天津龍太郎
天津 龍太郎(あまつ りゅうたろう、1916年2月10日 - 1962年)は、日本の俳優である[1][2][3][4][5][6][7]。新漢字表記天津 竜太郎[2][4][5]、本名兼田 隆(かねだ たかし)[1]。日本映画データベースにおける「大津竜太郎」[4]は誤記[1][5]。
あまつ りゅうたろう 天津 龍太郎 | |
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本名 | 兼田 隆 (かねだ たかし) |
生年月日 | 1916年2月10日 |
没年月日 | 1962年 |
出生地 | 日本 岡山県英田郡吉野村(現在の同県美作市五名あたり) |
職業 | 俳優 |
ジャンル | 劇映画(時代劇、剣戟映画、サイレント映画・トーキー)、大衆演劇(剣劇) |
活動期間 | 1930年代 - 1941年 |
人物・来歴
編集1916年(大正5年)2月10日、岡山県英田郡吉野村(現在の同県美作市五名あたり)に生まれる[1]。
兵庫県神戸市に移り、旧制・神戸市立第三神港商業学校(現在の神戸市立六甲アイランド高等学校)に入学する[1]。同校卒業後、奈良県生駒郡伏見村(現在の同県奈良市あやめ池北1丁目)にあやめ池撮影所を持つ市川右太衛門プロダクションに入社、同社で俳優としてデビュー、脇役・端役等でサイレント映画に出演をしていた[1]。1936年(昭和11年)12月に同社は解散し、松竹キネマに吸収されるが、それを目前とした同年9月、兵庫県西宮市甲陽園に甲陽撮影所を稼働させていた甲陽映画(同年5月設立)に移籍する[1][4][5]。同年9月23日に公開された『大江戸の魔剣』(監督熊谷草弥)の主演に、満20歳にして抜擢される[1][4][5]。同社の作品は、マキノ正博のマキノトーキー製作所が千鳥興業から引き継いで配給を行っていたため、トーキーあるいはサウンド版の映画に多く出演した[4][5]。
あやめ池撮影所に右太衛門の実兄・山口天龍が設立した全勝キネマに、翌1937年(昭和12年)1月に移籍している[1][4][5]。同社はほとんどの作品がサイレント、あるいは映画説明者(活動写真弁士)の説明が音声トラックに収録された解説版であり、トーキーはほとんど製作されなかった[4][5]。『日本映画俳優全集・男優編』には「第一回主演作品」として『夕凪城の怪人』(監督熊谷草弥)の名が挙げられているが、同作は日疋龍太郎の主演作であり、天津は同作に出演した記録がみられない[4][5][8][9]。
1940年(昭和15年)、同社が松竹傘下に入り、1941年(昭和16年)1月、合併により興亜映画と改称すると、京都の旧マキノトーキー製作所の撮影所(現在の松竹京都撮影所)を使用するこの新会社に継続的に入社した[4][5]。同年1月22日に公開された解説版『尾州三勇士』(監督熊谷草弥)に主演しているが、同作が全勝キネマの最終作品となった[1][4][5]。興亜映画が製作し、同年10月20日に公開された『荒野の叫び』(監督金田繁)を最後に、満25歳にして天津の映画出演記録は途絶える[4][5][6]。
その後は舞台俳優に転向して一座を組み、満28歳となる1944年(昭和19年)、新富座での林長之助一座・富士嶺子一座・天津龍太郎一座大合同と銘打った公演で、同年1月には『血闘盤若坂』、同年2月には『勤王二筋道』、『義剣玉川原』、『まごころ宿場』を週替わりに上演、それぞれに主演した記録がある[10]。第二次世界大戦後は、二代目大江美智子の一座に参加、大江はま子、吉沢章之、三代目村田正雄らとともに、1957年(昭和32年)8月の芝居に出演した記録が残っている[11]。
1962年(昭和37年)、死去した。満46歳没。
フィルモグラフィ
編集クレジットはすべて「出演」である[4][5]。公開日の右側には役名[4][5]、および東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC)、マツダ映画社所蔵等の上映用プリントの現存状況についても記す[7][12]。同センター等に所蔵されていないものは、とくに1940年代以前の作品についてはほぼ現存しないフィルムである。資料によってタイトルの異なるものは併記した。
甲陽映画
編集すべて製作は「甲陽映画」、特筆以外の配給は「マキノトーキー」、特筆以外すべてトーキーである[4][5]。
- 『大江戸の魔剣』 : 監督熊谷草弥、配給千鳥興業、1936年9月23日公開 - 大月左馬之助・松平新兵衛(主演)
- 『どくろ大名 第一篇』[5](『どくろ大明 第一篇』[4]) : 監督下村健二、サウンド版、1936年10月1日公開 - 松平讃岐守
- 『どくろ大名 第二篇』[5](『どくろ大明 第二篇』[4]) : 監督高見貞衛、サウンド版、1936年10月8日公開 - 松平讃岐守
- 『どくろ大名 第三篇』[5](『どくろ大明 第三篇』[4]) : 監督下村健二、サウンド版、1936年10月23日公開 - 松平讃岐守
- 『若殿三勇士』 : 監督高見貞衛、1936年11月7日公開 - 尾張松若丸(主演)
- 『熱血御陣河原』 : 監督下村健二、サウンド版、1936年11月29日公開 - 主演
- 『驀走白馬隊 前篇』[7](『爆走白馬隊 前篇』[4]) : 監督下村健二、サウンド版、1936年12月31日公開 - 眞木左馬之助、10分尺で現存(NFC所蔵[7])
- 『驀走白馬隊 後篇』[7](『爆走白馬隊 後篇』[4]) : 監督下村健二、サウンド版、1937年1月5日公開 - 眞木左馬之助、34分尺で現存(NFC所蔵[7])
- 『忍術浮島城』 : 監督勝見雅之(勝見正義)、1937年3月18日公開
- 『笹野名槍伝』 : 監督高見貞衛、サウンド版、1937年製作・公開 - 主演
- 『伝法葵くずれ』 : 監督勝見雅之(勝見正義)、1937年製作・公開 - 主演
全勝キネマ
編集製作・配給は「全勝キネマ」、特筆以外すべてサイレント映画である[4][5]。
- 『疾風どくろ剣士』 : 監督山田兼則、1937年製作・公開 - 主演
- 『団十郎の勝』 : 監督熊谷草弥、1937年製作・公開 - 主演
- 『龍虎双剣士 前篇』[5](『竜虎双剣士 前篇』[4]) : 監督熊谷草弥、1938年1月5日公開 - 安城寺兵馬
- 『紅槍荒鷲隊』[4][5](『紅顔荒鷲隊』[5]) : 監督山本松男、1937年製作・1938年1月22日公開 - 明石鐡之助(主演)
- 『復讐笑ひの面』 : 監督山田兼則、解説版、1938年3月10日公開 - 北町の弥太郎(主演)
- 『忍術山嶽党』 : 監督熊谷草弥、解説版、1938年4月14日公開 - 鬼門太郎(主演)
- 『平馬追討旅』 : 監督金田繁、解説版、1938年5月5日公開 - 平馬(主演)
- 『飛竜必殺剣』(『飛龍必殺剣』[5][7]) : 監督金田繁、解説版、1938年6月9日公開 - 細木原久馬(主演)、『飛龍必殺剣』題・29分尺で現存(NFC所蔵[7])
- 『紅蜘蛛小姓』 : 監督山本松男、解説版、1938年6月23日公開 - 瀧川駒太郎(主演)
- 『曲斬白頭巾』 : 監督熊谷草弥、解説版、1938年7月14日公開 - 法川左近次(主演)
- 『一刀必殺剣』 : 監督姓丸浩、解説版、1938年9月8日公開 - 名寄の宗助(主演)
- 『快侠流れ星』 : 監督白秋詩路、解説版、1938年9月22日公開 - 流れ星の銀平(主演)
- 『奇襲覆面隊』 : 監督山田兼則、解説版、1938年10月6日公開 - 陣太郎
- 『白夜の凱歌』 : 監督橋本松男、解説版、1938年10月27日公開 - 尾形喬太郎(主演)
- 『剣法当り狂言』 : 監督山田兼則、解説版、1938年11月24日公開 - 佐竹銀十郎(主演)
- 『吼えろ!怪物』 : 監督金田繁、解説版、1938年12月15日公開 - 六助(主演)
- 『神州鬼面城』 : 監督橋本松男、解説版、1938年12月31日公開 - 萩原主水
- 『気紛れ大納言』 : 監督姓丸浩、トーキー、1939年1月5日公開 - 気紛れ大納言 松平長七郎(主演)
- 『忍術八天狗 前篇』 : 監督金田繁、解説版、1939年2月1日公開 - 猿飛佐助(主演)
- 『忍術八天狗 後篇』 : 監督金田繁、解説版、1939年2月8日公開 - 猿飛佐助(主演)
- 『躍る怪魔』 : 監督金田繁、解説版、1939年2月15日公開 - 流太郎・鬼神の五郎太(主演・二役)
- 『新退屈男』(『曲斬退屈男』[5]) : 監督姓丸浩、解説版、1939年3月8日公開 - 松平長七郎(主演)
- 『呪ひの銀猫』 : 監督山田兼則、解説版、1939年3月30日公開 - 仲間清助(主演)
- 『隠密七変化』 : 監督姓丸浩、解説版、1939年5月11日公開 - 隠密 相良喬四朗(主演)
- 『魔像百万両 前篇』 : 監督姓丸浩、解説版、1939年6月1日公開 - 遠山金四朗(主演)
- 『魔像百万両 後篇』 : 監督姓丸浩、解説版、1939年6月8日公開 - 遠山金四朗(主演)
- 『地雷火小僧』 : 監督山田兼則、解説版、1939年7月13日公開 - 地雷火小僧(主演)
- 『捕物綺談 河童の仇討』 : 監督金田繁、解説版、1939年7月20日公開 - お神楽長次(主演)
- 『河童大合戦 後篇』 : 監督米沢正夫、製作・配給極東キネマ、解説版、1939年7月26日公開[5]
- 『大江戸お化合戦』 : 監督佐藤樹一郎、解説版、1939年8月3日公開 - お役者文蔵(主演)
- 『建国驀走隊』 : 監督金田繁、解説版、1939年8月31日公開 - 友衛八郎(主演)
- 『愛染菩薩』 : 監督金田繁、解説版、1939年10月12日公開 - 源氏車の次郎吉(主演)
- 『荒木又右衛門 前篇』 : 監督山田兼則、解説版、1939年11月8日公開 - 荒木又右衛門(主演)
- 『荒木又右衛門 後篇』 : 監督山田兼則、解説版、1939年11月15日公開 - 荒木又右衛門(主演)
- 『妖芙火喰鳥』(『妖笑火喰鳥』[5]) : 監督金田繁、トーキー、1939年12月7日公開 - 来島影之丞(主演)
- 『不知火伝奇』 : 監督橋本松男、解説版、1939年12月21日公開 - 不知火左京(主演)
- 『昇竜日本晴れ』 : 監督姓丸浩、解説版、1940年1月5日公開
- 『怪猫油地獄』 : 監督熊谷草弥、解説版、1940年1月15日公開 - 音羽家新三・尾上菊次郎(主演・二役)
- 『奇傑荒獅子』 : 監督山田兼則、トーキー、1940年1月20日公開 - 主演
- 『木村長門守 後篇』 : 監督熊谷草弥、解説版、1940年2月15日公開
- 『恩讐花嫁狐』 : 監督熊谷草弥、トーキー、1940年2月22日公開 - 主演
- 『戦雲青葉城』 : 監督山田兼則、トーキー、1940年2月29日公開 - 主演
- 『小楠公』 : 監督熊谷草弥、トーキー、1940年3月14日公開 - 主演
- 『満月狸武士』 : 監督橋本松男、解説版、1940年4月3日公開 - 主演
- 『蛇姫狂乱』 : 監督熊谷草弥、解説版、1940年4月11日公開 - 主演
- 『鉄血浪人街』 : 監督金田繁、トーキー、1940年5月1日公開 - 主演
- 『双眼千羽鶴 前後篇』(『雙眼千羽鶴 前後篇』[5]) : 監督姓丸浩、解説版、1940年5月30日公開 - 主演
- 『隻眼千羽鶴 大願成就の巻』 : 監督姓丸浩、解説版、1940年6月6日公開 - 主演
- 『刃影乱れ旅』 : 監督姓丸浩、解説版、1940年7月4日公開 - 主演
- 『剣豪隅田の血戦』 : 監督金田繁、トーキー、1940年7月18日公開 - 主演
- 『三剣怒濤に躍る 前篇』 : 監督山田兼則、解説版、1940年8月29日公開 - 隠密大森敬之助(主演)、『三劍怒濤に躍る 前篇 東海颶風の卷』題・27分尺で現存(NFC所蔵[7])
- 『三剣怒濤に躍る 後篇』 : 監督山田兼則、解説版、1940年9月5日公開 - 隠密大森敬之助(主演)、『三劍怒濤に躍る 後篇 南海怒濤の卷』題・19分尺で現存(NFC所蔵[7])
- 『開運富籤剣法』[4][5](『開運富籤劔法』) : 監督橋本松男、配給松竹、解説版、1940年12月31日公開 - 主演
- 『尾州三勇士』 : 監督熊谷草弥、配給松竹、解説版、1941年1月22日公開 - 主演
興亜映画
編集脚注
編集- ^ a b c d e f g h i j キネマ旬報社[1979], p.20.
- ^ a b 盛内[1994], p.75.
- ^ 天津龍太郎、jlogos.com, エア、2013年5月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 天津竜太郎、大津竜太郎(表題誤記)、日本映画データベース、2013年5月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac 天津龍太郎、天津竜太郎、日本映画情報システム、文化庁、2013年5月27日閲覧。
- ^ a b 天津龍太郎、日本映画製作者連盟、2013年5月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 天津龍太郎、東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年5月27日閲覧。
- ^ 夕凪城の怪人、日本映画データベース、2013年5月27日閲覧。
- ^ 夕凪城の怪人、日本映画情報システム、文化庁、2013年5月27日閲覧。
- ^ 国立[2005], p.120-125.
- ^ 大笹[2009], p.474.
- ^ 主な所蔵リスト 劇映画 邦画篇、マツダ映画社、2013年5月27日閲覧。
参考文献
編集- 『日本映画俳優全集・男優編』、キネマ旬報社、1979年10月23日
- 『芸能人物事典 明治大正昭和』、日外アソシエーツ、1998年11月 ISBN 4816915133
- 『映画俳優事典 戦前日本篇』、盛内政志、未来社、1994年8月 ISBN 4624710657
- 『近代歌舞伎年表 京都篇 別巻 昭和十八年 - 昭和二十二年 補遺・索引』、国立劇場近代歌舞伎年表編纂室、八木書店、2005年4月 ISBN 4840692335
- 『新日本現代演劇史 1 脱戦後篇』、大笹吉雄、中央公論新社、2009年2月 ISBN 4124001622
関連項目
編集外部リンク
編集- Ryûtarô Amatsu - IMDb
- 天津龍太郎、天津竜太郎 - 文化庁日本映画情報システム
- 天津龍太郎 - 日本映画製作者連盟
- 天津龍太郎 - 東京国立近代美術館フィルムセンター
- 天津竜太郎 - 日本映画データベース
- 大津竜太郎 - 日本映画データベース (表題誤記)
- 天津竜太郎 - allcinema
- 天津龍太郎 - jlogos.com (エア)