チム・チム・チェリー
「チム・チム・チェリー」(英語: Chim Chim Cher-ee)は、1964年のミュージカル映画『メリー・ポピンズ』の劇中で歌われる楽曲の1つである[1] 。
概要
編集オリジナル版ではディック・ヴァン・ダイクやジュリー・アンドリュースが唄ったが[1]、キャメロン・マッキントッシュによるプロデュースのディズニーのミュージカル『メリー・ポピンズ』の劇中でも唄われる。また、ディズニー・ハリウッド・スタジオにあったザ・グレート・ムービー・ライド[2]に登場する『メリー・ポピンズ』のシーンでも本作が流され、カリフォルニアのディズニーランドではマジカル:ディズニー・ナイトタイム・スペクタキュラー・オブ・マジカル・セレブレーションのショーの中でも『メリー・ポピンズ』のシーンで本作が用いられる。
本作は1964年にアカデミー歌曲賞を受賞した。2005年にはジュリー・アンドリュースのアルバム『Julie Andrews Selects Her Facorite Disney Songs』にも挿入されている。
作家陣
編集作詞と作曲を手がけたのは、ロバート・B・シャーマンとリチャード・M・シャーマン(シャーマン兄弟)である。2人は『メリー・ポピンズ』の劇中曲でアカデミー賞とグラミー賞を受賞している[1]。
インスピレーション
編集本作は『メリー・ポピンズ』の脚色を担当したドン・ダグラディによる煙突掃除人のスケッチからヒントを得て作られた。シャーマン兄弟にこのスケッチについて質問されたとき、ダグラディは “煙突掃除人に会うと幸せになれる” というイギリスの古い言い伝えを教えた。1961年に映画化が決定するまでに、シャーマン兄弟はすでにパメラ・トラバース作品のキャラクターを多く取り入れながら "バート" を完成させていった。そしてバートのテーマ曲「チム・チム・チェリー」が誕生した。
バートが子供たちに歌って聞かせる “通常版” に加え、劇中では筋書きの要素が明らかになる度に、毎度歌詞の違う部分を短いバージョンで独り言のように唄うバートの姿が見うけられる。
“Mentsch”音楽グループ[1]は、イツィク・マンゲルの「Vaylu」というイディッシュ語の曲と幾つか類似点がある。また本作はイディッシュ民謡の「タンバラライカ」とも同様に音の類似点をいくつか共有している。
パロディ
編集同一のタイトルを用いて、ソング・パロディストのアラン・シャーマン[3]がパロディ曲を制作したことがある。これは、テレビCMで見るアメリカ製商品を嘲笑の対象にしたパロディである。
イングリッシュ・フットボールのミルウォールやウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン、ブラックバーン・ローヴァーズのサポーターたちは、それぞれのチームのローカルライバルで、青と臙脂色とのシャツを着用するウェストハム、アストン・ヴィラ、バーンリーを相手にしたバージョンの曲を唄う。
イギリス人コメディアンのティム・ヴァインは、自身のスタンドアップコメディ収録DVDに、本作の歌詞で言葉遊びをした「ティムティミニー・ティムティミニー・ティムティムトゥーユー」というタイトルを付け、その表紙にはヴァインが煙突掃除人に仮装した写真が使われている[4]。
カバー
編集- ペギー葉山(1965年、キングレコード BS-7103)。日本語詞はあらかはひろし、編曲は若松正司。B面は「ひとりぼっちの羊飼い」。
- スリー・グレイセス(1965年、キングレコード BS-7105)。日本語詞はあらかはひろし、編曲は半間厳一。B面は「ブルー・レディに紅いバラ」。
- 九重佑三子(1965年、東芝レコード TP-1164)。日本語詞は萩原芳子、編曲は橋本光雄。B面は「ドレミのうた」。
- 松島トモ子(日本コロムビア)。日本語詞は三浦康照、編曲は山屋清。
- 大杉久美子(1974年、東芝レコード TS-4079。「睦哲也ダンス教材」の1枚)。日本語詞は横山健、編曲は角田圭伊吾。
- フレディ&ザ・ドリーマーズ ー 1966年のアルバム『In Disneyland』に収録
NHKみんなのうた
編集みんなのうた チム・チム・チェリー | |
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歌手 | 友竹正則、杉並児童合唱団 |
作詞者 |
ロバート・B・シャーマン リチャード・M・シャーマン あらかはひろし(訳詞) |
作曲者 |
ロバート・B・シャーマン リチャード・M・シャーマン |
編曲者 | 前田憲男 |
映像 | アニメーション |
映像制作者 | 横尾忠則 |
初放送月 | 1966年4月 - 5月 |
再放送月 |
1966年10月 - 11月 2006年8月24日・同年12月13日・2007年1月2日(なつかし) 2011年4月3日(年代別セレクション) 2021年12月 |
NHKの『みんなのうた』では1966年4月から同年5月まで放送。日本語詞はあらかはひろし、編曲は前田憲男が手掛け、歌は友竹正則と杉並児童合唱団が担当した。映像は横尾忠則製作のアニメーション[5]。『みんなのうた』での放送後、視聴者からの楽譜の希望が多かった曲の一つである[6]。
放送当時の映像は残っており、まず2006年8月24日・同年12月13日・2007年1月2日の3回に渡って、BS放送のNHK衛星第2テレビ(現:BSプレミアム)の『なつかしのみんなのうた』で再放送、その後2011年4月3日放送の『みんなのうたスペシャル 年代別セレクション』(第1回)で地上波では45年ぶりに再放送、そして2021年12月には定時番組で55年8ヶ月ぶりに再放送された[7]。この映像は『みんなのうた』のDVD-BOXには収録されていない。またNHKから発売された楽譜集には第5巻に収録され『メリー・ポピンズ』の場面も収録されていたが、その後の再版では著作権の関係上、一部の紹介外国曲と共に削られた。
備考
編集JASRACに於いては2018年現在、外国作品/出典:PJ (サブ出版者作品届) /作品コード 0C0-3170-5 CHIM CHIM CHER EE // MARY POPPINS として登録[8]。日本内外の計113名の歌手が「アーティスト」とされ、日本の歌手では天地総子やペギー葉山、九重佑三子、松島トモ子、中尾ミエらが登録されている[8]。
訳詞としては、音羽たかしとあらかはひろしの名義が登録されている[8][9]。
出版者は、WONDERLAND MUSIC COMPANY INC(フランス語版)。日本でのサブ出版[10]は日音 Synch事業部とヤマハミュージックEHである[8][11]。
脚注
編集- ^ a b c Roberts, David (2006). British Hit Singles & Albums (19th ed.). London: Guinness World Records Limited. p. 135. ISBN 1-904994-10-5
- ^ 1989年5月1日、ディズニー・MGM・スタジオ(当時)と同時にオープン。2017年8月13日をもってクローズ。
- ^ シャーマン兄弟とは無関係である。
- ^ “Brand new stand-up DVD coming soon!”. Tim Vine.com (2016年6月24日). 2017年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月2日閲覧。
- ^ 横尾の『みんなのうた』担当は、1964年6月 - 7月の『蛙』、1964年10月 - 11月の『フルーツサラダのうた』、1965年2月 - 3月の『焼き栗』に次いで4回目にして、現在のところ最後。また先述の3曲は音声は現存するも映像は現存しないため、映像が現存するのは本曲が唯一。
- ^ 「NHK『みんなのうた』名曲、愛唱歌生み35年 母と子へ966のメロディー」『読売新聞』1996年3月27日付東京夕刊、9頁。
- ^ テレビでは『44ひきのねこ』・『ポンタ物語』と合わせてメドレーで放送、視聴者からの思い出のナレーションが添えられた。ラジオは『ポンタ物語』と2本立てて放送、ナレーションは省かれた。
- ^ a b c d JASRAC作品データベース検索サービス J-WID 検索結果
- ^ 両名義共にキングレコードのディレクターが日本語訳詞をする際に用いたペンネームである。
- ^ 音楽出版者が全世界の地域について単独でその活動を行うことは難しいことから、特定地域の出版者と、その地域についての利用開発やプロモーションを任せる契約を結ぶことがある。この場合、作詞者・作曲者から直接権利を取得した音楽出版者はOP (Original Publisher) と呼称し、OPと契約を結び特定地域についての活動を任せられた音楽出版者はSP (Sub Publisher) と呼称する。
- ^ サブ出版業務は演奏・録音については日音、出版についてはヤマハミュージックEHと分担されている。
関連項目
編集- ロバート・B・シャーマン:Walt's Time: from before to beyond. (サンタクラリタ、Champhor Tree Publishers、1998年)