松亭金水

江戸時代後期の作家

松亭 金水(しょうてい きんすい、寛政9年(1797年) - 文久2年12月12日1863年1月31日))は、江戸時代後期の作家。人情本に名を残した。本名は中村保定、または経年。通称源八、源八郎。別号、積翠道人・拙作堂など。

略歴

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書道家谷金川の下で修業し、筆耕や手跡指南を生業とした[1]。戯作者の版下の筆耕を手がけるうちに、為永春水の浄写を通じて、戯作者の道へ入る[1]。金水の号は、金川と春水の両師から一字ずつ貰ったものである[1]。その文業は1831年(天保2年)刊『二十四孝稚教訓』に始まり、天保の改革で為永春水が1843年(天保5年)に筆を絶った後は、勧善懲悪的な人情本を手がけ、人情本末期の代表的作者となった[1]山東京伝善知安方忠義伝』や曲亭馬琴朝夷巡島記』など、他人の書き遺しを書き足して纏めた作もある[1]。その他、合巻随筆読本・図会なども書いた。作品に金水独自の特色は見られず、注文に応じて作品を書いた作家と評される[1]

神田大和町(現・東京都千代田区岩本町二丁目)に住んだ後、浅草寺地内、日本橋小伝馬町、北新道から本郷附木店に移るなど、各地を転々とした[1]

戒名は丁悟院金水日松居士。牛込榎町(現、東京都新宿区榎町の大法寺に葬ったが、同寺は1909年(明治42年)に杉並区松ノ木三丁目に移り、墓も改葬されている。

弟子に梅亭金鵞がいる。

作品

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  • 尾上梅幸名義、松亭金水作、渓斎英泉画『歌枕偽物語 初編』(合巻)、円寿堂板、天保2年(1831)
  • 『恋の花染』(人情本)、板元不詳、天保3年(1832)
  • 為永春水と合作『七国史伝』(読本)、板元不詳、天保4年(1833)
  • 『太平楽皇国性質』(随筆)、板元不詳、天保6年(1835)
  • 歌川国直画『比翼連理花廼志満台』(人情本)、板元不詳、天保7 - 9年(1836 - 1838)
  • 歌川国直画『盛衰栄枯娘太平記操早引』(人情本)の後半、板元不詳、天保10年(1839)(曲山人の没後を引き継ぐ)
  • 歌川貞重画『閑情末摘花 全5編』(人情本)、板元不詳、天保10年 - 12年(1839 - 1841)
  • 歌川貞房画『仇竸花夕栄』(合巻)、森屋治兵衞板、天保10年(1839)
  • 『花筺(かたみ)』(人情本)、板元不詳、天保12年(1841)
  • 歌川房清画『御年玉笑ふ門松』、板元不詳、弘化3年、(1846)
  • 松亭金水撰、歌川広重画『江都近郊名勝一覧』(図会)、三河屋善兵衛板、弘化4年(1847)
  • 『早引文字通』(辞書)、森屋治兵衛板、弘化4年(1847)
  • 歌川貞房画『勧善浮世車』(合巻)、森屋治兵衛板、弘化5年(1848)
  • 梅の本鶯斎画『積翠閑話』(随筆)、丁字屋平兵衛板、嘉永2年(1849)
  • 『松亭漫筆』(随筆)、丁子屋平兵衛ほか板、嘉永3年(1850)
  • 一寿斎国政歌川芳玉画『鴬墳梅赤本』(合巻)、三河屋鉄五郎版、嘉永3年 - 嘉永5年(1850 - 1852)
  • 歌川貞秀画『忠勇阿佐倉日記』(読本)、丁字屋平兵衛ほか板、嘉永5 - 7年(1852 - 1854)
  • 柳川重信画『日本百将伝一夕話』(読本)、河内屋茂兵衛板、嘉永6年 - 7年(1853 - 1854)
  • 歌川芳虎画『鶯塚千代廼初声 全4編のうちの第1、2編』(人情本)、文永堂板、安政3年(1856)
  • 『大川仁政録』(読本)、板元不詳、安政4年(1857)
  • 葛飾為斎画『曲亭馬琴編集:朝夷巡島記 全8編のうちの第7、8編』(読本)、若林清兵衛ほか板、安政5(1858)
  • 松亭金水撰、歌川広重画『江都近郊名勝一覧』(図会)、三河屋善兵衛板、安政5年(1858)
  • 葛飾為斎・柳川重信画『善知安方忠義伝 全3編のうちの第2、3編』(読本)、群玉堂板、万延元年(1860)
  • 『鞠唄三人娘』(人情本)、文久2年 - 慶応元年(1862 - 1865)

近年の復刻・改版

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  • 『積翠閑話』(「吉川弘文館 日本随筆大成 第2期第10巻(2007) ISBN 9784642040990」の中)
  • 『松亭漫筆』(「吉川弘文館 日本随筆大成 第3期第9巻(2007) ISBN 9784642041225]の中)
  • 『太平楽皇国性質』(「吉川弘文館 続日本随筆大成 9(2007) ISBN 9784642041560」の中)
  • 渓斎英泉画『今人俳諧図会』、江東区芭蕉記念館(2001)
  • 葛飾北斎画『新釈日蓮聖人一代図会』、立正善導協会(1996)
  • 『早引文字通』(「江戸時代流通字引大集成 R38、雄松堂フィルム出版(1990)」の中)
  • 松亭金水撰、歌川広重画『江都近郊名勝一覧』太平書屋(1987)
  • 『春情心の多気』太平書屋 珍本双刊 3(1981)

脚注

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  1. ^ a b c d e f g 日本古典文学大辞典編集委員会『日本古典文学大辞典第3巻』岩波書店、1984年6月、365頁。 

出典

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  • 山口剛:『人情本について』(『山口剛著作集 第4巻』、中央公論社(1972)所収)
  • 丸山季夫:『解題』(「吉川弘文館 日本随筆大成 第2期第10巻(2007)」p.4)

外部リンク

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  • 崔泰和「松亭金水の人情本における「伏線」:『毬唄三人娘』を中心に」『東京大学国文学論集』第5巻、東京大学文学部国文学研究室、2010年3月、107-122頁、doi:10.15083/00035137ISSN 18812139NAID 120002486762 
  • 内村和至「松亭金水の随筆をめぐって『太平楽皇国気質』を中心に」『明治大学人文科学研究所紀要』第43巻、明治大学人文科学研究所、1997年12月、181-197頁、ISSN 05433894NAID 120001440170 
  • 日本小説年表(山崎麓編)より - ウェイバックマシン(2019年3月30日アーカイブ分)