スカラー三重積(英: scalar triple product)は三つのベクトルから擬スカラー値を返す三項演算、すなわち、2つのベクトルのクロス積から作られる擬ベクトルと残りのベクトルとのドット積
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である。
幾何学的にはスカラー三重積は三つのベクトル a, b, c によって定義される平行六面体の有向体積 (符号のついた体積) を表す。
スカラー三重積が0でないなら、三つのベクトルは線形独立である。スカラー三重積が0なら三つのベクトルは線形従属であり、共面 (一つの平面に含まれる) となる。なぜなら、体積が0とは平行六面体が潰れていることを意味するからである。
代数学的にはスカラー三重積は各ベクトルを並べて作った3 × 3行列の行列式に等しい。
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ここで εi,j,k はエディントンのイプシロンである。これより、a・(b×c) はどの要素の置換に対しても反対称である。
また、以下の性質が成り立つ。
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1番目の等式により順番だけが重要なので、スカラー三重積を [a, b, c] と表すのが便利である。
スカラー三重積は平行六面体の有向体積を与えるが、有向体積は鏡像変換に対して符号を変える。よって、スカラー三重積の値はスカラーでなく擬スカラーである。
スカラー三重積が正となる標構 (順序付けられた基底)、もしくはそれから生成される座標系、を右手系とよび、負となる標構を左手系とよぶ。それぞれの系は鏡像変換を含まない直交変換では互いに移ることはできない。
外積代数あるいは幾何代数(英語版)において、2つのベクトルの外積は2-ベクトル(英語版)であり、3つのベクトルの外積は3-ベクトル(英語版)である。通常のベクトルである1-ベクトルが向き付けられた線分 (線要素) であるように、2-ベクトルは向き付けられた面積要素(面要素)であり、3-ベクトルは向き付けられた体積要素 (立体要素) である。
ベクトル a, b, c に対して定義された積
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はそのホッジ双対がスカラー三重積に等しい3-ベクトルである。
幾何学的には3-ベクトル a ∧ b ∧ c は a, b, c で張られた平行六面体に対応し、2-ベクトル a ∧ b, b ∧ c, a ∧ c は平行六面体の各面をなす平行四辺形に対応する。
ベクトル三重積(英: vector triple product)は三つのベクトルからベクトル値を返す三項演算、すなわち、2つのベクトルのクロス積から作られる擬ベクトルと残りのベクトルとのクロス積
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であり、以下の性質が成り立つ:
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1番目および2番目の公式はラグランジュの公式と呼ばれることもあるが[1]、単に「ベクトル三重積の公式」と呼ばれることが多い。2番目の公式は1番目の公式とクロス積の反対称性から導き出せる。1番目および2番目の公式により
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すなわち、クロス積は結合則が成り立たないことが導かれる。3番目の公式はヤコビ恒等式 (英: Jacobi Identity) であり、1番目の公式より明らかである。
ベクトル三重積の公式をつかってベクトルラプラシアンを
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と展開できる。これは一般化されたラプラス作用素 (ラプラス–ド・ラーム作用素(英語版)) の具体例の一つである。
の x成分を展開する。
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y 成分、z 成分も同様なので、これより証明された。
その他の証明1
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を証明する。
a と b が平行の場合、等式が成り立つのは自明。
以下、a と b が平行でないとする。
スカラー三重積の反対称性より
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すなわち、a×b は a および b に垂直である。同様に (a×b)×c
も a×b に垂直だから、 (a×b)×cとa と b は線形従属であり、同一平面内にある (∵この組が線形独立と仮定すると、全てに垂直なa×b を加えてできる組、(a×b)×cとa と bとa×b は線形独立になり、これらが3次元ベクトルであることに矛盾する)。 ここで、 a と b は一次独立なので、μ, ν を未定のスカラーとして
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と書ける。
また、 (a×b)×c は c にも垂直だから、
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よって
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とおけ、
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と書ける。ただし、λ は a, b, c に依存するスカラーである。
ここで
(a×b)×c
および
(a・c)b - (b・c)a
は共に a, b, c それぞれに対して線形なので、 λ は定数でなければいけない。さらに
a=ex,
b=ey,
c=ex
を代入すると、λ = 1が得られる。
よって
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が導かれた。
その他の証明2
ビネ・コーシーの恒等式
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を既知とすれば、スカラー四重積の公式
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が得られるが、スカラー三重積の性質を使って変形すれば
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となる。
その他の証明3
エディントンのイプシロンを使うと三重積は以下のように計算できる。
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アインシュタインの縮約記法を使えば ベクトル三重積は jij -jji と覚えることができる。
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