ルチア・ポップ
ルチア・ポップ(Lucia Popp, 1939年11月12日 - 1993年11月16日)は、スロバキア出身でオーストリアを中心に活動したオペラ歌手。声域はソプラノで、リート歌手としても録音・演奏に活躍した。本名はルチア・ポッポヴァー(Lucia Poppová)。
当初は演劇を学ぶためブラチスラヴァ・アカデミーに通っていたが、同校でのレッスンを受けるうちに声楽を志すようになる。1963年にブラチスラヴァ歌劇場でオットー・クレンペラーの指揮による『魔笛』の夜の女王役でデビューを果たし、同年にウィーン国立歌劇場と契約した。以降、国際的にコロラトゥーラ・ソプラノとして、その後リリック・ソプラノとして活躍した。
艶やかだが深みと張りのある声質が特徴的で、品格のある表現によって評価が高かった。年を重ねるにつれて、表情にかげりを帯び、ニュアンスに富んだ多感な表現を見せるようになった。オペラ歌手としては、モーツァルトのオペラやヨハン・シュトラウス2世の『こうもり』を得意とした。一方、リート歌手としてはマーラーやリヒャルト・シュトラウス、プフィッツナー、ベルクなど、20世紀初頭のドイツ・リートの録音を残している。
美貌にも定評があり、オペラ映像では1970年前後に『小鳥売り』、『フィデリオ』(マルツェリーネ役)、『皇帝と船大工』、1980年前後に『ばらの騎士』、『こうもり』、『売られた花嫁』(ドイツ語版)、『魔笛』(パミーナ役)、『フィガロの結婚』(スザンナ役)などが残されている。ソフト発売はされていないが、来日公演の『アラベラ』などもテレビ放映され評判となった。
スラヴ圏出身であるが、オーストリア人の母を持つためドイツ語もほぼネイティブであり、歌曲もふくめ、ドイツ系のレパートリーを中心に据え続け、1970年代から1980年代にかけてグンドゥラ・ヤノヴィッツとともにドイツ・ソプラノの代表的存在であった。
録音
編集- モーツァルト:『フィガロの結婚』(スザンナ)、テ・カナワ、フォン・シュターデ、アレン、レイミー、モール共演、ショルティ指揮(デッカ)
- モーツァルト:『フィガロの結婚』(伯爵夫人)、ヴァン・ダム、ヘンドリックス、ライモンディ共演、マリナー指揮(フィリップス)
- モーツァルト:『ドン・ジョヴァンニ』(ツェルリーナ)、T.クラウゼ共演、ショルティ指揮(デッカ)
- モーツァルト:『魔笛』(夜の女王)、ヤノヴィッツ、ベリー、ゲッダ、フリック共演、クレンペラー指揮(EMI)
- モーツァルト:『魔笛』(パミーナ)、イェルザレム、ブレンデル、ツェドニク、グルベローヴァ共演、ハイティンク指揮(EMI)
- モーツァルト:『イドメネオ』(イリヤ)、パヴァロッティ、バルツァ、レオ・ヌッチ、グルベローヴァ共演、プリチャード指揮(デッカ)
- モーツァルト:『後宮からの逃走』(ダイゲッダ)、ローテンベルガー、フリック、ウンガー共演、クリップス指揮(EMI)
- モーツァルト:『皇帝ティートの慈悲』、 アーノンクール指揮(フィリップス)
- モーツァルト:『シピオーネの夢』(コスタン)、グルベローヴァ、シュライアー、マティス共演、ハーガー指揮(デッカ)
- オルフ:『カルミナ・ブラーナ』:ヴォランスキー、ノーブル共演、フリューベック・デ・ブルゴス指揮(EMI)
- R.シュトラウス:『インテルメッツォ』(クリスティーネ)、ダラポッツァ、フィッシャー=ディースカウ、フィンケ共演、サヴァリッシュ指揮(EMI)
- R.シュトラウス:『ばらの騎士』(ゾフィー)、ドミンゴ、ルートヴィヒ、G.ジョーンズ、ベリー共演、バーンスタイン指揮(ソニー)
- R.シュトラウス:『ダフネ』(ダフネ)、ゴルトベルク、シュライアー、ウェンケル、モル共演、ハイティンク指揮(EMI)
- ヨハン・シュトラウス2世:『こうもり』(アデーレ)、ヴァラディ、ヴァイクル、コロ共演、C.クライバー指揮(DG)
- ヨハン・シュトラウス2世:『こうもり』(ロザリンデ)、リント、ザイフェルト、ブレンデル、リドル、ドミンゴ(兼指揮)共演(EMI)
- ベートーヴェン:『フィデリオ』(マルツェリーネ)、ヤノヴィッツ、コロ、ゾーティン、フィッシャー=ディースカウ、ユングヴィルト共演、バーンスタイン指揮(DG)
- フンパーディンク:『ヘンゼルとグレーテル』(グレーテル)、シュレム、ファスベンダー、グルベローヴァ、ハマリ共演、ショルティ指揮(デッカ)
- フンパーディンク:『ヘンゼルとグレーテル』(妖精)、モッフォ、ヘレン、ルートヴィヒ、フィッシャー=ディースカウ、ベルトルト、オジェー共演、アイヒホルン指揮(RCA)
- グルック:『オルフェオとエウリディーチェ』(エウリディーチェ)
- ヴェルディ:『リゴレット』(ジルダ)、ガルデッリ指揮(RCA)
- レオンカヴァッロ:『道化師』(ネッダ)、ガルデッリ指揮(RCA)
- レオンカヴァッロ:『ラ・ボエーム』(ミミ)、ワルベルク指揮(オルフェオ)
- プッチーニ:『修道女アンジェリカ』(アンジェリカ)、リポフシェク、シムル共演、パターネ指揮(RCA)
- プッチーニ:『ラ・ボエーム』(ミミ)、ダニエルズ、ブレンデル共演、ゾルテス指揮(EMI)
- ドニゼッティ:『愛の妙薬』(アディーナ)、ドヴォルスキー、ヴァイクル、ネステレンコ共演、ワルベルク指揮(RCA)
- ドニゼッティ:『ドン・パスクワーレ』(ノリーナ)、アライサ、ヴァイクル、ネステレンコ共演、ワルベルク指揮(RCA)
- フロトー:『マルタ』(タイトルロール)、ワルベルク指揮(RCA)
- ヤナーチェク:『利口な女狐の物語』(女狐)、マッケラス指揮(デッカ)
- ヤナーチェク:『イェヌーファ』(デッカ)
- レハール:『ルクセンブルク伯爵』(アンジェール)、マッテス指揮(EMI)
- ワーグナー:『タンホイザー』:ハイティンク指揮(EMI)
- ビゼー:『ジャミレ』(タイトルロール)、ボニゾッリ共演、ガルデッリ指揮(オルフェオ)
- 『ドイツ童謡・子守歌集』 Die schoensten deutschen Kinder -und Wiegenlieder mit Liedtexten(オルフェオ) 1983年