中華人民共和国国務院

中華人民共和国の最高国家行政機関
中国国務院から転送)

中華人民共和国国務院(ちゅうかじんみんきょうわこくこくむいん、中华人民共和国国务院: State Council of the People's Republic of China)は、中華人民共和国政府。他国における内閣に相当する。国務院とも略称する。中華人民共和国の建国初期には政務院と称していた。中国において「国務院」、「中央人民政府」は行政府のみを指す場合が多いが、本項では立法府司法府をまとめて解説する。

中華人民共和国中央人民政府
Central People's Government of China
概要
創設年 1949年10月1日(72年前)
対象国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
政庁所在地 北京市
現行憲法 中華人民共和国憲法
政体 人民代表大会制
代表 国務院総理首相
国務院副総理副首相
国務委員(上級閣僚)
機関
立法府 全国人民代表大会
第13回全人代
行政府 国務院
李強政府中国語版
司法府 最高人民法院
最高人民検察院
国家監察委員会
公式サイト
中国中央人民政府
中華民国の旗 中華民国政府 (1948年 - 1949年) [注 1]
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概要

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中華人民共和国憲法の規定によると、国務院は中華人民共和国の中央人民政府で、最高国家権力機関(全国人民代表大会および全国人民代表大会常務委員会)の執行機関であり、最高国家行政機関である。国務院は全国人民代表大会に対して行政上の責任を負い、業務を報告する義務がある(大会閉会中は全国人民代表大会常務委員会に対して責任を負い、業務報告の義務がある),最高軍事指揮機関は中央軍事委員会;最高司法機関は最高人民法院最高人民検察院国家監察委員会

国務院の構成は「中華人民共和国国務院組織法」によって定められている。

沿革

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1949年10月1日に中華人民共和国が建国され、その中央政府として、毛沢東を主席とする「中央人民政府委員会」が発足した。国務院の前身である政務院は、中央人民政府の執行機関として設置された。政務院総理には周恩来が就任した。政務院はその職能において現在の国務院とほぼ同じであったが、国務院が最高国家行政機関であるのに対し、政務院は中央人民政府に直属する国政の最高執行機関と位置づけられたことに差異がある。また、政務院は軍事に関する管理権はなく、国防部(国防省)も設置されていなかった。

1954年9月20日に中華人民共和国憲法が制定されたことにより、9月27日、政務院は国務院に改組された。国務院は中央人民政府とされ、最高国家行政機関に位置づけられた。初代国務院総理には、周恩来が改めて就任した。また、軍事管理機関として国防部が設置された。

構成

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1982年12月10日、第5期全人代第5回会議によって改正された国務院組織法によると、国務院は国務院総理(首相)が主宰し、国務院副総理(若干名)、国務委員(若干名)、各部長(各省大臣に相当)、各委員会主任(庁長官に相当)、中国人民銀行行長、審計署審計長(会計検査長)、国務院秘書長(事務長官)により構成される。

国務院総理
国務院の首長。国務院の活動を指導し、行政全般を指揮・監督する。総理は中国共産党中央政治局常務委員から必ず選出されている。
国務院副総理
総理を補佐し、重要業務の責任者となる。総理の外遊などの間は常務業務担当の副総理が総理の職務を代行する。李鵬内閣(第7期)より、常務副総理(第一副首相)は中国共産党中央政治局常務委員から、その他の副総理は中国共産党中央政治局委員から選出されている。
国務委員
文化大革命後、復活した古参幹部に対して名誉職的に副総理職を乱発したことや、失脚前の地位に一気に復帰させたため、最終的に副総理が20人以上にまで膨れ上がった。この状況を解消するため、1982年5月4日の第5期全人代常務委員会第23回会議で国務委員が増設された。副総理と同様、重要業務の責任者となる。待遇は副総理と同級だが、序列は副総理の下。
秘書長
国務院の日常業務処理や国務院弁公庁(事務局)の業務の責任者。通常は副総理か国務委員が兼任し、副秘書長(若干名)が秘書長を補佐する。

国務院総理・副総理・国務委員・秘書長は次の通り。

役職 氏名 党役職 担当 兼務
国務院総理 李強 中央政治局常務委員会委員(序列2位)
国務院の活動を指導し、行政全般を指揮・監督する。 中央国家安全委員会副主席、中央金融委員会主任
国務院副総理 丁薛祥 中央政治局常務委員会委員(序列6位)
発展改革(経済開発)・財政・教育・科学技術・香港マカオ事務・生態環境等
国務院副総理 何立峰 中央政治局委員、中央財経委員会弁公室主任
マクロ経済・貨幣・金融・米中貿易交渉等 中央金融委員会弁公室主任、中央金融工作委員会書記
国務院副総理 張国清 中央政治局委員
産業及び情報化・交通・防災・税関・国営企業等
国務院副総理 劉国中 中央政治局委員
農業・衛生(厚生)・健康保険・食品安全・気象等
国務委員 李尚福 (2023年10月24日免職) 中国共産党中央軍事委員会委員 国防建設・国防動員・軍事行政・軍事外交等(軍事指揮権がない) 国防部長(防衛大臣に当たる)
中華人民共和国中央軍事委員会委員、戦略支援部隊上将
国務委員 王小洪 中国共産党中央書記処書記 要人警護・公安(警察・治安)・司法(刑務所等)・国家安全(情報工作等)等 公安部長(警察庁長官に当たる)
国務委員 呉政隆 国務院日常業務等、総理の外遊に随行 国務院秘書長(内閣官房長官に当たる)
国務委員 諶貽琴 文化及び観光・内政(総務)・退役軍人事務・人力資源及び社会保障(労働)・体育等 特命担当大臣に当たる
中華全国婦女連合会主席
国務委員 秦剛 (2023年10月24日免職) 外交等 外交部長(外務大臣に当たる)

閣議

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国務院の重要政策に関する基本的な方針は、合議によって決定される。国務院組織法第4条によると、国務院の活動における重要問題は必ず国務院常務会議か国務院全体会議による討論を経て決定することになっている。国務院常務会議と国務院全体会議は、いずれも国務院総理が招集し、主宰する。

国務院常務会議
国務院総理・副総理・国務委員および秘書長により構成される。週1回開かれ、国務院の活動における重要問題について討論し決定するほか、法律案の討論や行政法規の草案の審議を行う。
国務院全体会議
国務院の全構成員が参加する。半年に1回開かれ、国務院全体の活動における重要問題について討論・決定するほか、国務院各部署の重要問題の討論と決定を行う。

選出

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国務院総理は国家主席が指名し、全国人民代表大会の承認を経て国家主席が任命する。国務院副総理・国務委員は国務院総理が指名し、全国人民代表大会の承認を経て、国家主席が任命する。

国務院の任期は全人代の任期に相当する5年である。総理、副総理、国務委員は連続3選できない。

機構

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国務院以下の各部は日本の省に相当する中央政府機関であり、部長は各省大臣に相当するが、閣議に相当する国務院常務会議を構成するのは副総理や国務委員であることから、実質的には次官とも言える。国務院の各委員会は各部を超越して各種の政府活動を調整する機能を有する。委員会は主任が長である。なお、国務院に国防部が設置されているが、人民解放軍中国共産党の軍事部門であって中央軍事委員会隷下にあり、国務院から独立しているので国防部は直接統帥していない。

各部・委員会責任者(日本の各省庁大臣・長官に相当)は以下の通り。

役職 名前 党派
外交部部長 王毅 中国共産党
国防部部長 董軍 中国共産党
国家発展改革委員会主任 鄭柵潔 中国共産党
教育部部長 懐進鵬 中国共産党
科学技術部部長 陰和俊 中国共産党
工業情報化部部長 金壮竜 中国共産党
国家民族事務委員会主任 潘岳 中国共産党
公安部部長 王小洪 中国共産党
国家安全部部長 陳一新中国語版 中国共産党
民政部部長 陸治原中国語版 中国共産党
司法部部長 賀栄中国語版 中国共産党
財政部部長 藍仏安 中国共産党
人力資源社会保障部部長 王暁萍 中国共産党
自然資源部部長 王広華 中国共産党
生態環境部部長 黄潤秋 九三学社
住宅都市農村建設部部長 倪虹 中国共産党
交通運輸部部長 李小鵬 中国共産党
水利部部長 李国英 中国共産党
農業農村部部長 唐仁健 中国共産党
商務部部長 王文濤 中国共産党
文化観光部部長 孫業礼中国語版 中国共産党
国家衛生健康委員会主任 馬暁偉 中国共産党
退役軍人事務部部長 裴金佳 中国共産党
応急管理部部長 王祥喜 中国共産党
中国人民銀行行長 潘功勝中国語版 中国共産党
審計署審計長 侯凱中国語版 中国共産党

国務院特設直属機構

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国務院直属機構

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国務院直属事業単位

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国務院弁事機構

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国務院各部・委員会管理の国家局

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国務院議事協調機構と臨時機構

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歴代国務院常務会議構成員

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第1期国務院

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任期(1954年9月 - 1959年4月

第2期国務院

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任期(1959年4月 - 1965年1月

  • 総理:周恩来
  • 副総理:陳雲、林彪、彭徳懐、鄧小平、鄧子恢、賀龍、陳毅、ウランフ、李富春、李先念、聶栄臻、薄一波、譚震林陸定一羅瑞卿、習仲勲
  • 秘書長:習仲勲(兼任)

第3期国務院

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任期(1965年1月 - 1975年1月

  • 総理:周恩来
  • 副総理:林彪、陳雲、鄧小平、賀龍、陳毅、柯慶施、ウランフ、李富春、李先念、譚震林、聶栄臻、薄一波、陸定一、羅瑞卿、陶鋳謝富治
  • 秘書長:周栄鑫

第4期国務院

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任期(1975年1月 - 1978年3月

第5期国務院

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任期(1978年3月 - 1983年6月

1980年9月10日、第5期全国人民代表大会常務委員会第3回会議で趙紫陽内閣が発足

1982年5月4日、第5期全国人民代表大会常務委員会第23回会議で国務委員を新設

  • 総理:趙紫陽
  • 副総理:万里、姚依林
  • 国務委員:余秋里、耿飈、方毅、谷牧、康世恩、陳慕華(女)、薄一波、姫鵬飛、黄華、張勁夫 
    • 1982年11月に任命 張愛萍
  • 秘書長:杜星垣

第6期国務院

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任期(1983年6月 - 1988年4月

第7期国務院

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任期(1988年4月 - 1993年3月

第8期国務院

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任期(1993年3月 - 1998年3月

第9期国務院

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任期(1998年3月 - 2003年3月

  • 総理:朱鎔基
  • 副総理:李嵐清、銭其琛、呉邦国、温家宝
  • 国務委員:遅浩田、羅幹、呉儀(女)、司馬義・艾買提(ウイグル族)、王忠禹
  • 秘書長:王忠禹(兼任)

第10期国務院

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任期(2003年3月 - 2008年3月

第11期国務院

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任期(2008年3月 - 2013年3月

  • 総理:温家宝
  • 副総理:李克強(常務副総理、発展改革、財政、国土資源、環境保護、建設、人口、衛生担当)、回良玉(農業、民族、民政、宗教担当)、張徳江(工業、交通、人力資源、社会保障、企業改革、安全生産担当)、王岐山(商務、金融、市場管理、観光担当)
  • 国務委員:劉延東(教育、科学技術、文化・メディア、スポーツ、香港・マカオ担当)、梁光烈(国防動員担当)、馬凱孟建柱(政法担当)、戴秉国(外交担当)
  • 秘書長:馬凱(兼任)

関連項目

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注釈

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  1. ^ 台湾地区においては1949年以降も機能している。

外部リンク

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