ゴールドグラブ賞
ローリングス・ゴールドグラブ賞(ローリングス・ゴールドグラブしょう、英語: Rawlings Gold Glove Award)は、MLBの選手表彰のひとつ。
1957年、グラブメーカーのローリングス社が表彰を始める。バットメーカーのヒラリッチ&ブラズビー社が表彰を行っていたシルバースラッガー賞はゴールドグラブ賞に対する賞として創設された。
ナショナルリーグ・アメリカンリーグの各リーグから、守備に卓越した選手が各ポジション1人ずつ計9人各チームの監督・コーチの投票によって選出される。初年度の1957年のみ各ポジション両リーグから1人ずつの選出、1958年以後は両リーグ各1人(外野は3人)の選出となった。最多受賞はグレッグ・マダックス(投手)の18回。
2020年シーズンはCOVID-19の影響を受けて年間60試合制となり、レギュラーシーズンは同地区内での対戦のみとなった為、監督・コーチは限られた選手のプレーしか目にする機会がないため監督・コーチによる投票は中止し、アメリカ野球学会が算出する「SABR Defensive Index」(略称SDI)という守備指数に基づいて受賞者が決定された[1]。
なお、日本野球機構の表彰制度の一つである「三井ゴールデン・グラブ賞」は、本賞がモデルとされており、当時三井物産スポーツ用品販売が日本でのライセンス契約を結んでいたローリングス自らが「日本でもこのような賞を贈呈してはどうか」という提案をしたことをきっかけに設立された(当初は「ダイヤモンドグラブ賞」といい、1986年に三井グループ広報委員会加盟各社がこの賞の協賛を引き継ぎ、現在の「三井ゴールデン・グラブ賞」と改めている)。
選出に関する問題点・批判
編集- 外野手は、1957年から1960年までを除いて長年一括りに3人が選ばれているが、左翼手・中堅手・右翼手を厳密に区別して選出すべきとの意見が長年主張されていたため、2011年受賞者選考から各ポジション別選考を採用。また、上位3人の最終候補者を事前に選定した上で、その中から受賞者を決定する方式で選考が行われた。
- 監督・コーチによる投票という選出方法も、メジャーリーグのレギュラーシーズンは各チームごとに均等な対戦カード数ではないため、同一リーグでも1シーズンに数試合程度しか対戦しなかったチームの監督やコーチでは、相手チームの選手の守備力を的確に評価できるわけがないという批判もある[2]。
- 近年考案された守備防御点・プラスマイナスシステム・UZRなど、セイバーメトリクスの点から守備力がより明確に評価できる数値が考案されており、定着しつつある。しかし、2010年、それらの数字できわめて低い数値を残したデレク・ジーターが5度目の選出をされ、彼の存在自体に投票しているのではないかと物議を醸している。一方で、試合を左右するファインプレーやグラブトスなどの技術面を数値化することは難しく、現場で見ている監督やコーチでしか評価できない面もあり、完全数値化が平等で絶対的評価だとも言い難い[3]。また、監督やコーチにはセイバーメトリクスの知識に乏しい人が多いとも言われており、印象に左右されがちで客観的な評価がなされていないという批判がある[2]。2012年のア・リーグ中堅手部門では、全中堅手で最低のDRSを記録したアダム・ジョーンズが、DRS1位のマイク・トラウトらを押しのけて受賞し、物議を醸した[4]。
- 印象に左右されやすいこともあり、最終的に、本来賞に関係ない指標である打力が判断材料となってしまうケースも多々ある。1988年から5年連続受賞したアンディ・バンスライク(当時パイレーツ)は、受賞以前に「自分が受賞するためには3割30本ぐらい打たないと無理だ」と語っていた。当時はアンドレ・ドーソン、デール・マーフィー、エリック・デービスと言った強打者や、後に殿堂入りした好打者トニー・グウィンといった選手が常連であった。シカゴ・ホワイトソックスのオジー・ギーエン元監督は、「ゴールドグラブ賞は打撃成績で決まっている」と、選考基準に疑問を呈していた[5]。
- また、ラファエル・パルメイロは、アメリカン・リーグ一塁手部門で、1997年から3年連続で受賞しているが、1999年は一塁手としては、28試合しか出場しておらず、この選出は、前年までの受賞実績が反映されたものと思われ、現在も疑問視されている[2]。
- 一度ゴールドグラブ賞の常連となった選手は、年齢や故障によって守備力が衰えた後も、イメージや実績だけで受賞してしまいがちだという指摘もある[2][6]。2001年から9年連続受賞を果たしたトリー・ハンターは、2006年からUZRが毎年マイナスを記録するなど守備力の衰えが顕著だったが、中堅手から右翼手にコンバートされる前年の2009年までゴールドグラブ賞を受賞し続けた[7]。
- 一方で上記問題点を受けて、2006年に制定されたフィールディング・バイブル・アワードとは別に、2012年にMLB機構でもセイバーメトリクスを基にした客観的でより純粋な守備貢献度の高い選手を選出する優秀守備選手賞が制定されたが、2017年の左翼手部門でマーセル・オズナ(DRS+11)よりも劣るアレックス・ゴードン(DRS+9)が選出された(両選手とも同年のゴールドグラブ賞受賞者でもある)。同年、同じセイバーメトリクスを基にしたフィールディング・バイブル・アワードでは、左翼手部門でブレット・ガードナー(DRS+17)が選出されており、上記で述べられている問題点がセイバーメトリクスを基にしても解決されておらず、結局適切な評価がされているかは疑問視されている[8][9][10]。
歴代受賞者
編集* | ポジション別最多受賞者 | 野球殿堂入り選手 |
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- 初年度のみ両リーグより1名ずつの選出
- 1961年から2010年まで外野手は左翼手・中堅手・右翼手の区別なく各年3人ずつ選出
アメリカンリーグ
編集1957年から2021年まで
編集2022年から
編集年 度 |
一 塁 手 |
二 塁 手 |
三 塁 手 |
遊 撃 手 |
外野手 (左翼手) |
外野手 (中堅手) |
外野手 (右翼手) |
捕 手 |
投 手 |
ユーティリティー プレイヤー |
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2022 | ブラディミール・ゲレーロ・ジュニア | アンドレス・ヒメネス | ラモン・ウリアス | ジェレミー・ペーニャ | スティーブン・クワン | マイルズ・ストロー | カイル・タッカー | ホセ・トレビーノ | シェーン・ビーバー | DJ・ルメイユ |
2023 | ナサニエル・ロウ | アンドレス・ヒメネス | マット・チャップマン | アンソニー・ボルピー | スティーブン・クワン | ケビン・キアマイアー | アドリス・ガルシア | ジョナ・ハイム | ホセ・ベリオス | マウリシオ・デュボーン |
2024 | カルロス・サンタナ | アンドレス・ヒメネス | アレックス・ブレグマン | ボビー・ウィット・ジュニア | スティーブン・クワン | ドールトン・バーショ | ウィルヤー・アブレイユ | カル・ローリー | セス・ルーゴ | ディラン・ムーア |
ナショナルリーグ
編集1957年から2021年まで
編集2022年から
編集年 度 |
一 塁 手 |
二 塁 手 |
三 塁 手 |
遊 撃 手 |
外野手 (左翼手) |
外野手 (中堅手) |
外野手 (右翼手) |
捕 手 |
投 手 |
ユーティリティー プレイヤー |
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2022 | クリスチャン・ウォーカー | ブレンダン・ロジャース | ノーラン・アレナド | ダンズビー・スワンソン | イアン・ハップ | トレント・グリシャム | ムーキー・ベッツ | J.T.リアルミュート | マックス・フリード | ブレンダン・ドノバン |
2023 | クリスチャン・ウォーカー | ニコ・ホーナー | ケブライアン・ヘイズ | ダンズビー・スワンソン | イアン・ハップ | ブレントン・ドイル | フェルナンド・タティス・ジュニア | ガブリエル・モレノ | ザック・ウィーラー | 金河成 |
2024 | クリスチャン・ウォーカー | ブライス・トゥラング | マット・チャップマン | エセキエル・トーバー | イアン・ハップ | ブレントン・ドイル | サル・フレリック | パトリック・ベイリー | クリス・セール | ジャレッド・トリオロ |
ポジション別最多受賞者
編集ポジション | アメリカンリーグ | ナショナルリーグ | ||
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受賞者 | 回数 | 受賞者 | 回数 | |
一塁手 | ドン・マッティングリー | 9 | キース・ヘルナンデス | 11 |
二塁手 | ロベルト・アロマー | 10 | ライン・サンドバーグ | 9 |
三塁手 | ブルックス・ロビンソン | 16 | マイク・シュミット ノーラン・アレナド |
10 |
遊撃手 | ルイス・アパリシオ オマー・ビスケル |
9 | オジー・スミス | 13 |
外野手 | アル・ケーライン ケン・グリフィーJr. イチロー |
10 | ウィリー・メイズ ロベルト・クレメンテ |
12 |
捕手 | イバン・ロドリゲス | 13 | ジョニー・ベンチ | 10 |
投手 | ジム・カート | 14 | グレッグ・マダックス | 18 |
- ジム・カートとオマー・ビスケルはナショナルリーグでも2回受賞
連続受賞記録
編集ポジション | アメリカンリーグ | ナショナルリーグ | ||
---|---|---|---|---|
受賞者 | 回数 | 受賞者 | 回数 | |
一塁手 | ビック・パワー | 7 | キース・ヘルナンデス | 11 |
二塁手 | フランク・ホワイト ロベルト・アロマー |
6 | ライン・サンドバーグ | 9 |
三塁手 | ブルックス・ロビンソン | 16 | ノーラン・アレナド | 10 |
遊撃手 | オマー・ビスケル | 9 | オジー・スミス | 13 |
外野手 | ケン・グリフィーJr. イチロー |
10 | ウィリー・メイズ ロベルト・クレメンテ |
12 |
捕手 | イバン・ロドリゲス | 10 | ジョニー・ベンチ | 10 |
投手 | ジム・カート | 14 | グレッグ・マダックス | 13 |
- メジャーデビューからの連続記録はイチロー、ノーラン・アレナドの10年連続
プラチナ・ゴールド・グラブ
編集2011年よりプラチナ・ゴールド・グラブ賞(the Rawlings platinum Gold Glove Award)が創設された。選出はRawlings社のウェブサイト上からのファン投票によって行われる。その年のゴールド・グラブ受賞者の中から各リーグそれぞれ一人ずつ、最も守備に優れていると思われる選手に投票される[11]。最多受賞は、ノーラン・アレナドの6回。
年 度 |
アメリカンリーグ | ナショナルリーグ | ||||||
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受 賞 者 |
ポ ジ シ ョ ン |
チ | ム |
回 数 |
受 賞 者 |
ポ ジ シ ョ ン |
チ | ム |
回 数 | |
2011 | エイドリアン・ベルトレ | 三塁手 | テキサス・レンジャーズ | 1 | ヤディアー・モリーナ | 捕手 | セントルイス・カージナルス | 1 |
2012 | エイドリアン・ベルトレ | 三塁手 | テキサス・レンジャーズ | 2 | ヤディアー・モリーナ | 捕手 | セントルイス・カージナルス | 2 |
2013 | マニー・マチャド | 三塁手 | ボルチモア・オリオールズ | 1 | アンドレルトン・シモンズ | 遊撃手 | アトランタ・ブレーブス | 1 |
2014 | アレックス・ゴードン | 左翼手 | カンザスシティ・ロイヤルズ | 1 | ヤディアー・モリーナ | 捕手 | セントルイス・カージナルス | 3 |
2015 | ケビン・キアマイアー | 中堅手 | タンパベイ・レイズ | 1 | ヤディアー・モリーナ | 捕手 | セントルイス・カージナルス | 4 |
2016 | フランシスコ・リンドーア | 遊撃手 | クリーブランド・インディアンス | 1 | アンソニー・リゾ | 一塁手 | シカゴ・カブス | 1 |
2017 | バイロン・バクストン | 中堅手 | ミネソタ・ツインズ | 1 | ノーラン・アレナド | 三塁手 | コロラド・ロッキーズ | 1 |
2018 | マット・チャップマン | 三塁手 | オークランド・アスレチックス | 1 | ノーラン・アレナド | 三塁手 | コロラド・ロッキーズ | 2 |
2019 | マット・チャップマン | 三塁手 | オークランド・アスレチックス | 2 | ノーラン・アレナド | 三塁手 | コロラド・ロッキーズ | 3 |
2020 | アレックス・ゴードン | 左翼手 | カンザスシティ・ロイヤルズ | 2 | ノーラン・アレナド | 三塁手 | コロラド・ロッキーズ | 4 |
2021 | カルロス・コレア | 遊撃手 | ヒューストン・アストロズ | 1 | ノーラン・アレナド | 三塁手 | セントルイス・カージナルス | 5 |
2022 | ホセ・トレビーノ | 捕手 | ニューヨーク・ヤンキース | 1 | ノーラン・アレナド | 三塁手 | セントルイス・カージナルス | 6 |
2023 | アンドレス・ヒメネス | 二塁手 | クリーブランド・ガーディアンズ | 1 | フェルナンド・タティス・ジュニア | 右翼手 | サンディエゴ・パドレス | 1 |
オールタイム・ゴールドグラブチーム
編集2007年2月20日、メジャーリーグの守備において歴代最高の選手を投票が行われた。 選考はあらかじめ絞られた50選手の中からファン投票で決定され、2007年のオールスターゲームで発表された。
ポジション | 受賞者 | 受賞回数 |
---|---|---|
一塁手 | ウェス・パーカー | 6 |
二塁手 | ジョー・モーガン | 5 |
三塁手 | ブルックス・ロビンソン* | 16 |
遊撃手 | オジー・スミス* | 13 |
外野手 | ウィリー・メイズ* | 12 |
ロベルト・クレメンテ* | 12 | |
ケン・グリフィーJr. | 10 | |
捕手 | ジョニー・ベンチ | 10 |
投手 | グレッグ・マダックス* | 18 |
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ “Gグラブ賞決定に使用された守備指数 前田は2位、秋山は3位”. Yahoo!JAPAN(MLB.jpの記事). 2020年12月19日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b c d Geoff Baker(2008-11-06),Rust Gloves[リンク切れ],Seattle Times(英語),2010年11月19日閲覧
- ^ “Gold Glove results mixed, as usual” (英語). ESPN.com (2010年11月9日). 2024年10月22日閲覧。
- ^ Gold Glove Listing Improves but Still Has a Major Absence - NYTimes.com
- ^ Mark Gonzales(2010-07-29),Ramirez getting praise for his glove[リンク切れ], Chicago Tribune(英語),2010年11月19日閲覧
- ^ Carl Bialik (2009-12-12), The Count: The Ultimate Gold Glove Snub, Wall Street Journal(英語), 2010年11月19日閲覧
- ^ Dave Cameron (2010-08-03), Torii Hunter, Right Fielder, FanGraphs Baseball(英語), 2010年11月20日閲覧
- ^ “Wilson Defensive Players of the Year” (英語). Baseball Reference.com. 2017年11月19日閲覧。
- ^ “The 2017 Awards” (英語). fieldingbible.com. 2017年11月19日閲覧。
- ^ “2017 MLB Defensive Players of the Year announced” (英語). SBNation.com (2017年11月10日). 2017年11月19日閲覧。
- ^ “2012 Rawlings Platinum Glove Award” (英語). Rawlings.com (2012年11月12日). 2013年11月11日閲覧。[リンク切れ]