2013年マレーシアグランプリ

2013年マレーシアグランプリは、2013年のF1世界選手権第2戦として、2013年3月24日セパン・インターナショナル・サーキットで開催された。正式名称は2013 Formula 1 Petronas Malaysia Grand Prix[1]

マレーシアの旗 2013年マレーシアグランプリ
レース詳細
日程 2013年シーズン第2戦
決勝開催日 3月24日
開催地 セパン・インターナショナル・サーキット
マレーシア クアラルンプール
コース長 5.543km
レース距離 56周 (310.408km)
決勝日天候 曇りのち晴れ(ウェット→ドライ)
ポールポジション
ドライバー
タイム 1'49.674
ファステストラップ
ドライバー メキシコの旗 セルジオ・ペレス
タイム 1'39.199 (LAP 56)
決勝順位
優勝
  • ドイツの旗 セバスチャン・ベッテル
    1:38'56.681
2位
3位

予選

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予選結果

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順位 No. ドライバー チーム Q1 Q2 Q3 グリッド
1 1   セバスチャン・ベッテル レッドブルルノー 1:37.899 1:37.245 1:49.674 1
2 4   フェリペ・マッサ フェラーリ 1:37.712 1:36.874 1:50.587 2
3 3   フェルナンド・アロンソ フェラーリ 1:37.314 1:36.877 1:50.727 3
4 10   ルイス・ハミルトン メルセデス 1:37.513 1:36.517 1:51.699 4
5 2   マーク・ウェバー レッドブルルノー 1:37.619 1:36.449 1:52.244 5
6 9   ニコ・ロズベルグ メルセデス 1:37.239 1:36.190 1:52.519 6
7 7   キミ・ライコネン ロータスルノー 1:36.959 1:36.640 1:52.970 101
8 5   ジェンソン・バトン マクラーレンメルセデス 1:37.487 1:37.117 1:53.175 7
9 15   エイドリアン・スーティル フォースインディアメルセデス 1:36.809 1:36.834 1:53.439 8
10 6   セルジオ・ペレス マクラーレンメルセデス 1:37.702 1:37.342 1:54.136 9
11 8   ロマン・グロージャン ロータスルノー 1:37.363 1:37.636 11
12 11   ニコ・ヒュルケンベルグ ザウバーフェラーリ 1:37.931 1:38.125 12
13 19   ダニエル・リカルド トロ・ロッソフェラーリ 1:37.722 1:38.822 13
14 12   エステバン・グティエレス ザウバーフェラーリ 1:37.707 1:39.221 14
15 14   ポール・ディ・レスタ フォースインディアメルセデス 1:37.493 1:44.509 15
16 16   パストール・マルドナド ウィリアムズルノー 1:37.867 no time 16
17 18   ジャン=エリック・ベルニュ トロ・ロッソフェラーリ 1:38.157 17
18 17   バルテッリ・ボッタス ウィリアムズルノー 1:38.207 18
19 22   ジュール・ビアンキ マルシャコスワース 1:38.434 19
20 20   シャルル・ピック ケータハムルノー 1:39.314 20
21 23   マックス・チルトン マルシャコスワース 1:39.672 21
22 21   ギド・ヴァン・デル・ガルデ ケータハムルノー 1:39.932 22
107%タイム: 1'43.585
ソース[2]
  • 太字は各予選セッションにおける最速タイム。
  • ^1No.7(ライコネン)はNo.10(ロズベルグ)の走行を妨害したと判定され3グリッド降格

決勝

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決勝展開

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メルセデスのハミルトン(前)とロズベルグ(後)
 
レッドブルのベッテル(左)とウェバー(右)によるチームメイトバトル
 
別角度より

スタート前にセパン名物の通り雨が降り、コース前半区間がウェット、後半区間はドライという難しい路面状況になった。各車スタート時にインターミディエイトタイヤを装着したが、早い時点でスリックタイヤへの交換が予想された。

スタートでは3番グリッドのアロンソが好スタートを切り、トップ浮上を狙ったが、2コーナーでベッテルに追突してフロントウィングを損傷。フェラーリはタイヤ交換を見越してそのまま走行させたが、2周目のホームストレートでフロントウィングが脱落し、アロンソはコースアウトしてリタイアとなった。これでレッドブル勢のベッテル、ウェバーがワンツー体制となり、メルセデス勢のハミルトン、ロズベルグが3・4位、バトン、マッサ、ペレス、スーティルの順となった。

先頭のベッテルは5周目にピットインしてドライ用タイヤに交換。しかし、路面が半乾きの状況でペースを上げられず、2周後にピットインしたウェバーが先頭に立つ。ハミルトンがピット位置を間違え、去年まで在籍したマクラーレンのピットボックスに停車するという珍場面もあった。

20周過ぎには2度目のタイヤ交換が行われた。好調だったフォース・インディア勢はホイールナットに不具合が生じ、2台ともピットでリタイアした。

上位はレッドブルの2台、やや遅れてメルセデスの2台がランデブー走行を続ける。先頭のウェバーのペースが遅く、ベッテルは前に出たい素振りを見せた。その後、3位のハミルトンは燃費が厳しくなってペースダウンし、後方のロズベルグもそのペースに付き合わされた。

44周目、4回目のタイヤ交換を終えたウェバーとベッテルが1コーナーで接近し、ウェバーが何とか首位を守った。しかし、ベッテルは46周目のホームストレートで再びウェバーに挑戦し、ピットウォールぎりぎりに押しやられながらも1コーナーで並びかけ、サイド・バイ・サイドの攻防を制して首位に浮上した。

バトンは中盤まで上位をキープしていたが、3回目のピット作業時にタイヤ装着不備のためピットで立往生し、大幅にタイムロス。数周を残してピットでリタイアした。

ベッテルは56周のトップチェッカーを受けて今季初勝利。選手権のライバルであるアロンソが無得点に終わったため、2戦終了時点でポイントリーダーに立った。開幕戦優勝者のライコネンはヒュルケンベルグと激しいバトルの末7位でフィニッシュした。

決勝結果

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順位 No. ドライバー チーム 周回数 タイム / リタイア グリッド ポイント
1 1   セバスチャン・ベッテル レッドブルルノー 56 1:38'56.681 1 25
2 2   マーク・ウェバー レッドブルルノー 56 +4.298 5 18
3 10   ルイス・ハミルトン メルセデス 56 +12.181 4 15
4 9   ニコ・ロズベルグ メルセデス 56 +12.640 6 12
5 4   フェリペ・マッサ フェラーリ 56 +25.648 2 10
6 8   ロマン・グロージャン ロータスルノー 56 +35.564 11 8
7 7   キミ・ライコネン ロータスルノー 56 +48.479 10 6
8 11   ニコ・ヒュルケンベルグ ザウバーフェラーリ 56 +53.044 12 4
9 6   セルジオ・ペレス マクラーレンメルセデス 56 +1:12.357 9 2
10 18   ジャン=エリック・ベルニュ トロ・ロッソフェラーリ 56 +1:27.124 17 1
11 17   バルテッリ・ボッタス ウィリアムズルノー 56 +1:28.610 18
12 12   エステバン・グティエレス ザウバーフェラーリ 55 +1 Lap 14
13 22   ジュール・ビアンキ マルシャコスワース 55 +1 Lap 19
14 20   シャルル・ピック ケータハムルノー 55 +1 Lap 20
15 21   ギド・ヴァン・デル・ガルデ ケータハムルノー 55 +1 Lap 22
16 23   マックス・チルトン マルシャコスワース 54 +2 Laps 21
17 5   ジェンソン・バトン マクラーレンメルセデス 53 ホイール 7
18 19   ダニエル・リカルド トロ・ロッソフェラーリ 51 エキゾースト 13
Ret 16   パストール・マルドナド ウィリアムズルノー 45 KERS故障 16
Ret 15   エイドリアン・スーティル フォースインディアメルセデス 27 ホイールナット 8
Ret 14   ポール・ディ・レスタ フォースインディアメルセデス 22 ホイールナット 15
Ret 3   フェルナンド・アロンソ フェラーリ 1 接触ダメージ 3
ソース[3]

チームオーダー騒動

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レース終了後、1 - 4位でフィニッシュしたレッドブルとメルセデスの両チームはチームオーダーの議論に巻き込まれ、表彰式は誰も笑顔のない異様な雰囲気の中で行われた。

レッドブルのチームオーダー

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レッドブルはピレリタイヤのデグラデーションに不安を抱えており、チームメイト同士の競争でタイヤを傷める事態を避けるため、最後のタイヤ交換後は順位を維持すると決めていた。ウェバーはその指示を信じてペースを落としたが、ベッテルはチームオーダーを破ってウェバーを抜いて優勝した。ウェバーは中指を立てて怒りを露わにした[4]

優勝後は喜びを表現したベッテルだったが、表彰式を待つ控え室でウェバーから「マルチ21」という単語を詰問されると、表彰式では表情が一変した。マルチ21とは、チームの暗号で「カーナンバー2(ウェバー)がカーナンバー1(ベッテル)の前」という意味だった[5]。ベッテルは「僕はミスを犯した。元に戻せるものなら戻したい[6]」と述べてウェバーとチームに謝罪したが、ウェバーは「終盤セブは自分自身の決断をした。いつも通り擁護されるんだろうね[7]」と不満を隠さなかった。

ベッテルは「故意ではない」と釈明したが、チーム代表のクリスチャン・ホーナーは「彼は行動に移したことで、自分の意志を明確にしたんだ」「チームが置かれた状況よりも自身の利益を考えた[8]」と否定し、2010年トルコGPの同士討ちクラッシュ以来、ベッテルとウェバーの間に信頼関係はないと明かした[9]。今後も遺恨を残すのか注目されたが、チームアドバイザーのヘルムート・マルコは「レース後のミーティングでふたりのドライバーは握手して和解した」と述べた[10]。その後、ベッテルはイギリスのチーム本拠地を訪れた際、スタッフに自分の行動について謝罪した[11]。チームオーナーであるディートリヒ・マテシッツはこの一件で気分を害しており、マルコは「今後我々がチームオーダーを出すことはない」と述べた[12]

3週間後の中国GPを迎えると、ベッテルは優勝したこと自体については謝罪するつもりはないと語り、また同じことをするのかと尋ねられた際には「その時はまた状況が違うかもしれないから、適切な答えを返せるかどうか分からないけど、同じことをすると思う」と述べた[13]。あの時ウェバーにはチームに1位を守らせて貰える資格がなかったと語り、その理由として、ウェバーをレーシングドライバーとしては尊敬しているが、自身がウェバーからサポートをしてもらったことがない事、ウェバーが今までチームを助ける事が出来る状況時にそれをしなかった事などを挙げた[13]

のちにBBCの自動車情報番組『トップ・ギア』に出演したウェバーは、司会のジェレミー・クラークソンから「レース後、ベッテルを殴りたいと思わなかった?」と尋ねられると、「子供を殴ってはいけない、と父がいつも言っているからね」と答えてスタジオの笑いを誘った[14]

レッドブルのチームオーダー騒動はこれが初めてでなく、2011年イギリスグランプリの時はウェバーがチームの指示を無視してベッテルを抜こうと試みたが成功せず、レース後にウェバーが(チームの)指示を意図的に無視したと語っている[15]。前シーズンの最終戦ブラジルGPでは、アロンソとのチャンピオン決定戦に臨んだベッテルが、スタート直後ウェバーに幅寄されるという「伏線」もあった。のちにホーナー代表は「セバスチャンは2012年のブラジルGPのスタートで、マークにピットウォールへと追いやられたことに非常に怒っていた。その遺恨が翌年のマレーシアGPに繋がったんだ」と語っている[16]

ウェバーは2015年に出版した自伝で当時の状況を明かしている。中国GPの木曜日にベッテルと話し合った際、「ドライバーとしては尊敬しているけど、人としては尊敬していない」と言われ、それがふたりの人間関係の決定打となった[16]。ベッテルへの処罰がないことについて、マネージャーである妻のアンが説明を求めたところ、チームはベッテルの弁護士から「不当な指示とチームオーダーによって契約に違反した」という内容の手紙を受け取っていたという[16]

メルセデスのチームオーダー

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メルセデスの場合は、両ドライバーにチームオーダーを厳守させた。ロズベルグはペースの落ちたハミルトンを抜いてレッドブルを追いかけたいとリクエストしたが、チーム側は4位キープを指示し続けた。ゴール後、ロズベルグは無線交信で"Remember This One" (この件を覚えておいてね)と言い残したが、会見では「ポジション維持というチームの判断は理解できる[17]」と大人の対応を示した。ハミルトンは「ニコは僕のポジションにふさわしかった[18]」と素直に認め、表彰式でも表情は曇りがちだった。

この判断はチーム幹部でも意見が分かれ、非常勤取締役のニキ・ラウダは「ロズベルグを前に行かせるべきだった[19]」と述べた。チーム代表のロス・ブラウンはアグレッシブな戦略を採ったため2台とも燃料がギリギリだったと説明し、そのとき置かれた状況を「砂漠でカップ1杯の水を見つけた男」に例えた[20]。ハミルトンはナンバー1待遇を条件にメルセデスへ移籍したとの憶測を否定し、自分はロズベルグを前に行かせたいと言ったが、ブラウンから「絶対にノーだ」と言われたと明かした[21]

脚注

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  1. ^ 2013 FORMULA 1 PETRONAS MALAYSIA GRAND PRIX (The Official F1 Website)
  2. ^ "2013 FORMULA 1 PETRONAS MALAYSIA GRAND PRIX (Qualifying)". The Official F1 Website. 2013年3月30日閲覧。
  3. ^ "2013 FORMULA 1 PETRONAS MALAYSIA GRAND PRIX (race)". The Official F1 Website. 2013年3月30日閲覧。
  4. ^ "激怒のウェバーが発した言葉「マルチ21」とは?". topnews.(2013年3月25日)2013年4月3日閲覧。
  5. ^ "レッドブル、マルチ21の意味は「カーナンバー2が前」". F1-Gate.com.(2013年4月2日)2013年4月3日閲覧。
  6. ^ "ベッテル「マークに謝りたい。勝っても嬉しくない」:レッドブル日曜コメント". オートスポーツweb.(2013年3月24日)2013年3月31日閲覧。
  7. ^ "ウエーバー、愚かなセブに「マルチ21」と“教える”". オートスポーツweb.(2013年3月25日)2013年3月31日閲覧。
  8. ^ "レッドブル、ベッテルは「自分を優先した」と批判". オートスポーツweb.(2013年3月25日)2013年3月31日閲覧。
  9. ^ "「2人に信頼はない」とRBR、ベッテルとは再議論". オートスポーツweb.(2013年3月26日)2013年3月31日閲覧。
  10. ^ "レッドブルボス「セブとマークは和解」と主張". オートスポーツweb.(2013年3月28日)2013年3月31日閲覧。
  11. ^ "ベッテル、チームに謝罪「自分のやったことは間違っていた」". レスポンス.(2013年3月30日)2013年4月3日閲覧。
  12. ^ "レッドブル、チームオーダー廃止を宣言". topnews.(2013年4月11日)2013年4月13日閲覧。
  13. ^ a b "ベッテルがウエーバー批判「次も指示を無視する」". オートスポーツweb.(2013年4月11日)2013年4月12日閲覧。
  14. ^ "ウェバー、「お子様」ベッテルとの別れはつらくない". TopNews.(2013年8月7日)2013年8月25日閲覧。
  15. ^ “マーク・ウェバー 「チームオーダーは無視した」”. F1-Gate.com.. (2011年7月11日). http://f1-gate.com/webber/f1_12302.html 2013年9月1日閲覧。 
  16. ^ a b c ウェーバーが自叙伝で激白。ベッテルとの決定的な亀裂を生んだ“マルチ21事件””. motorsport.com 日本版 (2020年4月5日). 2020年4月20日閲覧。
  17. ^ "ニコ「順位維持というチームの判断は理解できる」:メルセデス日曜コメント". オートスポーツweb.(2013年3月24日)2013年3月31日閲覧。
  18. ^ "ハミルトン「ニコの方が表彰台にふさわしかった」:メルセデス日曜コメント". オートスポーツweb.(2013年3月24日)2013年3月31日閲覧。
  19. ^ "メルセデスAMG F1、チーム内でわき起こるチームオーダーへの批判". Topnews.(2013年3月26日)2013年3月31日閲覧。
  20. ^ "メルセデス「チームオーダーを出すほかなかった」page2/3". オートスポーツweb.(2013年3月27日)2013年3月31日閲覧。
  21. ^ "ブラウンの指示は正しかったとウォルフ". ESPN F1.(2013年3月26日)2013年3月31日閲覧。

外部リンク

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前戦
2013年オーストラリアグランプリ
FIA F1世界選手権
2013年シーズン
次戦
2013年中国グランプリ
前回開催
2012年マレーシアグランプリ
  マレーシアグランプリ 次回開催
2014年マレーシアグランプリ