スタウト

ビールのスタイル

スタウト英語: stout)は、ビールスタイルの一つで、黒くなるまでローストした大麦モルトとは限らない)を使用し、上面発酵によって醸造されるものを指す。

1パイントのスタウト

日本におけるビールの分類では「濃色の麦芽を原料の一部に用い、色が濃く、香味の特に強いビール」のことで「ビールの表示に関する公正競争規約・第4条」によって定義されている[1][2]

概要

編集

主にアイルランドイギリスで作られる。代表的な銘柄には、ギネス英語: Guinness)がある。

ほとんどのスタウトの色は黒い。味は濃厚で、苦み酸味とも強い。アルコール分が一般的なラガー・ビールより高いものが多い。カロリーはラガーよりも低い半面、糖質はラガーより高い。名前の「スタウト」とは、「強い」という意味である。

飲み方としては、そのまま飲む以外に、普通のビールに割って飲んだり、生卵を落として飲む方法がおこなわれている。

上面発酵でない「スタウト」

編集

日本における規約[2]では特に上面発酵でなければならないという規定はなく、例えばキリンビールの『一番搾りスタウト(2013年2月6日にリニューアルされる前)』やサッポロビールの『ヱビス スタウト クリーミートップ』は下面発酵であるが、規約における条件を満たしているため、日本において「スタウト」の名称を使用することは、法律上は全く問題はない。

海外でも、韓国ハイトビールの『ハイト・スタウト』や、バルト海沿岸・スラブ圏やイギリスでの「ストロング・ポーター」「スタウト」「ポーター」を冠するビール等、下面発酵で「スタウト」を名乗るものが存在するが、その是非については議論がある。

ちなみにキリンビールの『キリンスタウト2008年8月に製造終了[3])』『一番搾りスタウト(2013年2月6日のリニューアル後)』やアサヒビールの『アサヒスタウト』は上面発酵である。

日本で黒ビールと呼ばれているもののほとんどはラガーと同じ下面発酵であり、シュヴァルツビールに近いものが多い。

ドライスタウト

編集

ドライスタウト: Dry stout)、またはアイリッシュスタウト: Irish stout)は、飲み始めに感じる軽いカラメル香と、強くローストした麦芽のドライな苦味が後味に強く残るのが特徴[4][5]。アルコール度数は4%から5%[5]

クリーミーな泡立ちと、泡持ちに優れる[5]

フォーリンスタウト

編集

フォーリンスタウト: Foreign stout)は、ドライスタウトよりも甘味とアルコール度数を強くしたスタウト[5]

コーヒーやチョコレートを思わせる軽い焦げ風味があり、甘味と苦味は他のスタウトよりも強い[4]

スイートスタウト

編集

スイートスタウト: Sweet stout)、あるいはミルクスタウト: Milk stout)、クリームスタウト: Cream stout)は甘いスタウト[4][5]。コーヒーやチョコレート、カラメルの風味が特徴[4][5]

ミルク由来の乳糖(ラクトース)を加えて製造することもある[4][5]

オートミールスタウト

編集

オートミールスタウト: Oatmeal stout)は、大麦麦芽に加えてオート麦を使用して製造するスタウト[5]

軽い甘味もあり、クリーム入りコーヒーのような風味[4]

インペリアルスタウト

編集

インペリアルスタウト: Imperial stout: Имперский стаут)は、ロシア皇帝への献上品として作られたとされるスタウト[4][6]ロシアン・スタウトラシアン・スタウトロシアンインペリアルスタウトと呼ぶこともある。

寒冷地で凍らないようアルコール度数を高めてあるのが特徴[6]

オイスタースタウト

編集

オイスタースタウト: Oyster stout)は、カキエキスを加えて作ったスタウト[5]

脚注

編集
  1. ^ 業界内の自主規制ルールである。詳しくは公正競争規約を参照
  2. ^ a b ビールの表示に関する公正競争規約及び施行規則” (PDF). 2017年2月17日閲覧。
  3. ^ KIRIN キリンビール 商品情報 製造終了品一覧”. 麒麟麦酒 (2008年). 2008年10月7日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g 野村浩二、菅原亮平、三輪一記、小林努『ビール事典』学研プラス、2014年、53頁。ISBN 9784059136187 
  5. ^ a b c d e f g h i 日本ビール文化研究会『日本ビール検定公式テキスト 2016年6月改訂版』マイナビ出版、2016年、71頁。ISBN 9784839958428 
  6. ^ a b 世界一アルコール度数の高い缶ビール新発売!』(プレスリリース)ウィスク・イー、2016年1月14日https://www.value-press.com/pressrelease/1551572017年3月6日閲覧 

外部リンク

編集