ユルゲン・モルトマン
ドイツの神学者 (1926-2024)
ユルゲン・モルトマン(ドイツ語: Jürgen Moltmann、1926年4月8日 - 2024年6月3日)は、ドイツの神学者[1]。希望の神学を提唱したことで世界的に知られる。
経歴
編集1926年、ハンブルクに生まれる。ナチス・ドイツの軍隊に従軍して第二次世界大戦中に捕虜となり、ベルギーとスコットランドの捕虜収容所で3年間すごす[2]。初めて神学に触れ、そこで十字架の苦難と復活の希望を心に焼き付けられ、それが希望の神学のきっかけになった[2]。1948年に帰国するとゲッティンゲン大学福音主義神学部で学び、H・J・イーヴァント、E・ヴォルフ[3]、オットー・ヴェーバーらの影響を受ける[4]。その後、イギリスに留学。帰国後、1953年から1958年まで、ブレーメンのヴァッサーホルスト教会で牧師となる。1958年から1963年まで、ヴッパータール神学大学、1963年から1967年までボン大学、1967年以降はテュービンゲン大学で組織神学を教え、1994年に退官した。
1964年に公刊した著書『希望の神学 : キリスト教的終末論の基礎づけと帰結の研究』によって、世界的に知られる神学者となった[5][6]。
2024年6月3日、テュービンゲンで死去。98歳だった[7][8]。
妻はフェミニスト神学研究で知られるE・モルトマン・ヴェンデル。夫婦での共著も多い。
著作
編集単著
編集- 『希望の神学 : キリスト教的終末論の基礎づけと帰結の研究』高尾利数 訳、新教出版社、1968年。(原著:Theologie der Hoffnung、1964年[1])
- 『神学の展望 : 現代社会におけるキリスト教の課題』喜田川信・蓮見和男 訳、新教出版社、1971年。
- 『キリストの未来と世界の終り : ユルゲン・モルトマン説教集』 蓮見和男 訳、新教出版社、1973年。
- 『人間:現代の闘争の中におけるキリスト教人間像』蓮見和男 訳、新教出版社、1973年。
- 『存在の喜びの神学』喜田川信 訳、新教出版社、1973年。
- 『十字架と革命』大庭健 訳、新教出版社、1974年。
- 『十字架につけられた神』喜田川信・土屋清・大橋秀夫 訳、新教出版社〈現代神学双書 59〉、1976年。(原著:Der gekreuzigte Gott、1972年[1])
- 『聖霊の力における教会』喜田川信・藤井政雄・頓所正 訳、新教出版社、1981年。(原著:Kirche in der Kraft des Geistes、1975年[1])
- 『神が来られるなら』蓮見幸恵・蓮見和男 訳、新教出版社、1988年。
- 『20世紀神学の展望』渡部満 訳、新教出版社、1989年。
- 『希望・不安・黙想 : 今日の神経験』松見俊 訳、ヨルダン社、1990年。
- 『三位一体と神の国 : 神論』土屋清 訳、新教出版社〈組織神学論叢 1〉、1990年。
- 『創造における神 : 生態学的創造論』沖野政弘 訳、新教出版社〈組織神学論叢 2〉、1991年。
- 『イエス・キリストの道 : メシア的次元におけるキリスト論』蓮見和男 訳、新教出版社〈組織神学論叢 3〉、1992年。
- 『いのちの御霊 : 総体的聖霊論』蓮見和男・沖野政弘 訳、新教出版社〈組織神学論叢 4〉、1994年。
- 『人への奉仕と神の国』沖野政弘 ほか 訳、新教出版社、1995年。
- 『神の到来 : キリスト教的終末論』蓮見和男 訳、新教出版社〈組織神学論叢 5〉、1996年。
- 『今日キリストは私たちにとって何者か』沖野政弘 訳、新教出版社、1996年。
- 『新しいライフスタイル : 開かれた教会を求めて』沖野政弘 訳、新教出版社、1996年。
- 『無力の力強さ : ユルゲン・モルトマン説教集』田村信吾・蓮見和男 訳、新教出版社、1998年。
- 『いのちの泉 : 聖霊といのちの神学』蓮見幸恵 訳、新教出版社、1999年。
- 『神学的思考の諸経験 : キリスト教神学の道と形』沖野政弘 訳、新教出版社〈組織神学論叢 6〉、2001年。
- 『人類に希望はあるか : 21世紀沖縄への提言 : 沖縄にJ.モルトマン博士を迎えて』モルトマン博士招聘委員会 編、新教出版社〈新教コイノーニア〉、2005年。
- 『終りの中に、始まりが : 希望の終末論』蓮見幸恵 訳、新教出版社、2005年。
- 『科学と知恵:自然科学と神学の対話』蓮見和男・蓮見幸恵 訳、新教出版社、2007年。
- 『わが足を広きところに : モルトマン自伝』蓮見和男・蓮見幸恵 訳、新教出版社、2012年。
- 『希望の倫理』福嶋揚 訳、新教出版社、2016年。
共著
編集- H.キュンク、J.モルトマン 他『教会に未来はあるか : 現代の課題をめぐる対話』佐伯晴郎 訳、新教出版社、1980年。
- J.モルトマン、J.B.メッツ『政治的宗教と政治的神学』蓮見和男 訳、新教出版社、1980年。
- J.モルトマン 他『山上の説教を生きる : 服従と山上の説教』佐々木勝彦・庄司真 訳、新教出版社、1985年。
- P.ラピデ、J.モルトマン『唯一神か三一神か : ユダヤ教とキリスト教の対話』青野太潮・松見俊 訳、ヨルダン社、1985年。
- E.モルトマン=ヴェンデル、J.モルトマン『女の語る神・男の語る神』内藤道雄 訳、新教出版社、1994年。
- ユルゲン・モルトマン、エリーザベト・モルトマン=ヴェンデル『現代の終末論とフェミニズム : ユルゲン・モルトマン エリーザベト・モルトマン=ヴェンデル 日本講演集1996』新教出版社、1997年。
脚注
編集- ^ a b c d 「モルトマン」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン、コトバンク。2023年11月12日閲覧。
- ^ a b 笠井恵二 1993, pp. 65–66.
- ^ 関口佐和子 2013, pp. 1–2.
- ^ 笠井恵二 1993, p. 66.
- ^ 関口佐和子 2013, p. 2.
- ^ 笠井恵二 1993, p. 68.
- ^ “ドイツ人神学者のユルゲン・モルトマン氏死去 「希望の神学」提唱者”. クリスチャントゥデイ (2024年6月5日). 2024年6月5日閲覧。
- ^ “Theologe Jürgen Moltmann gestorben”. ref.ch (2024年6月4日). 2024年6月4日閲覧。
参考文献
編集- 笠井恵二「モルトマンの歴史理解 : 希望の神学と現代世界の問題」『基督教学研究』第14巻、京都大学基督教学会、1993年3月、65-85頁、CRID 1390010292564873600、doi:10.14989/268430、ISSN 0387-5091。
- 関口佐和子『モルトマン神学における「神の国」理解』(博士(神学)論文)同志社大学、2013年。doi:10.14988/di.2017.0000016127。 NAID 500000940503。学位授与番号: 甲第617号。
関連文献
編集- 寺園喜基「モルトマンにおける救済史の理解 : バルト神学との関連を考慮しつつ」『日本の神学』第1993巻第32号、日本基督教学会、1993年10月、200-207頁、CRID 1390282680302955904、doi:10.5873/nihonnoshingaku.1993.200、ISSN 2185-6044。