Wikipedia:ガイドブック 編集方針

 ウィキペディアの編集方針

編集

ここでは、百科事典であるウィキペディアをどのような視点に立って編集していくか、記事をどのようなフォーマット(様式)に整えていくかというウィキペディアの「編集方針」について解説します。また、新しく一から記事を作成する場合のヒントについても触れていきます。

事典の内容

編集

ウィキペディアは、読者が様々な知識を得る手がかりとなる百科事典を編纂するプロジェクトです。ここで大切なのは、ウィキペディアは、ウィキペディア自身の見解を示すのではなく、世の中にすでに知られている「事実」や、さまざまな事象に対してすでに発表されている解説や見解を紹介することを目的としているということです。

中立的な観点

編集

ウィキペディアの編集方針の中で、もっとも重要とされているのが、中立的な観点という方針です。世の中には様々な考え方があり、対立し合っている意見もあります。ウィキペディアはこれらのどの意見に対しても中立的であることを目指しています。これは単なる客観的というのとは少し違います。主観的な意見について、解説するなと言うわけではないのです。なぜなら、そういう意見が“ある”こと自体は事実ですから。

結果としてどういう書き方が模範的かと言えば、「こういう意見がある。また一方ではこういう意見もある」とすることになります。「これは絶対の真実である」と断定している見方があっても、反対意見があれば、それも公平に扱わないといけません。もちろん、その分野において優勢な意見があれば、それが優勢であることを併せて書くのが望ましいでしょう。ただし、執筆者自身が自説を主張することは認めていません。

これは難しいことです。政治や宗教が絡む記事など、デリケートな問題だと、そもそも何が事実なのかというあたりからすでに意見が対立してしまいます。また、中立性の難しさは、ひとつひとつの記述にとどまらないところにあります。一文一文は中立的なのに、全体の構成が偏ってしまっている、ということも十分あり得るのです。たとえば、ある人物や団体についての記事に、社会との軋轢(あつれき)を起こした事実ばかりが並んでいたとします。これらすべてが事実であったとしても、その人物や団体の業績も入っていなければ全体としては中立でなくなってしまいますね(逆に問題点に一切言及せずに、賞賛、宣伝に終始するという逆のパターンもあり得ますが、これもやはり、中立的ではありません)。

執筆者はできるかぎり中立的であるよう努力するべきです。しかし、わかっているつもりでも難しいのが、この中立性です。どんな情報を重要視するかという選択に際して完全に主観を排除することはほとんど不可能ですし、意識していなくても主観的な意見を主張してしまうこともあります。ウィキペディアの複数の利用者が自由に編集に参加する体制は、できるだけ中立性を確保するための手段でもあります。自分とは異なる意見を書きこんでいる人がいても、それが信頼できる資料によって検証可能であり執筆者の独自の研究でなく、記事全体に対して適当なバランスの分量であれば、記事の中立性を増すものとしてみなすべきでしょう。

出典を提示する

編集

上記でも少し触れましたが、ウィキペディアにおいては、出典を提示することが重要視されています。「真実」に近づく手段として「検証可能」かどうかが求められています。仮に、真実であったとしても、検証ができないことは記載ができません。誰でも執筆ができる代わりに、その信頼性の担保は、ウィキペディアの外に求める方針としているからです。あなたが見た・聞いた・知っている等を編集の根拠とするのではなく、報道機関や専門書、専門家の見解、公式サイトなどの信頼性のある情報源を編集の根拠とし、その出典を明記するようにしましょう。信頼ある出典が見つからない時は、他の誰かに任せるか、そのような出典が公表されることを待つことも肝要です。

存命人物の情報や差別表現・人権侵害について

編集

公にさらされているウィキペディア上において、人権侵害が絶対に許されないのは当然のことです。例えば、個人の住所や電話番号・メールアドレスなどの個人情報、その他プライバシーをウィキペディア上で公表しているものがあれば、発見した人はすぐに白紙化すべきですし、そのページはその情報が載っている版全てを早急に削除しないとなりません(白紙化しただけでは履歴を通して情報を得ることが可能です)。これは、記事は勿論ですが、ノートページ井戸端など、すべてのページが対象です。ページをどうやって削除するかについては、運営の章に譲りましょう。

次に、差別的表現です。まず、差別用語を記述すること自体に制限はありません。そういう用語が“用いられている(いた)”というのは事実なのですから。ただしそれは、その用語の背景などを説明する目的のためのみということになります。そうでなければ記事自体が差別的になってしまいますし、そもそも中立性を欠いた主観的な文章になってしまいます。

また名誉毀損の恐れがある記述も受け入れられません。たとえ事実であっても、特定の人に社会的ダメージを与えるような事柄の公開は名誉毀損に当たってしまいます(公共の利害に関する事実に係るもので、専ら公益を図る目的であったと裁判所が判断すれば罪にならないとされてはいますが)。これも人権侵害と同じく、早急に白紙化・削除が必要な例になります。相手を傷つけてしまうだけでなく、訴訟を起こされることでウィキペディアというプロジェクトを頓挫させかねないリスクがあります。特に人物や企業などの記事では、存命中の人物や、遺族、企業などからの正式な要請に応じて記事の内容が削除されることがあります。

これらの懸念も含め、存命人物に関する記載については、執筆に際し、特に注意を払うことが求められています。

著作権侵害は絶対にやめましょう

編集

著作権はウィキペディアの存続にも関わる重要なテーマですので、次の章で詳しく述べますが、著作権を侵害するような記事内容は、発見されれば削除され、悪質な場合はその利用者を投稿ブロックしています。著作権侵害は犯罪ですので、決して行わないでください。

辞書ではありません

編集

ところで、百科事典国語辞典字書(字典)などとはどう違うのでしょうか。辞書や用語集は、言葉の意味や定義を説明するものです。もちろん、意味を説明するためにその言葉の背景にも言及しなければならないこともあるでしょうが、それは補助的に行われるだけで、本来の目的ではありません。対して、百科事典は世の中のあらゆる事象を理解するための解説を提供することを目的としています。もちろん解説しようとすれば見出し語の意味の説明も必要なので、ウィキペディアの多くの項目は「○○は××である」という定義で始まっています。その延長としてことわざ格言業界用語の意味を説明する項目を作りたくなるのも理解はできます。しかし、単に言葉の意味だけで解説が終わってしまう項目は百科事典の対象としてはあまりふさわしくありません。こういう項目を、ウィキペディアでは「辞書的」と呼んでいます。辞書のような項目は、百科事典にふさわしい項目に成長させるか、姉妹プロジェクトのウィクショナリーなどへ移すことが推奨されています。

何が百科事典的で何が辞書的なのか、その境界線は曖昧なこともあります。そのような微妙なトピックについては、その言葉について、言葉の意味や用法以外に解説と呼べるものができるのかどうか、そこが判断の分かれ目になります。

ただ、専門的な項目では難しい概念を表すための専門用語が必要になることもあります。その項目の中で専門用語を説明することはむしろ奨励されていますし、必要に応じてその専門用語のための独立した項目を作る場合もあるでしょう。その場合でもできるだけ百科事典の項目であることを意識しましょう。

詳しくはこちらの文書

記事の体裁

編集

記事名

編集

一から記事を作成する場合、まず問題になるのは記事名(項目名)ですね。記事名は基本的には正式名称を使います。同じ名称で別のものがある場合には項目名の後に半角スペースを空けて、半角カッコで括った分類名をつけます(例:、「花 (瀧廉太郎)」、「花 (ORANGE RANGEの曲)」)。他の項目からリンクする際に、分類名を表示したくないときは[[○○ (分野)|○○]]と表記します。なお、項目名には使える文字に一部制限があります(下記参照)。

未執筆リンク(赤リンク)をクリックして新しい項目を作る場合、「赤リンク」のリンク先がそのまま記事名になるので、未執筆リンクを張るときには、リンク先が正式な項目名としてふさわしいものになるようにしてください。

本文

編集

次に本文です。文章は敬語を使わない「常体」(普通体、「だ・である」体)で統一します。構成の基本は概要から次第に詳細な内容を紹介するようにします。まず、記事の最初の段落では、その項目の定義をしっかりと書かないといけません。意識しないと意外に忘れやすいことです。たいていの場合、最初の文は「○○は××である。」という感じで始まることになるでしょう。タイトルが漢字の場合は、読み仮名を括弧で囲んで表題のあとに付けるのが標準的です。また原語表記や略称、別名もここに副えます。

その後に1行空行を空け、概略を述べていきます。段落の数が多くなるようなら、見出しを付けてセクション(節)に分けます。記事の最後には「== 参考文献 ==」として、参考にした資料の書誌情報を記載しましょう。また末尾に「== 関連項目 ==」と題したリンク集や「== 外部リンク ==」と題した外部リンク集などを加えれば、より意義深い記事ができあがります。

表記

編集
句読点
日本語の文章の句読点は、「、」や「。」を使います。半角の「、」「。」や「,」などを使用するとすぐに訂正を入れられてしまうのはもちろんのこと、「まさか外部サイトからのコピーでは?」と疑われてしまう原因にもなってしまいます。
逆に半角の「、」「。」を発見したら、外部サイトに似た文言がないか検索してみてもいいでしょう(これは意外に、不正転載発見の重要な手がかりなのです)。
全角・半角
アルファベットや数字はいわゆる半角、カタカナは全角と決められています(ウィキペディアはUnicodeベースなので半角カナも正常に扱えます。ですが、表記統一の面から半角カナを使っていません)。
記号はものによって細かくガイドラインが定められています。なお、以下の文字はウィキペディアのマークアップに使用しているため、記事名には使えません。記事名においては、これらを全角にする必要があります。
  • + < > [ ] { } |
特殊記号・特殊漢字
文字コードとしてUnicodeを使っているウィキペディアでは、日本語のコードにない難しい漢字や記号が表現できます。これは、中国史の記事だとか理数系の記事を書くときには重宝します。
アラビア文字ハングルで人名の原語表記までできますが、閲覧環境によっては表示できません。ですから、Unicode文字のうち、日本語にない文字を使うときは、読めなかった人向けにすぐ横に注釈を入れておいてください。また、Unicode文字を項目名に使うのはやめた方が無難です。項目名が化けると、その記事にたどり着くことさえできなくなりかねませんから。もしUnicode文字を項目名として使いたいのなら、リダイレクトページにして文字化けしない記事名のページへ誘導するページにしましょう。記事を検索するときに便利です。

レイアウト・スタイル

編集

多くの項目を扱う百科事典では、レイアウトやスタイルの統一はなかなか難しい問題です。多くの利用者が常時編集を行っているウィキペディアではなおのことです。したがって、レイアウトやスタイルについては、かなりばらつきがあるのが実情です。ですが、ウィキペディア全体、あるいは分野ごとの「ウィキプロジェクト」や「ウィキポータル」において参考となるガイドラインを決めようという努力もなされていますので、できればこういったガイドラインを折々に参照して、編集の手引きとするとよいでしょう。

一例として、人物に関する記事では、最初にその人物についての基本的な情報をまとめて書きましょう。

  • 野口 英世(のぐち ひでよ、1876年11月9日 - 1928年5月21日)は……」のようにまず最初に読みがな、生没年月日を書きます。
  • 存命中の人物については - でそのことを表します。例えば、「岸田 文雄(きしだ ふみお、1957年昭和32年〉7月29日 - )は、日本政治家。」
  • 名前が漢字で表記できない人物の記事では、カタカナ表記を記事名とし、冒頭文で「カレル・チャペク(Karel Čapek, 1890年 - 1938年)」のように、原語による表記と生没年月日を添えます。
詳しくはこちらの文書

少しずつ育てていく

編集

初版から詳しく分かりやすい記事を書けなくてもかまいません。多くの場合、最初に記事を作るときには概略などをほんの少しだけ書いて、それを元にみんなで書き加えたり、ふくらませたりして記事を育てていきます。これから育っていく小さな記事、まだまだ書きかけの記事のことをウィキペディアではスタブと呼んでいます。

立派な花を咲かせるにもまず、よい「種まき」から始まります。スタブを作るとき、記事が発展しやすくなるように、以下のことを心がけてください。

  • はっきりと定義をする - 何についての記事なのかはっきり分かるようにしましょう。
  • 少しでも説明してみる - 言葉の定義だけでは記事にはなりません。一言でも定義以上の情報を加えるように努力して下さい。
  • 関連用語へのリンクを張る - 関連する言葉へのリンクは記事がふくらむためには大切です。
  • キーワードを書く - 「今すぐには自分では書けないけれど、この記事ではこんなことについて書いたらどうだろう」というようなキーワードをいくつか書いておくと他の執筆者の役に立ちます。
  • 記事の最後に「{{stub}}」と書くと記事の一番下に、スタブであることを示すテンプレートが貼られ、Category:スタブカテゴリに自動的に載るので、他の執筆者がそのスタブ記事を探しやすくなります。
詳しくはこちらの文書
次へ進む → 著作権に注意