コブナナフシ
コブナナフシ (学名:Neohirasea japonica) は、フトナナフシ科に分類される昆虫の1種。日本の固有種であり、日本のナナフシの中でも特徴的な種である。日本に分布するフトナナフシ科は本種のみである[2]。
コブナナフシ | ||||||||||||||||||||||||
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雌雄のつがい
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Orestes japonicus (Ho, 2016) | ||||||||||||||||||||||||
シノニム[1] | ||||||||||||||||||||||||
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特徴
編集体は長く頑強である。雄は全長37-42mm、雌は全長45-51mm。雌雄とも翅を持たず、頭部にはこぶがある[2]。雄は一様に褐色から暗褐色で、成虫になると腹部基部に小さな暗色の斑点が見られ、後胸には翼のように見える1対の大きな斑点が入る。眼の前と後ろには1対の鈍い棘がある。額の先端には2つの明瞭な隆起があり、後ろではほぼ接しており、前に向かうにつれて離れている。中胸背板の後端には、特に大きな1対の隆起がある。腹部は断面が円形である。腹部第八節の後端中央に隆起がある。雌は鮮やかなベージュと茶色の混ざった色で、黒い斑点模様が入る。これは同属他種の雌にも共通する特徴である。雌の中胸背板は平行で、後胸背板は四角形である。この点で近縁種の Orestes shirakii の雌と区別できる。Orestes shirakii の雌の中胸背板は後方に向かってわずかに広く、後胸背板は長方形である。雌雄ともに年齢を重ねるにつれて模様は薄くなり、次第に一様な茶色に近づく。特定の条件下では、幼虫は目立つ赤褐色になることがある[3][4]。
分布
編集日本の固有種であり、主に南西諸島に分布する。鹿児島県では大隅半島、屋久島、種子島、口永良部島、中之島、悪石島、宝島、奄美大島、徳之島、加計呂麻島、与路島、沖永良部島、与論島、沖縄県では沖縄本島、平安座島、伊計島、伊平屋島、津堅島、渡嘉敷島、粟国島、久米島、宮古島、伊良部島、下地島、来間島、多良間島、石垣島、竹富島、西表島、与那国島から記録がある[2][3]。
生態
編集卵、幼虫、成虫ともに周年で見られ、寿命は3-5年とされる。カラムシ、ヤマゴボウ、キイチゴ、ガジュマル、シダ、ブナ、サンゴジュなどを食す[2]。
分類
編集
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Sarah Bank et al. (2021)によるコブナナフシと姉妹群の系統樹[5] |
George Ho Wai-Chunは、自身が調査した標本に基づき、2016年にこの種を Pylaemenes japonicus として記載した。種小名は分布域に由来する。彼はホロタイプとして、1982年5月8日に屋久島で岡田正哉によって採集され、大阪市立自然史博物館に寄贈された雌を選んだ。1979年から2012年の間に収集されたさまざまな標本はパラタイプとされ、大阪市立自然史博物館、香港の昆虫学会、名古屋にある岡田氏のコレクションに収蔵されている。1935年には素木得一が大日本帝国の標本を調査しており、Datames mouhotii(現在の Orestes mouhotii )として記載していた。HoとPaul D. Brockは2013年にこれらの標本を Pylaemenes shirakii(現在の Orestes shirakii )に分類した。Hoは2016年にこれらの標本をさらに区別し、台湾産のものを Pylaemenes shirakii とし、2016年には琉球諸島産のものを Pylaemenes japonicus とした。また岡田 (1999)[6] とBrock (1999)[7] による Datames mouhotii とされた標本、Brock & okada (2005)[4] の標本、Ikawa (2015) によって Pylaemenes guangxiensis (現在の Orestes guangxiensis ) と命名された標本、Ho自身が命名した Orestes shirakii、Ho (2013)[8] およびFrank H. Hennemann et al (2016)[9] による標本は本種である[3]。
Joachim Bresseel and Jérôme Constantは、2018年にベトナム産の6つの Orestes 属の記載と同時に、コブナナフシを Orestes 属に分類した[1][10]。Sarah Bankらによる遺伝子解析の結果、コブナナフシは Orestes shirakii およびベトナムの2種とともに、Orestes 属内に共通の単系統群を形成していることが判明した。ベトナムの2種とは、Orestes japonicus の姉妹種である Orestes dittmari と、ソンドン県のTây Yên Tử自然保護区に生息する未記載種である[5]。
人との関わり
編集2013年からヨーロッパで有性生殖の系統が繁殖され、飼育されている。当初は Pylaemenes guangxiensis 'Okinawa' と呼ばれていた。栗林一寿は2010年頃に沖縄で最初の標本を採集した。彼はBrockとOkada (2005)に倣って標本にそのように命名した。この個体は2018年にBresseelとConstantによって本種と同定された[3][4][10]。
飼育や繁殖が容易である。湿度の高い環境を好むため、飼育環境には土が敷かれる。飼育下ではキイチゴや他のバラ科の植物の葉、サラール、ハシバミ、オーク、ブナ、ハブカズラ属や他のサトイモ科の植物の葉を与える[11][12]。
画像
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ペア
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雄
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雄
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雌
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雌
出典
編集- ^ a b “species Orestes japonicus (Ho, 2016): Phasmida Species File”. phasmida.archive.speciesfile.org. 2025年1月17日閲覧。
- ^ a b c d 海野和夫、伊地知英信『不思議の虫ナナフシ ヘンな虫のヘンな暮らし』草思社、2024年5月、68頁。ISBN 978-4-7942-2707-2。
- ^ a b c d Ho, G.W.C. (2016). “The genus Pylaemenes Stål, 1875 (Phasmatodea: Heteropterygidae: Dataminae) of East Asia with descriptions of two new species”. Tettigonia: Memoirs of the Orthopterological Society of Japan 11: 1-14.
- ^ a b c Brock, Paul D.; Okada, Masaya (2005-01). “Taxonomic notes on Pylaemenes Stål 1875 (Phasmida: Heteropterygidae: Dataminae), including the description of the male of P. guangxiensis (Bi & Li 1994)” (英語). Journal of Orthoptera Research 14 (1): 23–26. doi:10.1665/1082-6467(2005)14[23:TNOPSP]2.0.CO;2. ISSN 1082-6467 .
- ^ a b Bank, Sarah; Buckley, Thomas R.; Büscher, Thies H.; Bresseel, Joachim; Constant, Jérôme; de Haan, Mayk; Dittmar, Daniel; Dräger, Holger et al. (2021-07). “Reconstructing the nonadaptive radiation of an ancient lineage of ground‐dwelling stick insects (Phasmatodea: Heteropterygidae)” (英語). Systematic Entomology 46 (3): 487–507. doi:10.1111/syen.12472. ISSN 0307-6970 .
- ^ 岡田正哉『ナナフシのすべて』トンボ出版、1999年8月10日、56頁。
- ^ Brock, Paul D. (1999). Stick and leaf insects of Peninsular Malaysia and Singapore. Malayan Nature Society (1st ed ed.). Kuala Lumpur: Malaysian Nature Society. ISBN 978-983-9681-16-1
- ^ Wai-Chun, George Ho (2013-06-07). “Contribution to the knowledge of Chinese Phasmatodea II: Review of the Dataminae Rehn & Rehn, 1939 (Phasmatodea: Heteropterygidae) of China, with descriptions of one new genus and four new species”. Zootaxa 3669 (3). doi:10.11646/zootaxa.3669.3.1. ISSN 1175-5334 .
- ^ Hennemann, Frank H.; Conle, Oskar V.; Brock, Paul D.; Seow-Choen, Francis (2016-09-01). “Revision of the Oriental subfamily Heteropteryginae Kirby, 1896, with a re-arrangement of the family Heteropterygidae and the descriptions of five new species of Haaniella Kirby, 1904. (Phasmatodea: Areolatae: Heteropterygidae)”. Zootaxa 4159 (1). doi:10.11646/zootaxa.4159.1.1. ISSN 1175-5334 .
- ^ a b Bresseel, Joachim; Constant, Jérôme (2018-01-29). The Oriental stick insect genus Orestes Redtenbacher, 1906: Taxonomical notes and six new species from Vietnam (Phasmida: Heteropterygidae: Dataminae). doi:10.5281/ZENODO.1162066 .
- ^ Dräger, H. (2012). “Gespenstschrecken der Familie Heteropterygidae Kirby, 1896 (Phasmatodea) – ein Überblick über bisher gehaltene Arten, Teil 2: Die Unterfamilie Dataminae Rehn & Rehn , 1839”. ZAG Phoenix 3 (1): 43.
- ^ “Phasmatodea Cultures Phasmatodea”. www.phasmatodea.com. 2025年1月17日閲覧。
関連項目
編集- サカダチコノハナナフシ - 同じフトナナフシ科の種