フレキシティ・クラシック

フレキシティ > フレキシティ・クラシック
シタディス > フレキシティ・クラシック

フレキシティ・クラシック(Flexity Classic)は、ドイツに本社を置く鉄道車両メーカーのボンバルディア・トランスポーテーションが手掛けた路面電車車両。車内の大部分がバリアフリーに対応した低床構造になっている部分超低床電車で、2024年現在はボンバルディア・トランスポーテーションを吸収したアルストムによってシタディス・クラシック(Citadis Classic)と言うブランド名での展開が行われている[1][2][3][4]

フレキシティ・クラシック
Flexity Classic
シタディス・クラシック
Citadis Classic
初の導入先となったカッセル市電のフレキシティ・クラシック(2016年撮影)
基本情報
製造所 ボンバルディア・トランスポーテーションアルストム
製造年 1999年 -
主要諸元
編成 2車体・3車体・5車体連接車
軌間 1,000 mm1,435 mm1,450 mm
設計最高速度 80 km/h
軸重 最大10 t
備考 主要数値は[1][2][3][4]に基づく。
テンプレートを表示

概要

編集

1990年代以降各地の鉄道車両メーカーを買収する形でヨーロッパの鉄道市場に参入したボンバルディアは、買収元の各メーカーが展開、もしくは設計していた超低床電車ブランドを引き継ぎ、ヨーロッパ各地の路面電車事業者へ導入していた。その中で1997年ドイツカッセル路面電車を運営するカッセル交通株式会社(KVG)ドイツ語版カッセル地域鉄道有限会社(RBK)ドイツ語版からの受注に際し、1998年に買収したドイツ・ワゴンバウ(DWA)ドイツ語版が設計していた超低床電車であるLF 2000を基にした8NGTW形を製造する事となった。これが後にフレキシティ・クラシック、2024年現在のシタディス・クラシックというブランド名となった車両の第一号である[1][3][4]

従来の超低床電車は車軸がない左右独立式台車を始めとした高度な技術が用いられた事から価格が高騰し、それに起因する不具合が多数報告される事態も起きていた。それに対し、フレキシティ・クラシックは回転軸や車軸を用いた動力台車など従来の路面電車車両に使われていた技術を導入することで安価での購入が可能となった他、走行時の信頼性や線路の摩耗減少などの効果も得られている。また付随台車についても車軸を用いた小径ボギー台車が使われている。一方で動力台車が設置された箇所は床上高さが高くなっているため、フレキシティ・クラシックは車内に高床構造の箇所やステップが存在する部分超低床電車となっている[1][4]

車体外板はステンレス鋼、車体枠は普通鋼で製造されており、顧客からの要望に応じて繊維強化プラスチック(FRP)を用いることも可能である。設計にはモジュール構造が採用されており、編成や車体の幅も顧客の条件に応じて自由に選択する事が出来る[1]

運用・導入都市

編集

前述の通り、フレキシティ・クラシック(→シタディス・クラシック)はドイツの路面電車向けに開発された車種だが、ポーランドクラクフクラクフ市電ポーランド語版)、スウェーデンストックホルムトラム7号線スウェーデン語版)やヨーテボリヨーテボリ市電スウェーデン語版)、オーストラリアアデレードグレネルグ・トラム)などドイツ国外で路面電車を運営する事業者からの発注も多数行われている[1][2][3]

フレキシティ・クラシック(→シタディス・クラシック)が導入された、もしくは導入される予定の路面電車は以下の通り。形式名は各都市によって異なるが、そのうち「NGT」は「低床連接式路面電車(Niederflurgelenktriebwagen)」の略称で、その後に続く番号(「6」「8」など)は車軸数を意味する[2][3]

フレキシティ・クラシック(→シタディス・クラシック) 導入都市一覧
都市 形式 編成 運転台 両数 備考・参考
ドイツ ブレーメン
(ブレーメン市電)
GT8N-1 3車体連接車 片運転台 34両 詳細は「ブレーメン市電GT8N-1形電車」を参照
[5][6]
デッサウ
(デッサウ市電)
NGT6 2車体連接車 片運転台 10両 [7][8]
ドルトムント
(ドルトムント・シュタットバーン)
NGT8 3車体連接車 両運転台 47両 [9][10]
ドレスデン
(ドレスデン市電)
NGT D12DD 5車体連接車 片運転台 43両 詳細は「ドレスデン市電NGT D12DD形電車」を参照
[7][11]
NGT D8DD 3車体連接車 片運転台 40両 詳細は「ドレスデン市電NGT D8DD形電車」を参照
[7][11]
NGT DX DD 5車体連接車 片運転台 24両(予定) 詳細は「ドレスデン市電NGT DX DD形電車」を参照[12][13]
両運転台 9両(予定)
デュースブルク GT8ND-NF4 3車体連接車 両運転台 47両(予定) 2021年に運転開始、2023年までに導入完了予定[14]
エッセン M8D-NF 3車体連接車 両運転台 34両 詳細は「フレキシティ・クラシック (ルールバーン)」を参照[7]
M8D-NF2 3車体連接車 両運転台 27両 詳細は「フレキシティ・クラシック (ルールバーン)」を参照[15]
M8D-NF4 3車体連接車 両運転台 32両(予定) 詳細は「フレキシティ・クラシック (ルールバーン)」を参照[16][17]
フランクフルト
(フランクフルト市電)
S形 3車体連接車 両運転台 74両 詳細は「フランクフルト市電S形電車」を参照
[7][18][19]
ハレ
(ハレ市電)
MGTK 2車体連接車 片運転台 30両 [7][20][21]
MGTK-2 2車体連接車 片運転台 12両 [21]
カッセル
(カッセル市電)
8ENGTW 3車体連接車 片運転台 22両 詳細は「カッセル市電8NGTW形電車」を参照
[22][23][24]
8ZNGTW 3車体連接車 両運転台 10両
NGT8 3車体連接車 両運転台 22両 詳細は「カッセル市電NGT8形電車」を参照
[23][24]
ライプツィヒ
(ライプツィヒ市電)
NGT12-LEI 5車体連接車 片運転台 33両 詳細は「ライプツィヒ市電NGT12-LEI形電車」を参照
[25][26]
ミュールハイム
(ミュールハイム市電)
M8D-NF2
M8D-NF3
3車体連接車 両運転台 15両 詳細は「フレキシティ・クラシック (ルールバーン)」を参照[27][28][29]
プラウエン
(プラウエン市電)
6NGT 2車体連接車 片運転台 9両 [30][31]
シュヴェリーン
(シュヴェリーン市電)
SN2001形 3車体連接車 片運転台 30両 詳細は「シュヴェリーン市電SN2001形電車」を参照
[7][32][33]
マクデブルク
(マクデブルク市電)
NGT10D 4車体連接車 片運転台 35両(予定) 「フレキシティ・マクデブルク(Flexity Magdeburg)」
2025年以降営業運転開始予定[34][35][36][37]
オーストラリア アデレード
(グレネルグ・トラム)
100形 3車体連接車 両運転台 15両 [38][39]
ポーランド グダニスク
(グダニスク市電)
NGT6-2 3車体連接車 片運転台 3両 [2]
クラクフ
(クラクフ市電ポーランド語版)
NGT6 3車体連接車 片運転台 14両 詳細は「クラクフ市電NGT6形電車」を参照[2][7][40]
NGT6-2 36両
NGT8 3車体連接車 片運転台 24両 詳細は「クラクフ市電NGT8形電車」を参照[2][40][41]
スウェーデン ヨーテボリ M33 3車体連接車 片運転台 30両 [42][43]
両運転台 10両
M34 5車体連接車 片運転台 60両(予定) [43][44][45]
ノーショーピング M06 3車体連接車 片運転台 16両 3両は2011年以降ストックホルムへリース[46][47][48]
ストックホルム A34 3車体連接車 片運転台 6両 [47][49]

ギャラリー

編集

ドイツ

編集

その他各国

編集

脚注

編集

注釈

編集

出典

編集
  1. ^ a b c d e f Stefan Vockrodt (2010年4月). “Die Revolution Flexity Classic – Niederflur auf Drehgestellen”. STRASSENBAHN MAGAZIN. 2020年5月16日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Marek Graff (2015/7-8). “Nowy tabor tramwajowy w Polsce”. TTS Technika Transportu Szynowego: 54. https://yadda.icm.edu.pl/baztech/element/bwmeta1.element.baztech-b6a4adc0-b1a1-43b7-8650-28c3efcbc459/c/Graff_Nowy.pdf 2020年5月16日閲覧。. 
  3. ^ a b c d e Citadis Classic articulated tram: High-quality and proven trams for European brownfield networks”. Alstom. 2024年8月23日閲覧。
  4. ^ a b c d Trevor Griffin & Transit Cooperative Research Program 2006, p. 10.
  5. ^ FLEXITY Classic – Bremen, Germany”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  6. ^ GT8N-1 Bombardier FLEXITY Classic”. BSAG. 2020年5月16日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h Trevor Griffin & Transit Cooperative Research Program 2006, p. 8.
  8. ^ FLEXITY Classic – Dessau, Germany”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  9. ^ FLEXITY Classic – Dortmund, Germany”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  10. ^ Informationen zur Stadtbahn NGT8 - Stadt Dortmund”. DSW21 (2008年3月13日). 2021年8月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月27日閲覧。
  11. ^ a b FLEXITY Classic – Dresden, Germany”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  12. ^ Sebastian Kositz (2019年8月22日). “W-LAN, Klimaanlage und viel mehr Platz: Das sind Dresdens neue Straßenbahnen”. Dresdner Neueste Nachrichten. 2020年5月16日閲覧。
  13. ^ Neue Stadtbahnen für Dresden”. Dresdner Verkehrsbetriebe AG. 2024年7月20日閲覧。
  14. ^ Neue Straßenbahnen: Prototypen sollen ab 2019 auf der Schiene sein”. DVG (2017年11月29日). 2020年5月16日閲覧。
  15. ^ FLEXITY Classic – Essen, Germany”. Bombardier. 2015年9月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  16. ^ Ruhrbahn, M8D-NF4”. Ruhrbahn. 2021年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月17日閲覧。
  17. ^ Die Nächste bitte! NF4 wird auf den Namen Vogelheim getauft”. Ruhrbahn (2024年7月11日). 2024年7月24日閲覧。
  18. ^ FLEXITY Classic – Frankfurt, Germany”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  19. ^ S carriage”. VGF. 2020年6月17日閲覧。
  20. ^ FLEXITY Classic – Halle, Germany”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  21. ^ a b Neue Niederflur-Straßenbahn rollt auf den HAVAG-Hof”. Hallespektrum (2013年2月28日). 2020年5月16日閲覧。
  22. ^ FLEXITY Classic – Essen, Germany”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  23. ^ a b Werben auf Bus & Tram”. KVG. 2020年5月16日閲覧。
  24. ^ a b KVG toppt Branchendurchschnitt”. KVG (2012年12月10日). 2020年5月16日閲覧。
  25. ^ FLEXITY Classic – Leipzig, Germany”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  26. ^ Leipziger Nahverkehr” (ドイツ語) (2005年2月18日). 2020年5月16日閲覧。
  27. ^ Niederflurstraßenbahnwagen M8D-NF2”. Info-Portal (2018年9月27日). 2020年5月16日閲覧。
  28. ^ Zukunft Schiene: MVG bestellt 10 Straßenbahnen”. Ruhrbahn GmbH (2013年12月11日). 2020年5月16日閲覧。
  29. ^ Michael Mücke (2018年11月1日). “Die Essener Ruhrbahn tauscht die U-Bahn-Flotte aus”. NRZ. 2024年7月24日閲覧。
  30. ^ FLEXITY Classic – Plauen, Germany”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  31. ^ Fahrzeuge”. Plauener Straßenbahn GmbH. 2022年5月22日閲覧。
  32. ^ FLEXITY Classic – Schwerin, Germany”. Bombardier. 2015年10月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  33. ^ 鹿島雅美「ドイツの路面電車全都市を巡る 16」『鉄道ファン』第47巻第3号、交友社、2007年3月1日、134-136頁。 
  34. ^ Libor Hinčica (2020年7月21日). “Německý Magdeburg poptává až 63 nových tramvají”. Československý Dopravák. 2022年6月19日閲覧。
  35. ^ Axel Reuther, Rolf Hafke (2022年3月24日). “The market overview for tram, light rail and metro vehicles in Germany”. Urban Transport Magazine. 2022年6月19日閲覧。
  36. ^ Die neue Straßenbahngeneration: Flexity Magdeburg”. Magdeburger Verkehrsbetriebe GmbH & Co. KG. 2022年6月19日閲覧。
  37. ^ New Flexity trams for Magdeburg are about to be delivered”. Urban Transport Magazine (2024年7月19日). 2024年7月20日閲覧。
  38. ^ FLEXITY Classic – Adelaide, Australia”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  39. ^ Victoria Square to Glenelg Service”. Tramway Museum, St Kilda. 2015年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  40. ^ a b FLEXITY Classic – Krakow, Poland”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月16日閲覧。
  41. ^ Wagon NGT 8”. MPK Kraków 2013. 2020年5月16日閲覧。
  42. ^ Jens Bernhardt (2020年2月6日). “First Bombardier Flexity M33 tram arrives in Göteborg”. Urban Transport Magazine. 2020年5月16日閲覧。
  43. ^ a b The 40th Felxity LRV arrives in Gothenburg”. RailwayPro (2023年11月16日). 2023年11月20日閲覧。
  44. ^ Gothenborg’s Västtrafik orders 40 new extended Flexity trams”. Urban Transport Magazine (2022年2月22日). 2023年11月20日閲覧。
  45. ^ Libor Hinčica (2024年9月1日). “Alstom zahájil dodávky 45m tramvají pro švédský Göteborg”. Československý Dopravák. 2024年9月2日閲覧。
  46. ^ 服部重敬「特集 新潟トランシス part4 欧州のGT低床車 世界初の全低床車としての登場から現在まで」『路面電車EX 2017 vol.10』、イカロス出版、2017年10月20日、49頁、ISBN 978-4802204231 
  47. ^ a b Tram order announced as Spårväg City launched”. RailwayGazette International (2010年4月23日). 2020年5月16日閲覧。
  48. ^ Dirk Budach (2019年7月21日). “DÜWAG survivors in Northern Europe: Norrköping”. UrbanTransportMagazine. 2020年5月16日閲覧。
  49. ^ Stockholm: Straßenbahnlinie 7 wird bis Zentralbahnhof verlängert”. DVV Media Group GmbH (2018年8月16日). 2020年5月16日閲覧。

参考資料

編集
  • Trevor Griffin; Transit Cooperative Research Program (2006). Center Truck Performance on Low-floor Light Rail Vehicles. TCRP Report 114. Transportation Research Board. ISBN 9780309098632 

外部リンク

編集