Tバック(ティーバック、T-back)、Gストリング(ジーストリング、G-string)とは、臀部(尻)を露出した水着下着(下穿き)の一種。

Tバック(G-string)水着の背面

「Tバック」という語は和製英語である。世界ではソングthong)、タンガtanga)に分類されているが、日本ではこれらの下着の総称として用いられる。

由来

編集

バックスタイルがT字型でカットされたデザインになっており、外形がアルファベットTの字に見える事から、Tバックと名付けられた。

なお、競泳水着の背中部分がT字になっている物をTバックと呼ぶ場合もあるが、本項では下着や水着のボトム形状を指し示す。

概要

編集

日本では、フロントがV字型にカットされてバックとサイドが細いひも状にデザインされた、和製英語でいうところのTバックの一種を指す。俗に「ひもパン」とも呼称される。一般的に生地が薄く肌に密着した下着であるため、ボトムスの下に穿いてもショーツラインが浮き出にくい。

セクシー下着かつ女性用と誤解される事があるが、機能的な面が多く男性用の物も流通している。

諸外国におけるGストリングは、フロントがV字型でバックの布地が極端に少ないものを指す。なお、バックが尻(臀部)の上半分を覆っているものはチーキー(cheeky)と呼ばれる。

ボトム類の総称であるソングやタンガの同義語としてしばしば用いられる。

後述の普及についての記載であるように、男性用下着のふんどしも広義のTバックとして扱う場合がある。

デザイン

編集

フロントは普通のハイレグタイプの形になっている。しかし、バックは極端に細い布か紐となっているのが特徴で、尻をカバーできず、代わりに尻間に食い込ませて着用する。着用した場合、陰部は透け素材やOフロントでない限り隠せるものの、尻は丸出しのままである。

この食い込みによる独特のはき心地や、尻が丸出しとなることでヒップラインを美しく見せることができる所が利点である。

なお、尻間に食い込ませる部分が紐のものを特にGストリングと呼ぶ場合もある。

英語に於けるTバック或いはストリングバック(: T-back, string back)は、フロントが普通のビキニであるのは、日本と同じだが、バックに当て布がなく、結び紐でT字を描くものに限られる。総称としては、欧米ではソング(: thong)やタンガ(西: tanga)、Gストリングまたはトライアングルバック(G-string, triangle back)・VストリングまたはVバック(V-string, V-back、バック中央に紐で小さな逆三角を描くもの)・チーキー(cheeky、バックの下半分だけが露出したもの)・CストリングまたはCバック(C-string, C-back 、紐が一切ないもの)などはその下位区分となる。評論家ウィリアム・サファイアは言語学者のロバート・ヘンドリクソンの意見を引用し、Gは脚の付け根を意味し、かつてはタブー扱いされた言語だったことに言及した[1]。また、Gストリングはしばしばソングと混用される。

詳細

編集

ルーツはアフリカ、サハラ地方やブラジルなど諸説あるが、確証がなく、不明である。ブラジル人にとってTバックは、リオの海岸で女性が使用したり、世界的に有名なリオのカーニバルをはじめ、サンバのダンサーはTバック衣装を着用したりする身近な衣類である。

20世紀前半からストリップやダンサーなどは身に付けていたが、一般には1970年代南アメリカ、特にブラジルで水着から大流行が始まった。欧米では1990年代から人気を得ており、特に北欧や東欧諸国では、大衆に受けいれられ、一般の女性も使用することがある。

日本では『週刊現代』でTバックを初めて紹介し、その後も度々紹介した事があり、2011年には「日本Tバック史」が企画された[2]

Tバックはバックの生地の面積が小さいため、尻の二つの山の間を布が通り、尻の丸みが美しく出る効果、そしてスカートズボンなどを穿く時にショーツラインやブリーフラインがアウターに響かない、皮膚を覆う面積が少ないため蒸れにくい、皮膚が弱い人の場合は、太ももの付け根内側の布ずれによる炎症を防ぐことができる(男性の場合トランクスを選択する方法も選択肢になるが、トランクスは股間部の保持が無い)という4つの実用的な機能を持っている。

この様に、実用性に富む下着が多くある一方で、臀部(尻)が露出されるためセックスアピールに富むファッションでもあり、女性の場合、ヨーロッパ北アメリカ、南アメリカを中心に、若者やハリウッド俳優を中心に使用されている。男性のハリウッド俳優においてもトム・クルーズがアクション撮影時に着用していることが報じられている[3]

さらには、ローライズパンツを穿いた時にあえてウエスト部分から下着(Tバック)をはみ出させて見せパンとしてファッションの一部にしたり、露出度が高いためセクシーランジェリーとして愛用している人も多くいる。女性用では、エアロビクスのアンダーショーツや水着のアンダーショーツとしてもTバックが用いられている。これは、水着やレオタードに下着の輪郭が浮き上がる事を防ぐためである。

Tバック水着について言えば、ブラジルをはじめ、北欧や欧米、東ヨーロッパの海岸では、Tバック水着に対して寛容であり、臀部(尻)を出したTバッグを着用する人も見られる。

女性用のTバック水着は、普通のTの形をしたものの他、Tの形の前後に飾りを入れたり、フロント状にするために薄い布を飾ったりするタイプも数多くある。

日本におけるTバック水着

編集

1980年代末に、Tバック水着が登場した。昔日本では男性が六尺褌を着用し、臀部(尻)を露出して泳ぐ事も珍しくなかった。学習院では、赤いふんどしで水泳をさせたりもしていた。しかし1992年、臀部が露わな人が多い事への苦情があったため、神宮プール(当時)などの都心のプールではTバック水着や褌を着用する事が禁止され、その後も禁止が少しずつ増加し、都内近郊でTバック水着を着用できる公営プールは数少ない。これらのことに不満を覚える人も少なくない。このため、都内近郊でTバック水着を着用して遊泳したい場合は許可を確認して、ホテルのプールか海水浴場などで着用するしかない。

普及状況

編集
  • 女性
    • 2002年に、大手製薬会社が実施した消費者アンケートでは、16 - 39歳の女性でTバックショーツを37%の人が所有しており、そのうち月1回以上使用している人が半数近くいるという結果が出ている[4]
    • サンケイリビング新聞社が、2010年2月にシティリビングホームページ 「Citywave」メール会員に対して実施したWEBアンケート(集計数415人、平均年齢33.0歳)では、Tバックショーツを持っている人は全体で42.4%、30 - 34歳は51.2%と過半数が所有している。また、所有者全体の平均枚数は4.5枚であり、年代別では20代が最も多く5.6枚という結果となっている[5]
  • 男性
    • 2008年に、ワコール聖心女子大学が首都圏在住15 - 64歳男性1030人に実施した調査によると、男性のTバックの着用率は2.2%であり、かつて着用していた者は8%という結果が出ていることから概ね10%程度が着用経験者である。着用者率は年代別で40代が最も多く4.4%となっている[6][7]
    • 2016年に、『CanCam』がTwitterにて行ったアンケート調査を基にした記事によると、男性の14%がTバック(ふんどしを含む)派と回答している[8]

男性用のTバック

編集
  • 筋肉を圧迫しない事による動きやすさや、陸上や水泳などのスポーツ用下着として、機能性がスポーツ競技者を中心に注目されたことがある。昔から、バレエダンサーやフィギュアスケート選手などは、ヒップラインを綺麗に出し、脚を長く見せるために、ダンスベルトというTバックショーツを着用していることがある。スポーツ用サポーターとしても開発され、ジョックストラップの後ろをTバックにしたものが有る。水泳用サポーターとしても、Tバック愛用者がいる。
  • B.V.Dやワコール等の大手メーカーでも製造されているが、量販店での取り扱いが少ない状況である。以前はビキニブリーフ等と共に量販店でも扱いがあったが、ボクサーブリーフの普及に伴うビキニブリーフの取り扱い縮小と共に数を減らしている。量販店ではしまむらがプライベートブランドにて男性用Tバックを販売している。

ギャラリー

編集

脚注

編集
  1. ^ Safire, William (August 4, 1991). “On Language; Ode on a G-String”. The New York Times. オリジナルの2019年10月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170331190731/http://www.nytimes.com/1991/08/04/magazine/on-language-ode-on-a-g-string.html 2019年10月17日閲覧。 
  2. ^ 2011年12月10日号にこの特集が掲載された。
  3. ^ かまいたち濱家も! 城島茂、トム・クルーズほか「Tバック」を愛用している男性有名人たち”. Smart FLASH (2023年11月4日). 2024年3月1日閲覧。
  4. ^ 女性のTバックショーツの使用実態』(プレスリリース)小林製薬株式会社、2002年3月19日。オリジナルの2007年1月4日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20070104141013/http://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/0216/index.html 
  5. ^ OLマーケットレポート「OLの下着に関する調査」”. サンケイリビング新聞社 (2010年3月15日). 2014年8月28日閲覧。
  6. ^ なぜ見えない下着にこだわるのか 男性の心理と下着に関する意識調査 〜男性の"気に入っている下着"と、その心理的効果〜”. ワコールホールディングス (2008年8月). 2023-02-29閲覧。
  7. ^ 鈴木公啓、菅原健介、西池紀子、小松原圭司、西口天志、藤本真穂「男性における下着の消費行動」『繊維製品消費科学』第55巻第9号、日本繊維製品消費科学会、2014年、677-686頁、doi:10.11419/senshoshi.55.9_677 
  8. ^ 佐藤則子 (2016年2月21日). “トランクス派は壊滅的?「男性の勝負下着」を調査してみた”. CanCam.jp(キャンキャン). 2024年3月9日閲覧。

関連項目

編集