ブラザー工業

日本の愛知県名古屋市瑞穂区にある電機メーカー

ブラザー工業株式会社(ブラザーこうぎょう、: BROTHER INDUSTRIES, LTD.)は、愛知県名古屋市瑞穂区に本社を置く日本の大手電機メーカー。主にプリンター複合機)、ファクシミリミシンなどを製造する。東証プライム名証プレミア上場企業

ブラザー工業株式会社
BROTHER INDUSTRIES, LTD.
名古屋本社ビル
名古屋本社ビル
種類 株式会社
市場情報
略称 ブラザー、brother
本社所在地 日本の旗 日本
467-8561
愛知県名古屋市瑞穂区苗代町15-1
北緯35度7分6.1秒 東経136度55分19.1秒 / 北緯35.118361度 東経136.921972度 / 35.118361; 136.921972座標: 北緯35度7分6.1秒 東経136度55分19.1秒 / 北緯35.118361度 東経136.921972度 / 35.118361; 136.921972
設立 1934年昭和9年)1月15日
(日本ミシン製造株式会社)(創業:1908年明治41年)
業種 電気機器
法人番号 8180001010997
事業内容 ファクスプリンター、デジタル複合機等の通信・プリンティング機器等の製造・販売等
電子文具および家庭用ミシン等の製造・販売等
工業用ミシンおよび産業機器等の製造・販売等
代表者 小池利和代表取締役会長
佐々木一郎(代表取締役社長
石黒雅(代表取締役兼副社長
川那辺祐(代表取締役兼専務執行役員)
資本金 192億09百万円[1]
発行済株式総数 2億6222万530株[1]
売上高 連結 6,318億12百万円
単独 3,453億17百万円
(2021年3月期)[1]
営業利益 連結 719億25百万円
単独 277億29百万円
(2019年3月期)[1]
純利益 連結 245億20百万円
単独 490億8百万円
(2021年3月期)[1]
純資産 連結 4,830億50百万円
単独 3,483億6百万円
(2021年3月31日現在)[1]
総資産 連結 7,438億96百万円
単独 4,770億11百万円
(2021年3月31日現在)[1]
従業員数 連結 38,741名
単独 3,803名
(2021年3月31日現在)[1]
決算期 3月31日[1]
会計監査人 有限責任監査法人トーマツ
主要株主 日本マスタートラスト信託銀行(株)(信託口) 8.48%
SSBTC CLIENT OMNIBUS ACCOUNT 4.62%
日本生命保険相互会社 4.53%
(株)日本カストディ銀行(信託口) 4.30%
(株)三井住友銀行 2.33%
住友生命保険(相) 1.73%
(2021年3月31日現在)[1]
主要子会社 関連会社参照
関係する人物 安井正義(創業者)
安井義博(元会長、現相談役)
平田誠一(元代表取締役社長)
石黒不二代ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO、元社員。)
外部リンク https://www.brother.co.jp/
特記事項:連結は国際会計基準のため売上高は売上収益、純利益は親会社の所有者に帰属する当期利益、純資産は親会社の所有者に帰属する持分
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概要

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社名は「沿革」節にあるとおり、安井兼吉が創業した「安井ミシン商会」を安井正義ら息子兄弟が継承した際に商号を変更した「安井ミシン兄弟商会」に由来し、この兄弟の英語であるBrotherを社名に採用している。

売上の90%近く(連結では75%)が日本国外であり、日本国内よりも北米ヨーロッパブランド力が高い。特にSOHO向けの複合機、ファックスにおいては北米でトップシェアを占める。

日本でブランドイメージの強いミシンについては、家庭用・工業用ともに世界トップクラスのシェアである。ただし工業用については日本でのブラザー最大のライバルメーカーであるJUKIが世界でのシェア1位であるものの、日本での家庭用ミシンの市場が急激に縮小し、他のライバルミシンメーカーが軒並み凋落する中で、工業用ミシン最大のライバルであるJUKI(チップマウンターに進出して多角化)、家庭用最大のライバルであるジャノメ(産業用ロボットに進出して多角化)の日本3大大手ミシン会社ともに、多角化に成功したことが本業の堅持にもつながった。

1956年には、70ccオートバイ「ダーリン号」を販売した。しかし製造ラインが1959年伊勢湾台風で水没したこともありオートバイ事業からは撤退した。また、かつては家電製品楽器電子オルガン)を発売していたこともあるが、1990年代までに撤退している。家電製品のうち洗濯機(ニックネームは「新珠」)、掃除機は自社生産で、テレビビデオデッキ三菱電機からOEM供給を受けていた。1980年代には後述するタイプライターのノウハウを生かしたワードプロセッサ「ピコワード」も製造・販売していた。

1971年に、セントロニクス社と高速ドットプリンターを開発。国内の現金自動預け払い機(ATM)の3割のシェアを持つ。また、ラベルプリンターの創始者で、1988年に開発し世界シェア1位である。印刷面にラミネートが施される特許を持っている。当時ブラザー工業の社員だった酒井隆司と結城英治が中心に開発し、かつてテプラを製造しキングジムに供給していた。他にはモバイルプリンターなど、個性のあるプリンターを製造している。

タイプライターも世界シェア1位を誇り、1977年からのキーボード開発は高い評価を持ち、ブラザー製のIBM社のキーボードはプレミアも付いている。1993年のキーボード「コアラ」はパンタグラフ式キーボードとして世界で初めてノートパソコンに採用され、パンタグラフ式は現在、世界でノートPCの標準仕様となっている。

1987年に、NTT西分割前)とファックスを共同開発。日本国内ではNTTブランドで、日本以外では「ブラザーファクス」として展開され、7年連続全米第1位のシェアを獲得していた(1994年2000年)。ちなみに開発メーカーなのでブラザーのファックスの型番はFAX-××となっている。ファックス付複合機では、日本国内・全米ともに第1位のシェアを誇っていたが、近年ではキヤノンヒューレット・パッカードなどにシェアを奪われつつある。家庭用の留守番電話付きファックスを良品計画(無印良品)にOEM供給している。

独自の技術でレーザープリンターインクジェットプリンターを製造できる企業ではあるが、特にレーザープリンターは各社とOEM契約を結び、各社とエンジンや本体を供給したりされたりしている。カラーレーザーエンジンも以前は他社からの供給品であったが、2007年より自社開発したタンデム方式のカラーエンジンを使用している。レーザープリンターは1987年開発。2000年にユーロでのシェアが第2位となる。小売りで全第1位シェアも持っている。

2003年にインクジェット式の複合機マイミーオを発売。ファックス付複合機では2010年現在日本シェア第1位となっている。初代のマイミーオに関しては「ソウチカクニン41」というヘッドに起因する不良が多発したため、修理対応を行った[2]2008年冬に開催されたコミックマーケット(C75)において、マイミーオらき☆すたとのコラボレーションで企業ブースに出展するなど、多方面にプロモーション活動を展開している[3][4]

2004年に発売されたエンターテイメントロボットイフボット」のデザインを手掛けたことから、イフボットの意匠権を所有している。そのため、翌2005年に行われた愛・地球博では、「夢みる山」のブラザーゾーン「モノづくり、ユメづくり Brother Output Fantasy」にて、イフボットを使用したショーを出展した。なお、イフボットの製造はフタバ産業、販売はビジネスデザイン研究所である。

子会社エクシングにおいて、通信カラオケJOYSOUNDを製造・販売している。さらに2009年9月には、エクシングが同じく通信カラオケ大手のUGAを運営するBMBを買収することで、BMBの親会社であるUSENと合意した。

2008年に発表された新中期戦略「CS B2012」では、ブラザー工業が取り組む二つの新規事業として、ネットワークイメージングデバイス事業とネットワーク&コンテンツ事業を挙げており、ネットワークイメージングデバイス事業では2009年6月、電子ペーパー「ブラザー ドキュメントビューワ」を発売したほか、愛・地球博で初めて披露した網膜走査ディスプレイの小型化を成功させ、2010年に名称が「AiRScouter」に決定。2011年に実用化された[5]。また、ネットワーク&コンテンツ事業では次世代コンテンツ配信システム「Einy(アイニー)」を開発、2009年10月に子会社のエクシングが発売した通信カラオケ「CROSSO」の楽曲配信などに採用されている。

また、自動車部品やHDD製造用の工作機械であるタッピングセンターシリーズ、金型製作や部品加工用の工作機械であるワイヤ放電加工機(HS-70A)も製造している。

2011年、改築された名古屋市科学館プラネタリウムドームのネーミングライツ(命名権)を取得し、プラネタリウムドームの名称を「Brother Earth (ブラザーアース)」とした[6]

沿革

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  • 1908年 - 安井兼吉が安井ミシン商会を創業[1]
  • 1925年 - 安井正義が継承し、商号を安井ミシン兄弟商会とする[1]
  • 1928年 - 麦わら帽子製造用ミシン[注 1]を開発し、商標をBROTHERとする[1]
  • 1934年 - 日本ミシン製造株式会社(現在のブラザー工業株式会社)設立[1]
  • 1941年 - ブラザーミシン販売株式会社設立[1]
  • 1947年 - 家庭用ミシンの輸出が始まる
  • 1962年 - 社名をブラザー工業株式会社とする[1]
  • 1963年 - 東京証券取引所、名古屋証券取引所、大阪証券取引所上場[1]
  • 1971年 - ドットプリンターを開発
  • 1980年 - 電子オフィスタイプライターを開発
  • 1982年 - CIを導入し、新シンボルマークを制定[注 2]
  • 1986年 - パソコンソフトの自動販売機ソフトベンダーTAKERUを全国に展開
  • 1987年 - レーザープリンター、ファックスを開発
  • 1992年 - 通信カラオケサービスを開始
  • 1999年 - ブラザー販売株式会社を子会社化[1]
  • 2007年 - ブラザー販売の訪問販売部門について、ヤマノホールディングス傘下のヤマノリテーリングスが新たに設立したヤマノ1909プラザに事業譲渡。またパソコンショップ運営子会社のコムロードアプライドに譲渡。
  • 2008年 - 創業100周年を迎える
  • 2008年7月31日 - HOYA株式会社からモバイルプリンター事業を譲受。
  • 2009年9月30日 - USEN傘下で通信カラオケ「UGA」を運営する株式会社BMBの全株式を取得することで基本合意。
  • 2010年6月 - 中国子会社の兄弟ミシン(西安)有限公司を存続会社とし、同じく中国子会社の西安兄弟工業有限公司を吸収合併。兄弟ミシン(西安)有限公司は兄弟機械(西安)有限公司に商号を変更[1]
  • 2011年2月14日 - 大阪証券取引所上場廃止[1]
  • 2013年1月30日 - 株式公開買付け(TOB)成立により、持分法適用関連会社であった株式会社ニッセイ連結子会社[1]
  • 2015年6月11日 - イギリスの産業用印刷機械大手ドミノ・プリンティング・サイエンス社を完全子会社化[7]
  • 2019年4月1日 - ドミノ・プリンティング・サイエンス社の日本総販売店であるコーンズテクノロジー株式会社よりドミノ製品の国内販売事業を譲受け[8]。同日子会社であるブラザーインダストリアルプリンティング株式会社が同事業を開始[8]
  • 2022年2月16日 - 株式会社ニッセイを完全子会社化。
  • 2024年3月 - ローランド ディー. ジー.に対してTOBによる買収を検討していたが、同年5月に事実上断念することを発表した[9][10]

主要製品

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家庭用ミシン・クラフト

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  • イノヴィスシリーズ(一般用ミシン、刺しゅう用ミシン)
  • 職業用ミシン(直線ぬい専用ミシン、ロックミシン、カバーステッチ専用ミシン)
  • カッティングマシン
  • BEaaS(ラザーの業務用刺しゅうミシン専用のクラウドサービス[11]。株式会社ワークマンと共同開発[12]
  • 家庭用編機(2004年11月24日をもって生産販売を終了した[13]

プリンティング機器

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スタンプ作成機

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  • Stampcreatorシリーズ

電子ペーパー

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マシナリー

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  • 工作機械(CNCタッピングセンター、SPEEDIO)
  • 工業用ミシン

  NEXIOシリーズ(IoT対応ミシン[16]/電子送り本縫ダイレクトドライブ、ダイレクトドライブプログラム式電子ミシン)

ネットワーク・アンド・コンテンツ

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  • Einy(アイニー)
  • JOYSOUNDシリーズ

ドミノ事業

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  • コーディング・マーキング機器
  • デジタル印刷機
  • レーザーマーカ―

研究・製造拠点

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  • 瑞穂工場(名古屋市瑞穂区
  • 星崎工場(名古屋市南区
  • 港工場(名古屋市港区
  • 桃園工場(名古屋市瑞穂区)
  • 刈谷工場(愛知県刈谷市
  • 技術開発センター(名古屋市瑞穂区)
  • 物流センター(名古屋市南区)

海外拠点は以下の国にある。

関連会社

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提供番組

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2021年時点

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  • ブラザー工業 Hello Global(FM AICHI

過去

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※同社が名古屋市に本社を置くことから、在京局のみならず、在名局の番組[注 5]にも提供している。

※現在、上記以外ではレギュラーの提供番組はなく、週替わり・期間限定でテレビ番組に提供する事が多い。このため、スポット枠中心にCMを流している。

CMに起用された有名人

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テレビ番組

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書籍

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関連書籍

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  • 『「解」は己の中にあり 「ブラザー小池利和」の経営哲学60』(著者:高井尚之)(2012年3月24日、講談社)ISBN 9784062175340

脚注

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注釈

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  1. ^ 2007年に機械遺産に認定された。日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第15号 麦わら帽子製造用環縫ミシン
  2. ^ 過去に使用していたシンボルマーク(創業家・安井姓の「安」の字を図案化したもの)は2015年現在も社章として株券などで使われている。
  3. ^ オープニングキャッチあり。提供スポンサー読み:オープニング時はなし。エンディング時は「ミシン編機電化製品事務器タイプライター)・楽器のブラザーがお送りしました」。
  4. ^ 提供スポンサー読み:「ミシン・編機・電化製品・タイプライター・楽器(電子オルガン)のブラザーがお送りします(した)」。
  5. ^ 近年ではブラザーアース presents NEO UNIVERSE 〜聴く宇宙〜(Radio NEO)など

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 第129期 決算 有価証券報告書・内部統制報告書” (PDF). ブラザー工業株式会社. 2021年12月28日閲覧。
  2. ^ [1]
  3. ^ ブラザーが“らき☆すた複合機”を試作”. ITmedia. 2015年3月5日閲覧。
  4. ^ MyMio×らき☆すた【まいみ〜お 応援ぷろじぇくと】”. ブラザー工業. 2010年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月5日閲覧。(2010年12月07日時点のアーカイブ
  5. ^ 日本の未来の産業を変えるかも。ブラザーのヘッドマウントディスプレイ「AiRScouter(エアスカウター)」”. ライブドアニュース (2015年7月13日). 2016年7月6日閲覧。
  6. ^ ブラザーアースについて”. 名古屋市科学館. 2015年3月5日閲覧。
  7. ^ 英国 Domino Printing Sciences 社の買収手続きの完了について” (PDF). ブラザー工業株式会社. 2015年6月12日閲覧。
  8. ^ a b ドミノ事業譲受完了および新会社に関するお知らせ”. PR TIMES. 2019年6月22日閲覧。
  9. ^ ブラザーがTOB断念へ ローランドDGを批判”. 共同通信 (2024年5月9日). 2024年5月10日閲覧。
  10. ^ ブラザー社長「信頼関係を築くことは見込めない」…ローランドDGへのTOBを事実上断念”. 読売新聞 (2024年5月9日). 2024年5月10日閲覧。
  11. ^ 刺しゅうビジネスのDXとUX向上を実現 - BEaaS (ベアーズ) - | 業務用刺しゅうミシン | ブラザー”. www.brother.co.jp. 2021年4月28日閲覧。
  12. ^ ブラザー工業とワークマンがネット販売受注時に刺しゅうファイルを自動生成するシステムを共同開発”. ワークマン公式サイト (2020年3月10日). 2021年4月28日閲覧。
  13. ^ その他の製品に関するお問い合わせ|お問い合わせ(総合)|ブラザー”. www.brother.co.jp. 2023年10月30日閲覧。
  14. ^ ブラザーの歴史1980年代 情報機器分野への進出と産業機器事業の拡大”. 2022年12月29日閲覧。
  15. ^ ASCII 1982年12月号, p. 76.
  16. ^ ブラザー工業、IoT時代を見据えた次世代の工業用ミシン「NEXIO(ネクシオ)BAS-Hシリーズ」新発売”. 2016年6月1日閲覧。
  17. ^ ブラザーインダストリアルプリンティング株式会社(法人番号:9180001049572) - 東京都”. IR BANK. 2019年6月22日閲覧。
  18. ^ 企業CM|ブラザー”. 2020年1月27日閲覧。
  19. ^ 新分野に挑戦し続けろ ~これが21世紀の多角化経営だ! - テレビ東京 2012年1月19日

参考文献

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  • 「ASCII 1982年12月号」第6巻第12号、株式会社アスキー出版、1982年12月1日。 

関連項目

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外部リンク

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