インディNXT (Indy NXT) は、アメリカ合衆国で行われるオープンホイール・レースのカテゴリー。インディカー・シリーズの直下に位置し、IndyCarが認可している。また育成プログラムの、USF・プロ選手権の最終シリーズである。

インディNXT
カテゴリ オープンホイール
国・地域 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
開始年 1986年
ドライバー 28
チーム 17[1]
コンストラクター ダラーラ
エンジン
サプライヤー
AER
タイヤ
サプライヤー
ファイアストン
ドライバーズ
チャンピオン
デンマークの旗 クリスチャン・ラスムッセン
チーム
チャンピオン
アメリカ合衆国の旗 HMDモータースポーツ
公式サイト INDYNXT
現在のシーズン

1986年から1990年までCARTの運営によりアメリカン・レーシング・シリーズ (American Racing Series) として開催され、1991年から2001年まではインディ・ライツ・シリーズ (Firestone/Dayton Indy Lights) として開催された。

IRLの運営による現在のシリーズは2002年から始まり、2007年までインフィニティ・プロ・シリーズ/インディ・プロ・シリーズ (Infiniti/Indy Pro Series) 、2008年にCARTとインディカー・シリーズが統合され、インディ・ライツの名前が復活し、2008年から2013年までファイアストン・インディ・ライツ・シリーズ (Firestone Indy Lights Series) 、2014年から2022年までインディ・ライツ・プレゼンテッド・バイ・クーパー・タイヤ (Indy Lights Presented by Cooper Tyre) として開催されていた。

2023年より現在のインディNXT byファイアストン (Indy NXT by Firestone) に名称変更した[2]

起源

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1970年代を通じてアメリカ合衆国自動車クラブ(USAC)がトップカテゴリであるインディカー・レースの統括組織であったが、下位カテゴリの進化の様相は変化していった。1960年代初めのアメリカにおけるオープンホイール・レースはフロントエンジン・リアドライブ(FR)のロードスターで争われていた。主流の下位カテゴリーにはスプリントカーレースおよびミジェットカーレースが含まれていた。1970年代に入ると車両はミッドエンジンフォーミュラカーで争われるようになり、同様に支流であった下位カテゴリもフォーミュラカーを使用するように変化していった。

スポーツカークラブ・オブ・アメリカ(SCCA)のスーパー・ヴィーおよびフォーミュラ・アトランティックが下位カテゴリとして初めにフォーミュラカーを使用するようになったシリーズであった。しかしながら、いずれもUSACの上位カテゴリに直接繋がるものではなかった。1977年、USACはスーパー・ヴィー・マシンを用いて「ミニ・インディ」シリーズを始める。このシリーズはUSACがインディアナポリス・モーター・スピードウェイ以外のインディカー・レースの認可を止めた1980年をもって終了した。

「ミニ・インディ」シリーズの終了に続いて、1980年代初めのCARTおよびインディ500を目指すドライバーたちはスーパー・ヴィー、フォーミュラ・アトランティック、SCCA、カンナム、スプリントカー、ミジェットカー、ストックカーと、組織化されていないシリーズに参戦することとなった。

CART運営時代 (1986-2001)

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ローラ・T97/20

5年以上公式の下位カテゴリーが存在しない時代が続いた後、CARTが下位カテゴリーの創設を目指した。インディ・ライツ・シリーズがオープンホイールカーによるインディカーの下位カテゴリーとして1986年から2001年まで開催された。シリーズは1986年にアメリカン・レーシング・シリーズとして設立され、1991年にインディ・ライツに改名された。CARTが認可した本シリーズは広く人気を得るようになり、ファイアストン(シリーズの公式タイヤサプライヤー)がシリーズのタイトルスポンサーとなり、後には子会社のデイトンタイヤがタイトルスポンサーとなった。

ワンメイクで行われたインディ・ライツは、1986年から1992年までマーチ (フォーミュラ3000シャーシ、85Bを改造したもの) を使用していた。1993年からローラシャーシを使用し、このシリーズの主要コンストラクターになった。1997年にローラ・T97/20が導入され、2001年まで使用された。エンジンは、ビュイック・V6エンジンが使用された。インディ・ライツの開催スケジュールはインディ500を除いてCARTシリーズのサポートレースだった。

1990年代後半から2000年代前半にかけて、CARTは財政難に陥っていた。一方、1996年にライバルのインディ・レーシング・リーグ(IRL)が結成された。CARTは2001年シーズン終了後にインディ・ライツを廃止した。同時期、アトランティック・チャンピオンシップがCARTの主要な下部シリーズとなり、後にチャンプカー・ワールド・シリーズのステップアップカテゴリーとして機能した。

現在のシリーズ (2002-)

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2008年のマイアミでテストを行う、ダラーラ・IPS
 
ダラーラ・IL-15

インフィニティ・プロ・シリーズがIRLによって再設立され、CART公認のインディ・ライツが消滅した翌年の2002年にレースを開始した。マシンは、インフィニティ・Q45で使用されているV8エンジンをベースに、トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)が新たに開発した、3.5リッター420馬力のエンジンと、ダラーラ・IPSワンメイクシリーズだった[3] 。シリーズは当初ドライバーを集めるのに苦労した。しかし、2005年にいくつかのロードコースが導入されたことで、参加者が増加した。

2013年6月、2014年シリーズからシリーズの運営を、アンダーセンプロモーションが行うことが発表された[4]。IndyCarの認可は継続される。8月には、2014年からワンメイクタイヤがファイアストンからクーパータイヤに切り替わることが発表された[5]。これにより、インディカー・シリーズにつながるロード・トゥ・インディの3カテゴリーが、アンダーセンによって主催され、クーパータイヤが使用されることになった。10月31日、シリーズはダラーラが第4世代のインディ・ライツ、シャーシコンストラクターとなり、新車ダラーラ・IL-15を発表した。11月26日、新エンジンは2リッター直列4気筒ターボチャージャー付き、AER製MZR-Rエンジンで、出力450馬力、プッシュ・トゥ・パスでさらに50馬力を発揮することが発表された[6]

2021年時点、ダラーラ・IL-15は引き続きシリーズで使用され、エンジンはAERによって、リビルドなしで1シーズンを稼働するように設計、製造されている。 2021年シーズンから、IL-15にヘイローが追加された。また2021年のチャンピオンはインディカー・シリーズで、インディ500を含む3レースの契約を確保するために125万ドルの奨学金が授与される[7]

ファイアストンは、2023年シーズンから公式タイヤサプライヤーとして復帰した。またシリーズ名はインディNXTに変更され、IndyCarはアンダーセンプロモーションからシリーズの運営を引き継いだ。アンダーセンプロモーションはIndyCarの認可の元、系列の下位リーグであるUSF・プロ選手権を引き続き運営している。

歴代チャンピオン

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シーズン ドライバー チーム シャシー エンジン
CART アメリカン・レーシング・シリーズ
1986   ファブリツィオ・バルバッツァ アルシエロ・レーシング マーチ ビュイック
1987   ディディアー・セイス トゥルースポーツ マーチ ビュイック
1988   ジョン・ビークヒュイス エンタープライズ・レーシング マーチ ビュイック
1989   マイク・グロフ リーディングエッジ・モータースポーツ マーチ ビュイック
1990   ポール・トレーシー ランドフォード・レーシング マーチ ビュイック
CART インディ・ライツ・シリーズ
1991   エリック・バシェラール ランドフォード・レーシング マーチ ビュイック
1992   ロビー・ブール リーディングエッジ・モータースポーツ マーチ ビュイック
1993   ブライアン・ハータ タスマン・モータースポーツ ローラ ビュイック
1994   スティーブ・ロバートソン タスマン・モータースポーツ ローラ ビュイック
1995   グレッグ・ムーア フォーサイス・レーシング ローラ ビュイック
1996   デヴィッド・エンプリングハム フォーサイス・レーシング ローラ ビュイック
1997   トニー・カナーン タスマン・モータースポーツ ローラ ビュイック
1998   クリスチアーノ・ダ・マッタ タスマン・モータースポーツ ローラ ビュイック
1999   オリオール・セルビア ドリコット・レーシング ローラ ビュイック
2000   スコット・ディクソン パックウェスト・ライツ ローラ ビュイック
2001   タウンゼント・ベル ドリコット・レーシング ローラ ビュイック
IRL インフィニティ・プロ・シリーズ
2002   A.J.フォイト4世 A.J.フォイト・エンタープライズ ダラーラ インフィニティ
2003   マーク・テイラー パンサー・レーシング ダラーラ インフィニティ
2004   チアゴ・メディロス サム・シュミット・モータースポーツ ダラーラ インフィニティ
2005   ウェイド・カニンガム ブライアン・スチュワート・レーシング ダラーラ インフィニティ
IRL インディ・プロ・シリーズ
2006   ジェイ・ハワード サム・シュミット・モータースポーツ ダラーラ 日産
2007   アレックス・ロイド サム・シュミット・モータースポーツ ダラーラ 日産
IRL ファイアストン・インディ・ライツ
2008   ラファエル・マトス AGR-AFSレーシング ダラーラ 日産
2009   J.R.ヒルデブランド AGR-AFSレーシング ダラーラ 日産
2010   ジャン・カール・ベルネイ サム・シュミット・モータースポーツ ダラーラ 日産
ファイアストン・インディ・ライツ
2011   ジョセフ・ニューガーデン サム・シュミット・モータースポーツ ダラーラ 日産
2012   トリスタン・ボーティエ サム・シュミット・モータースポーツ ダラーラ 日産
2013   セイジ・カラム シュミット・ピーターソン・モータースポーツ ダラーラ 日産
インディ・ライツ・プレゼンテッド・バイ・クーパー・タイヤ
2014   ギャビー・チャベス ベラルディ・オート・レーシング ダラーラ 日産
2015   スペンサー・ピゴット フンコス・レーシング ダラーラ マツダ
2016   エド・ジョーンズ カーリン ダラーラ マツダ
2017   カイル・カイザー フンコス・レーシング ダラーラ マツダ
2018   パトリシオ・オワード アンドレッティ・オートスポーツ ダラーラ マツダ
2019   オリバー・アスキュー アンドレッティ・オートスポーツ ダラーラ マツダ
2020 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により中止
2021   カイル・カークウッド アンドレッティ・オートスポーツ ダラーラ AER
2022   リヌス・ルンドクヴィスト HMDモータースポーツ ダラーラ AER
インディNXT byファイアストン
2023   クリスチャン・ラスムッセン HMDモータースポーツ ダラーラ AER

ドライバー

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現在のドライバー

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以下は2010年のインディ・ライツ・シーズンに参戦するドライバー:

インディカー・シリーズ昇格ドライバー

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a インディカー・シリーズでの優勝経験者
b インディカー・シリーズチャンピオン
c インディ500の優勝経験者

その他の著名ドライバー

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関連項目

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参照

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  1. ^ Taken from the official 2007 entry list at http://www.indycar.com/indylights/drivers
  2. ^ インディライツが「インディNXT」に名称変更。ファイアストンがサポートへ”. オートスポーツWeb. SAN-EI (2022年11月8日). 2022年12月2日閲覧。
  3. ^ INDY LIGHTS - DALLARA SPECIFICATIONS”. 2022年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月21日閲覧。
  4. ^ Andersen Promotions to take over Indy Lights, Racer, June 20, 2013, Retrieved 2013-10-22
  5. ^ Cooper Tires Named Official Tire Of New Indy Lights Series Archived 2017-09-14 at the Wayback Machine., Performance Racing Industry, August 22, 2013, Retrieved 2013-10-22
  6. ^ Pruett, Marshall. Indy Lights series selects 2015 engine supplier, Racer, November 26, 2013, Retrieved 2013-11-26
  7. ^ Pruett, Marshall (October 7, 2020). “Revamped Indy Lights to return in 2021”. Racer. https://racer.com/2020/10/07/revamped-indy-lights-to-return-in-2021/ 2021年4月21日閲覧。. 

外部リンク

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