歴史科学協議会
一般財団法人歴史科学協議会(れきしかがくきょうぎかい、英語:Association of Historical Science)は、日本の歴史学の学会(学術団体)。分野を問わず、全国の歴史学者1200人が所属している。学術誌『歴史評論』を毎月発行。略称は歴科協(れっかきょう)。
概要
編集1946年に設立された民主主義科学者協会を前身とし[1]、1967年4月16日に歴史科学協議会として設立された[1]。2008年に一般財団法人格を取得し、一般財団法人歴史科学協議会となった[1]。最新の研究成果に基づいた学会活動を行うほか、「歴史を学ぶ全ての方に開かれた学会」として市民向けの講座やシンポジウムを行っている。毎月発行している学術誌『歴史評論』は2015年7月号時点で783号を数える。家永教科書裁判を始めとする歴史教科書問題や歴史認識問題に際しては、家永の立場を支持した。研究職でなくても会員になることができ、大学院生や高校社会科教員なども含めた1200人が会員となっている[2]。評論家の池田信夫は、マルクス主義史観を持つ左派歴史学者団体であると主張している[3]。
他学会との関係
編集歴史科学協議会には、全国各地にある学会(研究会)が加盟している。北海道歴史研究者協議会、宮城歴史科学研究会、福島歴史科学研究会、東京歴史科学研究会(450人)、名古屋歴史科学研究会、北陸歴史科学研究会、京都民科歴史部会、奈良歴史研究会、大阪歴史科学協議会(310人)、九州歴史科学研究会、熊本歴史科学研究会の11の学会(研究会)は、歴史科学協議会に加盟し、個別に、時に共同して活動している。各加盟団体でも個別に学術誌を発行している。以前は、静岡歴史科学研究会も加盟していたが、現在は『歴史評論』に掲載されていない[4]。
歴史科学協議会は、全国2000人の社会科教員によって構成される歴史教育者協議会[5]と共同行動をとることが多く、歴史教育を重視している。歴史科学協議会は、歴史教育者協議会と共に、日本学術会議により日本学術会議協力学術研究団体に指定されている[6][7]。
2015年5月25日には、日本の16の歴史学会と教育者団体[8]が「「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」[9]を発表した。この声明には、前述の歴史科学協議会・歴史教育者協議会・東京歴史科学研究会に加えて、日本史研究会(2655人)、歴史学研究会(2200人)、日本歴史学協会(1260人)、大阪歴史学会(950人)などの日本の学会が共同している。
2016年5月30日に、慰安婦問題日韓合意により日韓政府で慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に」解決されたことについて、前述の各学会と共同で『政府間で一方的に「解決」を宣言し、以降の議論を封殺するかのごとき手法では、「慰安婦」問題の抜本的な解決はありえない。』と反対する声明文を発表した[10]。
2021年3月、日本軍慰安婦の契約構造をミクロ経済学の視点から分析した、ハーバード大学のJ・マーク・ラムザイヤー教授の論文に関し、否定論に歴史的正義にもとづき対抗するとして、論文の撤回を求め、市民団体などと「新たな装いで現れた日本軍『慰安婦』否定論を批判する日本の研究者・アクティビストの緊急声明」を出した[11][12]。(事件の詳細は、「J・マーク・ラムザイヤー#J・マーク・ラムザイヤーに対するキャンセル運動(2021年)」参照。)
出版物
編集学術誌
編集- 『歴史評論』(毎月10日発行)
書籍
編集- 『歴史の名著(日本人篇)』(監修=山口啓二・黒田俊雄、校倉書房、1970年)
- 『歴史の名著(外国人篇)』(監修=山口啓二・黒田俊雄、校倉書房、1971年)
- 歴史科学大系(全34巻、監修=石母田正・江口朴郎・遠山茂樹・野原四郎・林基、校倉書房)
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- 『歴史科学への道――歴史科学入門講座』(上下巻、校倉書房、1976年)
- 『現代歴史学の青春』(全2巻、三省堂、1980年)
- 『歴史科学入門――歴史を学ぶ人々のために』(上下巻、三省堂、1986年)
- 『現代を生きる歴史科学』(全3巻、大月書店、1987年)
- 第1巻『現実からの提起』
- 第2巻『過去への照射』
- 第3巻『方法と視座の探求』
- 『女性史研究入門』(三省堂、1991年)
- 『歴史における家族と共同体』(青木書店、1992年)
- 『新しい中世史像の展開』(山川出版社、1994年)
- 『卒業論文を書く――テーマ設定と史料の扱い方』(山川出版社、1997年)
- 『日本現代史――体制変革のダイナミズム』(青木書店、2000年)
- 『歴史が動く時――人間とその時代』(青木書店、2001年)
- 『歴史をよむ』(東京大学出版会、2004年)
- 『天皇・天皇制をよむ』(東京大学出版会、2008年)
- 『戦後歴史学用語辞典』(監修=木村茂光、東京堂出版、2012年)
- 『歴史の「常識」をよむ』(東京大学出版会、2015年)
- 『隣国の肖像――日朝相互認識の歴史』(共編=杉並歴史を語りあう会、大月書店、2016年)
脚注
編集- ^ a b c “一般財団法人 歴史科学協議会|学会名鑑”. gakkai.jst.go.jp. 日本学術会議,日本学術協力財団,科学技術振興機構. 2022年2月14日閲覧。
- ^ 一般財団法人歴史科学協議会 公式サイト
- ^ 池田信夫『戦後リベラルの終焉: なぜ左翼は社会を変えられなかったのか』PHP研究所、2015年5月。ISBN 978-4-569-82511-3。
- ^ 『歴史評論』の各号巻末を参考。
- ^ 一般社団法人歴史教育者協議会 公式サイト
- ^ “一般財団法人 歴史科学協議会”. 学会名鑑. 日本学術会議・日本学術協力財団・科学技術振興機構. 2019年7月7日閲覧。
- ^ “一般社団法人 歴史教育者協議会”. 学会名鑑. 日本学術会議・日本学術協力財団・科学技術振興機構. 2019年7月7日閲覧。
- ^ 賛同16団体の概要 「「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」を発表した16の歴史学の学会および教育者団体
- ^ 「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 本文
- ^ 日本軍「慰安婦」問題をめぐる最近の動きに対する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 [1]
- ^ “「慰安婦」否定の米教授論文 歴史3学会などが撤回求め声明 | カナロコ by 神奈川新聞”. カナロコ. 神奈川新聞社. 2024年6月14日閲覧。
- ^ “新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論を批判する日本の研究者・アクティビストの緊急声明”. 日本史研究会. 2024年6月15日閲覧。
- ^ “会告 『歴史評論』の発行についてのお知らせ(『歴史評論』第817号掲載)”. 歴史科学協議会 (2018年4月12日). 2019年7月7日閲覧。
- ^ 2018年3月に入稿していたが、同年6月に校倉書房が事業を停止したため、2019年秋に大月書店から単独の書物として刊行されることになった。“歴史科学協議会編『歴史科学の思想と行動』予約販売御協力のお願い” (pdf). 歴史科学協議会. 2019年7月7日閲覧。