翻訳ミステリー大賞(ほんやくミステリーたいしょう)は、日本語翻訳された海外のミステリー小説が対象の文学賞。翻訳家の小鷹信光深町眞理子白石朗越前敏弥田口俊樹によって創設され、2010年に第1回が発表された[1]。2024年発表の第15回で幕を閉じることとなり、翻訳ミステリーの表彰は日本推理作家協会賞翻訳部門が試行から正式部門に昇格する[1]

翻訳ミステリー大賞
受賞対象翻訳小説のうち投票者がミステリーと見なす作品
日本の旗 日本
主催翻訳ミステリー大賞シンジケート
初回第1回(2010年)[1]
最新回第15回(2024年、最終回)[1]
最新受賞者ク・ビョンモ『破果』[1]
公式サイトhttp://honyakumystery.jp/

選出方法

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海外ミステリーの現役翻訳者の投票によって大賞が決まる[1]ベストセラーだけでなく、翻訳者が埋没させたくないと考える作品も選ばれてきた[1]

対象作品

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前年11月1日から、その年の10月31日までに刊行された作品。
当初は、前年12月1日からとしていたが、第3回(2012年発表)より前年11月1日からとなった。
第1回(2010年発表):2008年12月1日~2009年11月30日刊行作品[2]
第2回(2011年発表):2009年12月1日~2010年10月31日刊行作品[3]

一次選考

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投票者
フィクションノンフィクションを問わず訳書または共訳書が1冊以上ある翻訳家。
当初はフィクションの訳書がある翻訳家(2010年発表分は約350人[4])に限っていたが、一次投票では第7回(2016年発表)からノンフィクションの翻訳家も投票できるようになった[5]
投票方法
各投票者は、5作品を順位を付けて選び、投票する(5作品に満たない場合は無効票)。
各投票に以下の点数を付けて集計する。1位5点、2位4点、3位3点、4位2点、5位1点。
投票結果を参考にして、予選委員会が5作を目安に大賞候補作品を選出する(2013年発表分は6作品、2014年発表分は7作品[6])。
予選委員会は、前年度の大賞受賞作の翻訳者を含む5名。
なお、第2回(2011年発表)までは、投票者は最大3作品を順位を付けて選び、3作品選んだ場合は1位=3点/2位=2点/3位=1点、2作品選んだ場合は1位=2点/2位=1点、1作品のみ選んだ場合は1位=1点として、全投票を集計し、上位5作を大賞候補作品とした。

二次選考

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投票者
フィクションノンフィクションを問わず訳書または共訳書が1冊以上ある翻訳家のうち、大賞候補作すべてを読み終えている者(大賞候補作は5作品。ただし、2013年発表は6作品、2014年発表は7作品)。
当初はフィクションの訳書がある翻訳家に限っていたが、第6回(2015年発表)の二次投票からノンフィクションの翻訳家も投票できるようになった[5]
投票方法
各投票者は、候補作のうち1作品を選び、投票する。

発表

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翌年4月に受賞作が発表される。併せて、各投票者の名前と投票作品、各候補作の獲得点数も公開される。

受賞作品

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大賞 大賞以外の一次選考通過作品 読者賞
第1回[7]
(2010年)
『犬の力』
ドン・ウィンズロウ
東江一紀
第2回[8]
(2011年)
『古書の来歴』
ジェラルディン・ブルックス
森嶋マリ 訳
第3回[9]
(2012年)
『忘れられた花園』
ケイト・モートン
青木純子 訳
第4回[10]
(2013年)
『無罪 INNOCENT』
スコット・トゥロー
二宮馨 訳
第5回[11]
(2014年)
『11/22/63』
スティーヴン・キング
白石朗 訳
『三秒間の死角』
アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム
ヘレンハルメ美穂
第6回[12]
(2015年)
『秘密』
ケイト・モートン
青木純子 訳
『秘密』
ケイト・モートン
青木純子 訳
第7回[13]
(2016年)
『声』
アーナルデュル・インドリダソン
柳沢由実子
『声』
アーナルデュル・インドリダソン
柳沢由実子
第8回[14]
(2017年)
『その雪と血を』
ジョー・ネスボ
鈴木恵
『その雪と血を』
ジョー・ネスボ
鈴木恵
第9回[15]
(2018年)
『フロスト始末』
R・D・ウィングフィールド
芹澤恵
『13・67』
陳浩基
天野健太郎
第10回[16]
(2019年)
カササギ殺人事件
アンソニー・ホロヴィッツ
山田蘭 訳
カササギ殺人事件
アンソニー・ホロヴィッツ
山田蘭 訳
第11回[1]
(2020年)
『11月に去りし者』
ルー・バーニー
加賀山卓朗 訳
第12回[1]
(2021年)
『指差す標識の事例』
イーアン・ペアーズ
池央耿・東江一紀・宮脇孝雄・日暮雅通 訳
第13回[17]
(2022年)
『台北プライベートアイ』
紀 蔚然
舩山むつみ 訳
  • 自由研究には向かない殺人(ホリー・ジャクソン著、服部京子 訳)
  • ヒロシマ・ボーイ(平原直美 著、芹澤恵 訳)
  • ブラックサマーの殺人(M・W・クレイヴン著、東野さやか 訳)
  • 亡国のハントレス(ケイト・クイン著、加藤洋子 訳)
第14回[1]
(2023年)
『彼女は水曜日に死んだ』
リチャード・ヤング
吉野弘人 訳
第15回[1]
(2024年、最終回)
『破果』
ク・ビョンモ
小山内園子 訳

読者賞

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「翻訳ミステリー読者賞」が2012年度より催されている[18]。翻訳家の投票による翻訳ミステリー大賞とは異なり、一般読者の投票により受賞作が決定される。翻訳ミステリー大賞は翻訳ミステリー大賞シンジケートが運営しているが、読者賞は別の有志により運営されている。賞の発表は、翻訳ミステリー大賞と同じ日に、同じ会場にて行われる。

第1回(2012年度)では、投票者各自が投票したい作品を1冊だけ選んで投票した[19]。第2回(2013年度)以降は、投票者各自に持ち点が与えられ、投票者各自が投票したい作品1〜3冊に持ち点を振り分ける方式がとられた[20]。なお投票者各自に与えられた持ち点は、第2回(2013年度)は5点[20]、第3回(2014年度)は6点[21]

受賞作品は以下の通り。

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k 翻訳ミステリー大賞に幕 「ここにあり」示した15年朝日新聞』夕刊2024年6月19日2面(2024年6月25日閲覧)
  2. ^ 翻訳ミステリー大賞及びこのサイトについて”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2009年10月14日). 2017年11月9日閲覧。
  3. ^ 第2回翻訳ミステリー大賞一次投票のご案内”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2010年10月28日). 2010年11月17日閲覧。
  4. ^ 「翻訳ミステリー大賞」創設 翻訳者有志で - ウェイバックマシン(2016年3月4日アーカイブ分)
  5. ^ a b 第六回翻訳ミステリー大賞二次投票のご案内”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2015年1月28日). 2019年4月16日閲覧。 “今回の第六回大賞から、ノンフィクション分野でご活躍のみなさまのお声もぜひともうかがいたいと考えて、投票をお願いしております。”
  6. ^ 2013年度の候補は、6作品と発表されたが、集計ミスが発覚し、上位5位までの作品ラインナップが変わることが判明したため、事務局での議論の結果、最終候補作が7作品となった。
    第五回翻訳ミステリー大賞最終候補作決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2013年12月27日). 2017年11月10日閲覧。
    第五回大賞・最終候補作変更のお知らせ”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2014年1月6日). 2017年11月10日閲覧。
  7. ^ 第1回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2010年3月21日). 2017年11月10日閲覧。
  8. ^ 速報! 第2回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2011年4月20日). 2017年11月10日閲覧。
  9. ^ 第3回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2012年4月15日). 2017年11月10日閲覧。
  10. ^ 第四回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2013年4月13日). 2017年11月10日閲覧。
  11. ^ 第五回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2014年4月19日). 2017年11月10日閲覧。
  12. ^ 【速報】第六回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2015年4月25日). 2017年11月10日閲覧。
  13. ^ a b 【速報】第七回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2016年4月3日). 2017年11月10日閲覧。
  14. ^ 【速報】第八回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2017年4月23日). 2017年11月10日閲覧。
  15. ^ 【速報】第九回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2018年4月15日). 2018年5月16日閲覧。
  16. ^ 【速報】第十回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2019年4月15日). 2019年4月16日閲覧。
  17. ^ 【速報】第十三回翻訳ミステリー大賞決定!”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2022年6月3日). 2022年6月11日閲覧。
  18. ^ 大木雄一郎(福岡読書会) (2013年4月26日). “読者賞とコンベンションを振り返って”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート. 2017年11月10日閲覧。
  19. ^ 第1回翻訳ミステリー読者賞のお知らせ”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2012年12月28日). 2014年4月21日閲覧。
  20. ^ a b 第2回読者賞のお知らせ(全国翻訳ミステリー読書会連合)”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート (2013年12月21日). 2017年11月10日閲覧。
  21. ^ 投票要項”. 翻訳ミステリー読者賞情報サイト (2015年4月2日). 2015年4月30日閲覧。
  22. ^ 第1回翻訳ミステリー読者賞結果発表”. 翻訳ミステリー読者賞情報サイト (2013年). 2014年4月21日閲覧。
  23. ^ 第5回翻訳ミステリー大賞&第2回翻訳ミステリー読者賞決定! - 翻訳ミステリー読者賞情報サイト”. 翻訳ミステリー読者賞情報サイト (2014年4月20日). 2014年4月21日閲覧。
  24. ^ 大木雄一郎 (2014年4月22日). “第2回翻訳ミステリー読者賞御礼”. 翻訳ミステリー大賞シンジケート. 2017年11月10日閲覧。
  25. ^ 第6回翻訳ミステリー大賞&第3回翻訳ミステリー読者賞が決定しました!”. 翻訳ミステリー読者賞情報サイト (2015年4月26日). 2015年4月30日閲覧。
  26. ^ 【速報】決定! 第5回翻訳ミステリー読者賞”. 翻訳ミステリー読者賞 (2017年4月22日). 2017年11月10日閲覧。
  27. ^ 【速報】決定! 第6回翻訳ミステリー読者賞”. 翻訳ミステリー読者賞 (2018年4月14日). 2018年5月16日閲覧。
  28. ^ アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭訳『カササギ殺人事件』が第10回翻訳ミステリー大賞と第7回翻訳ミステリー読者賞をダブル受賞しました”. 東京創元社 (2019年4月15日). 2020年5月4日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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