OTV(旧称:Oglinda TV)は、かつて存在したルーマニアテレビ局

OTV
開局日2000年12月19日
2004年4月1日(再開局)
閉局日2002年9月22日
2013年1月22日(再閉局)
所有者ダン・ディアコネスク
映像方式576i (PAL) 4:3
 ルーマニア
本社ブカレスト
関連チャンネルDDTV

2000年に開局し、数多くのオリジナル番組を企画・放送して社会現象となるほどの人気を集めたが、その番組の内容は極めて扇情主義的かつ低品質なゴシップに基づいた低俗なものが多く、政府から幾度となく放送免許を取り消され、閉局と再開局を繰り返している状況にある。

歴史

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ダン・ディアコネスク (Dan Diaconescu)

ジャーナリスト政治家ダン・ディアコネスク英語版によって立ち上げられ、2000年12月19日にOglinda TVルーマニア語の意)の名で開局した。OTVは自局で企画・制作したバラエティ番組を重点的に放送するという、当時のルーマニアでは斬新な放送形態で開局直後から大きな注目を集めた[注 1]

特に『Dan Diaconescu Direct英語版』と呼ばれるディアコネスク自らが司会を務めるトーク番組が人気を博していたが、ゲストには終末論者霊媒師超能力者といったオカルティストや国内で悪評の高いマネーレ歌手、脱獄した犯罪者(を名乗る人物)が登場し、時にはゲスト同士が喧嘩をし出す、ゲストがディアコネスクを襲撃する茶番を行うなど、かなり低俗かつ危険な内容が多く含まれていた。こうした放送内容がルーマニア政府から問題視され、2002年に放送法違反で国家視聴覚評議会英語版から放送免許を取り消され、同年9月22日に放送を停止した。ディアコネスクはこの処分をアドリアン・ナスタセ首相による買収を拒否したことによる報復行為であり、政府による検閲であると主張した。

OTVは2004年4月1日に再び放送を開始した。再開局後のOTVは常に3つの扇情的なニュースティッカーが表示され、「信じられない」「センセーショナル」「並外れた」といった言葉を四六時中多用するという、扇情主義的な報道を更に強めた放送形態をとった。更にはルーマニアの放送法で禁止されていた占星術の番組を放送したり、有名人や政治家のスキャンダルや汚職を暴露するなどの過激なタブロイド的報道を行ったりもした。

特に悪名高いのが2007年8月30日に発生したエロディア・ギネスク失踪事件英語版[注 2]に関する報道である。OTVは発生直後から事件を過剰なまでにセンセーショナルに取り上げ、翌年にかけて不謹慎な内容の虚報を大量に報じたことで物議を醸した。ギネスクに関する扇情的な報道は240日近くも続き、中にはOTVと協力したハッカーによって漏洩したギネスクの電子メールの内容や、低品質な合成映像と共に「ギネスクはウサーマ・ビン・ラーディンと共にカルパティア山脈に潜んでいた」という突飛な虚報まで放送された。

しかし、こうした報道は識者からの批判とは裏腹に視聴者からの支持を更に増やし、OTVがルーマニアのテレビ業界で飛び抜けて有名な存在になるのを助ける結果となった[注 3]。OTVのこの報道手法は同時期より他局に模倣されるようになり、ルーマニアのあらゆるテレビ局が情報の信憑性を無視したセンセーショナルな報道で視聴率を競い合うという状態が発生した[注 4]

2009年にはトラヤン・バセスク大統領をOTVの番組に招くなど、OTVはディアコネスクの政治的アプローチを宣伝する道具としても用いられた。2010年、ディアコネスクはルーマニアの議員に汚職に関する真偽不明の証拠を突きつけて恐喝した疑いで逮捕された[注 5]。ディアコネスクはこれをバセスク政権による政治腐敗の隠蔽工作と捉え、ベーシックインカム政策を第一に掲げる自らの政党人民党=ダン・ディアコネスク英語版、PPDD)を立ち上げて政界入りを果たした[注 6]。それと同時にOTVはTeleviziunea Poporului(人民テレビ)に改名され、ディアコネスクを「ルーマニアの将来の大統領」と呼ばせる、バセスクを「独裁者」と呼んで貶める、PPDDの党大会を放送するといったディアコネスクの政党のプロパガンダ的な放送が目立ち始めた。そして翌年に2012年ルーマニア反政府運動が発生すると、OTVは「唯一の公正な放送局」を称し、反政府運動の参加者があたかもディアコネスクを次期大統領に推しているかのような偏向報道を行った。

国家視聴覚評議会はこうしたOTVの報道姿勢を違法な選挙広告として問題視し、放送免許の期限を大幅に早める決定を下した。そしていくつかの裁判を経て、今度は過去の放送法違反の罰金(およそ100万レイ)の未払いを理由に放送免許を再度取り消され、2013年1月22日に放送を停止・閉局した。

晩年のOTVの視聴率はルーマニア国内の全ての放送局の中で3番目に高い数値を誇り、1分あたりの平均視聴者数はおよそ84,000人と見積もられている。だが、こうしたプロパガンダ的報道がルーマニアの政局や世論にどれほどの影響を与えたのかははっきりと分かっていない。実際、PPDDは2012年の両院議会選挙英語版で全議席の14%に相当する合計68議席を獲得して第三党に躍り出る躍進を見せたが、2014年の大統領選挙英語版に出馬したディアコネスクの得票数は全体の僅か4%で、ほとんど泡沫候補扱いであった。なお、PPDDは2015年に他党と合併され消滅した[1]

ディアコネスクはその後もRomânia TVに番組を持つ、OTVの拠点をバチカン市国に移すなどしてテレビ放送への関与を続けており、直近の動きでは2025年2月12日を目処にOTVとDDTV英語版の再開局を目指す計画を立てている[2]

主な番組

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  • Dan Diaconescu Direct英語版
  • 24 h
  • Abecedarul părinților
  • Adevăratele știri
  • Azimut sportiv
  • Brigada de intervenție
  • Bomba zilei cu Adriana Bahmuteanu
  • Caravana Romilor
  • Casa viitorului
  • Case de vânzare
  • Casino show
  • Chestionarul lui Stanca
  • De-a alba neagra
  • Direct cu Viorel Pop
  • Emigrarea pas cu pas
  • Euromondo
  • Fanatik Show
  • Fitze de vacanțză
  • Folclorul și lautarii
  • Hery și Ioana Show
  • Info pescar
  • În atenția PNA
  • Lumea de azi, lumea de mâine
  • Lux design
  • Lux Planet
  • Manele de top
  • Micul Paris
  • Minunile justitiei
  • Miss litoral
  • Natural 100%
  • Nu te supara, frate
  • O casa de vis
  • Oameni care ajuta oameni
  • Pastorul cel bun
  • Poveste de succes
  • Primar de weekend
  • Repere românești
  • Rodul pământului
  • România de azi, România de mâine
  • România incotro?
  • Să traim bine
  • Se întâmpla acum
  • Singur construiește-ți casa
  • Sport show
  • Șah mat cu Luis Lazarus
  • Te fac vedeta
  • Telechat
  • Teleconcurs
  • Turist club
  • Vacanțe și călătorii
  • Viață de vedeta
  • Viață la zi
  • Vorbind de credința
  • Vot cu Gabriela Padiu
  • Votați manele
  • Zapping TV cu Alice Gheorghe
  • Zori de zi

関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ 当時のルーマニアのテレビ文化は1989年までのチャウシェスク政権下の厳格な言論統制の影響で全くと言っていいほど成長しておらず、ルーマニア革命後に開局したテレビ局の多くは外国の番組や映画を輸入して放送することがほとんどだった。
  2. ^ エロディア・ギネスクは2025年1月現在でも行方不明のままであり、ルーマニア警察は夫のクリスティアン・シオアカ (Cristian Cioacă)による殺人と断定して投獄しているが、真相は未だ不明である。
  3. ^ これは、当時のルーマニアには政府の国家視聴覚評議会以外に目立ったファクトチェック機関が存在しておらず、多くのルーマニア市民がOTVの報道内容を疑う術を持てなかったことが影響している。
  4. ^ ディアコネスクはこの現象を「Otevizarea României(オテヴィゼーション)」と命名した。
  5. ^ ディアコネスクは数日後に釈放されるも、2015年に有罪判決を受けた。
  6. ^ これには、OTVの人気を最大限に利用することで自らの政党の支持者を増やし、与党からの政権奪取と自らの大統領への就任を目論む狙いがあった。

出典

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  1. ^ Oprea: Am încheiat o fuziune prin absobţie cu PP-DD. Suntem un partid al uşilor deschise” (ルーマニア語). Mediafax.ro. 2025年2月5日閲覧。
  2. ^ OTV revine în forță pe micile ecrane: Andreea Marin și Mihaela Rădulescu s-ar afla pe lista lui Dan Diaconescu” (ルーマニア語). Stiri pe surse (2024年4月9日). 2025年2月1日閲覧。