マルガレーテン (競走馬)
マルガレーテン(Margarethen)は、アメリカ合衆国の競走馬、繁殖牝馬。マルガレーゼン[1][2][3] と表記されることも多い。繁殖牝馬として一大牝系の祖となり、子孫に多くの活躍馬を輩出した。
マルガレーテン | |
---|---|
欧字表記 | Margarethen |
品種 | サラブレッド |
性別 | 牝 |
毛色 | 黒鹿毛 |
生誕 | 1962年4月3日 |
父 | Tulyar |
母 | Russ-Marie |
母の父 | Nasrullah |
生国 | アメリカ合衆国 |
馬主 | Ernest H. Woods |
調教師 | Charles P. Sanborn |
競走成績 | |
生涯成績 | 64戦16勝 |
経歴
編集競走馬時代
編集競走馬としてはアメリカで64戦を走り抜き、計16勝を挙げた。主な勝ち鞍に1966年のモデスティハンデキャップがある。
繁殖牝馬時代
編集繁殖入り後は全部で8頭(うち7頭が牝馬)の産駒を送り出した。競走馬として最も活躍したのは1974産の5番仔トリリオン(Trillion)で、1978年のガネー賞に優勝したほか、凱旋門賞、仏オークス、イスパーン賞、サンクルー大賞などG1競走での2着が計10回ある。アメリカでG1競走を4戦連続2着した1979年にはエクリプス賞最優秀芝牝馬に選出された。トリリオンを含めて牝馬の産駒がそれぞれ母として活躍し、マルガレーテン系を構築している。
1973年産のプリ(Prix)の子孫からは香港でG1競走を4勝し安田記念にも勝利したブリッシュラックが出ている。
前述のトリリオンは母としても成功を収め、史上初のガネー賞母仔制覇を達成しG1競走9勝を挙げた「鉄の女」トリプティク(Triptych)を産んだ。その後も牝系は広がり、地方所属馬として交流G1競走を6勝したフリオーソ、36年振りに凱旋門賞連覇を達成した「凱旋門賞の申し子」[4]トレヴ(Treve)などの活躍馬が出ている。
1976年産のヘイルマギー(Hail Maggie)は母として米G1馬を産み、子孫にも仏2000ギニー馬ランドシーア(Landseer)や宝塚記念優勝馬ミッキーロケットなどがいる。
最後の産駒となった1981年産のドフザダービー(Doff the Derby)は母として英ダービー・愛ダービーを制しキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスでも7馬身差の圧勝を飾ったジェネラス、日本で重賞2勝を挙げたオースミタイクーン、愛1000ギニー・英オークス優勝馬イマジン(Imagine)などを輩出する目覚ましい繁殖成績を挙げた。その後の子孫からも欧州でマイル以下のG1を6勝した名牝ムーンライトクラウド(Moonlight Cloud)、皐月賞馬ディーマジェスティ、スプリンターズステークス優勝馬タワーオブロンドンなど多くの大レース勝ち馬が出ている。
産駒一覧
編集生年 | 馬名 | 性 | 毛色 | 父 | 戦績・繁殖成績 |
---|---|---|---|---|---|
1970 | Way Home | 牝 | 鹿毛 | Noholme | 未出走 |
1971 | Dunkirk | 牡 | 鹿毛 | Prince John | 10戦1勝 リステッド競走2着2回 |
1972 | Margravine | 牝 | 黒鹿毛 | Hail to Reason | 23戦5勝 クリテリウムデプーリッシュ2着 繁殖牝馬 |
1973 | Prix | 牝 | 鹿毛 | Vaguely Noble | 14戦3勝 繁殖牝馬 子孫にブリッシュラックなど |
1974 | Trillion | 牝 | 鹿毛 | Hail to Reason | 32戦9勝 ガネー賞など重賞7勝 仏オークス・ロワイヤルオーク賞・イスパーン賞・サンクルー大賞・凱旋門賞・ガネー賞・カナディアン国際・ターフクラシックS・オークツリー招待S・ワシントンDC国際-2着 1979年エクリプス賞最優秀芝牝馬 繁殖牝馬。仔にトリプティク 子孫にフリオーソ、トレヴなど |
1976 | Hail Maggie | 牝 | 鹿毛 | Hail to Reason | 1戦0勝 繁殖牝馬。仔にカリフォルニアンS優勝・BCマイル2着馬Sabona 子孫にLandseer、ミッキーロケットなど |
1977 | Noble Chick | 牝 | 黒鹿毛 | Vaguely Noble | 18戦4勝 繁殖牝馬 |
1981 | Doff the Derby | 牝 | 鹿毛 | Master Derby | 未出走 繁殖牝馬。仔にWedding Bouquet(G3競走2勝、ナショナルS2着)、ジェネラス、オースミタイクーン、Imagine 子孫にムーンライトクラウド、ディーマジェスティ、タワーオブロンドンなど |
マルガレーテン系
編集G1競走優勝馬(太字)、重賞競走に優勝した日本馬を記載。*は日本に輸入された馬。
- Margarethen 1962
- Margravine 1972
- Prix 1973
- Vintage 1979
- Wild Veritas 1990
- Bullish Luck 1999(香港ゴールドC・香港スチュワーズC・チャンピオンズマイル連覇・安田記念)
- Juvenia 1996(マルセルブサック賞)[7]
- Wild Veritas 1990
- Vintage 1979
- Trillion 1974(ガネー賞)
- Hail Maggie 1976
- Noble Chick 1977
- Noble Vice 1992
- Red Light 2004
- Scarletini 2009
- Angel of Truth 2015(オーストラリアンダービー)[15]
- Scarletini 2009
- Red Light 2004
- Noble Vice 1992
- Doff the Derby 1981
- Wedding Bouquet 1987
- Ventura 1998
- Moonlight Cloud 2008(モーリスドゲスト賞3連覇・ムーランドロンシャン賞・ジャックルマロワ賞・フォレ賞)
- Ventura 1998
- *ジェネラス 1988(デューハーストS・英ダービー・愛ダービー・キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドS)
- *オースミタイクーン 1991(マイラーズC・セントウルS)
- *マチカネベニザクラ 1992
- *シンコウエルメス 1993[注 1]
- Imagine 1998(愛1000ギニー・英オークス)
- Horatio Nelson 2003(ジャンリュックラガルデール賞)[20]
- *ヴァンゴッホ 2018(クリテリウムアンテルナシオナル)
- Wedding Bouquet 1987
その他の近親
編集本馬の半妹Lady MargueryとTim Marie(共に父はティムタム)も、姉ほどではないものの独自に牝系を広げている。
- Russe-Marie 1956
- Margarethen 1962 →マルガレーテン系
- Lady Marguery 1966
- Tim Marie 1968
- Life's Hope 1973(ジャージーダービー・エイモリーLハスケルH)[25]
- Little Happiness 1974
- A Little Love 1980
- Out of Africa 1985
- Jewel of Africa 1989
- Picholine 1997
- Rebel Raider 2005(ヴィクトリアダービー・サウスオーストラリアンダービー)[26]
- Picholine 1997
- Jewel of Africa 1989
- A Little Kiss 1986(フライトS・クイーンズランドオークス)[27]
- Something Wicked 1987
- Pretty Wicked 1995
- Post Romance 2003
- Rising Romance 2010(オーストラリアンオークス)[29]
- Yearning 2018(豪1000ギニー)
- Rising Romance 2010(オーストラリアンオークス)[29]
- Post Romance 2003
- Pretty Wicked 1995
- Cladagh 1990
- Out of Africa 1985
- More Happiness 1987
- What Fun 1995
- Eye for Fun 2007
- Mossfun 2011(ゴールデンスリッパーS)[30]
- Eye for Fun 2007
- What Fun 1995
- A Little Love 1980
- Heart a Dancer 1978
- Nothing To Do 1986
- Lifetime Story 1994
- Shamekha 2000(クールモアクラシック・TJスミスS・オールエイジドS)[31]
- Lifetime Story 1994
- Nothing To Do 1986
- Ventured 1982
牝系図の出典:Galopp Sieger、牝系検索α
血統表
編集マルガレーテンの血統 | (血統表の出典)[§ 1] | |||
父系 | ボワルセル系 |
[§ 2] | ||
父 Tulyar 1949 黒鹿毛 |
父の父 Tehran1941 鹿毛 |
Bois Roussel | Vatout | |
Plucky Liege | ||||
Stafaralla | Solario | |||
Mirawala | ||||
父の母 Neocracy1944 黒鹿毛 |
Nearco | Pharos | ||
Nogara | ||||
Harina | Blandford | |||
Athasi | ||||
母 Russe-Marie 1956 鹿毛 |
Nasrullah 1940 鹿毛 |
Nearco | Pharos | |
Nogara | ||||
Mumtaz Begum | Blenheim | |||
Mumtaz Mahal | ||||
母の母 Marguery1938 鹿毛 |
Sir Gallahad | Teddy | ||
Plucky Liege | ||||
Marguerite | Celt | |||
Fairy Ray | ||||
母系(F-No.) | 4号族(FN:4-n) | [§ 3] | ||
5代内の近親交配 | Nearco 3×3=25.00%、Plucky Liege 4×4=12.50%、Phalaris 5・5×5=9.38%、Blandford 4×5=9.38% | [§ 4] | ||
出典 |
- 牝系を遡ると7代母セントマーガレット(St.Marguerite、セントマルゲリートとも)に辿り着く。同馬は牝馬ショットオーヴァーがイギリス牡馬クラシック二冠を制するなど活躍し当年のクラシック5競走を全て牝馬が制した世代の出身で、自身も1000ギニーでショットオーヴァーを2着に破り優勝した活躍馬だった。繁殖牝馬としても大きく牝系を伸ばし、子孫に英三冠馬ロックサンドや本馬との間にMargravine・Trillion・Hail Maggieを産んだ名種牡馬ヘイルトゥリーズンが出ているほか、本馬の6代母St.Marinaの牝系にも米三冠馬ギャラントフォックスなどがいる。
注釈
編集出典
編集- ^ “【NHKマイルC】藤沢タワー!3頭出し名伯楽インタビュー”. サンスポZBAT!競馬 (2018年5月1日). 2019年12月24日閲覧。
- ^ 平出(2014)p.168
- ^ 平出(2019)p.74
- ^ “伝説の名馬”. JRA-VAN Ver.World. 2019年9月29日閲覧。 File.21参照
- ^ “血統情報:牝系情報|Margarethen(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年9月29日閲覧。
- ^ “Margarethen Offspring”. www.pedigreequery.com. 2020年3月22日閲覧。
- ^ “Juvenia(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “トリリオンカット(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Treble(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Tawqeet(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Amorama(FR)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Odeliz(IRE)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Sabona(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “カーネギーダイアン|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Angel Of Truth(AUS)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “マチカネオーラ|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “生まれてこなかったはずの馬が、1人の男の熱意で生を受け、ビッグレースを制するまでの感動秘話(平松さとし) - Yahoo!ニュース”. Yahoo!ニュース 個人. 2019年9月30日閲覧。
- ^ “【スプリンターズS】23年前、安楽死寸前だった祖母を藤沢和厩舎で懸命の介護”. 2019年9月30日閲覧。
- ^ “Sobetsu(GB)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Horatio Nelson(IRE)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Daredevil(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Here Comes Ben(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “血統表 Dayoutoftheoffice”. p.bogus.jp. 2021年1月9日閲覧。
- ^ “King Charlemagne(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Life's Hope(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Rebel Raider | Race Record & Form | Racing Post”. www.racingpost.com. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “A Little Kiss(NZ)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “ゲイリーファンキー(USA)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Rising Romance | Race Record & Form | Racing Post”. www.racingpost.com. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Mossfun | Race Record & Form | Racing Post”. www.racingpost.com. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Shamekha(AUS)|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2019年10月1日閲覧。
- ^ “Rosalind | Race Record & Form | Racing Post”. www.racingpost.com. 2019年10月1日閲覧。
- ^ a b c “血統情報:5代血統表|Margarethen|JBISサーチ(JBIS-Search)”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2019年9月29日閲覧。
- ^ “Margarethenの血統表”. netkeiba.com. 2019年9月29日閲覧。
参考文献
編集- 平出貴昭『覚えておきたい日本の牝系100』(スタンダードマガジン、2014年) ISBN 978-4-908960-00-0 (pp.168-169)
- 平出貴昭『覚えておきたい世界の牝系100』(オーイズミ・アミュージオ、2019年) ISBN 978-4-07-341149-9 (pp.74-75)