岳南電車岳南鉄道線

日本の静岡県富士市の吉原駅と岳南江尾駅を結ぶ岳南電車の鉄道路線
岳南鉄道岳南線から転送)

岳南鉄道線(がくなんてつどうせん)[2]は、静岡県富士市内の吉原駅岳南江尾駅とを結ぶ岳南電車鉄道路線である。

岳南電車 岳南鉄道線
富士山をバックに走る7000形電車 (吉原駅 - ジヤトコ前駅間 2021年2月)
富士山をバックに走る7000形電車
(吉原駅 - ジヤトコ前駅間 2021年2月)
基本情報
日本の旗 日本
所在地 静岡県
起点 吉原駅
終点 岳南江尾駅
駅数 10駅
路線記号 GD
開業 1949年11月18日
全通 1953年1月20日
所有者 岳南電車
運営者 岳南電車
使用車両 岳南電車#車両を参照
路線諸元
路線距離 9.2 km
軌間 1,067 mm狭軌
線路数 全線単線
電化方式 直流1,500 V 架空電車線方式
最大勾配 15.0
最小曲線半径 180 m
保安装置 ATS
最高速度 45 km/h[1]
テンプレートを表示
停車場・施設・接続路線
ABZq+l hKRZWaeq STRq
JR東海東海道本線
ABZqr hKRZWaeq STR+r
0.0 GD01 吉原駅
WABZgr STR
沼川
hSTR+l WKRZh KRZh
JR東海:東海道新幹線
LSTR WASSERl WBRÜCKE1
小潤井川
eDST
1.8 左富士信号所
BHF
2.3 GD02 ジヤトコ前駅
BHF
2.7 GD03 吉原本町駅
WBRÜCKE1
和田川
BHF
3.0 GD04 本吉原駅
WBRÜCKE1
田宿川
eDST
3.7 田宿信号所
BHF
4.4 GD05 岳南原田駅
WBRÜCKE1
滝川
BHF
5.4 GD06 比奈駅
BHF
6.4 GD07 岳南富士岡駅
WBRÜCKE1
赤淵川
BHF
7.3 GD08 須津駅
WBRÜCKE1
須津川
LSTR BHF
8.2 GD09 神谷駅
hSTRl hSTRq KRZh
東海道新幹線
KBHFe
9.2 GD10 岳南江尾駅

2013年(平成25年)3月までは岳南鉄道によって運営されていたが、貨物輸送の廃止に伴う収益悪化を背景に、同年4月より岳南鉄道の鉄道部門が岳南電車として分社化された[3]岳南線、もしくは岳南電車線とも称する。

路線データ

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運行形態・使用車両

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旅客列車は全列車各駅停車で吉原駅 - 岳南江尾駅間の直通運転である。途中の岳南富士岡駅の構内に車庫と検修設備がある。途中駅発着の区間列車は設定されていない。完全なパターンダイヤは採用されていないが、旅客列車は基本的に20 - 30分間隔で運行されている。途中の本吉原駅岳南原田駅比奈駅岳南富士岡駅須津駅のいずれかで列車交換する。なお、日中は本吉原駅・岳南原田駅・比奈駅のいずれかのみで列車交換を行う。また、吉原駅でのJR東海道線との接続を考慮しているためか時間帯により交換駅は変動する。岳南江尾駅発の始発は6時10分、吉原駅発の最終は22時25分(平日)である[5]。下り吉原駅発の終電車は平日と土曜・休日で時刻が異なる。

朝や夕方などの通勤・帰宅時間帯は通常岳南江尾駅にて留置されている2両固定編成の8000形電車が運用され、それ以外の時間帯は単行(1両編成)の7000形電車と2両編成の9000形電車が使用される。8000形が運用されている間は7000形は岳南江尾駅に留置され、夜間は3編成ある7000形のうち1編成と8000形は岳南江尾駅に、2編成目の7000形は吉原駅に留置される。但し平日朝のみ、前述の3編成がすべて使用される。もう1編成の7000形は岳南富士岡駅にて留置されており、稼働中の2編成のどちらかが定期検査などで動けないときに運行され、運転士の研修にも利用される。なお、定期検査が生じた時の車両交換のため、日中に岳南富士岡駅 - 岳南江尾駅間に1往復の不定期回送列車が設定されているが、回送せずに岳南富士岡駅で車両交換する場合もある。

なお、7000形のうち7002と7003の2両は総括連結運転ができるようになっており、吉原祇園祭毘沙門天大祭などの多客時には連結して運転されたこともある。7000形の総括運転時の画像が2012年度安全報告書の1ページ目に掲載されている。

1970年代までは定期列車のほかに工場勤務者のための臨時増発列車が多数運転され、吉原駅 - 岳南富士岡駅間、吉原駅 - 須津駅間での区間運転の設定もあった。また、2012年3月16日まで貨物列車が運行されていた。貨物列車廃止直前のダイヤでは、吉原駅 - 比奈駅間に1日4往復の貨物列車が設定されていた。基本的に有蓋車のみで編成されていたが、少ないながらコンテナ車が連結される列車があった。

2014年7月に鉄道本体としては初めて、日本夜景遺産に認定され[6]、現在では8000形2両編成のうち、前1両は通常通り照明をつけて運行し、後ろの1両の照明を消して走る「夜景電車」が月に数回、週末に運行されている。この夜景電車は普通乗車券、定期券、回数券、フリー乗車券のみで利用できる。2014年に初めて運行[7]。2015年6月から月1回1往復の定期運行が開始され[8]、2015年12月より2往復に増便された[9]。2016年4月には「工場夜景電車」の運行が開始され[10]、月2回の運行となった。2019年11月には完全予約制の貸切電車として「ナイトビュープレミアムトレイン」も運行されている[7](2020年6月から新型コロナウイルス感染症対策として通常の夜景電車も予約定員制となっている[11])。

2020年4月29日からは新型コロナウイルス感染症の影響で、土休日ダイヤに限り、最終電車の上下各1本を繰り上げて運行している。

輸送状況

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2009年度 年間輸送
  旅客乗車 旅客降車 貨物発送 貨物到着
全体 766,387人 766,387人 64,286t 2,405t
吉原 425,179人 225,589人 - -
ジヤトコ前 8,680人 22,240人 - -
吉原本町 182,799人 229,942人 - -
本吉原 31,340人 80,021人 - -
岳南原田 23,428人 52,678人 10,725t -
比奈 19,897人 20,057人 53,561t 2,405t
岳南富士岡 38,134人 48,919人 - -
須津 17,995人 38,329人 - -
神谷 12,465人 29,129人 - -
岳南江尾 6,470人 19,483人 - -

利用状況

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沿線には工場が立ち並び、最盛期には99.9万トン(1969年)の貨物輸送量があった。その後、トラック輸送への転換が進み、14万トン(1999年)にまで落ち込んで、1991年以降は旅客収入が貨物収入を上回っている。その旅客収入も最盛期の6分の1まで落ち込んでいる。

輸送実績

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岳南鉄道線の輸送実績を下表に記す。輸送量は激減しているが、最近では減少幅が小さくなっている。 表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。

年度別輸送実績(岳南鉄道線)
年度 輸送実績(乗車人員):万人 輸送密度
人/日
貨物輸送量
万t
特記事項
通勤定期 通学定期 通勤通学
定期計
定期外 合計
1967年(昭和42年) 205.8 166.1 371.9 138.8 510.7 6,034 65.6 旅客輸送量最大を記録
1969年(昭和44年) 179.4 150.3 329.7 130.3 460.0 5,472 99.9 貨物輸送量最大を記録
1975年(昭和50年) 85.5 113.3 198.8 86.3 285.1 3,405 60.5  
1976年(昭和51年) 64.7 104.3 169.0 83.3 252.3 3,252 60.5  
1977年(昭和52年) 48.8 85.9 134.7 68.7 203.4 2,563 54.8  
1978年(昭和53年) 46.0 75.8 121.8 82.2 204.0 2,392 51.2  
1979年(昭和54年) 45.2 66.0 111.3 73.8 185.1 2,205 53.4  
1980年(昭和55年) 43.0 61.3 104.3 74.9 179.3 2,143 46.7  
1981年(昭和56年) 44.1 57.7 101.9 77.1 179.0 2,150 45.2  
1982年(昭和57年) 44.5 46.4 90.9 74.7 165.6 1,972 40.7  
1983年(昭和58年) 43.7 40.7 84.4 72.6 157.0 1,873 36.4  
1984年(昭和59年) 41.3 39.4 80.7 70.3 151.0 1,806 31.1  
1985年(昭和60年) 38.8 38.9 77.7 71.5 149.2 1,561 29.1  
1986年(昭和61年) 37.4 41.2 78.6 68.7 147.3 1,798 23.6  
1987年(昭和62年) 35.0 43.7 78.7 68.7 147.4 1,786 22.2  
1988年(昭和63年) 32.9 40.5 73.4 64.7 138.1 1,677 29.5  
1989年(平成元年) 34.2 42.2 76.4 71.5 147.9 1,769 27.7  
1990年(平成2年) 33.9 43.5 77.4 68.0 145.4 1,731 26.2  
1991年(平成3年) 36.6 39.9 76.5 69.1 145.6 1,752 24.5  
1992年(平成4年) 33.9 38.7 72.6 68.1 140.7 1,711 23.8  
1993年(平成5年) 33.2 35.9 69.1 67.5 136.6 1,663 24.0  
1994年(平成6年) 29.1 30.7 59.8 59.5 119.3 1,453 22.9  
1995年(平成7年) 28.5 29.6 58.1 58.3 116.4 1,403 20.7  
1996年(平成8年) 26.0 25.8 51.8 58.5 110.3 1,365 16.5 新型電車(7000型1両)導入
1997年(平成9年) 24.0 24.4 48.4 56.2 104.6 1,297 17.0 新型電車(7000型1両)導入
1998年(平成10年) 20.6 19.2 39.8 51.0 90.8 1,125 14.0  
1999年(平成11年) 17.9 15.7 33.6 47.3 80.9 995 14.1  
2000年(平成12年) 16.6 14.0 30.6 44.1 74.7 919 14.6  
2001年(平成13年) 18.1 12.2 30.3 41.8 72.1 883 15.2  
2002年(平成14年) 17.3 9.3 26.6 41.5 68.1 825 12.5 新型電車(8000型2両)導入
2003年(平成15年) 16.9 8.1 25.0 41.9 66.9 806 11.2  
2004年(平成16年) 18.6 9.2 27.8 41.2 69.0 827 12.2  
2005年(平成17年) 18.9 11.2 30.1 40.7 70.8 841 13.4  
2006年(平成18年) 21.3 10.2 31.5 42.3 73.8 874 11.9  
2007年(平成19年) 21.8 10.0 31.8 41.4 73.2 862 9.3  
2008年(平成20年) 24.2 9.4 33.6 41.0 74.6 869 8.5  
2009年(平成21年) 24.3 9.4 33.7 42.9 76.6 871 6.7  
2010年(平成22年) 25.2 9.9 35.1 42.2 77.3 877 6.4  
2011年(平成23年)         74.3      
2012年(平成24年) 24.8 7.9 32.7 43.5 76.2 856 0  
2013年(平成25年) 25.7 8.0 33.7 43.6 77.3 870 0  
2014年(平成26年) 23.3 6.8 30.1 44.8 74.9 869 0  
2015年(平成27年) 25.0 8.5 33.5 47.1 80.6 966 0  
2016年(平成28年) 25.1 9.0 34.1 49.4 83.5 1,001 0  
2017年(平成29年) 27.8 10.7 38.5 47.7 86.2 1,034 0 [12]
2018年(平成30年) 27.2 10.9 38.1 48.5 86.6 1,048 0 [13]
2019年(令和元年) 22.3 11.2 33.5 48.0 81.5 1,004 0
2020年(令和2年) 23.6 7.8 31.4 31.4 62.8 764 0

営業成績

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岳南鉄道線の営業成績を下表に記す。営業収益は年々減少している。 表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。

年度別営業成績
年度 旅客運賃収入:千円 貨物運輸
収入
千円
運輸雑収
千円
営業収益
千円
営業経費
千円
営業損益
千円
営業
係数
通勤定期 通学定期 通勤通学
定期計
定期外 手小荷物 合計
1975年(昭和50年)     77,576 63,701 2,247 143,524 175,541 32,460 351,525      
1976年(昭和51年)     69,750 62,188 2,691 134,629 207,790 38,790 381,209      
1977年(昭和52年)     76,355 68,285 2,419 147,059 240,444 42,583 430,086      
1978年(昭和53年)     70,096 81,239 2,337 153,672 232,064 45,701 431,437      
1979年(昭和54年)     69,500 80,992 2,105 152,597 264,422 50,392 467,411      
1980年(昭和55年)     66,854 84,493 1,460 152,807 269,725 46,139 468,671      
1981年(昭和56年)     71,224 92,565 1,086 164,875 276,274 50,652 491,801      
1982年(昭和57年)     66,318 90,975 567 157,860 253,517 46,201 457,578      
1983年(昭和58年)     65,158 93,327 240 158,725 229,515 46,820 435,060      
1984年(昭和59年)     63,830 92,933 100 156,763 215,780 40,234 412,877      
1985年(昭和60年)     63,384 97,453 1 160,838 211,225 41,840 413,903      
1986年(昭和61年)     66,789 98,283 0 165,072 169,118 38,588 372,778      
1987年(昭和62年) 35,423 30,684 66,107 97,850 0 163,957 151,954 43,955 359,866      
1988年(昭和63年) 32,753 28,343 61,096 93,181 0 154,277 194,872 53,647 402,796      
1989年(平成元年) 34,125 28,515 62,640 102,358 0 164,998 179,069 60,890 404,957      
1990年(平成2年) 34,135 31,144 65,279 102,349 0 167,628 171,992 59,452 399,072      
1991年(平成3年) 38,351 29,744 68,095 105,348 0 173,443 168,187 52,516 394,146      
1992年(平成4年) 34,900 29,330 64,230 104,327 0 168,557 163,875 52,956 385,388      
1993年(平成5年) 34,310 27,263 61,573 103,645 0 165,218 162,999 58,646 386,863      
1994年(平成6年) 30,263 22,895 53,158 91,630 0 144,788 152,968 58,528 356,284      
1995年(平成7年) 31,445 22,816 54,261 97,334 0 151,595 137,463 57,447 346,505      
1996年(平成8年) 29,860 20,950 50,810 99,555 0 150,365 108,906 49,108 308,379      
1997年(平成9年) 26,960 19,819 46,779 94,195 0 140,974 112,110 44,606 297,690      
1998年(平成10年) 28,721 18,554 47,275 103,518 0 150,793 91,851 43,561 286,205      
1999年(平成11年) 24,757 15,139 39,896 95,938 0 135,834 90,600 39,998 266,432      
2000年(平成12年) 22,911 13,408 36,319 89,539 0 125,858 93,502 40,791 260,151      
2001年(平成13年) 25,083 11,929 37,012 85,161 0 122,173 98,392 41,139 261,704      
2002年(平成14年) 23,790 9,019 32,809 84,433 0 117,242 80,136 41,420 238,798      
2003年(平成15年) 23,368 8,251 31,619 84,897 0 116,516 71,205 35,637  223,358      
2004年(平成16年) 25,607 8,798 34,405 83,625 0 118,030 79,481 53,254 250,764      
2005年(平成17年) 25,757 10,813 36,570 81,695 0 118,265 88,927 58,160 265,352      
2006年(平成18年) 28,846 10,099 38,945 85,072 0 124,017 78,944 51,752 254,713 301,121 △46,408 118.2
2007年(平成19年) 29,356 9,888 39,244 83,297 0 122,541 61,163 42,684 226,388 279,008 △52,620 123.2
2008年(平成20年) 32,485 9,194 41,679 82,373 0 124,052 57,036 48,336 229,424 285,889 △56,465 124.6
2009年(平成21年) 32,689 9,043 41,732 85,188 0 126,920 44,727 56,885 228,532 276,280 △47,748 120.9
2010年(平成22年)     43,520 83,359 0 126,879 43,179 40,749 210,808      
2011年(平成23年)                        
2012年(平成24年)     40,943 86,211 0 127,154 0 43,556 170,710 258,682 △87,972 151.5
2013年(平成25年)     41,764 86,617 0 128,381 0 28,922 157,303 232,541 △75,238 147.8
2014年(平成26年)     37,820 89,817 0 127,637 0 29,913 157,550 231,324 △73,774 146.8
2015年(平成27年)     41,766 96,016 0 137,782 0 28,711 166,493 237,441 △70,948 142.6
2016年(平成28年)     41,947 100,495 0 142,442 0 41,132 183,574 220,335 △36,761 120.0
2017年(平成29年)     47,835 95,919 0 143,754 0 31,351 175,105 251,499 △76,394 143.6
2018年(平成30年)     47,191 98,769 0 145,960 0 34,059 180,019 241,068 △61,049 133.9
2019年(令和元年)     42,664 97,754 0 140,418 0 33,077 173,495 243,126 △69,631 140.1
2020年(令和2年)     40,820 63,646 0 104,466 0 28,789 133,255 227,440 △94,185 170.7

歴史

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ED40形牽引の貨物列車。沿線には製紙工場が多く、貨物輸送は紙製品が中心。(2008年)
 
吉原駅に停車している7000形電車。
(2009年)

吉原東海道の宿場町であったが、東海道本線は町の近くを通らず、町外れに鈴川駅(現吉原駅)が設置されただけであった。戦後になって、鈴川駅と吉原の中心部とを結ぶ鉄道として開業した。鈴川 - 旧左富士信号所間は、戦前に敷設された日産重工業(現日産自動車)の専用鉄道を利用した。

第二期工事として、旧左富士信号所付近から国鉄の身延線入山瀬駅までを結ぶ案(西部線。#西部線計画の節参照)、岳南江尾駅から沼津方面への延伸も計画されていたが、資金難で中止され、事業免許も後に失効した[14]

貨物輸送全盛期には、引込線や専用線の総延長が本線の総延長を上回っていたという逸話もある。しかしながら、2011年1月に日本貨物鉄道(JR貨物)の合理化により2012年春以降の貨物輸送の休止が通告され[15]、そして2012年3月16日限りで岳南鉄道を支えていた貨物列車の運行を終了し、貨物の取り扱いを廃止した。

これを受けて岳南鉄道は、2011年12月16日に富士市公共交通協議会に対して、貨物列車の運行の終了による採算の悪化から、今後の運行継続が困難であるとの申し出を行った[16]。これに対して、富士市の鈴木尚市長は2012年8月3日の午前中に行われた定例会見で2014年度までの公的支援を行うことを表明した。同年度以降については、収支改善の見通しや、利用状況、市民の意見などから総合的に判断するとされた[17][18]。岳南鉄道はその後、2013年4月1日より鉄道路線の運営を、子会社の岳南電車株式会社に移管している。

年表

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  • 1936年(昭和11年)8月5日 : 日産重工業専用鉄道の使用開始。
  • 1949年(昭和24年)11月18日 : 岳南鉄道により鈴川駅(現・吉原駅) - 吉原本町駅間が開業。
  • 1950年(昭和25年)4月18日 : 吉原本町駅 - 吉原駅(現・本吉原駅)間が開業。
  • 1951年(昭和26年)12月20日 : 吉原駅 - 岳南富士岡駅間が開業。
  • 1953年(昭和28年)1月20日 : 岳南富士岡駅 - 岳南江尾駅間が開業、全線開通。
  • 1956年(昭和31年)4月10日 : 鈴川駅を吉原駅に、吉原駅を本吉原駅に改称。
  • 1969年(昭和44年)
    • 9月10日 : 架線電圧を600Vから1500Vに昇圧。
    • 9月30日 : 吉原駅 - 左富士信号所間で電車と貨車が衝突。126人が重軽傷を負う事故となった[19]
  • 1982年(昭和57年)
    • 8月3日:吉原駅 - 日産前駅間の左富士信号所廃止[20]
    • 11月15日:本吉原駅 - 岳南原田駅間の田宿信号所廃止[20]
  • 1984年(昭和59年)2月1日 : 須津 - 岳南江尾間の貨物営業廃止[21]
  • 1997年(平成9年)
  • 2005年(平成17年)4月1日 : 日産前駅をジヤトコ前(ジヤトコ1地区前)駅に改称。
  • 2012年(平成24年)3月17日 : 貨物列車の運行廃止。貨物を取り扱っていた比奈駅が無人駅化。これにより有人駅は吉原駅・吉原本町駅・岳南原田駅・岳南富士岡駅の4駅となる。
  • 2013年(平成25年)4月1日 : 路線の運営を岳南鉄道から岳南電車に移管[3]
  • 2014年(平成26年)7月18日 : 日本夜景遺産に認定される[6]
  • 2020年度 : 岳南鉄道線沿いに敷設した送電線を使い電力供給開始(予定)[23]

駅一覧

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駅番号 駅名 駅間
営業キロ
累計
営業キロ
接続路線 線路
GD01 吉原駅 - 0.0 東海旅客鉄道  東海道本線 (CA07)
GD02 ジヤトコ前駅
(ジヤトコ1地区前)
2.3 2.3  
GD03 吉原本町駅 0.4 2.7  
GD04 本吉原駅 0.3 3.0  
GD05 岳南原田駅 1.4 4.4  
GD06 比奈駅 1.0 5.4  
GD07 岳南富士岡駅 1.0 6.4  
GD08 須津駅 0.9 7.3  
GD09 神谷駅 0.9 8.2  
GD10 岳南江尾駅 1.0 9.2  

廃駅・廃止信号所

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  • 左富士信号所:1982年8月3日廃止、吉原駅 - 日産前(現・ジヤトコ前)駅間
  • 田宿信号所:1982年11月15日廃止、本吉原駅 - 岳南原田駅間

西部線計画

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年表

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計画されていた駅

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日産前駅吉原本町駅[注釈 1] - 新吉原駅(停車場) - 新追分駅(停車場) - 宮川町駅(停留場) - 伝法学校前(停車場) - 中桁駅(停車場) - 久沢駅(停留場) - 入山瀬駅[14]

その他

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映像外部リンク
  『幕が上がる』映画予告編 - YouTube
0:52からのシーンは比奈駅で撮影。その他のシーンは映画本編で観られる。
  • 2015年には、踊る大捜査線シリーズで知られる、本広克行が監督を務める青春映画『幕が上がる』の重要なシーンに岳南鉄道線が使われた。公開記念切符が発売され、ヘッドマークをつけた『幕が上がる号』を期間限定で運行[24]
  • 激減する鉄道輸送の活性化方策の一つとして、2006年11月より北海道旅客鉄道(JR北海道)から線路と道路を走行できるデュアル・モード・ビークル (DMV) を借り入れ、同月24日から3日間、市場踏切 - 岳南原田駅間でテスト走行を行った。この結果を受けて、2007年1月に富士市民のモニター参加者を乗せてデモ走行を行った。道路での運行は富士急行富士急静岡バスが担当した。
  • 岳南富士岡駅近くの踏切など一部の踏切では今では貴重になった電鈴式踏切がある[25]
  • 2012年6月1日から10月31日まで、岳南江尾駅 - JR東海道線東田子の浦駅間でシャトルバスの実験運行が行われた[26][27]。運賃は100円で、岳南鉄道からの乗り継ぎ利用者は運賃を無料などに優遇していた[27]
  • 2015年9月には、岳南電車・富士市・日本電気 (NEC)・ヒラテ技研が共同で、コジェネレーションなどによって発電した電気を岳南鉄道線の架線柱に張った送電線で沿線施設へ供給する実験を行う計画があることが明らかにされた[28][29][30]。2017年7月には富士市が東京電力エナジーパートナーJFEエンジニアリング静岡ガス、テス・エンジニアリングの4社と協定を結び、2017年度までに実現可能性の評価をまとめ、2020年度をめどに事業を開始することになった[23]
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で経営が悪化したことに対し、2021年4月に「吉原駅での運転体験」を目標としたクラウドファンディングを実施。2021年6月の〆切までに約1,300万円の支援を得た[31]。この資金を元に吉原駅の側線や7000形電車の改修を行い、2022年4月より運転体験(要予約、また2022年現在は1人15,000円の参加費用が必要)を実施している[32]

脚注

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注釈

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  1. ^ 計画では、線路は日産前、吉原本町両駅から共に分岐し、新吉原駅で合流するというデルタ線の形をとっていた[14]

出典

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  1. ^ a b 寺田裕一『日本のローカル私鉄 (2000)』 - ネコ・パブリッシング
  2. ^ 国土交通省鉄道局 監修鉄道要覧』(令和4年度版)電気車研究会、2022年10月。ISBN 9784885481352 
  3. ^ a b “岳南鉄道、鉄道事業を分割し4月子会社設立”. 日本経済新聞. (2013年1月25日). https://www.nikkei.com/article/DGXNZO50949390U3A120C1L61000/ 2013年1月27日閲覧。 
  4. ^ よくある質問 岳南電車 - 岳南電車、2021年11月3日閲覧
  5. ^ 交通新聞社『JR時刻表』 2018年7月号
  6. ^ a b 岳南電車が「日本夜景遺産」認定-鉄道本体としては日本初 - 富士山経済新聞、2014年7月25日
  7. ^ a b “光る切符限定販売、特別列車を運行 岳鉄、15日に予約開始”. 静岡新聞 (静岡新聞社). (2019年10月14日). https://www.c.com/news/article/topics/shizuoka/693579.html 
  8. ^ “「夜景電車」定期運行スタート 富士・岳南電車”. 静岡新聞 (静岡新聞社). (2015年6月30日). オリジナルの2016年6月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160603140643/http://www.at-s.com/news/article/local/east/55509.html 2020年9月27日閲覧。 
  9. ^ “岳南鉄道「夜景電車」 好評、月2便に増便へ 富士”. 静岡新聞 (静岡新聞社). (2015年12月17日). オリジナルの/2015-12-20時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151220013020/http://www.at-s.com/news/article/topics/shizuoka/193510.html 2020年9月27日閲覧。 
  10. ^ 岳南鉄道線岳南原田-比奈間ライトアップ!!「工場夜景電車」運行 - 岳南鉄道サポーターズクラブ、2016年4月22日
  11. ^ 【ご注意】6月27日の夜景電車の運転について - 岳南鉄道、2020年6月14日
  12. ^ 国土交通省中部運輸局 数字で見る中部の運輸 2019 2020年9月26日閲覧
  13. ^ 国土交通省中部運輸局 数字で見る中部の運輸 2020 2020年9月26日閲覧
  14. ^ a b c d e f g 鉄道ジャーナル鉄道ジャーナル社)2020年7月号 114 - 117頁 草町義和「公文書でたどる鉄道裏史(5) 私鉄文書で見つけた弾丸列車の痕跡」
  15. ^ 2011年6月17日付 富士ニュース
  16. ^ 富士市公共交通協議会 平成23年度第4回 議事録 (PDF) - 富士市、2011年12月16日
  17. ^ 岳南鉄道の存続に係る公的支援について (PDF) - 富士市都市計画課、2012年8月3日
  18. ^ 14年度まで公的支援 岳南鉄道存続へ 富士市方針 - 静岡新聞、2012年8月3日
  19. ^ 「貨車運転士ら逮捕 岳南鉄道」昭和44年(1974年)10月1日朝刊、12版、15面
  20. ^ a b 今尾恵介監修『日本鉄道旅行地図帳』7号 東海、新潮社、2008年、p.29
  21. ^ “五私鉄の旅客、貨物営業廃止を軽微認定”. 交通新聞 (交通協力会): p. 1. (1984年1月25日) 
  22. ^ 鉄道ジャーナル』第32巻第4号、鉄道ジャーナル社、1998年4月、98頁。 
  23. ^ a b “富士市、岳南線活用した電力事業 東電系など4社と協定”. 日本経済新聞. (2017年7月7日). https://www.nikkei.com/article/DGKKZO1856661006072017L61000/ 2017年10月24日閲覧。 
  24. ^ 概要 (PDF)
  25. ^ メッセージは「ん!?」だけ 踏切の試験動画が話題 岳南電車「ファンなら気づいてくれるかな」”. 乗りものニュース. メディア・ヴァーグ (2021年12月11日). 2024年5月6日閲覧。
  26. ^ 岳南江尾駅と東田子の浦駅を結ぶシャトルバス 実験運行を開始”. fuji-news.net. 富士ニュース. 2015年5月2日閲覧。
  27. ^ a b 新しいコミュニティバスを運行します」『広報ふじ』第1032号、富士市、2020年5月20日、8頁。 
  28. ^ 岳南電車、沿線施設への電力供給を検討へ - レスポンス、2015年9月26日
  29. ^ ローカル線を地域送電に活用 岳南電車で新エネ実験:社会 - 東京新聞、2015年9月30日
  30. ^ NEC、ローカル鉄道を使って電力を共有するスマートシティ構想 - 2015年09月14日
  31. ^ 「岳南電車7000形25周年記念運転体験プロジェクト」 - CampFire
  32. ^ 本物の電車で運転体験!鉄道ファンじゃなくても心惹かれる「岳南電車」の魅力 - @S・2022年5月13日

外部リンク

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