APG体系
APG体系(エーピージーたいけい)は、1998年に公表された被子植物の新しい分類体系である。
APGすなわち被子植物系統グループ (Angiosperm Phylogeny Group) とは、この分類を実行する植物学者の団体である。この分類は特に命名されておらず、「APG体系」や「APG分類体系」などと呼ばれる。
旧い分類法の新エングラー体系やクロンキスト体系がマクロ形態的な仮説を根拠に帰納的に分類体系を作り上げたのに対して、ミクロなゲノム解析から実証的に分類体系を構築するものであり、根本的に異なる分類手法である。
歴史
編集1990年代以降にDNA解析による分子系統学が大きく発展してきた。植物の分類体系も、この手法を試みる研究が分類学において主流になりつつある。
特に葉緑体DNAの解析から、被子植物の分岐を調査する研究は近年飛躍的に進み、新しい知見はAngiosperm Phylogeny Group (APG) に集約されている。学術先端分野はすでにAPGの体系に移行し、クロンキスト体系は歴史的体系として扱われている[1]。
大分類
編集版に拠らないおおよその分類を示す。名称変更がある系統は最新の APG IV による。
被子植物 |
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更新
編集APG I
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APG分類体系の初版(書誌)は1998年に公表された。固有の名称はなく当初は APG system などと呼ばれ、現在では区別のために APG I と呼ばれる。
APG II
編集第2版(APG II 2003 または APG II と表記する。書誌)は2003年に公表された。主要な変更点は以下の2点である:
- 初版で分類未確定とされていた多くのタクソンを分類した。
- 一部の分類群については、大きな科にまとめても、あるいはより細かい科に分類してもよいとした。
APG III
編集2009年、第3版(APG III。書誌)が公表された。主な変更点は次の通り。
- 単子葉類の位置を修正した。モクレン類に近縁ではなく真正双子葉類の側に近縁。
- ナデシコ目などのコア真正双子葉類基部の多分岐を大きく修正した。ナデシコ目はキク類の姉妹群になっている。
- 第2版では、一部の科で広義狭義どちらでも良いとしていたが、この範囲を確定させた。
- アンボレラ目、スイレン目、センリョウ目、サクライソウ目、マツモ目、ツゲ目、ヤマグルマ目、ハマビシ目、フエルテア目、ピクラムニア目、ブドウ目、ベルベリドプシス目、エスカロニア目、パラクリフィア目、ブルニア目を新設した。
APG IV
編集2016年、第4版(APG IV)が公表された。体系の大まかな概略はAPG IIIを踏襲されているが、いくつかの点で変更されている。主な変更点は次の通り。
- ムラサキ目、ビワモドキ目、クロタキカズラ目、メッテニウサ目、ヴァーリア目を新設した。
- ケワ科、マカルトゥリア科、マウンディア科、サギゴケ科、ミクロテア科、ヌマミズキ科、ペラ科、ペテナエア科、ペティウェリア科を新設した。
- ウマノスズクサ科に旧カンアオイ科・旧ヒドノラ科・旧ラクトリス科を包括させ、サンアソウ科に旧アナルスリア科・旧カツマダソウ科を包括させ、ツゲ科に旧ハプタントゥス科を包括させた。
- 学名に関しては、旧ススキノキ科の代わりに「ツルボラン科」、旧メリアントゥス科・旧 ウィウィアニアス科の代わりに「フランコア科」を使用することになった。
この結果、目の総計は64に、科の総計は416にそれぞれ変更となった。二つの主な(非公式の)クレードとして、バラ上群(superrosids) と キク上群(superasterids)が追加され、それぞれ バラ類(rosids) と キク類(asterids)の上位クレードを構成することになった。
APG V
編集APG分類体系の論文
編集- APG I - The Angiosperm Phylogeny Group (1998). “An Ordinal Classification for the Families of Flowering Plants”. Annals of the Missouri Botanical Garden 85 (4): 531-553 .(有料)
- APG II - Angiosperm Phylogeny Group (2003). “An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG II” (PDF). Botanical Journal of the Linnean Society 141: 399–436 .(オープンアクセス)
- APG III - The Angiosperm Phylogeny Group (2009). “An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG III” (pdf). Botanical Journal of the Linnean Society 161 (2): 105–121. doi:10.1111/j.1095-8339.2009.00996.x .(オープンアクセス)
- APG IV - Angiosperm Phylogeny Group (2016). “An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV” (PDF). Botanical Journal of the Linnean Society 181 (1): 1–20. doi:10.1111/boj.12385 .
出典
編集- ^ 「植物の進化を扱う学問分野においては、EnglerやCronquistの体系はもはや時代遅れのものでしかない」米倉浩司『高等植物分類表』北隆館、2009年、17頁。ISBN 978-4-8326-0838-2。