メルセデス・ベンツ・OM656エンジン
OM656は、メルセデス・ベンツの直列6気筒ディーゼルエンジンの系列であり、OM642系列の後継である。
直列6気筒ガソリンエンジンの系列であるM256と基本設計を共有する、モジュラーコンセプトを採用している[1]。シリンダーピッチを90mm、シリンダー間の厚みを8mmとして、全長をコンパクトにまとめたことで、様々なモデルに搭載することを可能にした。シリンダーブロックは、軽量化のためにアルミニウム製となっている一方、ピストンはスチール製となる。この熱膨張率の異なる素材を採用することで、40%以上摩擦を低減した。また、シリンダーウォールに、スチールカーボン材を溶射コーティングするNANOSLIDE®摩擦低減加工を施している。
ターボは、2ステージターボチャージャーを使用し、小さいタービンにはさらに可変タービンジオメトリーを採用することで、低回転域から高回転域まで、全域でトルクフルな加速を可能にした。 また、冷却された高圧EGRと低圧EGRを組み合わせた「マルチウェイ排出ガス再循環(EGR)」を搭載し、燃焼の最適化を図り、後処理を行う前の段階でNOxを低減することが可能になった。 加えて、排気側にのみ可変バルブリフトシステム「CAMTRONICカムトロニック」を採用し、冷間時の吸気工程中に、排気の一部を燃焼室に戻すことで、排出ガスの浄化に寄与する。ターボチャージャーから出た排出ガスは、まず酸化触媒へ送られたあと、AdBlue®が添加される。下流のsDPF(DPF with SCR Coating : 選択触媒還元法コーティング付粒子状物質除去フィルター)で粒子状物質の捕集と、窒素酸化物の低減を行ったあと、最終的にSCR触媒でさらに窒素酸化物の処理を行うものである。
2018年9月、Sクラス(W222)から、OM656が導入された[2]。
2023年9月、GLE(W/C167)から、進化版である、OM656Mが導入された[3]。最高出力・最大トルクともに増強されたほか、48Vのマイルドハイブリッドシステム「ISG」が搭載されたことで、直列4気筒ディーゼルエンジンの系列であるOM654Mと同様に、電動化がなされた。
バリエーション
編集エンジン型式 | 総排気量 cc |
ボア×ストローク mm |
最高出力 kW(PS)/rpm |
最大トルク Nm(kgm)/rpm |
搭載モデル | 販売期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
OM656 | 2,925 | 82.0×92.3 | 250 (340)/ 3,600~4,400 |
700 (71.4)/ 1,200~3,200 |
S 400 d (W/V222) S 400 d 4MATIC (W/V222) |
2018年9月-2021年1月 |
243 (330)/ 3,600〜4,200 |
700 (71.4)/ 1,200~3,200 |
GLE 400 d 4MATIC スポーツ (W/C167) | 2019年6月-2023年9月 | |||
GLS 400 d 4MATIC (X167) | 2020年3月-2023年12月 | |||||
G 400 d (W463A) | 2021年5月-2024年6月 | |||||
S 400 d 4MATIC (W/V223) | 2021年1月-2023年9月 | |||||
210 (286)/ 3,400~4,600 |
600 (61.2)/ 1,200~3,200 |
G 350 d (W463A) | 2019年4月-2022年7月 | |||
OM656M | 2,988 | 82.0x94.3 | 270 (367)/ 4,000 |
750 (76.5)/ 1,350~2,800 |
GLE 450 d 4MATIC スポーツ (W/C167) | 2023年9月- |
GLS 450 d 4MATIC (X167) | 2023年12月- | |||||
G 450 d (W465) | 2024年7月- | |||||
S 450 d 4MATIC (W223) | 2023年10月- |
参考文献
編集- ^ “直列6気筒クリーンディーゼルエンジン搭載「S 400 d」を発表”. メルセデス・ベンツ日本合同会社. 2024年10月2日閲覧。
- ^ “メルセデス、「Sクラス」に直6ディーゼルモデルを追加”. 2019年4月12日閲覧。
- ^ “新型「GLE」および「GLEクーペ」を発売”. メルセデス・ベンツ日本合同会社. 2024年10月2日閲覧。