ワールドシリーズ最優秀選手賞
ワールドシリーズ最優秀選手賞またはワールドシリーズMVP(ワールドシリーズさいゆうしゅうせんしゅしょう、World Series Most Valuable Player Award)は、メジャーリーグベースボール(以下、MLB)の優勝決定戦となるワールドシリーズで最も勝利に貢献した選手に与えられる賞。
1955年に制定され、当初はスポーツ雑誌『スポート』によって選出されていたが、現在はシリーズ最終戦で記者の委員会と関係者の投票によって選出される[1]。
最初の受賞者は1955年のジョニー・ポドレス。レギュラーシーズンでは9勝10敗だったが、シリーズで2戦2完投勝利を記録[2]。1956年はドン・ラーセンが史上初の完全試合を達成し受賞[3]。1960年はボビー・リチャードソンがシリーズ記録となる12打点を挙げ[4]、ヤンキースはピッツバーグ・パイレーツに敗退したにもかかわらず選出された[5]。1977年のレジー・ジャクソンは第6戦で3打席連続本塁打を放つなどシリーズ記録の5本塁打を記録して受賞し、ミスター・オクトーバー(Mr. October)の称号を得た[6]。1979年はウィリー・スタージェルが史上最高齢の39歳で受賞[7]。1996年はジョン・ウェッテランドがシリーズ記録となる4セーブを挙げて[8]選出された。
複数回受賞者はサンディー・コーファックス(1963年・1965年)、ボブ・ギブソン(1964年・1967年)、レジー・ジャクソン(1973年・1977年)、コーリー・シーガー(2020年・2023年)の4選手。複数選手の受賞は1981年のロン・セイ、ペドロ・ゲレーロ、スティーブ・イェーガーの3選手、2001年のランディ・ジョンソン、カート・シリングの2選手と2度ある。
コーファックス(1963年)、フランク・ロビンソン(1966年)、ジャクソン(1973年)、スタージェル(1979年)、マイク・シュミット(1980年)の5選手がシーズンMVPとワールドシリーズMVPを同じ年に受賞。ボブ・ターリー(1958年)、ホワイティー・フォード(1960年)、コーファックス(1963年, 1965年)、ブレット・セイバーヘイゲン(1985年)、オーレル・ハーシュハイザー(1988年)、ジョンソン(2001年)の6選手がサイ・ヤング賞とワールドシリーズMVPを同じ年に受賞。スタージェル(1979年)、ダレル・ポーター(1982年)、ハーシュハイザー(1988年)、リバン・ヘルナンデス(1997年)、コール・ハメルズ(2008年)、デビッド・フリース(2011年)、ジェレミー・ペーニャ(2022年)の7選手がリーグチャンピオンシップシリーズMVPとワールドシリーズMVPを同じ年に受賞している。
コーファックス(1963年)はサイ・ヤング賞・シーズンMVP・ワールドシリーズMVPを同シーズンに受賞した唯一の選手。スタージェル(1979年)はリーグチャンピオンシップシリーズMVP・シーズンMVP・ワールドシリーズMVPを同シーズンに受賞した唯一の選手。ハーシュハイザー(1988年)はサイ・ヤング賞・リーグチャンピオンシップシリーズMVP・ワールドシリーズMVPを受賞した唯一の選手。
松井秀喜(2009年)はOPS 2.0以上を記録した唯一の選手。なお、2位はデビッド・オルティーズ(2013年)のOPS 1.948。
なお、この賞とは別に、ワールドシリーズで最も顕著な活躍をした選手に対して、全米野球記者協会ニューヨーク支部によって選定されるベーブ・ルース賞がある。こちらはワールドシリーズ敗退チームから選出されるケースも稀にある。
歴代受賞者
編集年度 | 受賞選手(受賞回数) | 守備位置 | 所属チーム | 成績 |
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1955 | ジョニー・ポドレス | 投手 | ブルックリン・ドジャース | 2勝0敗・防御率1.00・18イニング・2完投・1完封 |
1956 | ドン・ラーセン | 投手 | ニューヨーク・ヤンキース | 1勝0敗・防御率0.00・10.2イニング・完全試合 |
1957 | ルー・バーデット | 投手 | ミルウォーキー・ブレーブス | 3勝0敗・防御率0.67・27イニング・13奪三振・3完投・2完封 |
1958 | ボブ・ターリー | 投手 | ニューヨーク・ヤンキース | 2勝1敗・防御率2.76・16.1イニング・13奪三振・1完投・1完封 |
1959 | ラリー・シェリー | 投手 | ロサンゼルス・ドジャース | 2勝0敗2S・防御率0.71・12.2回・5奪三振 |
1960 | ボビー・リチャードソン | 二塁手 | ニューヨーク・ヤンキース | 打率.366・1本塁打・2二塁打・2三塁打・12打点 |
1961 | ホワイティー・フォード | 投手 | ニューヨーク・ヤンキース | 2勝0敗、防御率0.00・14イニング・7奪三振・1完投・1完封 |
1962 | ラルフ・テリー | 投手 | ニューヨーク・ヤンキース | 2勝1敗・防御率1.80・25イニング・16奪三振・2完投・1完封 |
1963 | サンディー・コーファックス(1) | 投手 | ロサンゼルス・ドジャース | 2勝0敗・防御率1.50・18イニング・23奪三振・2完投 |
1964 | ボブ・ギブソン(1) | 投手 | セントルイス・カージナルス | 2勝1敗・防御率3.00・27イニング・31奪三振・2完投 |
1965 | サンディー・コーファックス(2) | 投手 | ロサンゼルス・ドジャース | 2勝1敗・防御率0.38・24イニング・29奪三振・2完投・2完封 |
1966 | フランク・ロビンソン | 外野手 | ボルチモア・オリオールズ | 打率.286・1三塁打・2本塁打・3打点 |
1967 | ボブ・ギブソン(2) | 投手 | セントルイス・カージナルス | 3勝0敗・防御率1.00・27イニング・26奪三振・3完投・1完封 |
1968 | ミッキー・ロリッチ | 投手 | デトロイト・タイガース | 3勝0敗・防御率1.67・27イニング・21奪三振・3完投 |
1969 | ドン・クレンデノン | 一塁手 | ニューヨーク・メッツ | 打率.357・3本塁打・4打点 |
1970 | ブルックス・ロビンソン | 三塁手 | ボルチモア・オリオールズ | 打率.429・2二塁打・2本塁打・6打点 |
1971 | ロベルト・クレメンテ | 外野手 | ピッツバーグ・パイレーツ | 打率.414・2二塁打・1三塁打・2本塁打・4打点 |
1972 | ジーン・テナス | 捕手 | オークランド・アスレチックス | 打率.348・4本塁打・9打点 |
1973 | レジー・ジャクソン | 外野手 | オークランド・アスレチックス | 打率.310・3二塁打・1三塁打・1本塁打・6打点 |
1974 | ローリー・フィンガーズ | 投手 | オークランド・アスレチックス | 1勝0敗・2セーブ・防御率1.93・9.1イニング・6奪三振 |
1975 | ピート・ローズ | 三塁手 | シンシナティ・レッズ | 打率.370・3得点・1二塁打・1三塁打・2打点 |
1976 | ジョニー・ベンチ | 捕手 | シンシナティ・レッズ | 打率.533・1二塁打・1三塁打・2本塁打・6打点 |
1977 | レジー・ジャクソン(2) | 外野手 | ニューヨーク・ヤンキース | 打率.450・5本塁打・8打点・OPS 1.792[9] |
1978 | バッキー・デント | 遊撃手 | ニューヨーク・ヤンキース | 打率.417・1二塁打・7打点 |
1979 | ウィリー・スタージェル | 一塁手 | ピッツバーグ・パイレーツ | 打率.400・4二塁打・3本塁打・7打点 |
1980 | マイク・シュミット | 三塁手 | フィラデルフィア・フィリーズ | 打率.381・1二塁打・2本塁打・7打点 |
1981 | ロン・セイ | 三塁手 | ロサンゼルス・ドジャース | 打率.350・1本塁打・6打点 |
ペドロ・ゲレーロ | 外野手 | 打率.333・1二塁打・1三塁打・2本塁打・7打点 | ||
スティーブ・イェーガー | 捕手 | 打率.286・1二塁打・2本塁打・4打点 | ||
1982 | ダレル・ポーター | 捕手 | セントルイス・カージナルス | 打率.286・2二塁打・1本塁打・5打点 |
1983 | リック・デンプシー | 捕手 | ボルチモア・オリオールズ | 打率.385・4二塁打・1本塁打・2打点 |
1984 | アラン・トランメル | 遊撃手 | デトロイト・タイガース | 打率.450・1二塁打・2本塁打・6打点 |
1985 | ブレット・セイバーヘイゲン | 投手 | カンザスシティ・ロイヤルズ | 2勝0敗・防御率0.50・18イニング・10奪三振・2完投・1完封 |
1986 | レイ・ナイト | 三塁手 | ニューヨーク・メッツ | 打率.391・1二塁打・1本塁打・5打点 |
1987 | フランク・バイオーラ | 投手 | ミネソタ・ツインズ | 2勝1敗・防御率3.72・19.1イニング・16奪三振 |
1988 | オーレル・ハーシュハイザー | 投手 | ロサンゼルス・ドジャース | 2勝0敗・防御率1.00・18イニング・17奪三振・2完投・1完封 |
1989 | デーブ・ステュワート | 投手 | オークランド・アスレチックス | 2勝0敗・防御率1.69・16イニング・14奪三振・1完投・1完封 |
1990 | ホセ・リーホ | 投手 | シンシナティ・レッズ | 2勝0敗・防御率0.59・15.1イニング・5奪三振 |
1991 | ジャック・モリス | 投手 | ミネソタ・ツインズ | 2勝0敗・防御率1.17・23イニング・15奪三振・1完投・1完封 |
1992 | パット・ボーダーズ | 捕手 | トロント・ブルージェイズ | 打率.450・3二塁打・1本塁打・3打点 |
1993 | ポール・モリター | 指名打者 | トロント・ブルージェイズ | 打率.500・2二塁打・2三塁打・2本塁打・8打点 |
1994 | 開催中止 | |||
1995 | トム・グラビン | 投手 | アトランタ・ブレーブス | 2勝0敗・防御率1.29・14イニング・11奪三振 |
1996 | ジョン・ウェッテランド | 投手 | ニューヨーク・ヤンキース | 5試合・4セーブ・防御率2.08・4.1イニング・6奪三振 |
1997 | リバン・ヘルナンデス | 投手 | フロリダ・マーリンズ | 2勝0敗・防御率5.27・13.2イニング・7奪三振 |
1998 | スコット・ブロシアス | 三塁手 | ニューヨーク・ヤンキース | 打率.471・2本塁打・6打点 |
1999 | マリアノ・リベラ | 投手 | ニューヨーク・ヤンキース | 1勝・2セーブ・防御率0.00・4.2イニング・3奪三振 |
2000 | デレク・ジーター | 遊撃手 | ニューヨーク・ヤンキース | 打率.409・2二塁打・1三塁打・2本塁打・2打点、 |
2001 | ランディ・ジョンソン | 投手 | アリゾナ・ダイヤモンドバックス | 3勝0敗・防御率1.04・17イニング・19奪三振・1完投・1完封 |
カート・シリング | 投手 | 1勝0敗・防御率1.69・21イニング・26奪三振 | ||
2002 | トロイ・グロース | 三塁手 | アナハイム・エンゼルス | 打率.385・3本塁打・8打点 |
2003 | ジョシュ・ベケット | 投手 | フロリダ・マーリンズ | 1勝1敗・防御率1.13・16.1イニング・19奪三振・1完投・1完封 |
2004 | マニー・ラミレス | 外野手 | ボストン・レッドソックス | 打率.412・1本塁打・4打点 |
2005 | ジャーメイン・ダイ | 外野手 | シカゴ・ホワイトソックス | 打率.438・1本塁打・3打点 |
2006 | デビッド・エクスタイン | 遊撃手 | セントルイス・カージナルス | 打率.364・8安打・4打点 |
2007 | マイク・ローウェル | 三塁手 | ボストン・レッドソックス | 打率.400・1本塁打・4打点 |
2008 | コール・ハメルズ | 投手 | フィラデルフィア・フィリーズ | 1勝0敗・防御率2.77・13.0イニング・8奪三振 |
2009 | 松井秀喜 | 指名打者 | ニューヨーク・ヤンキース | 打率.615・3本塁打・8打点・OPS 2.027[10] |
2010 | エドガー・レンテリア | 遊撃手 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 打率.412・2本塁打・6打点 |
2011 | デビッド・フリース | 三塁手 | セントルイス・カージナルス | 打率.348・1本塁打・7打点 |
2012 | パブロ・サンドバル | 三塁手 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 打率.500・3本塁打・4打点 |
2013 | デビッド・オルティーズ | 指名打者 | ボストン・レッドソックス | 打率.688・2本塁打・6打点・OPS 1.948 |
2014 | マディソン・バンガーナー | 投手 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 2勝1セーブ・防御率0.47・19.0イニング・17奪三振・1完投・1完封 |
2015 | サルバドール・ペレス | 捕手 | カンザスシティ・ロイヤルズ | 打率.364・2二塁打・2打点 |
2016 | ベン・ゾブリスト | 二塁手 | シカゴ・カブス | 打率.357・5得点 |
2017 | ジョージ・スプリンガー | 外野手 | ヒューストン・アストロズ | 打率.379・5本塁打・7打点 |
2018 | スティーブ・ピアース | 一塁手 | ボストン・レッドソックス | 打率.333・3本塁打・8打点 |
2019 | スティーブン・ストラスバーグ | 投手 | ワシントン・ナショナルズ | 2勝0敗・防御率2.51・14イニング・14奪三振 |
2020 | コーリー・シーガー(1) | 遊撃手 | ロサンゼルス・ドジャース | 打率.400・2本塁打・5打点 |
2021 | ホルヘ・ソレア | 外野手 | アトランタ・ブレーブス | 打率.300・3本塁打・6打点・OPS 1.191 |
2022 | ジェレミー・ペーニャ | 遊撃手 | ヒューストン・アストロズ | 打率.400・1本塁打・3打点 |
2023 | コーリー・シーガー(2) | 遊撃手 | テキサス・レンジャーズ | 打率.286・3本塁打・6打点 |
2024 | フレディ・フリーマン | 一塁手 | ロサンゼルス・ドジャース | 打率.300・4本塁打・12打点・OPS1.364 |
脚注
編集- ^ “World Series Most Valuable Player Award” (英語). Baseball Almanac. 2010年1月26日閲覧。
- ^ “1955 World Series - BRO vs. NYY” (英語). Baseball-Reference.com. 2010年1月26日閲覧。
- ^ “World Series History 1956 World Series” (英語). MLB.com. 2010年1月26日閲覧。
- ^ “All-time and Single-Season WS Batting Leaders” (英語). Baseball-Reference.com. 2010年1月26日閲覧。
- ^ “1960 World Series - PIT vs. NYY” (英語). Baseball-Reference.com. 2010年1月26日閲覧。
- ^ “"Reg-gie! Reg-gie!" smacks three home runs in consecutive at-bats” (英語). MLB.com. 2010年1月26日閲覧。
- ^ Barry M, Bloom (October 29, 2007). “World Series MVP rewarding to Lowell” (英語). MLB.com. 2010年1月26日閲覧。
- ^ “All-time and Single-Season WS Pitching Leaders” (英語). Baseball-Reference.com. 2010年1月26日閲覧。
- ^ https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/mlb/2024/10/23/post_55/
- ^ 09年ワールドシリーズMVPの松井秀喜氏は今も伝説
外部リンク
編集- World Series History: Most Valuable Players - Major League Baseball
- MLB Post-Season World Series MVP Awards & All-Star Game MVP Award Winners - Baseball-Reference