スノーフェアリー
スノーフェアリー (Snow Fairy) は、アイルランドで生産されたイギリスの競走馬。2010年、2011年エリザベス女王杯の連覇を含めGI競走6勝を挙げ、外国調教馬として日本中央競馬会 (JRA) 史上初となる同一平地GI競走の連覇も記録している。2010年のカルティエ賞最優秀3歳牝馬。
スノーフェアリー | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
欧字表記 | Snow Fairy | ||||||||||||||||||||
香港表記 | 飛雪仙蹤 | ||||||||||||||||||||
品種 | サラブレッド | ||||||||||||||||||||
性別 | 牝 | ||||||||||||||||||||
毛色 | 鹿毛 | ||||||||||||||||||||
生誕 | 2007年2月12日(17歳) | ||||||||||||||||||||
父 | Intikhab | ||||||||||||||||||||
母 | Woodland Dream | ||||||||||||||||||||
母の父 | Charnwood Forest | ||||||||||||||||||||
生国 | アイルランド | ||||||||||||||||||||
生産者 | Windflower Overseas Holdings Inc. | ||||||||||||||||||||
馬主 | アナモイン社 | ||||||||||||||||||||
調教師 | エドワード・ダンロップ(イギリス) | ||||||||||||||||||||
競走成績 | |||||||||||||||||||||
生涯成績 |
21戦8勝 内訳 イギリス:13戦3勝 アイルランド:3戦2勝 フランス:2戦0勝 日本:2戦2勝 | ||||||||||||||||||||
獲得賞金 |
558,609ポンド(イギリス・アイルランド) 1億8,781万2000円(日本) +9,000万円(褒賞金) 1,140万香港ドル(香港) | ||||||||||||||||||||
|
経歴
編集2008年
編集2008年に開催された1歳馬のセールに上場されたが、1800ユーロ(当時のレートで約23万4000円)で買主がつかず生産者の主取りとなるなど、周囲の評価は極めて低かった。
2009年
編集2009年6月、ニューベリー競馬場の未勝利戦でデビューし、3着となる。次走半月後の未勝利戦で勝利を収める。その後年内はすべて7F以下の短距離を中心に使われ、勝利を挙げられないまま翌年を迎える。
2010年
編集年が明けて2010年、初戦のハイトオブファッションステークスでは初めての中距離でのレースとなったが、ここを3馬身差で快勝。2万ポンドの追加登録料を支払って[1]、オークスに駒を進める。これまでの実績がほとんど無いため7番人気に甘んじていたが、激戦をクビ差でしのぎ、重賞初勝利をクラシックレースにて収める。
続いて42500ユーロの追加登録料を支払って[2]、アイリッシュオークスに出走。2着Miss Jean Brodieに8馬身の差をつけて圧勝し、イギリスとアイルランドのオークス制覇を達成した。その後は8月のヨークシャーオークスに出走するも、Middayに3馬身及ばず2着に敗れた。
続いて9月のセントレジャーステークスに出走。牝馬の挑戦は2008年のUnsung Heroine(2着)、Look Here(3着)以来となるが4着と敗れた。
その後、陣営は父のインティカブがブリーダーズカップの登録がなかったこともあり[3]、ボーナス[注 1]を目指し、エリザベス女王杯、ジャパンカップ等に登録、日本に渡る。11月14日のエリザベス女王杯ではライアン・ムーアが騎乗し、4コーナー出口で馬群が外にバラけたところを内から一気に突き抜け、2着の京都巧者メイショウベルーガに4馬身差をつける圧勝[注 2]。なお、ジャパンカップは馬体の回復が思わしくないため、回避することとなった。その後香港へ遠征し、12月12日に行われた香港カップでは後方2番手から直線に入ると一気に豪脚を発揮しIrianをわずかにかわして勝利した。
これらの活躍により2010年のカルティエ賞最優秀3歳牝馬を受賞した。
2011年
編集2011年、当初はドバイワールドカップミーティングで始動する予定であったが軽い脚部不安(右前肢管骨の炎症[4])が発生し回避し、6月25日にカラ競馬場で行なわれたG1プリティーポリーステークスにエントリーしたが直前の荒天で馬場が悪化したため出走を取り消した[5]。翌週7月2日のエクリプスステークスに出走することになったが、So You Thinkの4着に敗れた。続いてナッソーステークスに出走するも、Middayに2馬身及ばず2着に敗れた。アイリッシュチャンピオンステークスでは中団から追い上げたがSo You Thinkの2着。10月2日の凱旋門賞では後方から鋭い脚を使い伸びてきたが伏兵Danedreamの3着、10月15日のチャンピオンステークスではCirrus Des Aiglesの3着に敗れた。11月13日にはエリザベス女王杯ではシンメイフジの大逃げから直線で各馬大きくを差を詰め、アヴェンチュラとアパパネ、ホエールキャプチャの3頭の競り合いと見えた場面で馬場の真ん中を抜け出して1着でゴール、前年に続くエリザベス女王杯2連覇となった。尚、同一外国馬による日本中央競馬会(JRA)同一平地GI競走の連覇は史上初のことである[注 3]。
その後香港ヴァーズに登録し、2年連続香港国際競走の勝利を目指したが、現地調教中に左前脚を故障(屈腱炎[6])のため出走を取り消し、長期の休養に入ることとなった。
2012年〜2013年
編集8月19日にドーヴィル競馬場で行なわれたG1ジャンロマネ賞に出走。前年のエリザベス女王杯以来のレースとなったが、道中は後方から3、4番手で追走し、最後の直線でイジートップとの追い比べを制して優勝した。ライアン・ムーアとのコンビでの戦績は6戦6勝となったが、この勝利は後日、屈腱炎の治療のために投与された抗炎症剤が残留していたことが発覚し、禁止薬物の使用を理由に取り消されている[6]。
その後、前年に続いてアイリッシュチャンピオンステークスに出走し、2012年のエクリプスステークス勝ち馬Nathanielに1馬身1/4差をつけ、レコードタイムで優勝した。
その後に、凱旋門賞、ブリーダーズカップターフ[注 4]に出走する予定であったが、凱旋門賞直前に脚部不安が発生により2レースを回避し、年内の休養に入ることとなった[7]。
2013年も現役を続行し、復帰に向けて調教されていたが、左前脚の屈腱炎を再発したため、引退した。引退後は馬主が所有するアイルランドの牧場で繁殖生活に入り、初年度の配合相手は馬主の自家生産馬であるElusive Pimpernel[注 5]に決まっている[8]。
競走成績
編集出走日 | 競馬場 | 競走名 | 格 | 距離 | 馬場 | 着順 | 騎手 | タイム | 着差 | 1着(2着)馬 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2009. | 6. | 23 | ニューベリー | メイドン | 芝6f8y | 堅良 | 3着 | D.オドノヒュー | 1:12.1 | 2馬身1/2 | Lady Pattern | |
7. | 8 | リングフィールド | メイドン | AW6f | 良 | 1着 | K.ミルチャレック | 1:12.0 | 3馬身1/2 | (Baby Dottie) | ||
8. | 1 | ニューマーケット | 牝馬2歳 | 芝6F | 良 | 2着 | A.カービー | 1:13.2 | 頭 | She's Ok | ||
8. | 8 | ニューマーケット | スウィートソレラS | G3 | 芝6f | 良 | 4着 | J.クロウリー | 1:26.5 | 3馬身1/4 | Long Lashes | |
8. | 29 | グッドウッド | プレスティージS | G3 | 芝7f | 良 | 3着 | S.ホウリー | 1:27.4 | 短首 | Sent From Heaven | |
10. | 24 | ニューベリー | ラドリーS | L | 芝7F | 重 | 9着 | P.スマレン | 1:34.6 | 19 1/2馬身 | Electric Feel | |
2010 | 5. | 19 | グッドウッド | ハイトオブファッションS | L | 芝9f192y | 良 | 1着 | E.アハーン | 2:06.9 | 3馬身 | (Pipette) |
6. | 4 | エプソム | 英オークス | G1 | 芝12f10y | 良 | 1着 | R.ムーア | 2:35.7 | クビ | (Meezanah) | |
7. | 18 | カラ | 愛オークス | G1 | 芝12f | 稍重 | 1着 | R.ムーア | 2:34.8 | 8馬身 | (Miss Jean Brodie) | |
8. | 19 | ヨーク | ヨークシャーオークス | G1 | 芝12f | 良 | 2着 | R.ヒューズ | 2:31.0 | 3馬身 | Midday | |
9. | 11 | ドンカスター | セントレジャー | G1 | 芝14f132y | 良 | 4着 | E.アハーン | 3:03.6 | 3馬身 | Arctic Cosmos | |
11. | 14 | 京都 | エリザベス女王杯 | G1 | 芝2200m | 良 | 1着 | R.ムーア | 2:12.5 | 4馬身 | (メイショウベルーガ) | |
12. | 12 | 沙田 | 香港カップ | G1 | 芝2000m | 良 | 1着 | R.ムーア | 2:02.96 | クビ | (Irian) | |
2011 | 6. | 25 | カラ | プリティーポリーS | G1 | 芝10f | 重 | 取消 | R.ムーア | - | Misty for Me | |
7. | 2 | サンダウン | エクリプスS | G1 | 芝10f7y | 良 | 4着 | J.ムルタ | 2:06.1 | 9馬身 | So You Think | |
7. | 30 | グッドウッド | ナッソーS | G1 | 芝9f192y | 堅良 | 2着 | L.デットーリ | 2:08.0 | 2馬身 | Midday | |
9. | 3 | レパーズタウン | 愛チャンピオンS | G1 | 芝10F | 良 | 2着 | L.デットーリ | 2:04.3 | 1/2馬身 | So You Think | |
10. | 2 | ロンシャン | 凱旋門賞 | G1 | 芝2400m | 良 | 3着 | L.デットーリ | 2:25.2 | 5馬身 | Danedream | |
10. | 15 | アスコット | 英チャンピオンS | G1 | 芝10F | 良 | 3着 | O.ペリエ | 2:02.7 | 1馬身1/4 | Cirrus Des Aigles | |
11. | 13 | 京都 | エリザベス女王杯 | G1 | 芝2200m | 良 | 1着 | R.ムーア | 2:11.6 | クビ | (アヴェンチュラ) | |
2012 | 8. | 19 | ドーヴィル | ジャンロマネ賞 | G1 | 芝2000m | 良 | 失格[6] | R.ムーア | 2:06.3 | 3/4 | (IzziTop) |
9. | 8 | レパーズタウン | 愛チャンピオンS | G1 | 芝10F | 良 | 1着 | L.デットーリ | R2:00.92 | 1 1/2馬身 | (Nathaniel) |
- タイム欄のRはレコード勝ちを示す。
繁殖成績
編集馬名 | 誕生年 | 父 | 性 | 厩舎 | 馬主 | 戦績 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
初仔 | Belle De Neige | 2015年 | Elusive Pimpernel | 牝 | Ed Dunlop | Anamoine Limited | 1戦0勝 |
2番仔 | Virgin Snow | 2017年 | Gleneagles | 牝 | Ed Dunlop | Anamoine Limited | 11戦1勝 |
3番仔 | John Leeper | 2018年 | Frankel | 牡 | Ed Dunlop | Anamoine Limited | 15戦2勝 |
4番仔 | Don Simon | 2021年 | Sea The Stars | 騸 | Ed Dunlop | Anamoine Limited | 1戦0勝 |
・2024年現在
血統表
編集スノーフェアリーの血統 | (血統表の出典)[§ 1] | |||
父系 | ロベルト系 |
[§ 2] | ||
父 Intikhab 1994 鹿毛 |
父の父 Red Ransom1987 鹿毛 |
Roberto | Hail to Reason | |
Bramalea | ||||
*アラビアII | Damascus | |||
Christmas Wind | ||||
父の母 Crafty Example1987 鹿毛 |
Crafty Prospector | Mr. Prospector | ||
Real Crafty Lady | ||||
Zienelle | Danzig | |||
Past Example | ||||
母 Woodland Dream 2002 黒鹿毛 |
Charnwood Forest 1992 黒鹿毛 |
*ウォーニング | Known Fact | |
Slightly Dangerous | ||||
Dance of Leaves | Sadler's Wells | |||
Fall Aspen | ||||
母の母 Fantasy Girl1992 黒鹿毛 |
Marju | *ラストタイクーン | ||
Flame of Tara | ||||
Persian Fantasy | Persian Bold | |||
Gay Fantasy | ||||
母系(F-No.) | 1号族(FN:1-k) | [§ 3] | ||
5代内の近親交配 | Roberto 15.63% 3 x 5, Northern Dancer 6.25% 5 x 5, In Reality 6.25% 5 x 5 | [§ 4] | ||
出典 |
|
脚注
編集注釈
編集- ^ 海外の対象レース勝ち馬がエリザベス女王杯で1~3着に入ると、JRAから賞金とは別に1着9,000万円、2着3,600万円、3着2,250万円の褒賞金が支給される。
- ^ 外国調教馬としては初となるエリザベス女王杯優勝である。
- ^ 障害競走では、カラジが中山グランドジャンプを3連覇している。
- ^ ブリーダーズカップ・チャレンジのルールにより、アイリッシュチャンピオンステークスの勝ち馬は、同年のブリーダーズカップターフの追加登録料を免除し、渡航費用など出場コストは一部負担される。
- ^ 1991年生のインド生産馬イルーシヴピムパーネルと同スペルだが、2007年生の別の馬である。主な実績は2009年レーシングポストトロフィー2着(勝馬セントニコラスアビー)。
出典
編集- ^ 『優駿』2010年8月号、108頁。
- ^ 『優駿』2010年9月号、114頁。
- ^ 『優駿』2010年10月号、40頁。
- ^ 『優駿』2012年1月号、60頁。
- ^ 合田直弘 (2011年6月29日). “合田直弘 世界の競馬「エクリプスSに豪華メンバーが集結」”. netkeiba.com. ネットドリーマーズ. 2011年7月4日閲覧。
- ^ a b c “netkeiba ニュース「スノーフェアリーが禁止薬物の使用で、GI勝利を剥奪」”. netkeiba.com. ネットドリーマーズ (2012年11月30日). 2012年12月2日閲覧。
- ^ “スノーフェアリー 凱旋門賞回避/競馬・レース/デイリースポーツ” (2012年9月30日). 2012年10月4日閲覧。
- ^ Snow Fairy retired after glittering career
外部リンク
編集- 競走馬成績と情報 netkeiba、スポーツナビ、JBISサーチ、Racing Post