アグテレク・カルストとスロバキア・カルストの洞窟群
アグテレク・カルストとスロバキア・カルストの洞窟群(アグテレク・カルストとスロバキア・カルストのどうくつぐん)は、ハンガリーとスロバキアが共有する世界遺産である。それらは国境付近に広がるカルスト地形と700以上の鍾乳洞群で、一部は国境を超えてつながっている。
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ドミツァ洞窟 | |||
英名 | Caves of Aggtelek Karst and Slovak Karst | ||
仏名 | Grottes du karst d'Aggtelek et du karst de Slovaquie | ||
登録区分 | 自然遺産 | ||
IUCN分類 | Unassigned(非帰属) | ||
登録基準 | (8) | ||
登録年 | 1995年 | ||
拡張年 | 2000年 | ||
座標 | 北緯48度28分33秒 東経20度29分13秒 / 北緯48.47583度 東経20.48694度 | ||
公式サイト | 世界遺産センター | ||
使用方法・表示 |
アグテレク・カルスト
編集ハンガリー北部のアグテレク地方(オックテレック地方)に広がるカルストの景観は、アグテレク国立公園として保護されている。この国立公園は1985年に設定されたもので、面積は198.92 km2 である。ここにはヨーロッパ最大の鍾乳洞バラドラ洞窟がある。全長26kmのうち、8kmはスロバキア国内にあり、ドミツァ洞窟と呼ばれている。
バラドラ洞窟
編集バラドラ洞窟(Baradla cave)は複雑に入り組んでおり、その形状に合わせて様々な異名が付けられている。中でも「コンサートの広間」は、夏に実際にオペラやオーケストラの演奏会が開催される。これは、鍾乳洞の音響効果が音楽鑑賞に効果的なためである。
スロバキア・カルスト
編集スロバキア・カルスト(Slovak Karst)あるいはスロヴェンスキー・クラス(Slovenský kras)は、スロバキア南部のカルパチア山脈に属するスロベンスケー・ルドホリエ山脈(Slovenské rudohorie)の支脈の一つである。この地域には、カルスト地形を示す平原や高原が無数にみられる。1973年以降、スロヴェンスキー・クラス景観保護地域となっていたが、2002年3月1日をもって、国立公園になった。この一帯はユネスコの生物圏保護区にも指定され、アグテレク・カルストとともに世界遺産に登録されている。
特色
編集最高峰はJelení vrchで、標高は947mである。主要な川は、シャイオ川、シュティートニック川、トゥルニャ川である。スロバキア・カルストは北温帯の温和な気候帯に属し、四季がはっきりした大陸性の気候である。地質は、中生代の石灰岩やドロマイト(白雲岩)の地層が広がり、それらの下に難透性の砂岩、石灰岩、スレート(粘板岩)の地層がある。平原はオークやシデの森林に、丘はオーク林に、カルストの窪地はトウヒ林に、それぞれ覆われている。北部には、ブナ林もある。
平原や高原には、直径250m以上、深さ45mに及ぶ窪地(ドリーネ)や、円錐状の丘、川水が地下に流れ込んでいく渓谷など、多くの特徴的なカルスト地形が見られる。また、深さ100m以上の垂直な縦穴が数多く知られている。いくつかには、「悪魔の穴」(Čertova diera、深さ186m)、「小さな鉄の淵」(Malá železná priepasť、深さ142m)、「イノシシの淵」(Diviačia priepasť、深さ122m)などといった異名が付けられている。
この地域は鍾乳洞がたくさんあることでもよく知られている。ハンガリーのバラドラ洞窟とつながっている、ヨーロッパ最大の鍾乳洞のドミツァ洞窟に加えて、オフティンスカー・アラゴナイト洞窟(Ochtinská aragonitová jaskyňa)、ゴンバセック洞窟(Gombasecká jaskyňa)、ヤソフ洞窟(Jasovská jaskyňa)などが一般に公開されている。それ以外で特筆すべき洞窟としては、クラースノホルスカー洞窟(Krásnohorská jaskyňa) とフルショーフ洞窟(Hrušovská jaskyňa)がある。
この地域にはカルスト湖もある。最大のものはヤシュテリチエ湖(Jašteričie jazero、「トカゲの湖」の意)である。
スロバキア・カルストは1977年に「スロヴェンスキー・クラス生物圏保護区」としてユネスコの生物圏保護区に指定されており、動植物にも見るべきものがある。オーク・シデ林、オークの混合林、好熱性オーク林、ブナ林、低木林とカルスト草原がメインな植生で、主な植物はセイヨウシデ、フユナラ、ヨーロッパブナ、セイヨウトネリコ、セイヨウサンシュユ、トルコカシ、プルヌス・マハレブ、ノルウェーカエデ、セイヨウカジカエデ、フユボダイジュ、コブカエデ、セイヨウハシバミ、ヒトシベサンザシ、イヌバラ、セイヨウイボタ、ホワイト・ビーム、カエデバアズキナシ、チャセンシダ、アオチャセンシダ、モエリンギア・ムスコサ、ナツザキフクジュソウ、ルリハコベ、ハナヤブジラミである[1]。希少な植物の例として、第三紀からの生き残りであるエリトロニウム・デンスカニス(Erythronium dens-canis)や、固有種のオノスマ・トルネンシス(Onosma tornensis、ムラサキ科オノスマ属)、セスレリア・ヘウフレリアナ(Sesleria heufleriana)、ディアントゥス・ルムニトゼリイ(Dianthus lumnitzerii、ナデシコ属)などがある。希少な動物には、カタシロワシ、チュウヒワシ、ヒメチョウゲンボウなどがある。また、2001年にドミツァ洞窟はラムサール条約登録地ともなった[2]。一帯の洞窟には500種以上の真洞窟性生物と好洞窟性生物が生息している[3]。
登録基準
編集この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。
- (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
登録対象
編集1995年にはバラドラ=ドミツァ洞窟(登録ID725-001)をはじめとする22の洞窟が登録され、2000年にスロバキア側のドブシンスカ氷穴(Dobšinská Ice Cave、ID725-023、面積約6km2)が追加された。
脚注
編集- ^ “Slovensky Kras Biosphere Reserve, Slovakia” (英語). UNESCO (2020年2月10日). 2023年2月16日閲覧。
- ^ “Domica | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2007年1月1日). 2023年2月16日閲覧。
- ^ “Caves of Aggtelek Karst and Slovak Karst” (英語). UNESCO World Heritage Centre. 2023年4月30日閲覧。