西アフリカ諸国経済共同体
西アフリカ諸国経済共同体(にしアフリカしょこくけいざいきょうどうたい、英: Economic Community of West African States、仏: Communauté économique des États de l'Afrique de l'Ouest)は、1975年のラゴス条約に基づき設立された経済共同体。略称は英語でECOWAS、仏語ではCEDEAO。
西アフリカ諸国経済共同体
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![]() 加盟国 加盟資格停止国 | |
本部 | 北緯9度2分31秒 東経7度31分30秒 / 北緯9.04194度 東経7.52500度座標: 北緯9度2分31秒 東経7度31分30秒 / 北緯9.04194度 東経7.52500度 |
公用語 | |
加盟国 | |
指導者 | |
• 議長 | ボラ・ティヌブ |
• 委員会委員長 | Omar Touray |
• 議会議長 | Moustapha Cissé Lô |
設立 | 1975年5月28日 |
• ラゴス条約 | 1975年5月28日[1] |
• 条約修正 | 1993年7月24日 |
面積 | |
• 合計 | 5,114,162 km2 (1,974,589 sq mi) (7位) |
人口 | |
• 2023年の推計 | 361,185,000[2] |
• 人口密度 | 71/km2 (183.9/sq mi) |
GDP (PPP) | 2023 estimate |
• 合計 | 2兆1880億9200万ドル[2] |
• 一人当り | 6,058ドル[2] |
GDP (名目) | 2023 推計 |
• 合計 | 6195億4800万米ドル[2] |
• 一人当り | 1,715米ドル[2] |
通貨 |
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時間帯 | UTCUTC-1 - UTC+1 |
道路 | 右側通行 |
ウェブサイト www |
目的
編集関税障壁の撤廃や貿易振興などを通じた経済協力、独立の保障などを通じて、加盟国の経済・生活水準向上や政治的安定を図ることを目的とする。また域内の治安維持、紛争防止などの抑止力及び実際に使用される実力として、一定の統合軍事力を保有。加盟国間の経済統合や政治的協調をさらに推し進めるため、1993年に修正西アフリカ諸国経済共同体条約が調印された。
加盟国
編集2025年1月末時点で加盟国は12か国(資格停止含む)。1975年の創設時は後に脱退した4か国を含めた15か国で、1977年にカーボベルデが加入した[3]。
2000年12月にモーリタニアが脱退した。また2009年にはニジェールが、2021年にはマリ共和国とギニア、2022年にはブルキナファソ[4]がクーデターを理由に資格を停止されている。2010年にはコートジボワールが大統領選挙の結果を認めないとして資格を停止された[5]。
2024年1月28日にマリ、ブルキナファソ、ニジェールが脱退を宣言し[6]、2025年1月29日に脱退が正式に承認された。ただしこれらの国々のECOWASのロゴ入りパスポート・身分証明書は別途指示があるまで引き続き使用できる[7]。
モロッコは2017年2月に加盟を申請し、2017年6月4日に受理されたものの、経済的・政治的問題により加盟プロセスは停滞している[8]。
加盟資格停止国
編集- ギニア - 2021年9月10日より、2021年9月軍事クーデターによる[9]。
脱退国
編集- モーリタニア - 1999年12月に脱退を発表、2000年12月26日に正式に脱退[10]。2017年8月に準加盟協定に署名[11]。
- マリ - 2021年6月1日より2021年軍事クーデターにより資格停止処分となり[12]、2024年1月28日に脱退を発表[6]。2025年1月29日に正式に脱退[7]。
- ブルキナファソ - 2022年1月31日より2022年軍事クーデターにより資格停止処分となり[13]、2024年1月28日に脱退を発表[6]。2025年1月29日に正式に脱退[7]。
- ニジェール - 2023年8月22日より2023年軍事クーデターにより資格停止処分となり[14]、2024年1月28日に脱退を発表[6]。2025年1月29日に正式に脱退[7]。
機構
編集- 首脳会議:西アフリカ諸国経済共同体の最高意思決定機関。少なくとも年1回開催され、議長国は互選。
- 委員会:西アフリカ諸国経済共同体の事務局。
- 閣僚会議:年2回開催。西アフリカ諸国経済共同体の実務的運営を担当。
- 西アフリカ諸国経済共同体監視団 (平和維持軍、ECOMOG) :域内安定のために各国が編成する統合軍事力。紛争を抱える加盟国に派遣され、紛争予防や平和維持を図る。
本部
編集本部はナイジェリアの首都であるアブジャで三つの建物に分かれていたが、2018年3月に中国の援助で一つに統合した新本部を建設することが決まった[15]。
活動
編集1993年西アフリカ経済条約調印される。 2002年10月、コートジボワール内戦の調停に入り、反乱軍のコートジボワール愛国運動 (MPCI) との間に休戦協定が成立した。 2003年以来、リベリアやコートジボワールの紛争に西アフリカ諸国経済共同体監視団 (ECOMOG) を派遣するなど、経済統合より域内での紛争解決の役割が目立っている。
2012年のマリにおける軍事クーデターでは、制裁を課した。クーデターの収束後は、マリ北部紛争対応のため、アフリカ主導マリ国際支援ミッションを編成しマリ政府を支援している。
2016年12月のガンビア大統領選挙で当選したアダマ・バロウに対してヤヒヤ・ジャメ大統領が政権交代を拒否したことを受け、翌2017年1月にガンビアへの軍事介入を開始してナイジェリアの軍艦(056型コルベット)を展開させ[16]、セネガル、ガーナ、マリ、トーゴ、ナイジェリアの地上部隊も進駐させてジャメ大統領を退陣に追い込んだ[17]。
2019年6月29日、ナイジェリアの首都アブジャで首脳会議が行われ、2020年までに共通通貨の導入を目指すとしており、共通通貨の名称を「ECO」にすると決定した[18]。そのうち8カ国はCFAフランを使用していたが、2019年12月21日、8カ国とフランスは、ECO移行後はCFAフラン使用国に課せられている、外貨準備高のうち50%をフランスの管理下に置くという規定から外すことで合意した[19]。
2020年8月18日に発生したマリにおける軍事クーデターでは、発生当初からクーデター勢力を非難。大統領や首相など拘束した全員の即時解放を求めるとともに、加盟国がマリとの国境を閉鎖することとした[20]。2022年にブルキナファソ、2023年にニジェールでも軍事クーデターが発生すると、ECOWASはこれらの加盟資格も停止した。またニジェールに関しては軍事政権に経済制裁を行い、また民政復帰のために軍事介入をちらつかせたが、マリとブルキナファソは軍事政権を支持した。この3か国は2024年1月に脱退を宣言(翌年に承認)し、7月には事実上の対抗組織となるサヘル諸国同盟を結成するなど反ECOWAS色を強めている[21]。
歴代議長
編集代 | 名前 | 出身国 | 就任日 | 退任日 |
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1 | ニャシンベ・エヤデマ | トーゴ | 1977年 | 1978年 |
2 | オルシェグン・オバサンジョ | ナイジェリア | 1978年 | 1979年 |
3 | レオポール・セダール・サンゴール | セネガル | 1979年 | 1980年 |
4 | ニャシンベ・エヤデマ | トーゴ | 1980年 | 1981年 |
5 | シアカ・スティーブンス | シエラレオネ | 1981年 | 1982年 |
6 | マチュー・ケレク | ベナン | 1982年 | 1983年 |
7 | セク・トゥーレ | ギニア | 1983年 | 1984年 |
8 | ランサナ・コンテ | ギニア | 1984年 | 1985年 |
9 | ムハンマド・ブハリ | ナイジェリア | 1985年 | 1985年8月27日 |
10 | イブラヒム・ババンギダ | ナイジェリア | 1985年8月27日 | 1989年 |
11 | ダウダ・ジャワラ | ガンビア | 1989年 | 1990年 |
12 | ブレーズ・コンパオレ | ブルキナファソ | 1990年 | 1991年 |
13 | ダウダ・ジャワラ | ガンビア | 1991年 | 1992年 |
14 | アブドゥ・ディウフ | セネガル | 1992年 | 1993年 |
15 | ニセフォール・ソグロ | ベナン | 1993年 | 1994年 |
16 | ジェリー・ローリングス | ガーナ | 1994年 | 1996年7月27日 |
17 | サニ・アバチャ | ナイジェリア | 1996年7月27日 | 1998年6月8日 |
18 | アブドゥルサラミ・アブバカール | ナイジェリア | 1998年6月9日 | 1999年 |
19 | ニャシンベ・エヤデマ | トーゴ | 1999年 | 1999年 |
20 | アルファ・ウマル・コナレ | マリ | 1999年 | 2001年12月21日 |
21 | アブドゥライ・ワッド | セネガル | 1989年12月21日 | 2003年1月31日 |
22 | ジョン・アジェクム・クフォー | ガーナ | 2003年1月31日 | 2005年1月19日 |
23 | タンジャ・ママドゥ | ナイジェリア | 2005年1月19日 | 2007年1月19日 |
24 | ブレーズ・コンパオレ | ブルキナファソ | 2007年1月19日 | 2008年12月19日 |
25 | ウマル・ヤラドゥア | ナイジェリア | 2008年12月19日 | 2010年2月18日 |
26 | グッドラック・ジョナサン | ナイジェリア | 2010年2月18日 | 2012年2月17日 |
27 | アラサン・ワタラ | コートジボワール | 2012年2月17日 | 2014年3月28日 |
28 | ジョン・ドラマニ・マハマ | ガーナ | 2014年3月28日 | 2015年5月19日 |
29 | マッキー・サル | セネガル | 2015年5月19日 | 2016年6月4日 |
30 | エレン・ジョンソン・サーリーフ | リベリア | 2016年6月4日 | 2017年6月4日 |
31 | フォール・ニャシンベ | トーゴ | 2017年6月4日 | 2018年7月31日 |
32 | ムハンマド・ブハリ | ナイジェリア | 2018年7月31日 | 2019年6月29日 |
33 | マハマドゥ・イスフ | ニジェール | 2019年6月29日 | 2020年6月2日 |
34 | ナナ・アクフォ=アド | ガーナ | 2020年6月2日 | 2022年7月3日 |
35 | ウマロ・シソコ・エンバロ | ギニアビサウ | 2022年7月3日 | 2023年7月9日 |
36 | ボラ・ティヌブ | ナイジェリア | 2023年7月9日 | (現職) |
出典
編集- ^ “African Union”. 17 October 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。26 October 2014閲覧。
- ^ a b c d e “World Economic Outlook database: October 2024”. 国際通貨基金 (2024年10月). 2025年2月3日閲覧。
- ^ “ECOWAS”. reliefweb. 2025年2月4日閲覧。
- ^ “Burkina Faso restores constitution, names coup leader president”. Al Jazeera English. アルジャジーラ. (2022年1月31日) 2022年2月2日閲覧。
- ^ “Cote d'Ivoire expelled from Ecowas” (英語). Al Jazeera. (2010年12月7日) 2010年12月9日閲覧。
- ^ a b c d “ニジェールなど3カ国、西アフリカ共同体脱退 地域緊張高まる恐れ”. ロイター. (2024年1月29日) 2024年1月29日閲覧。
- ^ a b c d “Niger, Mali and Burkina Faso officially quit ECOWAS”. ボイス・オブ・アメリカ. (2025年1月29日) 2025年2月3日閲覧。
- ^ “Morocco-ECOWAS: Good intentions are not enough”. Moroccan Institute for Policy Analysis (2020年2月13日). 2025年2月4日閲覧。
- ^ “African Union suspends Guinea after military coup”. ドイチェ・ヴェレ (2021年9月10日). 2021年9月19日閲覧。
- ^ “Mauritania pulls out of ECOWAS”. The New Humanitarian. (2000年12月28日) 2025年2月4日閲覧。
- ^ “Like a magnet”. Development and Cooperation (2019年2月15日). 2025年2月4日閲覧。
- ^ “African Union announces 'immediate suspension' of Mali after second coup”. France 24. (2021年6月2日) 2021年9月19日閲覧。
- ^ “AU suspends Burkina Faso after coup as envoys head for talks”. アルジャジーラ. (2022年1月31日) 2022年2月1日閲覧。
- ^ “アフリカ連合、ニジェールの資格停止 軍事介入には慎重”. 日本経済新聞. (2023年8月23日) 2023年9月1日閲覧。
- ^ “Free gift? China extends influence in Africa with $32M grant for regional HQ”. CNN. (2018年3月30日) 2018年7月24日閲覧。
- ^ “The Gambia's president declares state of emergency” (英語). BBC News. (2017年1月17日). オリジナルの2017年1月18日時点におけるアーカイブ。 2020年1月7日閲覧。
- ^ “Gambia: Defeated leader Yahya Jammeh faces military showdown”. CNN (20 January 2017). 2020年1月7日閲覧。
- ^ “西アフリカ15か国、2020年に単一通貨「ECO」導入へ”. フランス通信社. (2019年6月30日) 2019年7月5日閲覧。
- ^ “West African Countries Take a Step Away From Colonial-Era Currency”. ニューヨーク・タイムズ. (2019年12月21日) 2019年12月23日閲覧。
- ^ “マリでクーデターか、大統領が拘束後に辞任 政府と議会も解散”. BBC (2020年5月19日). 2020年8月20日閲覧。
- ^ “Three military-run states leave West African bloc - what will change?”. 英国放送協会. (2025年1月30日) 2025年2月3日閲覧。
関連項目
編集- 西アフリカ経済通貨同盟
- サヘル諸国同盟 - 2024年に脱退を発表したニジェール、ブルキナファソ、マリによって結成された経済・軍事共同体。