トゥルシー・ギャバード
この記事は英語版の対応するページを翻訳することにより充実させることができます。(2024年11月) 翻訳前に重要な指示を読むには右にある[表示]をクリックしてください。
|
トゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard、発音記号: /ˈtʌlsi ˈɡæbərd/、1981年4月12日 - )は、アメリカ合衆国の政治家。現在、第2次トランプ政権において国家情報長官を務めている。ハワイ第2区選出のアメリカ合衆国下院議員(4期)。2012年初当選、米国議会初のサモア系アメリカ人議員[1]であり、同時に米国議会初のヒンドゥー教徒[2]でもある。
トゥルシー・ギャバード Tulsi Gabbard | |
---|---|
![]() | |
生年月日 | 1981年4月12日(43歳) |
出生地 |
![]() |
出身校 | ハワイパシフィック大学 |
所属政党 |
![]() 無所属(2022年 - 2024年) ![]() |
配偶者 |
エドゥアルド・タマヨ(2002-2006) アブラハムウィリアムズ(2015-) |
親族 |
マイク・ギャバード(父) (ハワイ州上院議員) |
在任期間 | 2025年2月12日 - 現職 |
大統領 | ドナルド・トランプ |
選挙区 |
![]() |
当選回数 | 4回 |
在任期間 | 2013年1月3日 - 2021年1月3日 |
在任期間 | 2013年1月22日 - 2016年2月27日 |
![]() | |
選挙区 | 第43区 |
当選回数 | 1回 |
在任期間 | 2002年12月 - 2004年12月 |
![]() | |
当選回数 | 1回 |
在任期間 | 2011年1月2日 - 2012年8月16日 |
経歴
編集生い立ち
編集ギャバードは1981年4月12日、アメリカ領サモアのレロアロア(Leloaloa)に父マイク・ギャバード、母キャロル・ギャバードの娘、5人兄弟の4人目として生まれる。一家はギャバードが2歳のときハワイへと移住[3]。ヒンドゥー教徒の母キャロルの影響を受け[4]、幼少期からヒンドゥー教徒である。
ギャバードはフィリピンへ留学をした2年間を除き、高校までホームスクールでの教育を受けており[5]、2009年にハワイ・パシフィック大学(経営学)を卒業。
2002年には弱冠21歳でハワイ州議会下院議員に当選、当時全米で最年少の州議会議員として就任。2004年にはHawaii Army National Guardの一員としてイラクの戦闘地域に派兵、帰国後の2006年からダニエル・K・アカカ上院議員のスタッフとして勤務し、2008年からクウェートに志願派兵されている。
中東からの帰還後、2011年にホノルル市議会議員として選出され、翌2012年メイジー・ヒロノの上院鞍替えに伴い、空席となったハワイ2区よりアメリカ議会下院選挙に挑戦し当選、現在3期目。
政治活動
編集ハワイ州議会 下院議員 (2002年-2004年)
編集ギャバードはハワイ州史上最年少かつ、全米でも史上最年少の女性州議会議員として2002年に当選[6]。
任期中、クリーンエネルギーの推進を主たる政策として掲げ、再生可能エネルギーの推進などに努めた。
ホノルル市議会議員 (2011年-2012年)
編集2009年、中東への志願派兵から帰還後、ホノルル市長選に出馬したRod Tamの選挙区(第6区)から出馬を宣言し当選。その後米国下院議員選挙準備のため2012年8月に辞職している。
アメリカ合衆国下院議員(2013年-2020年)
編集2011年初旬、当時ハワイ第2区選出の下院議員であったメイジー・ヒロノが上院への鞍替えを表明したことを受け、ギャバードは同年5月に出馬を表明した。9月には民主党公認の候補としてノース・カロライナ州のシャーロットで開催された民主党全国大会に参加しスピーチを行う。11月の選挙では共和党候補者に大差をつけ(得票率81%)当選した。
2018年秋の中間選挙で15万票(77%)を獲得し圧勝、4期目の議席を獲得[7]。
2020年選挙へは出馬せず下院議員を降りた。
- 下院軍事委員会
- 下院外交委員会
- アジア・太平洋地域小委員会
- 中東・北アフリカ地域小委員会
- 米日議員コーカス
- 下院退役軍人コーカス
- 米国議会インド及びインド系アメリカ人コーカス(副代表)
- 米国議会LGBTコーカス
- 米国議会ミサイル防衛コーカス 等
2016年大統領選挙
編集2016年の大統領選挙では民主党全国委員会の副議長を辞し、バーニー・サンダースの支持を表明。
2016年11月21日、ギャバードは民主党員としては2人目として就任前のドナルド・トランプおよび政権移行チームメンバーとトランプタワーで面会した。ギャバードはこの面会を「建設的で前向きな会合であった」と語り、トランプが共和党のネオコンによって強行的なシリア政策を取る前に自らトランプにブリーフするために面会要求を受け入れたと話した。第1次トランプ政権で首席戦略官兼上級顧問を務めたスティーブン・バノンはギャバードの政治手腕を高く買っており、彼女のファンであることを公言。全ての政策に関して彼女と仕事がしたいと語ったこともある[9]。
シリアへの渡航
編集2017年1月ギャバードはシリアのバシャール・アサド大統領と面会。ギャバードはこの渡航が下院倫理委員会の許可を得た上で実施され、AACCESS(Arab American Community Center for Economic and Social Services)によって資金が提供されたと発表。この視察にはAACCESSの会長の他1名も同行しており、同行者両名がシリア社会民族党のメンバーであることが解っているが、同会長はシリア社会民族党とAACCESSは関係のない別団体であると説明。
ギャバードはアサド大統領との面会やアサド政権シンパとされるシリア社会民族党のメンバーと視察を実施すること、また関係団体からの資金提供を受けている事を事前に下院倫理員会に報告していなかったとして批判され、後に旅費を同団体に返還している。
また出張後に下院倫理員会への必要な報告がなされておらず、視察後の2017年2月7日には一部メディアより規則違反があったと報道されたが、ギャバード事務所は期限内に報告をしているとしている。また、必要な書類に加え日程表などを含む別途添付資料が2月8日に提出されたとしている。
2020年大統領選挙およびその後
編集ワシントン・ポスト紙等複数メディアが2020年大統領選挙の有力女性候補11名の1人としてギャバードを紹介した[10]。
2020年大統領選挙の民主党予備選挙には指名争いに加わったものの、2020年3月19日に撤退を表明し、ジョー・バイデン前副大統領への支持を表明した[11]。2022年10月11日に民主党から離党し、その2年後、2024年大統領選挙を目前に控えた2024年10月22日には共和党に入党することを発表した[12]。
国家情報長官
編集2024年11月13日、ドナルド・トランプ次期大統領より翌2025年1月に発足する第2次政権における国家情報長官に指名された[13]。経験不足が懸念され資質を問う声もあったが2025年2月12日の上院における人事案採決で共和党の反対者はミッチ・マコーネル一人にとどまり、賛成52票、反対48票で承認され、同日中に就任宣誓を行った[14]。
主張・政策
編集ギャバードは、自らの立場を対テロ戦争においては「タカ派」であるものの、他国のレジーム・チェンジを目的とする軍事介入に関しては否定的な「ハト派」であると述べている[15][16][17] [18][19][20][21]。一貫してアメリカはアルカイダやISILなどイスラム過激派やイスラム主義運動への対処に専念すべきと主張している[22][23]。
ギャバードは、ネオコンと軍産複合体に支配されたメディアが他国のレジーム・チェンジを目的に好戦的な世論を形成し、新冷戦と核の軍拡競争を招いてきたと批判している[24][25][26][27][28][29]。
中東
編集2015年、ギャバードはエジプトで軍事政権を敷くアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領との会談後、「イスラム主義イデオロギー」に対する戦争で「偉大な勇気とリーダーシップ」を示したとしてシーシーを称賛する声明を発表した[30]。ジャーナリストのエヴァン・ヒルは、ギャバードの外交的な立場を「対テロリズムや反介入主義を装った権威主義とナショナリズム」、そしてイスラムフォビアを公然と支持することに根ざしていると評した[31][32][33]。
2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃の後、ギャバードはイスラエルを強く支持し、ハマスをイスラム主義テロ組織と呼んで非難した[34] 。2023年11月、ワシントンD.C.で行われた「イスラエルのための行進」に参加した[35]。また、米国の親パレスチナ派の抗議活動を「過激なイスラム主義組織の操り人形」と呼び、ギャバードはハマスを軍事的にもイデオロギー的にも打ち負かすべき脅威としてガザでの停戦に反対している[36]。
対印関係
編集ヒンドゥー教徒であることからインドとの関係強化を重要視しており、過去に何度もナレンドラ・モディ首相の功績を評価する発言をしている。
対ロ関係
編集2022年ロシアのウクライナ侵攻を受けて、侵攻はロシア政府の責任によるものではないと主張。ウクライナの北大西洋条約機構加盟の動きを巡って「ロシアが抱いた安全保障上の懸念」をバイデン政権が見誤ったことが原因だとして政権を非難した[37]。
対中関係
編集2020年大統領選の選挙戦で、トランプ政権の中華人民共和国への強硬姿勢を批判し、気候変動など地球規模の課題で協力する対中関係を提案した。また、米中貿易戦争に反対し、トランプ大統領のアプローチは製造業者と農家の双方に「破壊的で壊滅的な影響」を招いていると述べ、最終的に中国との「熱戦」に繋がる可能性があるとして懸念を表明した[38]。
対日関係
編集2023年12月7日に旧日本軍による真珠湾攻撃に関するXへの投稿において、「日本による太平洋侵略を思い起こすと、現在の日本の再軍備は本当にいい考えなのか」と疑問を呈した上で、「日本とアメリカが再度戦わないように注意しなければならない」と述べており、日本の再軍備化に否定的な見解を示している[39][40]。
2025年1月30日に上院で行われた国家情報長官指名承認の公聴会でも「日本と中国の歴史を巡る見地に立てば、日本が自衛態勢から攻撃的な態勢に移ることでエスカレートする可能性がある」と日本への警戒感を改めて示した[41]。
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)
編集ギャバードはTPPに強く反対する立場を明確にしており、デラウロ下院議員と共に反対運動を主催。TPPの交渉が秘密裏に行われていることや、この協定がウォールストリートや多国籍企業などの一部国民に利益をもたらすものであり地道に働くアメリカ国民がないがしろにされていると批判した。また、TPPの環境問題への配慮が十分でなく、地球温暖化や環境汚染にもつながるとの見解を示し、自らの政治生命をかけてTPPに反対すると表明した。
脚注
編集- ^ “Faleomavaega congratulates Tulsi Gabbard as first Samoan woman elected to the U.S. Congress | Samoa News” (英語). www.samoanews.com. 2018年4月6日閲覧。
- ^ “Hindu-American Tulsi Gabbard wins Democratic primary in Hawaii”. The Economic Times. (2012年8月12日) 2018年4月6日閲覧。
- ^ “About Mike Gabbard | www.mikegabbard.com”. www.mikegabbard.com. 2018年4月6日閲覧。
- ^ Mendoza, Jim. “The Gabbards: Raising Hawaii's next political star (Part 1)” (英語) 2018年4月6日閲覧。
- ^ “Tulsi Gabbard’s Run for Congress Carries with it Many Hindu Hearts | Indo American News”. www.indoamerican-news.com. 2018年4月6日閲覧。
- ^ “12 Fascinating People Who Are Heading To Congress Next Year”. Business Insider 2018年4月6日閲覧。
- ^ Golshan, Tara (2018年11月19日). “Live results: Hawaii midterm elections”. Vox.com 2018年11月20日閲覧。
- ^ “Committees and Caucuses” (英語). Congresswoman Tulsi Gabbard. (2012年12月13日) 2018年4月10日閲覧。
- ^ Swanson, Ian (2016年11月21日). “Bannon set up Trump-Gabbard meeting” (英語). TheHill 2018年4月6日閲覧。
- ^ Cillizza, Chris (2017年1月9日). “11 Democratic women who could run for president in 2020, ranked” (英語). Washington Post. ISSN 0190-8286 2018年4月6日閲覧。
- ^ “米民主ギャバード氏、指名争いから撤退 バイデン氏支持を表明”. ロイター. (2020年3月20日) 2020年4月9日閲覧。
- ^ “Tulsi Gabbard Turning Republican Is 'Surprise' to Donald Trump”. ニューズウィーク. (2024年10月22日) 2024年11月14日閲覧。
- ^ “トランプ氏、ギャバード元下院議員を国家情報長官に指名”. bloomberg.co.jp. ブルームバーグ. (2024年11月14日) 2024年11月14日閲覧。
- ^ “米上院、国家情報長官にギャバード氏を承認 資質に疑問も”. ロイター. (2025年2月13日)
- ^ “The rise of Gabbard: No telling how far independent path will take her”. Hawaii Tribune Herald. (August 28, 2016)
- ^ “Rep. Gabbard: The leadership I bring is to end 'regime change wars'”. MSNBC (June 22, 2019). 2025年2月1日閲覧。
- ^ “Tulsi Gabbard Views on 2020 Issues: A Voter's Guide”. Politico (August 23, 2019). 2025年2月1日閲覧。
- ^ McCarthy, Tom (May 13, 2019). “Who is Tulsi Gabbard? The progressive 2020 hopeful praised by Bannon and the right”. The Guardian. 2025年2月1日閲覧。
- ^ Hains, Tim (May 6, 2019). “Tulsi Gabbard Ad: Neoliberals And Neocons Sing From The Same Songsheet, War War War”. Real Clear Politics. 2025年2月1日閲覧。
- ^ Cocke, Sophie (July 25, 2019). “Hawaii Congresswoman Tulsi Gabbard sues Google for $50 million”. StarAdvertiser (Honolulu, HI) 2025年2月1日閲覧。
- ^ “Tulsi Gabbard's Foreign Policy Positions” (英語). Council on Foreign Relations (October 24, 2019). 2025年2月1日閲覧。
- ^ Beauchamp, Zack (26 June 2019). “Tulsi Gabbard, the controversial, long-shot Democratic 2020 candidate, explained”. Vox
- ^ “Democratic Rep. Gabbard meets with Trump” (英語). CNN (2016年11月21日). 2025年2月20日閲覧。
- ^ “Rep. Gabbard: The leadership I bring is to end 'regime change wars'” (英語). MSNBC. 2025年2月1日閲覧。
- ^ Hains, Tim (May 6, 2019). “Tulsi Gabbard Ad: Neoliberals And Neocons Sing From The Same Songsheet, War War War”. RealClearPolitics. 2025年2月1日閲覧。
- ^ Gabbard, Tulsi (February 2, 2019). “Tulsi Gabbard 2020 Announcement February 2, 2019”. www.4president.org. August 14, 2019時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月1日閲覧。
- ^ “Representative Tulsi Gabbard Presidential Campaign Announcement” (英語). www.c-span.org. 2025年2月1日閲覧。
- ^ Cocke, Sophie (July 25, 2019). “Hawaii Congresswoman Tulsi Gabbard sues Google for $50 million” (英語). Honolulu Star-Advertiser. 2025年2月1日閲覧。
- ^ Grube, Nick (2019年2月12日). “Gabbard Greeted In Iowa By Friendly Crowds And Fierce Weather” (英語). Honolulu Civil Beat. 2025年2月1日閲覧。
- ^ “トランプ氏、国家情報長官にギャバード氏起用へ 元民主党下院議員”. CNN (2024年11月14日). 2024年11月14日閲覧。
- ^ Beauchamp, Zack (26 June 2019). “Tulsi Gabbard, the controversial, long-shot Democratic 2020 candidate, explained”. Vox
- ^ Hill, Evan (17 January 2019). “Tulsi Gabbard's Deceptive Foreign Policy”. The Nation. 2025年2月20日閲覧。
- ^ Beauchamp, Zack (26 June 2019). “Tulsi Gabbard, the controversial, long-shot Democratic 2020 candidate, explained”. Vox
- ^ “Tulsi Gabbard attacked over Hamas condemnation”. The Hill (November 3, 2023). 2025年2月20日閲覧。
- ^ Villalovas, Eden (November 14, 2023). “Former Rep. Tulsi Gabbard calls out Biden and Harris for not attending March for Israel rally in DC”. The Washington Examiner. April 29, 2024閲覧。
- ^ Shamim, Sarah (2024年11月14日). “Why is Tulsi Gabbard, Trump's new intel tsar, so controversial?” (英語). Al Jazeera English. 2025年2月20日閲覧。
- ^ “トランプ氏、国家情報長官にギャバード氏起用へ 元民主党下院議員”. CNN (2024年11月14日). 2024年11月14日閲覧。
- ^ “Tulsi Gabbard's Foreign Policy Positions” (英語). Council on Foreign Relations (October 24, 2019). 2025年1月31日閲覧。
- ^ “米情報長官候補が日本敵視発言 「太平洋侵略国が再軍備」―トランプ次期政権”. 時事通信 (2024年11月15日). 2024年11月17日閲覧。
- ^ 清宮涼 (2024年11月15日). “米国家情報長官に指名されたギャバード氏、日本「再軍備」に反対発言”. 朝日新聞. 2024年11月17日閲覧。
- ^ “アメリカ国家情報長官候補「日本が攻撃的な態勢に移ればエスカレートする可能性」…上院公聴会で持論”. 読売新聞 (2025年2月1日). 2025年2月1日閲覧。
公職 | ||
---|---|---|
先代 ローラ・シャオ (代行) |
アメリカ合衆国国家情報長官 第8代:2025年2月12日 - |
現職 |
アメリカ合衆国下院 | ||
先代 メイジー・ヒロノ |
ハワイ州第2選挙区 選出議員 第6代:2013年1月3日 - 2021年1月3日 |
次代 カイ・カヘレ |