ブランディ・カーライル

ブランディ・カーライル英語: Brandi M. Carlile1981年6月1日 - )は、米国グラミー賞で3回受賞歴のあるシンガーソングライター兼プロデューサーで、その音楽は複数のジャンルにまたがっている[1][2]。 2018年現在The Firewatcher's DaughterBy the Way, I Forgive Youを含む6枚のスタジオアルバムを発売し[3]、グラミー賞に7回ノミネートされている[4]。第61回グラミー賞でアルバムオブザイヤー(By the Way, I Forgive You)、レコードオブザイヤー(The Joke)、ソングオブザイヤー(The Joke)を含み6部門でノミネートされた、最多ノミネートの女性[5]

Brandi Carlile
シアトル公演(2010年)
基本情報
出生名 Brandi M. Carlile
生誕 (1981-06-01) 1981年6月1日(43歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ワシントン州レイブンズデール英語版
ジャンル
職業
  • Musician
  • songwriter
  • producer
担当楽器
活動期間 2004–present
レーベル
共同作業者
公式サイト BrandiCarlile.com

カーライルは高校を中退し、ピアノとギターを教えながら音楽の仕事をした。メジャーレーベルからのデビューアルバム、Brandi Carlileは評論家の称賛を得たが、商業的成功は限られたものだった。 彼女の2007年シングルThe Storyと、同じタイトルのアルバムで、より広く認識され、アルバムは2017年にゴールドディスクを獲得し、現在までに50万部以上販売されている[6]The Firewatcher's Daughterでグラミー賞「最優秀アメリカーナ・アルバム賞」部門にノミネートされ、Billboard 200で最高9位に達した[7]

カーライルは、The Story (2007)、 Give Up the Ghost(2009)、Live at Benaroya Hall with the Seattle Symphony (2011)を含む7枚のアルバムをリリースしていて、後にTop Rock Albumsチャートの14位に達した[8]。。 2017年5月、カーライルはCover Storiesをリリースし、アデルパール・ジャムドリー・パートンを含む14人のアーティストを擁してThe Storyアルバムのトラックをカバーし、Billboard 200で30位に達した。 最新作By the Way, I Forgive Youは、2018年2月にリリースされ、評論家からも商業的な評価も得て、ビルボード200では自己最高の5位で登場し、またビルボードのトップロックアルバムでは1位に達した。

カーライルの長年にわたる音楽は、ポップ、ロック、オルタナティブカントリー、フォークなど、いくつかのジャンルに分類されてきた。 「I've gone through all sorts of vocal phases, from pop to blues to R&B, but no matter what I do, I just can't get the country and western out of my voice.(ポップからブルース、R&Bまで、あらゆる種類のボーカルフェーズを経てきたが、何をしても、カントリーとウェスタンを自分の声から引き離すことはできない)」と彼女は言った。 カーライルは健康問題への意識を広めることから女性のエンパワーメントに至るまで多岐にわたる社会活動を行っている。

来歴

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1981–2003: 生い立ち

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カーライルは1981年6月1日[9]アメリカ合衆国ワシントン州レイブンズデール英語版シアトルの40マイル郊外で生まれた。隣家とは数マイル離れているような辺鄙な家で育ち、彼女の兄弟ジェイと姉妹ティファニーと、森の中で演奏したり砦を建設して過ごした。 母親が歌手で、自身が少女だったときに歌うように教えてくれたので、8歳のときにステージでカントリーソングを歌い始めた。 彼女はタホマ高校英語版に通ったが、音楽キャリアを追求するために中退した。

8歳の時、カーライルは母親のTeresa Carlileとジョニー・キャッシュの "Tennessee Flat Top Box"を演奏し[10]、15歳でギターを弾いて歌を書き始めた[11]。 16歳の時、カーライルはエルヴィス・プレスリーコピーバンドのバックアップシンガーとなった[12]。 カーライルによれば、彼女は10代時にADHDと診断され、音楽のキャリアを追求するために学校をやめた[13]エルトン・ジョンの音楽を聴くといいよと薦められて、それからピアノを弾くようになり、17歳でギターを弾くようになった[6]

2004–2006: デビューに至るまで

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Carlile performing in Birmingham, Alabama in 2006

カーライルは、双子の兄弟TimとPhil Hanserothと共に、シアトルのクラブで音楽活動を始めた[14]。 頻繁に自宅録音していた曲の良さを評価したコロンビア・レコードと契約。2005年、自身の名前をタイトルとしたアルバムBrandi Carlileを発表。これは(自宅録音の)既存曲に加え新曲録音を加えてリリースされた。翌年2006年にコロンビアから再リリース盤では、「Throw It All Away」と「What Can I Say」が再録音され変更されている。

アルバムは高評価を得た。 彼女は、Rolling Ston誌の「2005年に注目する10人のアーティスト」リスト、およびInterview誌、Paste誌による「注目するアーティスト」リストで紹介された。スティーヴン・トマス・アールワインはこのアルバムのレビューの中で、次のように書いている。

"The accolades, combined with cover artwork that captures her at her cutest – as if she were a cousin of Rachael Leigh Cook – might make some listeners suspicious of Carlile, since the cumulative effect makes her seem like a pretty, prepackaged creation." He further wrote, "her music is... rich, warm, and seductive, familiar in its form and sound, yet sounding fresh, even original, particularly in how her folky singer/songwriter foundation blends with her art-pop inclinations."
Stephen Thomas Erlewine、Brandi Carlile – Brandi Carlile – Songs, Reviews, Credits, Awards – AllMusic[15]

アルバムはビルボード200で最高80位に達し、同USフォークアルバムチャートで1位に達した。

アルバムをリリースして間もなく、彼女はシアトルの家を出て、最も初期の録音をともに行ったHanseroth兄弟と一緒に、単独国内ツアーを行った。 今日の彼女のバンドのコアを形成するtightly knit trioは、後に彼女のアルバムThe Storyの一部となる曲をつくるために2年間の大部分を費やした[16]

2006年の終わりまでに、カーライルはいくつかの主催ツアー、Ray LaMontagne、The Fray、Chris Isaak、Tori Amos、そしてShawn Colvinを含むさまざまなアーティストをサポートした[17]

2007–2009: 画期的なアルバムThe Story

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彼女のセカンドアルバムThe StoryはT Bone Burnettによってプロデュースされた[18][19]。 「キャノンボール」でのインディゴガールズ英語版とのコラボレーションが含まれている。 このアルバムは、カーライル、双子(TimとPhil Hanseroth)、そしてドラマーのMatt Chamberlainとの11日間にわたるセッションで、カーライルのライブパフォーマンスの生の強さを捉えた。 「The Story」というタイトルトラックでのカーライルのヴォーカルのひび割れは偶然に起こり、アルバムのレコーディング方法の直接的な結果だった。「The Story」は2008年の夏季オリンピックの間にゼネラルモーターズのコマーシャルで大いに取り上げられ、彼女の音楽の露出が増えた[20]。 「The Story」は、iTunes Music Storeで最も購入されているリストの5位に達した。 この曲は2008年のスーパーボック英語版のコマーシャルでも使用され、ポルトガルのチャートで1位、アルバムは4位に到達した[21] 。 「The Story」は恋愛映画 『The Lucky One(一枚のめぐり逢い)』のエンドクレジットにも起用された。

 
Her song "The Story" became her first single to reach No. 1 (in Portugal).

アルバムはビルボード200で41位、USロックアルバムで最高10位に達した。 米国での広告によるアルバムのダウンロード数の増加(前述)に応じて、アルバムの売上高は1,323から6,198に368%増加した。 今日までに、アルバムは米国で257,776枚を販売した。 リードシングル「The Story」は、28,091点のデジタルコピーのダウンロードが増加した。

音楽評論家のスティーヴン・トマス・アールワインは、次のように語った。

The roiling collection fulfills the promise of her remarkable debut, offering resounding confirmation that Carlile is a singular talent.

Stephen Thomas Erlewine、The Story – Brandi Carlile – Songs, Reviews, Credits, Awards – AllMusic[22]

It wasn't until 2007's The Story—her T-Bone Burnett-produced sophomore release—that we realized even half of what we'd been dealt. Nearly a minute into the second song, something about her shifted from promise to absolute certainty as Carlile let loose a hurricane of lung power.

Rachael Maddux、Paste magazine

彼女の以前の(同名の)アルバム、「Tragedy」、「What Can I Say」、および「Throw It All Away」からの3曲が、テレビドラマGrey's Anatomy(グレイズ・アナトミー 恋の解剖学)で起用された。同番組の2時間スペシャル版、スピンオフのPrivate Practiceの映像の間に「Turpentine」が用いられた。 Grey's Anatomyはまた、「The Story」のミュージックビデオのバージョンを点在させた番組を公開した。 女優のサラ・ラミレス(Sara Ramirez)は、musical episodeで「The Story」のカバーを披露した。

私生活

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Carlile on stage in 2010

2002年11月のインタビューで、カーライルは自身をレズビアンとして表明した[23]。 後のインタビューでは、こうコメントしている。

I don't have to have a lot of formality around it ... there were people before me who paved the way.

Brandi Carlile、Los Angeles Times[24]

2012年6月、Catherine Shepherdと婚約した[25]。2人は2012年9月15日にマサチューセッツ州ボストンで結婚した。カップルには、2人の娘がいる。


カーライルはローデシアン・リッジバックの犬、馬、山羊、五匹の鶏と猫を飼っている[26]。 彼女は両肩にAURYNの入れ墨を入れている。 彼女はクリスチャンで[27][28]、ワシントン州メープルバレーに住んでいる[29]

社会活動・人道的活動

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2008年に、自身が信じる原因に対して経済的支援を与えるために、501(c)(3)組織であるLooking Out Foundation(財団)を設立した。同財団は、ReverbNation英語版、米国糖尿病協会、地球を称える英語版に助成金を出している。ブリッジスクール英語版ユニセフThe Women's Funding Alliance(女性基金同盟)国境なき医師団、その他多数のヒューマン・ライツ・キャンペーンにも関与している[要出典]。同財団は、Looking Out For The Hungry, The If Project and The Story Campaign. など多くの草の根キャンペーンを開始した。 カーライルはまた、コンサートチケットの販売毎に1ドルを財団に寄付している[30][31]

ディスコグラフィ

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スタジオアルバム

受賞歴

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  • Seattle's City of Music Breakthrough Award(2010年)[32]
部門 対象 結果
2010 GLAAD Media Awards[33] Outstanding Music Artist Brandi Carlile ノミネート
2015 Grammy Awards[34] Best Americana Album The Firewatcher's Daughter ノミネート
2018 Americana Music Honors & Awards[要出典] Artist of the Year Brandi Carlile ノミネート
Song of the Year "The Joke" ノミネート
Album of the Year By the Way, I Forgive You ノミネート
UK Americana Awards[35] International Album of the Year ノミネート
International Song of the Year "The Joke" 受賞
2019 Grammy Awards[36] Album of the Year By the Way, I Forgive You ノミネート
Best Americana Album 受賞
Record of the Year "The Joke" ノミネート
Song of the Year ノミネート
Best American Roots Song 受賞
Best American Roots Performance 受賞

公演

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2018年7月、自身の主催音楽祭、Girls Just Wanna Weekendの創設を発表した。 このフェスティバルは、2019年1月にメキシコで開催され、インディゴ・ガールズ、マレン・モリス、マーゴ・プライス、パティ・グリフィンなどの女性ミュージシャンが参加する[37] 。 カーライルは何年もの間カヤモクルーズフェスティバル(Cayamo Cruise festival)に参加したことで、主催フェス開催を着想を得た[38]

脚注

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  1. ^ Brandi Carlile is already on a Grammys streak with three wins”. The Los Angeles Times (10 February 2019). 10 February 2019閲覧。
  2. ^ Junior, Chris M. (April 4, 2006). “Medleyville: Q&A: BRANDI CARLILE”. Medleyville.us. 2011年9月10日閲覧。
  3. ^ Brandi Carlile Album Discography”. allmusic.com (February 5, 2019). 2019年2月5日閲覧。
  4. ^ Artist Brandi Carlile”. grammy.com (December 7, 2018). 2019年2月5日閲覧。
  5. ^ Brandi Carlile On Being the Most-Nominated Woman of the 2019 Grammys: 'I'm Honestly In Such Disbelief'”. billboard.com (December 7, 2018). 2019年2月5日閲覧。
  6. ^ a b Demming, Mark. “Brandi Carlile – Biography | Billboard”. billboard.com. Rovi. 2015年4月2日閲覧。
  7. ^ Grammy nominations: Brandi Carlile makes cut; Kendrick Lamar tops list”. The Seattle Times (December 7, 2015). 2015年12月8日閲覧。
  8. ^ Graff, Gary (May 10, 2011). “Brandi Carlile Finishes Fourth Album Before Ray LaMontagne Tour”. Billboard. https://www.billboard.com/music/music-news/brandi-carlile-finishes-fourth-album-before-ray-lamontagne-tour-471645/ September 18, 2011閲覧。 
  9. ^ Brandi Carlile | Music Biography, Streaming Radio and Discography | AllMusic”. AllMusic. 2015年4月2日閲覧。
  10. ^ Aaron, Kace (June 2007). “Brandi Carlile”. Harp Magazine. オリジナルのDecember 1, 2008時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20081201195951/http://harpmagazine.com/reviews/cd_reviews/detail.cfm?article_id=5741 
  11. ^ Cackett, Alan (March 2008). “Brandi Carlile”. Maverick: p. 11 
  12. ^ Telling, Gillian (March 24, 2005). “10 Artists to Watch: Brandi Carlile”. Rolling Stone: p. 30 
  13. ^ “Close-up: Singer Brandi Carlile.”. Independent Newspaper (London: Independent.co.uk). (April 20, 2008). オリジナルのApril 25, 2008時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080425043423/http://www.independent.co.uk/extras/sunday-review/regulars/closeup-singer-brandi-charlie-810773.html 2011年9月10日閲覧。 
  14. ^ Scanlon, Tom (April 1, 2007). “Rising stars Jesse Sykes and Brandi Carlile thrill hometown”. Knight Ridder Tribune Business News.: p. 1 
  15. ^ Stephen Thomas Erlewine. “Brandi Carlile – Brandi Carlile – Songs, Reviews, Credits, Awards – AllMusic”. AllMusic. 2015年10月21日閲覧。
  16. ^ Brandi Carlile”. Last.fm. 2015年4月2日閲覧。
  17. ^ Brandi Carlile”. Last.fm. 2015年4月2日閲覧。
  18. ^ About.com: Interview With Brandi Carlile”. Folkmusic.about.com (June 14, 2010). 2011年9月10日閲覧。
  19. ^ Brandi Carlile – The Story (2007 release)”. Discogs. 2016年3月30日閲覧。
  20. ^ Yahoo Music”. New.music.yahoo.com (October 14, 2014). September 10, 2008時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月2日閲覧。
  21. ^ Brandi Carlile – The Story”. ACharts. February 16, 2013閲覧。
  22. ^ Stephen Thomas Erlewine. “The Story – Brandi Carlile – Songs, Reviews, Credits, Awards – AllMusic”. AllMusic. 2015年10月21日閲覧。
  23. ^ Teasing the crowd – The Western Front: Features”. Westernfrontonline.net (November 22, 2002). October 3, 2010時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月2日閲覧。
  24. ^ Powers, Ann (October 17, 2009). “With 'Give Up the Ghost,' Brandi Carlile just may gain the cross-over fans she covets”. Latimes.com. http://www.latimes.com/entertainment/news/la-et-brandi-carlile17-2009oct17,0,1274085.story 2011年9月10日閲覧。 
  25. ^ Shewired.com Archived June 16, 2012, at the Wayback Machine.
  26. ^ Q&A: Brandi Carlile”. Medleyville.us (April 4, 2006). 2011年9月10日閲覧。
  27. ^ Brandi Carlile talks "The Firewatcher's Daughter" and songwriting while happy – AfterEllen”. AfterEllen. 2019年1月29日閲覧。
  28. ^ Roots Rocker: Q&A with Brandi Carlile”. Richmond Times-Dispatch. 2016年1月12日閲覧。
  29. ^ Maple Valley singer-songwriter Brandi Carlile signs to Columbia ... Retrieved 2018-12-12.
  30. ^ Nicole Sipe (October 3, 2009). “Brandi Carlile to 'Give up the Ghost' at the Keswick”. Montgomery News. 2011年9月10日閲覧。
  31. ^ Kale, Wendy. “Brandi Carlile's 'Ghost' stories”. Colorado Daily. 2011年9月10日閲覧。
  32. ^ Carlile, Schwarz, school jazz bandleaders honored by City of Music Awards”. Seattletimes.nwsource.com (September 20, 2010). June 29, 2011時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月2日閲覧。
  33. ^ 21st Annual GLAAD Media Awards – English Language Nominees”. Gay & Lesbian Alliance Against Defamation (2010年). February 21, 2010閲覧。
  34. ^ Grammy nominations: Brandi Carlile makes cut; Kendrick Lamar tops list”. Seattletimes.nwsource.com (December 7, 2015). 2015年12月7日閲覧。
  35. ^ UK Americana Awards 2019 nominations revealed”. Entertainment-focus.com (November 8, 2018). February 11, 2019閲覧。
  36. ^ 61st GRAMMY Awards: Full Nominees & Winners List”. Grammy.com (December 7, 2018). February 11, 2019閲覧。
  37. ^ Thompson, Rita (July 18, 2018). “Brandi Carlile Confirms Girls Just Wanna Weekend Fest With Maren Morris, Indigo Girls & More: Full Lineup”. Billboard. https://www.billboard.com/culture/events/brandi-carlile-girls-just-wanna-weekend-lineup-8466041/ 25 July 2018閲覧。 
  38. ^ Liptak, Carena (July 18, 2018). “Brandi Carlile Plans Girls Just Wanna Weekend Festival With Maren Morris, Margo Price and More”. The Boot. http://theboot.com/brandi-carlile-girls-just-wanna-weekend-festival-lineup/ 25 July 2018閲覧。 

参考文献

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外部リンク

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