亜熱帯
亜熱帯(あねったい、英: subtropics)とは、熱帯に次いで気温の高い地域のこと。熱帯のように高温の夏、および比較的穏やかな冬という特徴を持つ地域を指す。
定義
編集亜熱帯の定義として広く認められたものはなく、人や場合によってさまざまな意味合いで使われる。
日本語においては、一般に、亜熱帯といえば北回帰線と南回帰線(それぞれ北緯・南緯23.5度)付近の緯度が20度から30度あたりの地域を漠然と指すことが多い[1]。この緯度の地域は、本来亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響下でほとんど雨が降らず、ステップや砂漠などの乾燥帯となる[2]。しかし、大陸の東岸においてはモンスーンの影響を受けるため非常に湿潤となり、熱帯モンスーン気候や温暖湿潤気候など熱帯や温帯に属する気候となる。
亜熱帯に対応する英語は subtropics であるとされるが、これは南北回帰線から緯度35度あたりの地域を指すことが多い。例えば、アメリカ気象学会は亜熱帯の極方向の限界を南北緯度35度あたりとしている[3]。この基準は、日本を含む大陸東岸周辺においては下記におけるケッペン、アリソフ、およびトレワーサの気候区分における亜熱帯の限界と概ね一致し、また常緑広葉樹林の限界とも概ね一致する。一方、地中海周辺や大陸西岸においてはこれらの意味での亜熱帯は緯度40 - 45度付近、つまり地中海性気候の地域まで広がっている。
ケッペンの気候区分には亜熱帯という区分はないが、温帯において最暖月平均気温が22°C以上である温暖湿潤気候 (Cfa) 、温帯夏雨気候 (Cwa) 、地中海性気候 (Csa) を亜熱帯を構成する気候と考えることがある[要出典]。なお、温帯夏雨気候 (Cwa) の別名として「亜熱帯モンスーン気候」と呼ぶことがある[要出典]。
フローンの気候区分においては、亜熱帯乾燥帯(記号:PP)と亜熱帯冬雨帯(記号:PW)が存在する[4]。PPはケッペンの気候区分の乾燥帯 (B) 、PWは地中海性気候 (Cs) に相当する[4]。
アリソフの気候区分においては、気候帯4すなわち「高日季(夏)は熱帯気団、低日季(冬)は寒帯気団に支配される地域」が亜熱帯と呼ばれている[5]。
トレワーサの気候区分 (en) においては、「月平均気温が10°C以上の月が8ヶ月以上あり、なおかつ熱帯や乾燥帯でない地域」が亜熱帯と呼ばれている。
その他、温帯に属する地域の中で最寒月の最低気温の平均 (平均気温ではない)が摂氏0度以下には下がらない地域、温帯であって年平均気温が18度以上かつ最寒月の平均気温が10度もしくは14度以上である地域、平均気温20℃以上の月が4~11か月までで20℃以下の月が1~8か月の範囲の地域[6]、冬季の平均気温がほぼ15度以上ある地域であるなどの定義がされることもある。
亜熱帯の地域・都市
編集アメリカ合衆国カリフォルニア州南部、フロリダ州北・中部[注 1]、メキシコ湾岸北部、オーストラリア東海岸[注 2]、南アフリカなどを含む。
脚注
編集- 注釈
- 出典
- ^ 第2版, 日本大百科全書(ニッポニカ),ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “亜熱帯(あねったい)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年2月22日閲覧。
- ^ 第2版, 日本大百科全書(ニッポニカ),ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “亜熱帯(あねったい)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年2月22日閲覧。
- ^ Glossary of Meteorology (25 April 2012). “Subtropics”. American Meteorological Society. 24 March 2013閲覧。
- ^ a b 矢澤 (1989) :306ページ
- ^ 仁科(2007):65ページ
- ^ 日本国語大辞典, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,デジタル大辞泉,百科事典マイペディア,世界大百科事典 第2版,大辞林 第三版,日本大百科全書(ニッポニカ),精選版. “亜熱帯(あねったい)とは”. コトバンク. 2020年7月28日閲覧。
- ^ 気候 那覇市、2017年12月7日閲覧
- ^ 台北の気候と時差 株式会社HowTravel、2017年12月7日閲覧
- ^ 年間気候カレンダー 株式会社イデア、2017年12月7日閲覧
- ^ 珠江のほとりに位置する街:広州 ジェットスターグループ、2017年12月7日閲覧
- ^ ブリスベン/ゴールド・コーストの気候 株式会社トラベルビジョン、2017年12月7日閲覧
参考文献
編集- 仁科淳司『やさしい気候学 増補版』古今書院、2007年3月3日、135pp. ISBN 978-4-7722-8500-1
- 矢澤大二『気候地域論考―その思潮と展開―』古今書院、1989年11月20日、738pp. ISBN 4-7722-1113-6