カノン進行
コード進行の一形式
カノン進行(カノンしんこう)は、ヨハン・パッヘルベルの「カノン」の旋律に用いられたコード進行。基本コードは「C - G - Am - Em - F - C - F - G」(「Ⅰ - Ⅴ - Ⅵm - Ⅲm - Ⅳ - Ⅰ - Ⅳ - Ⅴ」)であり、滑らかで美しく流れ、親しみやすく聴きやすいことを特徴とする。
17世紀後半から18世紀前半頃に作曲されたパッヘルベルの「カノン」は、20世紀にバロック音楽が再発見されるなか、1960年代にフランスの指揮者ジャン=フランソワ・パイヤールの録音により一躍人気楽曲になった[1]。 この楽曲はポップミュージックに影響を与え、1966年のビージーズ「Spicks and Specks」はその最初期の1曲である。また1967年のプロコル・ハルム「青い影」がポップミュージックにおけるカノン進行の発端であるとする説もある[2]。カノン進行は1990年代から2010年代の日本におけるポップミュージック、ロックミュージックに好んで用いられた[3]。
カノン進行が用いられている主な楽曲
編集- J.S.バッハ「管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068 第2曲 エール(G線上のアリア)」(18世紀前半頃)
- モーツァルト「交響曲第41番 ハ長調 K. 551 (ジュピター) 第4楽章」(1788年)
- ベートーヴェン「交響曲第9番 ニ短調 作品125 第4楽章」(1824年)
- 童謡「静かな湖畔の森の影から」(1936年)
- 童謡「かえるの合唱」(1942年頃)
- ソビエト連邦「ソビエト連邦国歌」(1944年)[注 1]
- ビージーズ「Spicks and Specks」(1966年)
- プロコル・ハルム「青い影」(1967年)
- ザ・タイガース「君だけに愛を」(1968年)
- ヴィレッジ・シンガーズ「亜麻色の髪の乙女」(1968年)
- シルヴィ・ヴァルタン「あなたのとりこ Irrésistiblement」(1968年)
- アフロディテス・チャイルド「雨と涙 Rain and Tears」(1968年)
- ビートルズ「レット・イット・ビー」(1970年) - カノン進行から派生した「レット・イット・ビー進行」として定義されることがある。a-ha「テイク・オン・ミー」(1984年)、U2「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」(1987年)、イディナ・メンゼル(アナと雪の女王)「レット・イット・ゴー」(2013年)などが「レット・イット・ビー進行」を用いている。
- 赤い鳥「翼をください」(1971年)
- ジョン・レノン「イマジン」(1971年)
- モット・ザ・フープル(デヴィッド・ボウイ)「すべての若き野郎ども」(1972年)
- チューリップ「心の旅」(1973年)
- ビリー・ジョエル 「ピアノ・マン」(1973年)
- 松任谷由実(荒井由実)「ひこうき雲」(1973年)
- かぐや姫「なごり雪」(1974年)
- チューリップ「青春の影」(1974年)
- 太田裕美「木綿のハンカチーフ」(1975年)
- 森田童子「ぼくたちの失敗」(1976年)
- ヴィレッジ・ピープル「ゴー・ウェスト」(1979年)
- BORO「大阪で生まれた女」(1979年)
- 松任谷由実「守ってあげたい」(1981年)
- 合唱曲「遠い日の歌」(1982年)
- H2O「想い出がいっぱい」(1983年)
- カルチャー・クラブ「カーマは気まぐれ」(1983年)
- 山下達郎「クリスマス・イブ」(1983年)
- 小林明子「恋におちて -Fall in love-」(1985年)
- BOØWY「わがままジュリエット」(1986年)
- 松田聖子「時間旅行」(1986年)
- 岡村孝子「夢をあきらめないで」(1987年)
- X JAPAN「ENDLESS RAIN」(1989年)
- 德永英明(ドラゴンクエスト)「夢を信じて」(1990年)
- LINDBERG「今すぐKiss Me」(1990年)
- KAN「愛は勝つ」(1990年)
- 米米CLUB「浪漫飛行」(1990年)
- 德永英明「壊れかけのRadio」(1990年)
- サザンオールスターズ「真夏の果実」(1990年)
- 井上陽水「少年時代」(1990年)
- 槇原敬之「どんなときも。」(1991年)
- 大事MANブラザーズバンド「それが大事」(1991年)
- B'z「ALONE」(1991年)
- 森高千里「渡良瀬橋」(1993年)
- ZARD「負けないで」(1993年)
- DEEN「このまま君だけを奪い去りたい」(1993年)
- エアロスミス「Cryin'」(1993年) - Verse(Aメロ)でカノン進行、Chorus(サビ)でレット・イット・ビー進行が用いられる。
- X JAPAN「Tears」(1993年)
- 藤井フミヤ「TRUE LOVE」(1993年)
- スピッツ「空も飛べるはず」(1994年)
- シャ乱Q「シングルベッド」(1994年)
- グリーン・デイ「バスケット・ケース」(1994年)
- オアシス「ホワットエヴァー」(1994年)
- 岡本真夜「TOMORROW」(1995年)
- オアシス「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」(1996年)
- THE YELLOW MONKEY「JAM」(1996年)
- FIELD OF VIEW(ドラゴンボールGT)「DAN DAN 心魅かれてく」(1996年)
- スピッツ「チェリー」(1996年)
- 河村隆一「Love is...」(1997年)
- 中島みゆき「糸」(1998年)
- L'Arc〜en〜Ciel「DIVE TO BLUE」(1998年)
- Mr.Children「終わりなき旅」(1998年)
- 森山良子「涙そうそう」(1998年)
- 宇多田ヒカル「First Love」(1999年)
- 福山雅治「桜坂」(2000年)
- 森山直太朗「さくら」(2003年)
- 大塚愛「さくらんぼ」(2003年) - カノン進行と王道進行の組み合わせ。
- 一青窈「ハナミズキ」(2004年)
- 平野綾・茅原実里・後藤邑子(涼宮ハルヒの憂鬱)「ハレ晴レユカイ」(2006年)
- Superfly「愛をこめて花束を」(2008年)
- 木村カエラ「Butterfly」(2009年)
- AKB48「上からマリコ」(2011年)
- AKB48「恋するフォーチュンクッキー」(2013年)
- 乃木坂46「何度目の青空か?」(2014年)
- AKB48「365日の紙飛行機」(2015年) - カノン進行と王道進行の組み合わせ。
- 欅坂46「世界には愛しかない」(2016年)
- SEKAI NO OWARI(メアリと魔女の花)「RAIN」(2017年)
- あいみょん「マリーゴールド」(2018年)
- Official髭男dism「Pretender」(2019年)
- 日向坂46「ドレミソラシド」(2019年)
- マルーン5「Memories」(2019年)
- 星野源「折り合い」(2020年)
- YOASOBI「もう少しだけ」(2021年)
- King Gnu「BOY」(2021年)
- 菅田将暉(STAND BY ME ドラえもん 2)「虹」(2022年)
脚注
編集注釈
編集- ^ 原曲はアレクサンドル・アレクサンドロフ作曲「ボリシェヴィキ党歌」(1938年)。
出典
編集- ^ Alexandra S. Levine (2019年5月9日). “How ‘Canon in D Major’ Became the Wedding Song”. ニューヨークタイムズ
- ^ “クラシックの有名な曲。あのヒット曲との共通点は「コード進行」”. オーディオテクニカ. (2024年4月29日)
- ^ “カノン進行とは?ギターでのコードやカノン進行のアニソンやJ-POP曲を紹介”. UtaTen. (2022年3月8日; 2023年1月25日更新)