「アフリカの角」地域統合任務部隊

CJTF-HOAから転送)

「アフリカの角」地域統合任務部隊(「アフリカのつの」ちいきとうごうにんむぶたい、英語Combined Joint Task Force – Horn of Africa, CJTF-HOA[6]、もしくは「アフリカの角」統合任務部隊(「アフリカのつの」とうごうにんむぶたい)[7][8]は、米国アフリカ軍(AFRICOM)の統合任務部隊である。2001年9月11日の同時多発テロ事件に対するアメリカ合衆国の対応の一環として、アフリカの角における不朽の自由作戦(OEF-HOA)の下、発足した。

「アフリカの角」地域統合任務部隊
Combined Joint Task Force – Horn of Africa
活動期間 2002年10月19日 – 現在
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ
兵科 Multiservice (joint) formation
任務 軍事作戦と軍事及び民事能力構築(英語版)
兵力 2000〜4500[1][2][3]
上級部隊 アメリカアフリカ軍[4]
基地 ジブチ共和国 キャンプ・レモニエ
指揮
現司令官 ラプテ・C・フローラ陸軍少将(英語版)[5]
テンプレートを表示

概要

編集
 
2003年3月、活動の一環として行われたM4M16を使用した射撃訓練

CJTF-HOAの任務は、パートナー国の能力を高め、地域の安全と安定を促進し、紛争を解消し、米国と同盟国の利益を守るために、当該地域で統合軍事作戦を実施することである。

CJTF-HOAは、米軍および同盟国からの約2,000人の軍人、軍属で構成されており[1]、現在、スーダンソマリアジブチエチオピアエリトリアセイシェルケニアを主な作戦地域としている。そのほかにもモーリシャスコモロリベリアルワンダウガンダタンザニアにおいても活動を展開している[9]

CJTF-HOAの作戦は、米軍が「間接アプローチ戦略」と呼んでいるもので、軍事作戦民事作戦、主要指導者への関与およびパートナー国への支援を中心に行われている。井戸の掘削による安全な水の供給や学校施設を建設、道路の整備、医療施設の改善などの短期的支援を行う。長期的な目標は、パートナー国と協力して国や地域の安定と安全を向上させることである。地域の安定性を高めるために、民生支援、地元の政府軍への訓練、エンジニアリング・人道支援、医療・歯科・獣医の市民活動プログラム(MEDCAP、DENTCAP、VETCAP)(英語版)、国境・沿岸地域の防衛訓練、対IED(C-IED)訓練などの能力向上活動を行っている。CJTF-HOAは、米軍各部門からの約1,800人の隊員と文官、そして同盟国やパートナー国の代表者から構成される。

司令官

編集
 
ジブチキャンプ・レモニエギャレーに向かう「アフリカの角」統合任務部隊司令官、テリー・フェレル少将とソマリア軍(英語)ダヒール・アダン・エルミ大将(英語)2013年5月。

発足当初、統合任務部隊の司令部は揚陸指揮艦マウント・ホイットニー艦内に置かれており、第2海兵師団司令部と第2海兵遠征軍(IIMEF)の要員から構成されていた。2004年5月からキャンプ・レモニエに移動。

階級 氏名 在任期間 備考等
1 海兵隊少将 ジョン・F・サトラー 2002年11月 - 2003年8月 [10]
2 海兵隊少将 サミュエル・T・ヘランド 2004年5月 - 2005年5月
3 海兵隊少将 ティモシー・F・ゴームリー 2005年5月17日 - 2006年4月12日 [11]
4 海軍少将 リチャード・W・ハント 2006年4月12日 - 2007年2月14日 第6空母打撃群司令[12]
5 海軍少将 ジェームズ・M・ハート 2007年2月14日 - 2008年2月3日 [13]
6 海軍少将 フィリップ・H・グリーン・ジュニア 2008年2月8日 - 2009年2月5日 [14]
7 海軍少将 アンソニー・クルター 2009年2月5日 - 2010年3月27日 [15] [16]
8 海軍少将 ブライアン・L・ローシー 2010年3月27日 - 2011年5月19日
9 海軍少将 マイケル・T・フランケン 2011年5月11日 - 2012年5月26日
10 陸軍少将 ラルフ・O・ベイカー 2012年5月26日 - 2013年3月28日 [17]
11 陸軍少将 テリー・フェレル 2013年3月 - 2014年1月 [18]
12 陸軍少将 ウェイン・グリグスビー・ジュニア 2014年1月 - 2015年4月 [19]
13 陸軍少将 マーク・R・スタマー 2015年4月 - 2016年4月 [20]
14 陸軍少将 カート・L・ゾンターク 2016年4月 - 2017年4月 [21]
15 海兵隊准将 デビッド・J・ファーネス 2017年4月 - 2018年5月 [22]
16 陸軍准将 ウィリアム・L・ザナ 2018年5月 - 2018年6月 [23]
17 陸軍少将 ジェームズ・D・クレイグ 2018年6月 - 2019年6月 [24]
18 陸軍少将 マイケル・D・トレロ 2019年6月 - 2020年6月 [25]
19 陸軍少将 ラプテ・C・フローラ 2020年6月 - [26]

歴史

編集
 
2006年12月、CJTF-HOAによる潜伏訓練に参加するエチオピア国防軍(英語)の兵士。

CJTF-HOAは、2002年10月19日にノースカロライナ州のキャンプ・レジューヌで発足した。 2002年11月、司令部要員はマウント・ホイットニーに乗艦、出発、2002年12月8日に「アフリカの角」に到着した。同司令部がジブチ共和国ジブチ市キャンプ・レモニエに移動する2003年5月13日まで、マウント・ホイットニー艦上において司令部は作戦指揮に運用された。キャンプ・レモニエ移動後は、CJTF-HOA隊員は現地で診療所や病院、学校等の建設を進め、113以上の井戸を掘削、改修。数十件のMEDCAP、DENTCAP、VETCAP(市民活動プログラム)を実施した。パートナー国の軍隊と共同訓練を行った。

2004年1月時点で、指揮官たる海兵隊のマスティン・ロビソン准将以下、海兵隊、海軍、陸軍、空軍の支援、医療、司令部要員、海兵隊CH-53 スーパースタリオン4機からなるヘリコプター分遣隊、陸軍歩兵中隊、陸軍予備民事活動中隊、海軍の輸送機部隊と整備要員、特殊部隊が派遣されていた[27]

2006年、ケニアで発生した4階建てビルの倒壊事故や2006年にジブチで発生した旅客フェリー転覆事故、同年エチオピアとケニアで発生した洪水の復旧作業など、現地での人道支援活動に従事してきた。また、2009年3月9日にビクトリア湖に墜落した南アフリカ共和国の航空会社エアロリフト(英語版)IL-76の残骸の発見、回収において、ウガンダ政府を支援した。

指揮権移管

編集
 
ジブチ陸軍のアハメド・サイード・ゲディ少佐より感謝状を授与されるCJTF-HOAおよびUSAFRICOMのスコット・ミクー上級曹長。2011年9月。

2008年10月1日、統合任務部隊と管轄地域における米軍指揮権がアメリカ中央軍からアメリカアフリカ軍(USAFRICOM)に移管された。

受章歴

編集

共同功労部隊章

  • 2002年10月1日〜2004年3月31日 - アメリカ中央軍(CENTCOM)「アフリカの角」地域統合任務部隊司令部
  • 2004年4月1日〜2006年3月31日 - アメリカ中央軍(CENTCOM)「アフリカの角」地域統合任務部隊司令部
  • 2006年4月1日〜2008年3月31日 - アメリカ中央軍(CENTCOM)「アフリカの角」地域統合任務部隊司令部
  • 2008年4月1日〜2010年3月31日 - アメリカアフリカ軍(AFRICOM)「アフリカの角」地域統合任務部隊司令部
  • 2010年4月1日〜2012年3月31日 - アメリカアフリカ軍(AFRICOM)「アフリカの角」地域統合任務部隊司令部
  • 2012年4月1日〜2014年3月14日 - アメリカアフリカ軍(AFRICOM)「アフリカの角」地域統合任務部隊司令部
  • 2014年4月1日〜2017年3月17日 - アメリカアフリカ軍(AFRICOM)「アフリカの角」地域統合任務部隊司令部
  • 2017年4月1日〜2018年9月18日 - アメリカアフリカ軍(AFRICOM)「アフリカの角」地域統合任務部隊司令部 [28]

作戦

編集

脚注

編集
  1. ^ a b Africa Command: U.S. Strategic Interests and the Role of the U.S. Military in Africa”. Congressional Research Service. 12 September 2012閲覧。
  2. ^ フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議 (2020年10月13日). “アフリカの角、ジブチ共和国の現状【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】”. フィスコ. https://web.fisco.jp/platform/selected-news/00093300/0009330020201013004 2021年3月31日閲覧。 
  3. ^ フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議 (2020年10月13日). “アフリカの角、ジブチ共和国の現状【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】”. ロイター. フィスコ. https://jp.reuters.com/article/idJP00093300_20201013_00420201013 2021年3月31日閲覧。 
  4. ^ “Africans Fear Hidden U.S. Agenda in New Approach to Africom”. Associated Press. (2008年9月30日). http://www.foxnews.com/story/0,2933,430564,00.html 2008年9月30日閲覧。 
  5. ^ Commanding General”. 2020年6月8日閲覧。
  6. ^ 在日米海兵隊 (2020年6月). “キャンプ富士基地司令官 ロブ・ボウディシュ米海兵隊大佐の軍歴”. 在日米海兵隊 キャンプ富士. 在日米海兵隊. 2021年3月31日閲覧。 “2010 - 2013年、第2戦車副大隊長として配属。国際治安支援部隊 (ISAF) の統合司令部 CJ-5政策プランナーとして展開、その後ジブチの「アフリカの角」地域統合任務部隊 (CJTF-HOA) にて、 J-5ソマリアプランナーとして任務にあたる。帰国後、再び第2海兵師団にてG-3将来作戦士官として配属。”
  7. ^ CJTF-HOA(「アフリカの角」統合任務部隊)の新旧幕僚長の来訪』(プレスリリース)海上自衛隊自衛艦隊、2019年5月9日https://www.mod.go.jp/msdf/sf/news/W006H0000900.html2021年3月31日閲覧。「4月26日(金)、ジブチ活動拠点にCJTF-HOA(「アフリカの角」統合任務部隊)の旧幕僚長 ウォール米海軍大佐と同隊新幕僚長 ブラマー米海軍大佐が来訪しました。派遣海賊対処行動支援部隊や同航空隊の現状説明を行い、懇談や対潜哨戒機P-3Cを見学することで、我が国が行っている任務に一層の理解を得られました。」 
  8. ^ CJTF-HOA(「アフリカの角」統合任務部隊)司令官の来訪』(プレスリリース)海上自衛隊自衛艦隊、2019年7月12日https://www.mod.go.jp/msdf/sf/news/W006H0000970.html2021年3月31日閲覧。「令和元年7月6日(土)、ジブチ活動拠点にCJTF-HOA(「アフリカの角」統合任務部隊)司令官トレロ米陸軍准将、同副司令官 クリセル米空軍准将及び同副司令官 カステラノス米陸軍准将が来訪しました。派遣海賊対処行動支援部隊や同航空隊の現状説明を行い、懇談や対潜哨戒機P-3Cを見学することで、我が国が行っている任務に一層の理解を得られました。 自衛艦隊のFacebookも開設しましたので、そちらも宜しくお願いします。」 
  9. ^ CJTF-HOA Factsheet”. Hoa.africom.mil. 2012年9月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月26日閲覧。
  10. ^ USS Mount Whitney Set for Norfolk Return”. Military.com. 2012年12月15日閲覧。
  11. ^ United States Marine Corp Biography: Major General Timothy F. Ghormley”. United States Marine Corps (2007年11月14日). February 14, 2006時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年11月14日閲覧。
  12. ^ United States Navy Biography: Rear Admiral Richard W. Hunt”. United States Navy (2006年6月28日). 2007年2月6日閲覧。
  13. ^ United States Navy Biography: Rear Admiral James M. Hart”. United States Navy (2007年2月21日). 2007年3月28日閲覧。
  14. ^ United States Navy Biography: Rear Admiral Philip H. Greene, Jr.”. United States Navy (2008年4月1日). 2007年3月28日閲覧。
  15. ^ United States Navy Biography: Rear Admiral Anthony M. Kurta”. United States Navy (2009年2月3日). 2009年2月3日閲覧。
  16. ^ CJTF-HOA Under New Command”. CJTF-HOA Public Affairs Office (2009年2月5日). July 22, 2011時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年5月17日閲覧。
  17. ^ Baldor (2013年). “Officials: Army general removed over alcohol, sex-related charges”. U.S. News on NBCNEWS.com. April 5, 2013閲覧。
  18. ^ MG Willard M. Burleson Biography”. 2017年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年3月29日閲覧。
  19. ^ Reif, Jasmine (14 January 2014). “CJTF-HOA welcomes incoming commanding general”. http://www.hoa.africom.mil/story/7842/cjtfhoa-welcomes-incoming-commanding-general 7 February 2014閲覧。 
  20. ^ (US) (2015年4月15日). “CJTF-HOA welcomes new commanding general”. www.hoa.africom.mil. 2021年3月29日閲覧。
  21. ^ CJTF-HOA welcomes new commander, senior enlisted leader”. www.hoa.africom.mil (2016年4月13日). 2021年3月29日閲覧。
  22. ^ CJTF-HOA welcome new commander, senior enlisted leader” (2017年4月28日). 2021年3月29日閲覧。
  23. ^ Mattison (7 May 2018). “Transfer of Authority held for CJTF-HOA”. 2018年8月8日閲覧。
  24. ^ Mattison (16 June 2018). “CJTF-HOA Welcomes New Commander”. 2018年8月8日閲覧。
  25. ^ Nickel (12 June 2019). “CJTF-HOA holds change of command ceremony”. 2020年6月8日閲覧。
  26. ^ McCarthy (8 June 2020). “CJTF-HOA holds change of command ceremony”. 2020年6月8日閲覧。
  27. ^ Chris Tomlinson, 'U.S. wages quiet battle in Africa,' Associated Press, in The Washington Times, January 15, 2004
  28. ^ Maher. “Joint Staff Permanent Order Number J-1SO-0009-20”. twitter.com. The Joint Staff, Washington DC. 7 June 2020閲覧。