イーヴァル・ヒュイトフェルト級フリゲート
イーヴァル・ヒュイトフェルト級フリゲート(デンマーク語: Fregatter af Iver Huitfeldt-klassen, 英: Iver Huitfeldt class frigate)は[注 1]、デンマーク海軍のフリゲートの艦級[1][3][4]。ニールス・ユール級コルベットの直接の後継艦として、アブサロン級多目的支援艦をベースとして開発されたが[4]、防空艦としての任務が追加された[1]。
イーヴァル・ヒュイトフェルト級フリゲート | |
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基本情報 | |
艦種 | フリゲート |
建造所 | オーデンセ造船所 |
運用者 | デンマーク海軍 |
建造期間 | 2008年 - 2010年 |
就役期間 | 2012年 - 現在 |
建造数 | 3隻 |
前級 | ニールス・ユール級コルベット |
準同型艦 | 31型 |
要目 | |
満載排水量 | 6,645 t |
全長 | 138.7 m |
最大幅 | 19.75 m |
吃水 | 5.3 m |
機関方式 | CODAD方式 |
主機 | MTU 20V8000-M70ディーゼルエンジン×4基 |
推進器 | 可変ピッチ・プロペラ×軸 |
出力 | 44,000 bhp (32.8 MW) |
最大速力 | 28ノット (52 km/h) |
航続距離 | 9,000海里/15ノット (28 km/h) |
乗員 | 165人 |
兵装 | |
搭載機 | AW101汎用ヘリコプター×1機 |
C4ISR | C-flex戦術情報処理装置[1] |
レーダー | |
ソナー | ASO-94 船首装備 |
電子戦・ 対抗手段 |
設計
編集設計は2000年より着手されたが、設計完了は2006年までずれ込んだ[4]。建造計画は2004年の国防合意に盛り込まれ、2006年12月20日に建造契約が締結された[3]。ブロック工法が採用されており、一部のブロックはリトアニアおよびエストニアで建造された[4]。設計は基本的にアブサロン級多目的支援艦をベースとしているが、戦闘艦であることから同級より正規戦志向が強く[4]、甲板は1層削減された[3]。
アブサロン級の最大速力は23ノットだが、これでは水上戦闘艦として不足であるため、主機の変更・強化が図られることになった[1]。機種は同級と同じMTU 20V-M70ディーゼルエンジンだが、同級では2基で2軸を駆動する方式だったのに対して[5][6]、本級では4基で2軸を駆動する方式とされた[3][4]。なお推進器は可変ピッチプロペラとされるほか、バウスラスターも設置される[3][4]。
装備
編集本級は、NAAWSを主たる武器システムとするシステム艦として構築されている[1]。ただし戦術情報処理装置は国産のC-flexを採用した[1][3][4]。
兵装の搭載にあたっては原型艦と同様にスタンダード・フレックス・コンセプトを適用されており、上部構造物前方および中部に兵装モジュール計5基の搭載スペースが確保されている[3][4]。このうち、上部構造物前方のモジュールは竣工当初は空所とされていたが[4]、後に76mm単装速射砲が搭載された[3]。一方、中部にはESSM艦対空ミサイル用のMk.56 VLS(12セル)2基とSM-2艦対空ミサイル用のMk.41 VLS(32セル)1基、ハープーン艦対艦ミサイルの4連装発射筒2基が搭載される[3][4]。
その他、艦首甲板に76mm単装速射砲、後部上部構造物上にミレニアム 35mmCIWS、また艦中部両舷にもMU90短魚雷用の短魚雷連装発射管が1基ずつ搭載されるが、このうち艦首甲板の砲は62口径5インチ単装砲への後日換装も考慮されている[3][4]。
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就役直後の「イーヴァル・ヒュイトフェルト」。艦首甲板の砲は未設置である。
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2018年の「イーヴァル・ヒュイトフェルト」の艦影。艦首甲板にも砲が設置されている。
同型艦
編集一覧表
編集艦番号 | 艦名 | 造船所 | 起工 | 進水 | 就役 |
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F361 | イーヴァル・ヒュイトフェルト KDM Iver Huitfeldt |
オーデンセ造船所 | 2008年 6月2日 |
2010年 3月11日 |
2011年 1月21日 |
F362 | ピーダ・ヴィレモース KDM Peter Willemoes |
2009年 3月12日 |
2010年 12月21日 |
2011年 6月22日 | |
F363 | ニルス・ユール KDM Niels Juel |
2009年 12月22日 |
2010年 12月21日 |
2011年 11月7日 |
運用史
編集フーシ派による攻撃から船舶を保護するためのアメリカ主導の繁栄の守護者作戦に派遣された「イーヴァル・ヒュイトフェルト」は、2024年3月9日、 紅海上空でフーシ派の無人機を4機を撃墜した。しかし、タレス製APARレーダーとC-FLEX戦闘システムとの連携不具合により、40分間ESSM対空ミサイルを発射できず、76mm速射砲で迎撃を試みたが、砲弾の半分が発射直後に艦の近くで早期爆発するなど複数の技術的トラブルが確認された[7]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e f 井上 2021, p. 114.
- ^ 新谷, 大辺 & 間瀬 2009, p. 115.
- ^ a b c d e f g h i j k Saunders 2015, p. 196.
- ^ a b c d e f g h i j k l m Wertheim 2013, p. 154.
- ^ Saunders 2015, p. 202.
- ^ Wertheim 2013, p. 158.
- ^ Trevithick, Joseph (2024年4月2日). “Danish Frigate Suffered Radar, Combat System, Gun Problems During Red Sea Ops: Reports” (英語). The War Zone. 2024年4月24日閲覧。
参考文献
編集- 井上孝司「世界の大型水上戦闘艦」『世界の艦船』第946号、海人社、2021年4月。 NAID 40022516372。
- 新谷俊裕; 大辺理恵; 間瀬英夫 編「デンマーク語固有名詞 カナ表記小辞典」『IDUN:北欧研究』別冊2号、大阪大学言語文化研究科言語社会専攻デンマーク語・スウェーデン語研究室、2009年。CRID 1520009407388977152。
- Saunders, Stephen (2015年). Jane's Fighting Ships 2015-2016. Janes Information Group. ISBN 978-0710631435。
- Wertheim, Eric [in 英語] (2013年). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World (16th ed.). Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545。
関連項目
編集外部リンク
編集ウィキメディア・コモンズには、イーヴァル・ヒュイトフェルト級フリゲートに関するカテゴリがあります。
- SPG Media Limited (2011年). “Ivar Huitfeldt Class” (英語). 2011年10月10日閲覧。