秀則 | 国際映画批評家週間 | — | |
2003年 (第60回) |
座頭市 | 北野武 | コンペティション部門 | 銀獅子賞受賞(北野武) |
地球で最後のふたり | ペンエーグ・ラッタナルアーン | コントロ・コレンテ部門 | 男優賞受賞(浅野忠信) | |
アンテナ | 熊切和嘉 | ノミネート | ||
ヴァイブレータ | 廣木隆一 | 「新しい視点」部門 | — | |
2004年 (第61回) |
ハウルの動く城 | 宮崎駿 | コンペティション部門 | ノミネート |
IZO | 三池崇史 | オリゾンティ部門 | ノミネート | |
ヴィタール | 塚本晋也 | ノミネート | ||
スチームボーイ | 大友克洋 | コンペティション外 | — | |
美しい夜、残酷な朝 | 三池崇史 | ヴェネツィア・メッツァノッテ部門 | — | |
稀人 | 清水崇 | ヴェネツィア・デジタルシネマ部門 | — | |
恋の門 | 松尾スズキ | 国際映画批評家週間 | — | |
2005年 (第62回) |
TAKESHIS' | 北野武 | コンペティション部門 | ノミネート |
ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン | 野村哲也 | コンペティション外 | — | |
妖怪大戦争 | 三池崇史 | — | ||
2006年 (第63回) |
パプリカ | 今敏 | コンペティション部門 | ノミネート |
蟲師 | 大友克洋 | ノミネート | ||
こおろぎ | 青山真治 | オリゾンティ部門 | ノミネート | |
立喰師列伝 | 押井守 | ノミネート | ||
ゲド戦記 | 宮崎吾郎 | コンペティション外 | — | |
叫 | 黒沢清 | — | ||
2007年 (第64回) |
スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ | 三池崇史 | コンペティション部門 | ノミネート |
サッド ヴァケイション | 青山真治 | オリゾンティ部門 | ノミネート | |
監督・ばんざい! | 北野武 | コンペティション外 | 監督・ばんざい!賞受賞(北野武) | |
2008年 (第65回) |
アキレスと亀 | 北野武 | コンペティション部門 | 白い杖賞(バストーネ・ビアンコ賞)受賞(北野武) |
崖の上のポニョ | 宮崎駿 | ミンモ・ロッテラ財団賞受賞(宮崎駿) | ||
スカイ・クロラ The Sky Crawlers | 押井守 | ノミネート | ||
ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発 | 河崎実 | コンペティション外 | — | |
2009年 (第66回) |
鉄男 THE BULLET MAN | 塚本晋也 | コンペティション部門 | ノミネート |
自転車 | ディーン・ヤマダ | 短編コンペティション部門 | ノミネート | |
よなよなペンギン | りんたろう | コンペティション外 | — | |
2010年 (第67回) |
十三人の刺客 | 三池崇史 | コンペティション部門 | ノミネート |
ノルウェイの森 | トラン・アン・ユン | ノミネート | ||
冷たい熱帯魚 | 園子温 | オリゾンティ部門 | ノミネート | |
春のしくみ | 和田淳 | ノミネート | ||
ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲- | 三池崇史 | コンペティション外 | — | |
戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH | 清水崇 | — | ||
2011年 (第68回) |
ヒミズ | 園子温 | コンペティション部門 | マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞(染谷将太、二階堂ふみ) |
KOTOKO | 塚本晋也 | オリゾンティ部門 | オリゾンティ賞受賞(塚本晋也) | |
Cut | アミール・ナデリ | ノミネート | ||
MODERN No.2 | 水江未来 | ノミネート | ||
663114 | 平林勇 | ノミネート | ||
ラビット・ホラー3D | 清水崇 | コンペティション外 | — | |
2012年 (第69回) |
アウトレイジ ビヨンド | 北野武 | コンペティション部門 | ノミネート |
千年の愉楽 | 若松孝二 | オリゾンティ部門 | ノミネート | |
贖罪 | 黒沢清 | コンペティション外 | — | |
2013年 (第70回) |
風立ちぬ | 宮崎駿 | コンペティション部門 | ノミネート |
地獄でなぜ悪い | 園子温 | オリゾンティ部門 | ノミネート | |
キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK- | 荒牧伸志 | コンペティション外 | — | |
許されざる者 | 李相日 | — | ||
2014年 (第71回) |
野火 | 塚本晋也 | コンペティション部門 | ノミネート |
Words with Gods | 中田秀夫 | コンペティション外 | — | |
2015年 (第72回) |
ブランカとギター弾き | 長谷井宏紀 | ビエンナーレ・カレッジ部門 | ランテルナ・マジカ賞受賞(長谷井宏紀) |
2016年 (第73回) |
愚行録 | 石川慶 | オリゾンティ部門 | ノミネート |
GANTZ:O | 川村泰 | コンペティション外 | — | |
2017年 (第74回) |
三度目の殺人 | 是枝裕和 | コンペティション部門 | ノミネート |
泳ぎすぎた夜 | 五十嵐耕平 | オリゾンティ部門 | ノミネート | |
アウトレイジ 最終章 | 北野武 | コンペティション外 | — | |
Ryuichi Sakamoto: CODA | スティーブン・ノムラ・シブル | — | ||
マンハント | ジョン・ウー | — | ||
2018年 (第75回) |
斬、 | 塚本晋也 | コンペティション部門 | ノミネート |
攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver | 東弘明 | コンペティション外 | — | |
結婚指輪物語VR | 曹家栄 | — | ||
2019年 (第76回) |
真実 | 是枝裕和 | コンペティション部門 | ノミネート |
ある船頭の話 | オダギリジョー | ヴェニス・デイズ部門 | ノミネート | |
A Life in Flowers | アルマンド・カーウィン | イマーシブ部門(VR部門) | ノミネート | |
攻殻機動隊 Ghost Chaser | 東弘明 | ノミネート | ||
人間失格 太宰治と3人の女たち | 蜷川実花 | コンペティション外 | — | |
楽園 | 瀬々敬久 | — | ||
カツベン! | 周防正行 | — | ||
蜜蜂と遠雷 | 石川慶 | — | ||
Father | 伊東ケイスケ | — | ||
2020年 (第77回) |
スパイの妻〈劇場版〉 | 黒沢清 | コンペティション部門 | 銀獅子賞受賞(黒沢清) |
Beat | 伊東ケイスケ | イマーシブ部門(VR部門) | ノミネート | |
2021年 (第78回) |
犬王 | 湯浅政明 | オリゾンティ部門 | ノミネート |
かの山 | 山下つぼみ | ノミネート | ||
Clap | 伊東ケイスケ | イマーシブ部門(VR部門) | ノミネート | |
2022年 (第79回) |
LOVE LIFE | 深田晃司 | コンペティション部門 | ノミネート |
ある男 | 石川慶 | オリゾンティ部門 | ノミネート | |
石門 | 大塚竜治、ホアン・ジー | ヴェニス・デイズ部門 | ノミネート | |
Thank you for sharing your world | 作道雄、半崎信朗 | イマーシブ部門(VR部門) | ノミネート | |
Typeman | 伊東ケイスケ | ノミネート | ||
2023年 (第80回) |
悪は存在しない | 濱口竜介 | コンペティション部門 | 審査員大賞、国際映画批評家連盟賞受賞(濱口竜介) |
ほかげ | 塚本晋也 | オリゾンティ部門 | 最優秀アジア映画賞受賞(塚本晋也) | |
彼方のうた | 杉田協士 | ヴェニス・デイズ部門 | ノミネート | |
Sidonie in Japan | エリーズ・ジラール | ノミネート | ||
周波数 | 大宮エリー | イマーシブ部門(VR部門) | ノミネート | |
Sen | 伊東ケイスケ | ノミネート | ||
opus | 空音央 | コンペティション外 | — |
脚注
編集注釈
編集- ^ ベニス国際映画祭、ヴェニス国際映画祭、ベネチア国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭などと表記されることもある。
- ^ ただし中断期間があるため、中断なく一貫して行われている映画祭ではエディンバラ国際映画祭が世界最古である。
出典
編集- ^ “ヴェネチア国際映画祭受賞なるか 日本のVR演劇ノミネート「三度目の正直」”. 産経ニュース (2022年8月24日). 2022年8月24日閲覧。
- ^ “Factbox: Venice, the world's oldest film festival” (英語). Reuters. (2012年8月29日) 2023年9月9日閲覧。
- ^ “Biennale Cinema 2023 | Official awards of the 80th Venice Flm Festival” (英語). La Biennale di Venezia (2023年9月9日). 2023年9月10日閲覧。
- ^ a b c “COLLATERAL AWARDS OF THE 77TH VENICE FILM FESTIVAL” (英語). labiennale.org. 2020年9月13日閲覧。
- ^ “Seventy years of SIGNIS at the Venice Film Festival” (英語). SIGNIS. 2020年9月13日閲覧。
- ^ “濱口監督の「悪は存在しない」が国際批評家連盟賞、塚本監督「ほかげ」は最優秀アジア映画賞”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2023年9月9日) 2023年9月10日閲覧。
- ^ “ヴェネツィア金獅子賞は「哀れなるものたち」、濱口竜介の新作が審査員大賞を受賞”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2023年9月10日) 2023年9月10日閲覧。
- ^ “塚本晋也監督『ほかげ』ベネチア国際映画祭にて最優秀アジア映画賞受賞 審査員「このような映画は観たことがない」と絶賛”. ORICON NEWS (oricon ME). (2023年9月9日) 2023年9月9日閲覧。