タラ
タラ(鱈、大口魚、鰔)は、タラ目タラ科のうちタラ亜科に所属する魚類の総称。北半球の寒冷な海に分布する肉食性の底生魚で、重要な水産資源となる魚を多く含む[1]。
タラ科 | |||||||||||||||||||||
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タイセイヨウダラ Gadus morhua
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分類 | |||||||||||||||||||||
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英名 | |||||||||||||||||||||
Cod Haddock |
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 288 kJ (69 kcal) |
0 g | |
糖類 | 0 g |
食物繊維 | 0 g |
0.41 g | |
飽和脂肪酸 | 0.085 g |
トランス脂肪酸 | 0.005 g |
一価不飽和 | 0.073 g |
多価不飽和 |
0.164 g 0.135 g 0.017 g |
15.27 g | |
トリプトファン | 0.188 g |
トレオニン | 0.658 g |
イソロイシン | 0.679 g |
ロイシン | 1.211 g |
リシン | 1.399 g |
メチオニン | 0.418 g |
シスチン | 0.136 g |
フェニルアラニン | 0.595 g |
チロシン | 0.553 g |
バリン | 0.731 g |
アルギニン | 0.982 g |
ヒスチジン | 0.324 g |
アラニン | 0.877 g |
アスパラギン酸 | 1.525 g |
グルタミン酸 | 2.297 g |
グリシン | 0.71 g |
プロリン | 0.512 g |
セリン | 0.647 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 2 µg(0%) 0 µg0 µg |
チアミン (B1) |
(3%) 0.033 mg |
リボフラビン (B2) |
(4%) 0.045 mg |
ナイアシン (B3) |
(7%) 1.095 mg |
パントテン酸 (B5) |
(6%) 0.294 mg |
ビタミンB6 |
(9%) 0.117 mg |
葉酸 (B9) |
(2%) 7 µg |
ビタミンB12 |
(83%) 1.98 µg |
コリン |
(13%) 65 mg |
ビタミンC |
(0%) 0 mg |
ビタミンD |
(3%) 20 IU |
ビタミンE |
(4%) 0.54 mg |
ビタミンK |
(0%) 0 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(20%) 303 mg |
カリウム |
(5%) 235 mg |
カルシウム |
(1%) 8 mg |
マグネシウム |
(6%) 20 mg |
リン |
(40%) 281 mg |
鉄分 |
(1%) 0.16 mg |
亜鉛 |
(3%) 0.31 mg |
銅 |
(1%) 0.019 mg |
マンガン |
(1%) 0.012 mg |
セレン |
(33%) 22.9 µg |
他の成分 | |
水分 | 83.95 g |
コレステロール | 47 mg |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース |
日本近海では北日本沿岸にマダラ、スケトウダラ、コマイの3属3種が分布する[1]。単に「タラ」と呼んだ場合はマダラ(Gadus macrocephalus)を指すことが多い。
生態
編集温帯に分布するものや汽水域に入るものもいるが、ほとんどの種類は寒帯・亜寒帯の冷たい海に分布する海水魚である。
海底の近くで生活する底生魚で、水深200m以深で暮らすいわゆる深海魚が多いが、季節によって生息深度を変える種類もいる。大きな群れを形成し、大規模な回遊を行うものもある[2]。背中側の体色は灰色や褐色で、水底に紛れる保護色となる。
食性は肉食性で、多毛類・貝類・頭足類などの無脊椎動物や他の魚類を捕食する。
産卵は冬期から早春にかけて行われる。卵は沈性卵で、砂泥の海底に産卵される。タラ類の一度の産卵数は数十万から数百万個に及び、魚類の中でも多産の部類である。親魚による卵や仔魚の保護は見られず、生残率は非常に低いと考えられる。
形態
編集背鰭が3つ、臀鰭は2つに分かれることがタラ亜科の大きな特徴で、タラ目の他のグループ(チゴダラ科・ソコダラ科・メルルーサ科など)との鑑別点の一つとなっている[3]。口が大きく、下顎にヒゲをもつ種類が多い[3]。全長は数十cmを超える中・大型種が多く、最大のタイセイヨウダラは全長2mに達することもある[2]。
第1背鰭は頭部より後方に位置し、全ての鰭は棘条を欠く[2]。腹鰭は胸鰭よりも前方にある[2]。尾鰭の後端は截形か、あるいはやや陥凹する[3]。
人間との関わり
編集利用
編集鱈亜科はほとんどの種類が重要な水産資源として利用され、底引き網・延縄・釣りなどで漁獲される。
身は脂肪が少なく柔らかい白身で、鱈ちりなどの鍋料理や、棒鱈などの干物、照り焼きやムニエルなどの焼き魚、フィッシュ・アンド・チップスのような揚げ物、バカラオなどの塩蔵品、かまぼこおよび魚肉ソーセージなどの練製品として利用される。肝臓からは肝油を採取するほか、オイル漬けにしたものはコッドレバーとして缶詰にされる。また、スケトウダラの卵巣(たらこ)、マダラの精巣、胃、舌なども食材として用いられる。
韓国では、タラの内臓(胃など)を唐辛子漬けにして塩辛にしたものがよく食され、日本では「チャンジャ(창자[4])」と呼ばれる。近年は日本でも手軽に手に入り、朝鮮料理屋だけでなく、居酒屋のメニューとして提供されるようになり、盛んに食されるようになっている。
肉は鮮度の落ちが早く脂肪が少ない上に、古くなると独特のにおいを発する。そのため刺身等の生食は昆布締めなど傷みを遅くする処理を施すか、水揚げされる漁港周辺ですぐ食べる[5]。ヨーロッパの干し鱈(バカラオ)は同地や中南米でよく使われる食材で、水で戻して調理される。ノルウェーでは、タラの舌を食材とする[6]。
文化
編集漢字では身が雪のように白いことから「鱈」と書くが、これは和製漢字である。日本では古くから、大きな口を開けて他の生物を捕食することから「大口魚」と呼ばれていた。この和製漢字(国字)は、中国でも一般的に用いられている。なお、福建省の客家語では「大口魚」はバスを意味する。
江戸時代には、腹を割かずに鰓と内臓を取り出した塩蔵品が「新鱈」と呼ばれて、切腹を避ける縁起物として正月料理に使われた。非常に貪欲なことから、腹いっぱい食べるという意味の副詞「たらふく(鱈腹)」の語源となったと言われている[7]。一方で、「たらふく」の語源は「足(た)らい脹(ふく)くるる」すなわち「満足して(腹が)脹れる」に由来し、「鱈腹」は当て字とする説もある。
分類
編集タラ亜科は11属23種を含む[8][2]。分布の中心は北大西洋だが、一部は北極海や日本近海を含む北太平洋に生息する[1][3]。タラ科にはタラ亜科の他にカワメンタイ亜科 3属5種、ヒゲダラ亜科 3属17種、Phycinaeが属する[8]。
- Gadiculus - 2種
- Trisopterus - 4種
- Trisopterus luscus フランスダラ
- Microgadus - 2種
- Eleginus コマイ属 - 2種
- Merlangius - 1種
- Melanogrammus - 1種 コダラ
- Micromesistius ミナミダラ属 - 2種
- Pollachius - 2種 シロイトダラ
- Boreogadus - 1種 ホッキョクダラ
- Arctogadus - 1種 コオリダラ
- Gadus マダラ属 - 5種
- マダラ Gadus macrocephalus Tilesius, 1810 - 全長は1mを超える。上顎が下顎より前に出ていて、体側にまだら模様がある[2]。頭身が小さく、腹部が大きく膨らむ。
- タイセイヨウダラ Gadus morhua Linnaeus, 1758 - 最大で全長2mに達する大型種で、北大西洋に分布する[2]。
- グリーンランドダラ Gadus ogac
- スケトウダラ Gadus chalcogrammus Pallas, 1814 - 「スケソウダラ」とも呼ばれ、全長70cmほど。上顎は下顎より短く、体側には褐色の縦帯がある。マダラに比べて体が細長い。
系統
編集タラ亜科 |
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脚注
編集- ^ a b c d e 『日本の海水魚』 pp.132-133
- ^ a b c d e f g “Gadidae”. FishBase. 2011年1月23日閲覧。
- ^ a b c d 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.242-243
- ^ これは本来、はらわた(腸)一般を意味する朝鮮語の単語であるが、日本ではこの名称で普及している。朝鮮語でこの塩辛は「チャンナンジョッ(창난젓または창란젓)」と呼ばれる(「チャンナン」はタラのはらわた、「ジョッ」は塩辛の意)。
- ^ 幻のタラのお刺身山内鮮魚店(2014年12月17日)2019年3月14日閲覧。
- ^ Ward, Terry (2020年3月26日). “In Norway, kids are still making good money cutting cod tongues” (英語). CNN. 2024年2月12日閲覧。
- ^ 食育専門家・浜田峰子の魚で元気な未来!(23)縁深い「鱈」と「鱈場蟹」『産経新聞』朝刊2019年1月4日(生活面)2019年3月14日閲覧。
- ^ a b Roa-Varón, Adela and Ortí, Guillermo (2009). “Phylogenetic relationships among families of Gadiformes (Teleostei, Paracanthopterygii) based on nuclear and mitochondrial data”. Molecular phylogenetics and evolution 52 (3): 688-704. doi:10.1016/j.ympev.2009.03.020.
- ^ Owens, Hannah L. (2015). “Evolution of codfishes (Teleostei: Gadinae) in geographical and ecological space: evidence that physiological limits drove diversification of subarctic fishes”. Journal of Biogeography. doi:10.1111/jbi.12483.
- ^ Møller, Peter R., et al. (2002). “Phylogenetic position of the cryopelagic codfish genus Arctogadus Drjagin, 1932 based on partial mitochondrial cytochrome b sequences”. Polar Biology 25 (5): 342-349. doi:10.1007/s00300-001-0348-5.
参考文献
編集- Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Fourth Edition』 Wiley & Sons, Inc. 2006年 ISBN 0-471-25031-7
- 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2