ユークリッド幾何学において、三角形の円錐曲線または三角形の二次曲線:Triangle conic)は三角形に定義される、円錐曲線の総称である。 たとえば、外接円内接円シュタイナー楕円キーペルト双曲線が挙げられる。ほかに、それぞれの頂点または対辺ごとに定義される、アルツト放物線のようなものもある[1]

三角形の円錐曲線と言う言葉に、明確な定義は存在せず、文献の中で広く使われている ([2][3][4][5]などを参照)。ギリシャの数学者Paris Pamfilosは「円錐曲線が外接するとは、ABC頂点3つを通ることであり、円錐曲線が内接するとは3辺に接することである」と述べた[6][7]。三角形の楕円放物線双曲線(triangle circle,ellipse,parabola,hyperbola)といった言葉も同様に定義された。

Encyclopedia of Triangle CentersCatalogue of Triangle Cubicsのような、三角形に対する図形の辞典のようなもので、円錐曲線がまとめられているものは2024年現在、存在しない[8]

三線座標による式

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三線座標x : y : zを用いて任意の円錐曲線は以下の式で表される。 うち、外接円錐曲線と内接円錐曲線は以下の式で表すことができる。 

特別な三角形の円錐曲線

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以下に有名な円錐曲線を挙げる。基準となる三角形をABC 、頂点及び角をA, B, C、その対辺をそれぞれa, b, c、とする。また、円錐曲線をあらわす三線座標の変数をx : y : zとする。

三角形の円

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有名な三角形の円[9]
No. 名称 定義 等式
1 外接円 頂点3つを通る円  
 
ABCの外接円
2 内接円 3辺に接する内側の円  
 
ABCの内接円
3 傍接円 辺の一つとは辺の内部で接し、他2辺とは延長線上で接する円  
 
内接円と傍接円
4 九点円 辺の中点頂垂線の足、垂心と頂点の中点などを通る円  
 
九点円
5 第一ルモワーヌ円 ルモワーヌ点を通り、各辺に平行な線と、他2辺の交点を通る円[10]
 
第一ルモワーヌ円

三角形の楕円

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有名な三角形の楕円
No. 名称 定義 等式
1 シュタイナー外接楕円 ABCの頂点を通り、重心を中心に持つ楕円  
 
ABCのシュタイナー楕円
2 シュタイナーの内接楕円 各辺と接し、重心を中心にもつ楕円  
 
ABCのシュタイナーの内接楕円

三角形の双曲線

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三角形の双曲線
No. 名称 定義 等式 図形
1 キーペルト双曲線 3つの相似な二等辺三角形XBC, YCA, ZAB, を三角形の同じ側に作ったときAX, BY, CZが交わる点の軌跡  
 
ABCのキーペルト双曲線。垂心Oと重心G、頂点A, B, Cを通る。.
2 ジェラベク双曲線 三角形の頂点、垂心、外心を通る双曲線  
 
ABCのジェラベク双曲線
3 フォイエルバッハ双曲線 三角形の頂点、垂心、内心を通る円  
 
ABCのフォイエルバッハ双曲線

三角形の放物線

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有名な三角形の放物線
No. 名称 定義 等式
1 アルツト放物線[11][12][1] B, CAB, ACと接する放物線(他2組についても同様)  
 
ABCのアーツ放物線
2 キーペルト放物線[13] 3つの相似な二等辺三角形A'BC, AB'C, ABC' を同じ側に作ったとき、ABCA'B'C' 配景の軸が成す包絡線  
 
ABCのキーペルト放物線。LMNの包絡線である。

三角形の円錐曲線の族

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ホフスタッター楕円

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ABCのホフスタッター楕円

ホフスタッター楕円(Hofstadter ellipses)はある媒介変数によってあらわされる楕円の集合である[14] ただし t は媒介変数で である。 t1 − t が表す楕円は等しい。また t = 1/2のとき内接楕円 となり t → 0とすると外接楕円 となる。

トムソン円錐曲線とダルブー円錐曲線

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トムソン円錐曲線(Thomson Conics)は、各辺との接点を通る、各辺の法線共点である内接円錐曲線の集合である。ダルブ―円錐曲線(Darboux Conics)は頂点での円錐曲線の法線が共点である外接円錐曲線である。双方の共点は、ダルブ―三次曲線上にある[15][16]

平行線との交点により構成される円錐曲線

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平行線によって構築される円錐曲線

△ABCと点Pについて、Pを通るBC,CA,ABに平行な線と、他2辺との交点をそれぞれXb, Xc, Yc, Ya, Za, Zbとする。この6点は同一円錐曲線上にある。特にP類似重心であるとき円となる。Pの三線座標をu:v:wとすると、6点を通る円錐曲線は以下の式で表される[17] 


九点円錐曲線

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九点円錐曲線

△ABCと点Pについて、AB,BC,CA,AP,BP,CP中点と、AB,CPBC,APCA,BPの交点の計9点を通る円錐曲線を九点円錐曲線(Nine-point conic)という[18][19][20]Pが垂心のとき円(九点円)、重心のとき内接楕円(シュタイナーの内接楕円)となる。

イフ円錐曲線

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イフ円錐曲線

媒介辺数  を用いて、 で表される円錐曲線をイフ円錐曲線(Yff conics)という[21] 。任意の点P(u : v : w)によって  で表される。特に放物線(イフ放物線、Yff parabola)の時は である。

  または  のとき楕円、  のとき双曲線となる。  のときは、座標平面上には表れない。

ラビノヴィッツ円錐曲線

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ラビノヴィッチ円錐曲線

△ABCと点Pについて、同じ向きにAP//BD//CE,BP//CG//AF,CP//AH//BIで、AP=AF=AH,BP=BD=BI,CP=CE=CGを満たすように点D,E,F,G,H,Iをとると、その6点は同一円錐曲線上にある。これをラビノヴィッツ円錐曲線(Rabinowitz Conics)と言う[22]

関連

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出典

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  1. ^ a b 小倉金之助 訳『初等幾何學 第2卷 空間之部』山海堂、1915年、853頁。doi:10.11501/1082037 
  2. ^ Paris Pamfilos (2021). “Equilaterals Inscribed in Conics”. International Journal of Geometry 10 (1): 5–24. 
  3. ^ Christopher J Bradley. “Four Triangle Conics”. Personal Home Pages. University of BATH. 11 November 2021閲覧。
  4. ^ Gotthard Weise (2012). “Generalization and Extension of the Wallace Theorem”. Forum Geometricorum 12: 1–11. https://forumgeom.fau.edu/FG2012volume12/FG201201index.html 12 November 2021閲覧。. 
  5. ^ Zlatan Magajna. “OK Geometry Plus”. OK Geometry Plus. 12 November 2021閲覧。
  6. ^ Geometrikon”. Paris Pamfilos home page on Geometry, Philosophy and Programming. Paris Palmfilos. 11 November 2021閲覧。
  7. ^ 1. Triangle conics”. Paris Pamfilos home page on Geometry, Philosophy and Programming. Paris Palfilos. 11 November 2021閲覧。
  8. ^ Bernard Gibert. “Catalogue of Triangle Cubics”. Cubics in Triangle Plane. Bernard Gibert. 12 November 2021閲覧。
  9. ^ Cook, Nelle May (1929). A triangle and its circles. hdl:2097/23902. https://hdl.handle.net/2097/23902 2024年6月19日閲覧. "Call issue: LD2668 .T4 1929 C65" 
  10. ^ Weisstein, Eric W.. “First Lemoine Circle” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年5月5日閲覧。
  11. ^ Nikolaos Dergiades (2010). “Conics Tangent at the Vertices to Two Sides of a Triangle”. Forum Geometricorum 10: 41–53. 
  12. ^ Conics Tangent at the Vertices to Two Sides of a Triangle”. Forum Geometricorum. 2024年5月6日閲覧。
  13. ^ R H Eddy and R Fritsch (June 1994). “The Conics of Ludwig Kiepert: A Comprehensive Lesson in the Geometry of the Tr”. Mathematics Magazine 67 (3): 188–205. doi:10.1080/0025570X.1994.11996212. 
  14. ^ Weisstein, Eric W.. “Hofstadter Ellipse”. athWorld--A Wolfram Web Resource.. Wolfram Research. 25 November 2021閲覧。
  15. ^ Roscoe Woods (1932). “Some Conics with Names”. Proceedings of the Iowa Academy of Science 39 Volume 50 (Annual Issue). 
  16. ^ K004 : Darboux cubic”. Catalogue of Cubic Curves. Bernard Gibert. 26 November 2021閲覧。
  17. ^ Paul Yiu (Summer 2001). Introduction to the Geometry of the Triangle. p. 137. https://mathwo.github.io/assets/files/barycentric/introduction_to_the_geometry_of_the_triangle.pdf 26 November 2021閲覧。 
  18. ^ 初等幾何における円錐曲線の活躍”. 角川ドワンゴ学園 N/S 高等学校研究部. 2024年5月6日閲覧。
  19. ^ Bocher, Maxime (1892). “On a Nine-Point Conic”. Annals of Mathematics 6 (5): 132–132. doi:10.2307/1967142. ISSN 0003-486X. https://www.jstor.org/stable/1967142. 
  20. ^ Weisstein, Eric W.. “Nine-Point Conic” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年5月6日閲覧。
  21. ^ Clark Kimberling (2008). “Yff Conics”. Journal for Geometry and Graphics 12 (1): 23–34. 
  22. ^ Rabinowitz Conics Associated with a Triangle”. International Journal of Computer Discovered Mathematics. 2024年5月6日閲覧。