フェアウェル (映画)
『フェアウェル』(The Farewell)は2019年のアメリカ合衆国のドラマ映画。監督はルル・ワン、主演はオークワフィナ。ワン監督が2017年にラジオ番組『ディス・アメリカン・ライフ』で語ったエピソード「What You Don't Know」を原作とし、がんにかかった祖母と再会することになったその一族の喜怒哀楽を描いている[5]。
フェアウェル | |
---|---|
The Farewell | |
監督 | ルル・ワン |
脚本 | ルル・ワン |
原作 |
ルル・ワン 「What You Don't Know」 |
製作 |
ルル・ワン アニタ・ゴウ ダニエル・テイト・メリア アンドリュー・ミアノ ピーター・サラフ マーク・タートルーブ クリス・ワイツ ジェーン・チェン |
製作総指揮 | エディ・ルービン |
出演者 |
オークワフィナ ツィ・マー ダイアナ・リン チャオ・シューチェン 水原碧衣 |
音楽 | アレックス・ウェストン |
撮影 | アンナ・フランケーザ・ソラノ |
編集 |
マイケル・テイラー マシュー・フリードマン |
製作会社 |
レイ・プロダクションズ キンドレッド・スピリット デプス・オブ・フィールド ビッグ・ビーチ |
配給 |
A24 ショウゲート |
公開 |
2019年7月12日(限定公開) 2019年8月9日(拡大公開) 2020年10月2日 |
上映時間 | 100分[1] |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 |
英語 官話 |
製作費 | $3,000,000[2] |
興行収入 |
$19,543,281[3] 4000万円[4] |
ストーリー
編集ニューヨーク。ビリー・ワンは物書きになることを夢見て日々奮闘していたが、グッゲンハイム・フェローから選外になったという通知が来て落胆していた。そんな折、ビリーは両親から長春で暮らすナイナイ(ビリーの祖母)が末期の肺がんで余命幾ばくもないという事実を知らされた。両親は医者と結託してその事実をナイナイに知られないように努めており、彼女には「良性腫瘍が見つかった」と嘘の説明をしていた。
ナイナイの親戚たちはハオハオ(ビリーの従兄)が中国で結婚式を挙げることを口実に一堂に会することにし、ナイナイと最後の思い出を作ることにした。両親はビリーがナイナイに真実を告げるのではないかと思い、彼女にニューヨークに留まるよう言いつけたが、ビリーは言いつけに背いて長春へと向かった。ビリーは両親と口論になりかけたが、ナイナイに真実を伝えないと確約することで事なきを得た。そうは言ったものの、長春滞在中、ビリーは「ナイナイに嘘をつき続けるのは不誠実なのではないか」と悩み続けることになった。
本作は苦悩するビリーの姿を通して、東洋と西洋という二つの世界を跨いで生きるとはどういうことなのかを描き出していく。
キャスト
編集製作
編集本作はルル・ワン監督の実体験を題材にしている。監督は「私は『家族と私の関係』と『同級生と私の関係、同僚と私の関係、私が暮らす世界と私の関係』が別物であるように感じていました。その分裂こそ、移民や2つの文化を行き来しながら生きる者の本質です。」と語っている[6]。
2018年6月、本作の主要撮影が長春とニューヨークで行われた[7][8]。撮影監督のアンナ・フランケーザ・ソラノは『フレンチアルプスで起きたこと』や『歩いても 歩いても』を参考にしたことを認めつつも、「インスピレーションの多くはワン監督の家族と長春で過ごした時間から得ました」という趣旨のことを語っている[8]。
公開・マーケティング
編集2019年1月25日、本作はサンダンス映画祭でプレミア上映された[10]。27日、A24がアマゾン・スタジオズやNetflix、フォックス・サーチライト・ピクチャーズとの競争に競り勝ち、600万ドルで本作の全米配給権を獲得したと報じられた[11][12]。5月7日、本作のオフィシャル・トレイラーが公開された[13]。
当初、本作は2020年4月10日に日本で公開される予定だったが、新型コロナウイルスの流行が拡大していることを受けて、4月2日、配給元のショウゲートは本作の公開延期を発表した[14]。
興行収入
編集2019年7月12日、本作は全米4館で限定公開され、公開初週末に35万5662ドル(1館当たり8万8915ドル)を稼ぎ出し、週末興行収入ランキング初登場19位となった[15]。この数字は1館当たりの興行収入の年内最高記録である[16]。8月9日、本作は全米704館にまで公開規模が拡大され、週末に209万ドルを稼ぎ出し、週末興行収入ランキング12位となった[17]。
評価
編集本作は批評家から絶賛されている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには286件のレビューがあり、批評家支持率は99%、平均点は10点満点で8.58点となっている。サイト側による批評家の見解の要約は「『フェアウェル』は上質な演技に支えられた真に迫るドラマを展開することで、家族の複雑な力動を見事に捉えている。そのドラマは文化の特殊性と普遍的なテーマを上手に結びつけている。」となっている[18]。また、Metacriticには47件のレビューがあり、加重平均値は89/100となっている[19]。
受賞
編集賞 | 発表日 | カテゴリ | 対象 | 結果 | Ref(s) |
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アトランタ映画祭 | 2019年4月13日 | 観客賞(長編映画部門) | The Farewell | 受賞 | [20] |
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 | 2019年12月3日 | インディペンデント映画トップ10 | The Farewell | 入賞 | [21] |
ゴッサム・インディペンデント映画賞 | 2019年12月4日 | 作品賞 | The Farewell | ノミネート | [22][23] |
女優賞 | オークワフィナ | 受賞 | |||
脚本賞 | ルル・ワン | ノミネート | |||
ニューヨーク映画批評家オンライン賞 | 2019年12月7日 | 作品賞トップ10 | 入賞 | [24] | |
ロサンゼルス映画批評家協会賞 | 2019年12月8日 | 助演女優賞 | チャオ・シューチェン | 次点 | [25] |
デトロイト映画批評家協会賞 | 2019年12月9日 | アンサンブル演技賞 | ノミネート | [26][27] | |
ブレイクスルー賞 | ルル・ワン | ノミネート | |||
サンディエゴ映画批評家協会賞 | 2019年12月9日 | 主演女優賞 | オークワフィナ | ノミネート | [28][29] |
助演女優賞 | チャオ・シューチェン | 受賞 | |||
サウスイースタン映画批評家協会賞 | 2019年12月9日 | 作品賞トップ10 | 8位 | [30] | |
ボストン・オンライン映画批評家協会賞 | 2019年12月14日 | 作品トップ10 | 8位 | [31] | |
シカゴ映画批評家協会賞 | 2019年12月14日 | 主演女優賞 | オークワフィナ | ノミネート | [32][33] |
助演女優賞 | チャオ・シューチェン | ノミネート | |||
脚本賞 | ルル・ワン | ノミネート | |||
有望監督賞 | ルル・ワン | 受賞 | |||
外国語映画賞 | ノミネート | ||||
サンフランシスコ・ベイエリア映画批評家協会賞 | 2019年12月16日 | 主演女優賞 | オークワフィナ | ノミネート | [34] |
助演女優賞 | チャオ・シューチェン | ノミネート | |||
脚本賞 | ルル・ワン | ノミネート | |||
ゴールデングローブ賞 | 2020年1月5日 | 主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門) | オークワフィナ | 受賞 | [35][36] |
外国語映画賞 | ルル・ワン | ノミネート | |||
オンライン映画批評家協会賞 | 2020年1月6日 | 主演女優賞 | オークワフィナ | ノミネート | [37][38] |
助演女優賞 | チャオ・シューチェン | ノミネート | |||
インディペンデント・スピリット賞 | 2020年2月8日 | 作品賞 | 受賞 | [39] | |
助演女優賞 | チャオ・シューチェン | 受賞 |
関連
編集竹田の子守唄 ー 結婚披露宴で夫婦が歌った日本語の歌
出典
編集- ^ “フェアウェル”. 映画.com. 2019年12月8日閲覧。
- ^ Clark, Travis (2019年8月3日). “'The Farewell' is becoming one of 2019's top box-office success stories” (英語). Business Insider 2019年11月6日閲覧。
- ^ “The Farewell (2019)” (英語). The Numbers. 2019年11月6日閲覧。
- ^ 『キネマ旬報』2021年3月下旬特別号 p.53
- ^ “フェアウェル”. WOWOW. 2021年7月13日閲覧。
- ^ Saval, Malina (2019年1月4日). “10 Directors to Watch: Lulu Wang Shows Another Side of Awkwafina in ‘The Farewell’” (英語). Variety 2019年11月6日閲覧。
- ^ ““To Revisit Such a Traumatic Experience for the Sake of Our Movie”: Director Lulu Wang The Farewell” (英語). Filmmaker. (2019年1月25日) 2019年11月6日閲覧。
- ^ a b ““Make This Conversation in a Small Room with White Walls Work”: DP Anna Franquesa Solano on The Farewell” (英語). Filmmaker. (2019年1月31日) 2019年11月6日閲覧。
- ^ “‘The Farewell’ Soundtrack Released” (英語). Film Music Reporter. (2019年7月12日) 2019年11月6日閲覧。
- ^ Kaufmann, Anthony (2019年1月26日). “'The Farewell': Sundance Review” (英語). ScreenDaily 2019年11月6日閲覧。
- ^ Fleming, Mike Jr (2019年1月27日). “A24 Near WW Deal For Sundance Buzz Title ‘The Farewell’” (英語). Deadline.com 2019年11月6日閲覧。
- ^ Siegel, Tatiana (2019年1月27日). “Sundance: Awkwafina Drama 'The Farewell' Lands at A24” (英語). The Hollywood Reporter 2019年11月6日閲覧。
- ^ “The Farewell Official Trailer HD A24” (英語). YouTube. A24 (2019年5月7日). 2019年11月6日閲覧。
- ^ “全米スマッシュヒットの『フェアウェル』日本公開延期が決定”. シネマトゥデイ. (2020年3月31日) 2020年4月3日閲覧。
- ^ “Domestic 2019 Weekend 28 July 12-14, 2019” (英語). Box Office Mojo. 2019年11月6日閲覧。
- ^ D'Alessandro, Anthony (2019年7月14日). “Counterprogramming ‘Crawl’ & ‘Stuber’ Collateral Damage In Superhero Summer As ‘Spider-Man’ Climbs To $45M+ – Update” (英語). Deadline.com 2019年11月6日閲覧。
- ^ “Domestic 2019 Weekend 32 August 9-11, 2019” (英語). Box Office Mojo. 2019年11月6日閲覧。
- ^ “The Farewell (2019)” (英語). Rotten Tomatoes. 2019年11月6日閲覧。
- ^ “The Farewell Reviews” (英語). Metacritic. 2019年11月6日閲覧。
- ^ “2019 Atlanta Film Festival Award Winners” (英語). Atlanta Film Festival (April 25, 2019). October 4, 2019閲覧。
- ^ “2019 Award Winners” (英語). National Board of Review (2019年12月3日). 2019年12月13日閲覧。
- ^ Lewis, Hilary (October 24, 2019). “Gotham Awards: 'Marriage Story,' 'The Farewell,' 'Uncut Gems' Lead Nominations” (英語). The Hollywood Reporter October 25, 2019閲覧。
- ^ Malkin, Marc; Setoodeh, Ramin (2019年12月2日). “‘Marriage Story’ Sweeps Gotham Awards, Winning Best Feature” (英語). Variety 2019年12月4日閲覧。
- ^ Beresford, Trilby (2019年12月7日). “'Parasite' Voted Best Picture by New York Film Critics Online” (英語). The Hollywood Reporter 2019年12月8日閲覧。
- ^ “45th Annual Los Angeles Film Critics Association Awards” (英語). Los Angeles Film Critics Association (2019年12月8日). 2019年12月9日閲覧。
- ^ “The 2019 Detroit Film Critics Society Awards Nominations” (英語). Detroit Film Critics Society (2019年12月6日). 2019年12月10日閲覧。
- ^ “The 2019 Detroit Film Critics Society Awards” (英語). Detroit Film Critics Society (2019年12月9日). 2019年12月10日閲覧。
- ^ “2019 San Diego Film Critics Society’s Award Nominations” (英語). San Diego Film Critics Society (2019年12月6日). 2019年12月10日閲覧。
- ^ “2019 San Diego Film Critics Society’s Awards” (英語). San Diego Film Critics Society (2019年12月9日). 2019年12月10日閲覧。
- ^ Goldberg, Matt (2019年12月9日). “Southeastern Film Critics Association Selects ‘Parasite’ as the Year’s Best Film” (英語). Collider 2019年12月12日閲覧。
- ^ “2019 AWARDS” (英語). Boston Online Film Critics Association (2019年12月14日). 2019年12月15日閲覧。
- ^ Peterson, Karen M. (2019年12月12日). “Chicago Film Critics Association Announces 2019 Nominees, ‘Once Upon a Time… in Hollywood’ Leads” (英語). AwardsCircuit. オリジナルの2019年12月13日時点におけるアーカイブ。 2019年12月13日閲覧。
- ^ “Parasite, Little Women Lead 2019 Chicago Film Critics Awards, Winning Four Wins Each” (英語). Chicago Society of Film Critics (2019年12月14日). 2019年12月15日閲覧。
- ^ “SFBAFCC 2019 Awards” (英語). San Francisco Bay Area Film Critics Circle. 2019年12月17日閲覧。
- ^ “Golden Globes 2020: full list of nominations” (英語). The Guardian. (2019年12月9日) 2020年1月7日閲覧。
- ^ Lang, Brent (2020年1月5日). “Golden Globes: ‘Once Upon a Time in Hollywood,’ ‘1917’ Win Big” (英語). Variety 2020年1月7日閲覧。
- ^ “OFCS Presents: 23rd Annual Nominations for 2019” (英語). Online Film Critics Society (2019年12月23日). 2020年1月7日閲覧。
- ^ “2019 Awards (23rd Annual)” (英語). Online Film Critics Society (2020年1月6日). 2020年1月7日閲覧。
- ^ “Spirit Awards Winners 2020: The Complete List” (英語). Variety. (2020年2月8日) 2020年10月3日閲覧。
外部リンク
編集- 公式ウェブサイト
- 公式ウェブサイト
- What You Don't Know - This American Life
- フェアウェル - allcinema
- フェアウェル - KINENOTE
- The Farewell - IMDb
- The Farewell - Rotten Tomatoes
- The Farewell - Metacritic