国立文化財機構
独立行政法人国立文化財機構(こくりつぶんかざいきこう、英:National Institutes for Cultural Heritage)は、文化庁所管の中期目標管理法人たる独立行政法人。
独立行政法人国立文化財機構 | |
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本部が入居する東京国立博物館 | |
正式名称 | 独立行政法人国立文化財機構 |
英語名称 | National Institutes for Cultural Heritage |
組織形態 | 独立行政法人 |
所在地 |
日本 〒110-0007 東京都台東区上野公園13番9号 東京国立博物館内 |
法人番号 | 3010505001183 |
資本金 | 1,047億1,381万3,740円(2015年3月31日現在) |
負債 | 87億7,958万4,962円(2015年3月31日現在) |
人数 | 役員6人(理事長1、理事3、監事2)・常勤職員401人(2021年10月1日現在) |
理事長 | 島谷弘幸 |
目的 | 貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を図ること |
設立年月日 | 2007年4月1日 |
前身 |
独立行政法人国立博物館 独立行政法人文化財研究所 |
所管 | 文化庁 |
保有施設 |
東京国立博物館 京都国立博物館 奈良国立博物館 九州国立博物館 東京文化財研究所 奈良文化財研究所 アジア太平洋無形文化遺産研究センター 文化財活用センター 文化財防災センター |
提供サービス |
e国宝 ColBase |
ウェブサイト | https://www.nich.go.jp/ |
独立行政法人国立博物館と独立行政法人文化財研究所が統合して2007年4月に設置された。役職員は非公務員型。法人本部所在地は東京国立博物館内。主務大臣は、文部科学大臣。文部科学省内における所掌部署は、文化庁文化財部美術学芸課美術館・歴史博物館室。
有形文化財を収集・保管し国民の観覧に供するとともに、調査・研究により文化財の保存と活用を図ることを目的としている(独立行政法人国立文化財機構法第3条「機構の目的」より)。
沿革
編集設立
編集1999年に独立行政法人国立博物館法、独立行政法人国立美術館法、独立行政法人国立科学博物館法が施行され、2001年に国立博物館は独立行政法人化する[1]。その後、2007年4月1日に国立博物館は国立文化財研究所と統合され、独立行政法人国立文化財機構となった[1][2][3]。これにより、東京、京都、奈良、九州の国立博物館と、東京、奈良の文化財研究所が束ねられた[4]。
統廃合の検討
編集民主党政権下では、国立美術館や国立文化財機構など3法人を統合する方針が掲げられた[5]。実際、2010年に行われた鳩山由紀夫政権の第二次事業仕分けでは、国立美術館と国立文化財機構が仕分け対象とされたが[6]、結局「規模拡充」と結論づけられた[7]。なお、仕分け人からは「館の施設を結婚披露宴やパーティーの会場として貸し出してでも自己収入を増やすように」という趣旨の発言があったとされる[8]。
また、2013年にも、行政改革推進会議が国立美術館と国立文化財機構の統合案を示したが、青柳正規文化庁長官は統合に強く反対し「逆に、それぞれの人や予算を増やすべきだ」と主張した[9]。結局、2013年12月に行政改革推進会議(議長は安倍晋三首相)がまとめた独立行政法人改革案では、美術館と博物館の役割の違いを考慮して統合が見送られている[5][10]。
展開
編集2011年には、国立文化財機構アジア太平洋無形文化遺産研究センターが大阪府堺市に開設される[11][12]。本センターはユネスコが賛助し、国立文化財機構が運営にあたることとなった[11]。また、2014年には、東日本大震災での文化財レスキュー事業をきっかけに、災害に備える取り組みとして文化財防災ネットワークが国立文化財機構の中に発足する[13][14]。さらに2017年には、ウェブサイト「Colbase」で傘下の国立博物館の収蔵品画像約9500件を無料でダウンロードできるようになった[15]。
2018年には文化財のデジタルデータ化やレプリカの作成などを進めるための「文化財活用センター」が開設される[16]。本センターには、文化財のVRやレプリカが設置されたほか[17]、東京、京都、奈良、九州の4つの国立博物館が収蔵する文化財を各地の博物館・美術館に貸し出すための相談窓口も設けられた[16]。さらに2020年には、文化財の減災、救援のための体制づくり、技術開発、災害時の文化財救援活動支援を使命とした「文化財防災センター」が設置された[18][19][註 1]。
また、2022年8月23日には、松野博一官房長官が、皇室ゆかりの美術品などを収蔵、展示する「三の丸尚蔵館」の新施設が翌年秋に皇居内で開館するのに合わせ、2023年10月1日に、管理・運営を宮内庁から文化庁所管の国立文化財機構に移管すると発表した[21]。本件の狙いは、国立文化財機構の保存や公開のノウハウを共有することとされる[22]。
歴代理事長
編集代 | 氏名 | 在任期間 | 前職 |
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初代 | 佐々木丞平 | 2007年4月 - 2017年3月 | 京都大学名誉教授 |
2代 | 松村恵司 | 2017年4月 - 2021年3月 | 国立文化財機構理事 |
3代 | 島谷弘幸 | 2021年4月 - 現職 | 九州国立博物館館長 |
施設・組織
編集傘下の施設と組織は次のとおり。
- 東京国立博物館
- 京都国立博物館
- 奈良国立博物館
- 九州国立博物館
- 東京文化財研究所
- 奈良文化財研究所
- アジア太平洋無形文化遺産研究センター
- 文化財活用センター
- 文化財防災センター
- 皇居三の丸尚蔵館 - 2023年(令和5年)10月より運営受託。
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東京国立博物館
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京都国立博物館
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奈良国立博物館
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九州国立博物館
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皇居三の丸尚蔵館
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東京文化財研究所
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奈良文化財研究所
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b 浜田弘明「博物館の歴史と現在 日本」『博物館の理論と教育 (シリーズ現代博物館学 1)』、朝倉書店、2014年、41頁、ISBN 9784254105674。
- ^ 井上敏「博物館の関連法令」『博物館の理論と教育 (シリーズ現代博物館学 1)』、朝倉書店、2014年、44頁、ISBN 9784254105674。
- ^ 田辺征夫「(古代はいま:1)文化財、受難の時代 奈文研、新たな挑戦 /奈良県」『朝日新聞 朝刊』奈良全県地方2面、2007年5月19日、25ページ。
- ^ 今井邦彦「「博物館・美術館、健康的生活に不可欠」 島谷弘幸・九博館長 国立文化財機構理事長に就任/西部・共通」『朝日新聞 朝刊』福岡全県地方2面、2021年7月21日、24ページ。
- ^ a b 「独法100から86に再編 消費増税にらみ行政ムダ削減 政府案」『日本経済新聞』2013年12月13日。
- ^ 「芸術予算の必要性、どう説明 2独法事業仕分け 文化庁」『朝日新聞 朝刊』朝刊文化面、2010年4月10日、25ページ。
- ^ 「事業仕分け第2弾、2日目の判定 操縦士養成、削減検討 宇宙広報施設「廃止」」『朝日新聞 朝刊』政治政策面、2010年4月27日、4ページ。
- ^ 赤田康和「(深層新層)理想追えぬむなしさ 国立美術館・博物館の事業仕分け」『朝日新聞 夕刊』文化面、2010年5月21日、7ページ。
- ^ 藤井裕介「「流れに逆行」文化庁長官が反対 国立美術館と国立文化財機構の統合案」『朝日新聞 朝刊』朝刊文化1面、2013年11月13日、22ページ。
- ^ 藤井裕介「統合せず存続へ 国立美術館・文化財機構」『朝日新聞 朝刊』朝刊文化1面、2014年1月8日、31ページ。
- ^ a b 向井大輔「文楽など継承へ、堺で19日シンポ 【大阪】」『朝日新聞 夕刊』2016年11月9日、4ページ。
- ^ 「無形遺産、堺に研究拠点開設 【大阪】」『朝日新聞 朝刊』社会3面、2011年10月4日、33ページ。
- ^ 渡辺元史「文化財、災害から守る拠点 きょう、奈文研にセンター開設 【大阪】」『朝日新聞 朝刊』社会3面、2020年10月1日、27日。
- ^ 湯瀬里佐「(列島をあるく)震災10年、そして 被災文化財、救出に力集結 /北海道」『朝日新聞 朝刊』道2面、2021年2月3日、24ページ。
- ^ 「ムンクもクリムトも画像開放 著作権切れ作品、自由に利用可 愛知県美「世界標準」試み」『朝日新聞 朝刊』文化文芸面、2019年3月5日、33ページ。
- ^ a b 「国立文化財機構、文化財活用センターを開設」『日本経済新聞』2018年7月2日。
- ^ 上田真由美「文化財を「体感」、VRやレプリカ開発へ 東京・上野に活用センター」『朝日新聞 朝刊』総合4面、2018年7月3日、4ページ。
- ^ 「神戸発、歴史資料救出の輪 阪神大震災を契機に」『日本経済新聞』2022年1月6日。
- ^ 奥村弘「文化財レスキュー」『災害復興学事典』、朝倉書店、2023年、213頁、ISBN 9784254500363。
- ^ a b c 久保智祥「被災の文化財、救出・復旧へ 派遣事業、県庁で初会合 /石川県」『朝日新聞 朝刊』石川全県1地方面、25ページ、2024年2月18日。
- ^ 「三の丸尚蔵館、独法運営に 文化庁所管、展示充実へ」『日本経済新聞』2022年8月23日。
- ^ 「眠る皇室ゆかりの品、積極活用へ 皇居三の丸尚蔵館、新装開館」『朝日新聞 朝刊』2023年11月26日、22ページ。