くしろ湿原ノロッコ号

JR北海道が運行しているトロッコ列車

くしろ湿原ノロッコ号(くしろしつげんノロッコごう)とは、北海道旅客鉄道(JR北海道)が釧網線釧路駅 - 塘路駅川湯温泉駅間にて1989年平成元年)6月24日から運行しているトロッコ列車臨時列車ノロッコ号の一つである。

くしろ湿原ノロッコ号
塘路駅停車中の「くしろ湿原ノロッコ号」 (2008年8月)
塘路駅停車中の「くしろ湿原ノロッコ号」
(2008年8月)
概要
日本の旗 日本
種類 普通列車
現況 運行中
地域 北海道
運行開始 1989年6月24日[新聞 1]
運営者 北海道旅客鉄道(JR北海道)
路線
起点 釧路駅
終点 塘路駅
営業距離 27.2 km
運行間隔 2往復
列車番号 9330+号数
使用路線 釧網線
車内サービス
クラス 普通車
座席 指定席(2-4号車)
自由席(1号車)
技術
車両 510系客車
DE10形ディーゼル機関車
釧路運輸車両所
軌間 1,067 mm (3 ft 6 in)
電化 非電化
備考
臨時列車扱い
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概要

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釧路湿原国立公園指定を機に、1989年(平成元年)に登場した観光列車[新聞 2]。かつては日本一遅い列車として人気を集め、現在は北海道を代表する観光列車ノロッコ号の内の一つとなっている。

釧路湿原をのんびりと走行しながら景色を楽しめる。春から秋にかけて、釧網線は釧路湿原に一部沿うように約1時間かけて走行する。車ではなかなか見られないような景色を望め、 蛇行する釧路川や、野生動物たちの姿も目の前に楽しめる[1]

 
初代ノロッコ号編成(1997年7月23日)
 
4両に減車されたノロッコ号

歴史

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運行概況

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主に、ゴールデンウィーク時期に釧路駅 - 塘路駅間を1日1往復、には同区間を1日2往復運行する。2008年(平成20年)8月13日には、累計乗車人数が100万人を突破し[8]2009年(平成21年)で運行20周年を迎えた。2016年(平成28年)からは客車が5両から4両に減車となった。

かつては毎年秋に塘路駅 - 川湯温泉駅間で延長運転が行われていたが、2012年(平成24年)10月31日以降行われていない[JR 2]2019年(令和元年)からは、同年5月に運行開始30周年を記念して延長運転を行う[5]など、一部の日程で延長運転が行われるようになっている。

なお、ノロッコ号運行開始当初は時速30 km/h程度の低速運転[新聞 12]を行い、「日本一遅い列車」として注目を集めていた[9]。1998年(平成10年)に登場した新型車両は、同年6月の試運転で函館線札幌駅 - 小樽駅間を平均時速40km、最高時速70kmで走行し、翌年4月に「小樽ノロッコ号」として営業運転する[新聞 13]など、従来車両よりも高速で走行できるようになった。

停車駅

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釧路駅 - 塘路駅間運転時

釧路駅 - 川湯温泉駅間運転時(2012年まで)

釧路駅 - 川湯温泉駅間運転時(2019年以降[10]

使用車両

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牽引機関車

ノロッコ号専用塗色となっている[11]。機関車にはヘッドマークが取り付けられる。釧路湿原のラムサール条約登録40周年など、節目の年には特別なヘッドマークが取り付けられることもある[6]

過去に使用された牽引機関車

客車 50系客車を改造した客車4両編成である。1998年(平成10年)より使用を開始した2代目の車両である。編成内容は以下の通り。塘路・川湯温泉寄りが1号車。JR北海道苗穂工場で改造された。旧型車両と比べ窓枠を大きくし開放感を高めているほか、外装や座席にふんだんに木材を使用している。北海道の自然にマッチした緑色の塗装を施している[新聞 7]。なお、この車両の形式名「オクハテ510」は、札幌市中央区に居住していた鉄道愛好家が命名したものである[新聞 14]

  • 1号車:オハ510-1 ※自由席車。一方の客用扉が埋め込まれてはいるが、寸法の小さな二重窓やボックスシートなどに51形の特徴をよく残している。
  • 2号車:オハテフ510-1
  • 3号車:オハテフ500-51
  • 4号車:オクハテ510-1

※機関車は塘路・川湯温泉方に位置しており、釧路方の先頭車両(オクハテ510-1)最前部には運転台が設けられている。釧路へ向かう時はオクハテ510から最後尾の機関車を制御して推進運転[14]を行う、日本の鉄道史上でも数少ないプッシュプル列車である。

 
ノロッコ号に使用される50系客車
(2021年5月 細岡駅 - 釧路湿原駅間)

過去に使用された客車

運行開始当初はこの3両が使用された。函館にて改造が行われた[新聞 2]。雪氷や釧路湿原の川と緑をイメージした白地にグリーンとブルーのラインをあしらった塗装とした[15]。機関車の赤はたんちょうを現した[新聞 2]。1998年(平成10年)5月5日を最後に当列車の運用から離脱した。

  • オハフ51 4 - 1993年(平成5年)より増結された。窓に向かった椅子を設け、グループで楽しめるよう工夫されていた[新聞 2]。1998年(平成10年)にオクハテ510-1に改造された。
  • オハテフ510-2 - 1998年(平成10年)から2015年(平成27年)まで使用された。現在は富良野・美瑛ノロッコ号の客車として使用されている[16]

担当車掌区

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車内販売

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2号車にあるカウンターにおいて乗車記念品や弁当、お土産品の車内販売を行っている。そのため、ワゴンサービスは行っていない。JR北海道が客室乗務員による車内販売を全廃した中[JR 9]、2022年(令和4年)現在でも車内販売が継続されている[6]

運行サービス

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釧網線は釧路湿原を縦断するように線路が敷設されている。そのため、釧路川との接近や、岩保木水門を見ることができ、また、野生動物に出会うことがある。その際には列車を減速または停止させることがある。また、観光列車であるため、見どころでは車内アナウンスによるガイドが行われている。車内では記念の乗車証明書が配布される[6]

その他の列車

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涼風たそがれノロッコ号

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1997年(平成9年)7月27日より運転を開始した臨時列車。夏季の夕方に、釧路駅 - 塘路駅間を1往復した。釧路駅を18時頃出発し、釧路湿原の風を満喫する列車であった[新聞 4]。現在は運転されていない。

くしろ湿原紅葉ノロッコ号

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1999年(平成11年)10月1日より運転を開始した臨時列車。1998年(平成10年)10月に初めて運転された釧路駅 - 川湯温泉駅間の「くしろ湿原ノロッコ号」の名称を変更する形で登場した。10月1日から11月30日にかけて、通常のノロッコ号の運転を延長し、釧路駅 - 川湯温泉駅間で運転された[新聞 10]。列車でしか入れない手つかずの大地や、色鮮やかな紅葉を楽しめる列車であった。2005年(平成17年)10月31日をもってこの名称での運行は終了し[JR 1]、翌年からは再び「くしろ湿原ノロッコ号」の名称で運行されるようになった[JR 10]

なお、10月中の「くしろ湿原ノロッコ号」の運転について、2013年(平成25年)からは釧路駅 - 塘路駅を1日2往復するダイヤに変更された[JR 3]。さらに、2015年(平成27年)、2016年(平成28年)に相次いで列車の運行日数・本数が削減され[JR 11][JR 12]、2019年(令和元年)時点では、10月のうち14日間、1日1往復運転されている[JR 13]

夕陽ノロッコ号

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2020年(令和2年)9月28日から運転を開始した臨時列車[JR 8]。釧路駅 - 塘路駅間を1往復する[JR 8]。下り列車が通常より遅い運行となり、日没の時間帯の釧路湿原を走行する[6]。9月28日 - 30日の3日間運行された初年度は全列車がほぼ満席となるなど、大変好評であった[17][JR 14]

利用状況

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JR北海道釧路支社によると、近年の利用実績や運行実績は以下のとおりである。

年度 乗車人員
(1日平均)
(単位:人)
乗車人員
(計)
(単位:人)
運転日数
(単位:日)
備考 出典
2004年度(平成16年度) 475 81,100 171   [JR 15]
2005年度(平成17年度) 580 97,100 167   [JR 15]
2006年度(平成18年度) 605 101,650 168   [JR 15]
2007年度(平成19年度) 645 108,400 168   [JR 15]
2008年度(平成20年度) 590 100,100 170 原油高騰等の影響により、乗車人員が前年度比減少。また、2008年8月13日に、乗車人員累計100万人達成が発生[JR 16][JR 17] [JR 15]
2009年度(平成21年度) 553 92,300 167   [JR 18]
2010年度(平成22年度) 552 91,650 166 特急列車との接続の見直し、無料体験乗車会の実施等により、乗車人員が前年度比増加 [JR 19]
2011年度(平成23年度) 520 91,050 175 2011年4月 - 7月の利用客減少が発生したことにより、乗車人員が前年度比減少 [JR 20]
2012年度(平成24年度) 584 102,250 175 東日本大震災の影響による旅行離れの回復、テレビ番組等のメディア露出等により、乗車人員が前年度比増加 [JR 21]
2013年度(平成25年度) 597 105,590 177 道内外の団体客が前年度より増加したことにより、乗車人員が前年度比増加 [JR 22]
2014年度(平成26年度) 614 108,760 177 道内外の団体客および海外客、釧路市への大型クルーズ船からの寄港客の利用により、乗車人員が前年度比増加 [JR 23]
2015年度(平成27年度) 696 98,140 141   [JR 24]
2016年度(平成28年度) 563 59,692 106   [JR 25]
2017年度(平成29年度) 590 77,285 132   [JR 25]
2018年度(平成30年度) 555 67,698 122 台風や地震の影響による運休の増加が発生 [JR 26]
2019年度(令和元年度) 611 85,596 140   [JR 27]
2020年度(令和02年度) 456 16,424 36 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、運行日が前年度比大幅減少 [JR 14]

脚注

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出典

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  1. ^ ノロッコ号でのんびり行こう 釧路湿原の旅”. たびらい北海道. 2018年8月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月13日閲覧。
  2. ^ a b 鉄道友の会 客車気動車研究会『日本の展望客車(下)』ネコ・パブリッシング、2016年5月1日、66-67頁。 
  3. ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '05年版』ジェー・アール・アール、2005年7月1日、181頁。ISBN 4-88283-126-0 
  4. ^ “湿原ノロッコ号 利用者増える”. NHK 北海道のニュース. (2017年12月24日). https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20171224/3843701.html 
  5. ^ a b “釧路湿原ノロッコ”,川湯温泉まで延長運転される”. 鉄道ファン・railf.jp. 2019年6月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月4日閲覧。
  6. ^ a b c d e くしろ湿原ノロッコ号 2020年度運転案内”. 北海道旅客鉄道. 2020年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月13日閲覧。
  7. ^ JR北海道、豪華列車運行へ 26年4月全道周遊 茶室も:北海道新聞デジタル”. 北海道新聞デジタル. 2023年12月31日閲覧。
  8. ^ 累計乗車人数100万人を達成
  9. ^ 【今日は何の日?】「日本一遅い列車」デビュー”. 乗りものニュース. 2020年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月4日閲覧。
  10. ^ “くしろ湿原ノロッコ号”が川湯温泉まで延長運転”. 鉄道ファン・railf.jp. 2019年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月4日閲覧。
  11. ^ 花咲線にDE10 1660が入線”. 鉄道ファン・railf.jp. 2013年3月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月14日閲覧。
  12. ^ 【JR北】〈流氷ノロッコ号〉運行開始”. 鉃道ホビダス. 2020年8月4日閲覧。
  13. ^ 「鉄道車両年鑑2016年版」『鉄道ピクトリアル』2016年10月臨時増刊号、p.207
  14. ^ 鉄道ピクトリアル』 2007年2月号 (No.785) p.30
  15. ^ LOCAL NEWS 釧網本線に〈ノロッコ号〉登場 - 鉄道ジャーナル1989年9月号
  16. ^ “富良野・美瑛ノロッコ号”にオハテフ510-2が連結される”. 鉄道ファン railf.jp. 2019年4月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月13日閲覧。
  17. ^ 「夕陽ノロッコ号」運行初日【釧路】”. 北海道ニュースリンク. 2020年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月12日閲覧。

JR北海道

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  27. ^ 2019年度「くしろ湿原ノロッコ号」ご利用状況について』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道釧路支社、2019年10月18日。オリジナルの2019年11月11日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20191111165341/http://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/aff05f6cbe62c03d990e56f3d5821420.pdf2021年3月4日閲覧 

新聞記事

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  11. ^ a b “耳寄りな話 夏の釧路湿原をSLで”. 北海道新聞. (2002年6月26日) 
  12. ^ “のんびり流氷見物 時速30キロのノロッコ号 来月から斜里ー網走間運行”. 北海道新聞. (1990年1月11日) 
  13. ^ “春の小樽へ のんびり列車 JR「ノロッコ号」道央圏では初登場 札幌発 来月、11日間の限定”. 北海道新聞. (1999年3月17日) 
  14. ^ “鉄道ファン 札幌の故富樫さん追悼列車 思い出乗せて「とがし号」走る JR札幌ー余市間”. 北海道新聞. (2008年11月11日) 

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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