AN/SPQ-9は、アメリカ合衆国ロッキード・エレクトロニクス(現在のロッキード・マーティン)社が開発した2次元レーダー。当初はMk.86 砲射撃指揮装置の捕捉・追尾レーダーとして用いられており、また、のちには改良型のAN/SPQ-9Bが採用された。

AN/SPQ-9
AN/SPQ-9 レーダー
種別 捕捉追尾レーダー
目的
開発・運用史
開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
就役年 1970年
送信機
周波数 Xバンド
パルス 0.3-16マイクロ
パルス繰返数 3,000pps
送信尖頭電力 1.2 kW
アンテナ
形式
直径・寸法 幅2,045×高さ762mm
アンテナ利得 37 dB
ビーム幅 1.35×3
走査速度 60 rpm
方位角 全周無制限
探知性能
探知距離 137メートル (449 ft)-
37キロメートル (20 nmi)
探知高度 2,000フィート (610 m)
精度 測距:10 yd (9.1 m)
その他諸元
重量 538 kg(アンテナ重量)
テンプレートを表示

概要

編集

AN/SPQ-9Aは、高走査速度(60 rpm)と捜索中追尾(TWS)能力を特徴とするパルス・ドップラー・レーダーであり、Mk.86 砲射撃指揮装置において、水上目標および低高度の空中目標を対象とした捕捉追尾レーダーとして導入された。これにより、Mk.86では4個の水上目標に対する同時追尾が可能となった。パラボラアンテナは120インチ (300 cm)径のレドームに収容された[2]1967年時点での平均故障間隔(MTBF)は784時間であった[3]。その後、1970年には初期作戦能力を獲得した[2]。また、1989年11月には、低ノイズ化フロントエンド(LNFE)などを含むORDALT(Ordnance Alteration)改修キットの引き渡しが開始され、1990年度には小型目標への対処能力を強化する追加改修が行われた[3]

 
SPQ-9B(「あたご」搭載機)

そして、1990年の対艦ミサイル防御(ASMD)計画に基づき、全面的な改良型であるAN/SPQ-9Bの開発が開始された。これは、1997年より導入が開始され、1999年に初期作戦能力を獲得した。アンテナとしては、アクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ2面を背中合わせにした新型アンテナが導入された[1]。また、送受信機も、F-16C戦闘機AN/APG-68の技術に基づく新型機に更新された[2]。低空の航空目標(シースキマーなど)に対する探知能力を向上させており、シースパロー IPDMSにおけるTAS レーダーの後継として、シースパロー IPDMS全体を発展的に代替する統合戦闘システムである艦艇自衛システム(SSDS)に組み込まれ、その経空脅威対処の中核的センサーとして働くこととなっている。また、SバンドAN/SPY-1レーダーを補完して低空での捜索を行うため、イージスシステム搭載艦の一部にも順次追加搭載されつつある。2016年からは潜望鏡の検出および識別能力を付加するアップグレードが開始されており、3月18日に「レイク・シャンプレイン」が最初の試験をカリフォルニア沖で実弾射撃試験中に実施した[4]

採用国と搭載艦

編集

脚注

編集

注釈

編集
  1. ^ 1980年代の近代化改修で追加装備
  2. ^ 1980年代の103B型改修の際に追加装備
  3. ^ ただし、「あしがら」はAN/SPQ-9Bの納入遅延により、2017-18年度の定期検査及び近代化工事で換装することができず後日装備となった[5]
  4. ^ はぐろ」は後日装備となっていたが、2022年3月に終了した年次検査の際に搭載された。

出典

編集

参考文献

編集
  • Friedman, Norman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 9781557502681 
  • 岡部いさく「SPQ-9Bレーダーとは?」『精鋭自衛艦のすべて(5)「あたご」型護衛艦』海人社世界の艦船増刊〉、2020年2月、39頁。NAID 40022135570 
  • Polmar, Norman (2013). The Naval Institute Guide To The Ships And Aircraft Of The U.S. Fleet (19th ed.). Naval Institute Press. ISBN 978-1591146872 

外部リンク

編集