阪神工業地帯

日本の工業地帯

阪神工業地帯(はんしんこうぎょうちたい)は、大阪市神戸市を中心に広がる工業地帯

範囲については文献や資料によって微妙に異なり、狭義では大阪府兵庫県南東部の阪神間を指す。広範に捉えた場合、堺市以南の大阪湾臨海部堺泉北臨海工業地帯、兵庫県南西部の播磨臨海工業地帯京都府南部・滋賀県南西部の京滋工業地域和歌山県北部の紀北工業地域を含むこともある[1]阪神間とは反対方向となり、内陸部となるものの、淀川流域の京阪間にも大阪市から京都市及び周辺地域まで多くの工場が立地するため、京阪神工業地帯という名称も用いられる。京浜工業地帯中京工業地帯と比較した場合、事業所数で見た規模は最も大きく、製造品出荷額で見た規模でも中京工業地帯に次いで第2位である。事業所数(従業員4人以上)は3万4424ヶ所、製造品出荷額は33兆6597億円である。(工業統計表、2016年)製造品出荷額の割合では、金属の割合が高い。

概要

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大阪湾岸にはエネルギー・鉄鋼業石油化学工業機械工業が、淀川沿いには電気機械工業食品工業が、ほか、泉南地域では繊維業が、阪神地域などでは醸造業が展開している。また内陸部では、医薬・化学・機械関連の研究所が多く展開する。主な都市と事業所は主な事業所、および、主な研究所を参照。

大阪などの商業資本と大消費市場、水運を中心とした交通、淀川による用水を背景として発達した。戦前は京浜工業地帯を上回る地位で、日本最大の工業地帯であったが、出荷額で太平洋戦争直前に京浜工業地帯に抜かれたが、近年は上回っている。現在では中京工業地帯に次いで第二位の出荷額である。工場の立地が19世紀末からあったため、老朽化が目立つこと、戦時体制下の産業統制、企業統合を余儀なくされたこと、さらには円高発展途上国との価格競争の影響を受けやすい繊維などの軽産業のウェイトが高かったことが主因として挙げられる。

戦後になり、尼崎の臨海部などに化学・金属工業が多数立地したが、東京一極集中の傾向もあいまって、昭和30年代後半に整備されだした千葉県臨海部などに主力工場を置く企業も多かった。なお、昭和30年代から40年代にかけて埋立造成された堺および泉北地域の臨海部は堺泉北臨海工業地帯と定義されることもある。結果、既に立地された阪神工業地帯の工場は、他地域に比べ老朽化、小規模が目立つようになっていた。近年は、化学・医薬・機械分野の新工場設立や増設、研究機能の集約が目立っている[注 1]

須磨舞子の景勝地を挟んで阪神工業地帯の西に位置する播磨地区は工業整備特別地域に指定されていた(播磨臨海工業地帯)。また、内陸部では大阪府・京都府に加えて奈良県にもまたがる関西文化学術研究都市に工業関連の研究都市がつくられ、近畿の工業の発展において重要な役割を果たすことが期待されている。

主な事業所

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大阪府

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兵庫県

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和歌山県

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主な研究所

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  • 医薬品
  • 機械
    • 三菱重工業総合研究所高砂地区 神戸地区(高砂市 神戸市)
    • ダイキンテクノロジー・イノベーションセンター(摂津市)
    • クボタグローバル技術研究所(堺市)
    • 日立造船技術研究所(大阪市)
  • 電気機器
  • 輸送用機器
    • 川崎重工業技術開発本部 (明石市)
    • シマノTechnology Innovation Center(堺市)
  • 精密機器
    • コニカミノルタ高槻サイト(高槻市)
  • 化学
    • コベストロジャパンイノベーション・センター(尼崎市)
    • 住友化学工業化技術研究所 生物環境科学研究所 バイオサイエンス研究所(大阪市)健康・農業関連事業研究所(宝塚市)
    • 堺化学中央研究所(堺市)
    • 日本触媒姫路地区研究所(姫路市)吹田地区研究所(吹田市)
    • 日本板硝子技術研究所(伊丹市)
    • 住友ベークライトバイオサイエンス研究所(神戸市)フィルムシート研究所(尼崎市)
    • P&Gジャパン神戸イノベーションセンター(神戸市)
    • カネカ大阪工場内研究所 (大阪市) 高砂工業所内研究所(高砂市)
    • ダイセルイノベーション・パーク(姫路市)
    • 花王和歌山研究所(和歌山市)
    • 三菱ケミカル大阪研究所(茨木市)
    • 積水化学工業高機能プラスチックカンパニー開発研究所(三島郡島本町)
    • UBE大阪研究開発センター(堺市)
    • エア・ウォーターグループテクノロジーセンター大阪(摂津市)
    • 日東電工茨木事業所 (茨木市)
  • 鉄鋼
    • 日本製鉄尼崎研究開発センター(尼崎市)
    • 神戸製鋼所神戸総合技術研究所(神戸市)技術開発センター(加古川市)
  • ゴム
    • 住友ゴム工業タイヤテクニカルセンター(神戸市)
    • TOYO TIRE タイヤ技術センター(伊丹市)基盤技術センター(川西市)
  • その他製造
  • 食品
    • ニップン西部技術センター(神戸市)
    • 不二製油不二サイエンスイノベーションセンター(泉佐野市)
    • UCC上島珈琲イノベーションセンター(神戸市)


<参考>

  • 大阪府
    • 製造品出荷額等:18兆6058億円、粗付加価値額:6兆4553億円、事業所数:18,584、従業員数:44万7022人
  • 兵庫県
    • 製造品出荷額等:16兆5023億円、粗付加価値額:5兆8057億円、事業所数:8,579、従業者数:35万8515人

(経済構造実態調査、2022年)

脚注

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注釈

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  1. ^ 2007年の例では、シャープの堺市への液晶パネル工場の進出、旭硝子の高砂工場の増設、パナソニック子会社によるプラズマディスプレイ工場増設、塩野義製薬の杭瀬事業所への医薬研究機能集中など。

出典

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関連項目

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