.357 S&W マグナム英語: .357 S&W Magnum)(9x33mmR)あるいは、単に.357マグナムは、リボルバーカートリッジとして、エルマー・キース英語版、フィリップ・B・シャープ(Phillip B. Sharpe)[5]銃器メーカーであるスミス&ウェッソンダニエル・B・ウェッソン英語版[5]、そしてウィンチェスター・リピーティングアームズ[6][7]によって作られた。スミス&ウェッソンの.38スペシャル弾がもとになっている。.357マグナム弾薬は1934年に発表され、次第に広く使われるようになった。この弾薬によって、拳銃弾のマグナム弾の時代が始まった[8]。.357マグナム弾薬は、優れたストッピングパワーを持つことで知られている[9]

.357マグナム弾
.357マグナム弾
種類 拳銃 / カービン
原開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ
製造の歴史
設計者 エルマー・キース英語版、フィリップ・B・シャープ
設計時期 1934
特徴
元モデル .38スペシャル弾
薬莢形状 リムド、ストレート
弾丸 .357 in (9.1 mm)
首径 .379 in (9.6 mm)
底面径 .379 in (9.6 mm)
リム径 .440 in (11.2 mm)
リム厚 .060 in (1.5 mm)
薬莢長 1.29 in (33 mm)
全長 1.59 in (40 mm)
雷管のタイプ スモール・ピストル、マグナム
最大圧 35,000 psi (241 MPa)[1][2]
弾丸性能
弾頭重量/種類 初速 エネルギー
125 gr (8 g) Bonded Defense JHP 1,600 ft/s (490 m/s) 710 ft⋅lbf (960 J)
130 gr (8 g) JHP 1,410 ft/s (430 m/s) 574 ft⋅lbf (778 J)
158 gr (10 g) Buffalo Bore Heavy 1,485 ft/s (453 m/s) 774 ft⋅lbf (1,049 J)
180 gr (12 g) WFNGC Hard Cast 1,300 ft/s (400 m/s) 676 ft⋅lbf (917 J)
200 gr (13 g) WFNGC Hard Cast 1,200 ft/s (370 m/s) 640 ft⋅lbf (870 J)
算出時の銃砲身の長さ: 4 in (102 mm) (vented)
出典: Federal,[3] DoubleTap Ammunition[4]
マーリン M1894英語版C .357マグナム。リボルバーのコンパニオン・カービン。

設計

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.357マグナムは1930年代の初めから中盤にかけて、コルト.38スーパー弾英語版に直接反応した個人のグループによって共同開発された。当時.38スーパー・オートマチックは、銃撃戦の盾としての自動車や、第一次世界大戦後の「ギャング時代(en:Social issues of the 1920sも参照)」に出現し始めた初期のボディーアーマーを貫通できる唯一の拳銃弾だった[6]。当時のテストでは、これらのボディーアーマーは、速度が約1,000 ft/s (300 m/s)を上回る拳銃弾ならば貫通できることが判明していた。コルト.38スーパー・オートマチックは、この速度をわずかに上回っていたので、自動車のドアや、酒の密造業者(en:bootleggers)やギャングが着用していたボディーアーマーを貫通することが出来た[10]

.38と.357は異なる口径のように見えるが、実際には、同じ0.357インチ (9.1 mm)が.38スペシャルの弾頭の正しい直径である。.38スペシャルという用語は、(.38ショートコルト弾英語版のような)以前使われていた"heeled"(en:heeled bullet)弾に由来する。これは、薬莢と弾頭が同じ直径である。したがって、これら二つの弾薬の外見上の差は、長さがわずかに違うだけである。これは、単に、下で説明するような安全上の理由による。

.357マグナムの初期の開発の功績の多くは、狩猟家であり実験家でもあったエルマー・キース英語版に帰せられる。キースの初期の仕事は、.38スペシャル弾をより高い圧力になるようにロードすることで、スミス&ウェッソンの.38-44「ヘビー・デューティー」や「アウトドアーズマン」のような、標的射撃用の重い44口径のフレームを用いた.38口径リボルバーのおかげで可能になった。.38-44 HV ロードは、通常の.38スペシャル弾薬よりも大幅に高速になるように.38スペシャル弾薬にロードしたものである。.38-44リボルバーは、.44スペシャル弾を使う銃の、銃身とシリンダーを.357口径(つまり、.38スペシャル弾の本当の直径)にしたものである。フレーム、シリンダー、および銃身が、通常の.38スペシャル用の部品よりかなり頑丈なので、より高い圧力に耐えることが出来る。.38-44 HV 弾薬はすでに入手できないが、ほとんどの場合、後の.357マグナムに匹敵する、通常の.38スペシャルの二倍以上の圧力を発揮した。.357マグナムは、以前の弾薬の安全性の問題に配慮して、約18インチ (3.2 mm)薬莢を延長し、高い圧力の.357マグナム弾薬が、より短く低い圧力の.38弾薬用に設計された銃に装填できないようにしている[11]。エルマー・キースは、また、弾頭の薬莢の外に出ている部分を増加させ、それによって薬莢内部の発射薬を装填する空間を広げた「キース・スタイル弾」に貢献した。キース弾は、また、大きく平たい平頭弾英語版を採用したので、より大きな殺傷力を発揮するために、エネルギーを効率よく伝達できた。同時に、この弾頭の形状はホローポイント弾のように凹んだ形ではなかったので、貫通力も高かった。このような特徴によって、キース弾は標的射撃だけでなく、狩猟にも非常に適していた。

法執行機関に対する銃器の提供者として再び首位に立つために、スミス&ウェッソンはD.B.ウエッソン大佐の主導で社内の努力を結集し、また、全米ライフル協会の技術部門のスタッフだったフィリップ・B・シャープの技術的な助言を仰いで、.357マグナムを開発した。新しい弾薬はスミス&ウェッソンの既存の.38スペシャル弾薬をもとに開発された。これは異なる発射薬を装填しており、最終的に薬莢は1/8インチ(0.125インチ (3.2 mm))延長された。ケースの延長は、薬量を増やすためではなく、安全上の問題からである。.38スペシャルと、キースによってロードされた初期の実験的な.357弾薬の物理的な寸法は同じだったので、実験的な.357マグナム弾薬を.38スペシャルのリボルバーに装填することが可能で、これは悲惨な結果を招くおそれがあった。スミス&ウェッソンの解決方法は、薬莢を延長することで、これによってマグナム用の発射薬をロードした弾薬は、その大きな圧力で使うために設計されていないリボルバーに装填できないようになった。

.357マグナム弾薬用の弾頭としては、開発中に様々な候補が上がった。スミス&ウェッソンにおける開発中に、オリジナルのキース弾は少し変更され、シャープ(Sharpe)弾のような形になった。それ自身はキース弾をもとにしていたが、キース弾の5/6の座面を持っていた。キース弾は通常はオーバーサイズで作られ、後から小さくされた。しかし、ウィンチェスターは、弾薬の開発中に実験を重ね、シャープ弾の形状を、弾頭の輪郭を保ったまま、少し変更した。最終的な弾頭は、キースとシャープの弾頭をもとにしていたが、どちらとも少し異なるものになった[12]

性能

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この弾薬は、多くの人々によって、優れた護身用の弾薬とみなされている。ホローポイント弾は、拳銃弾におけるストッピングパワーの究極の基準として高く評価され、「きわめて信頼できる一撃必殺の弾薬(extremely reliable one shot stopper)」と評価されている[13]。ただし、有蹄類クマなどの大物は、人間よりもかなり頑丈な体格を持っているので、.500S&W弾.50アクションエクスプレス弾.44マグナム弾.454カスール弾.41マグナム弾などの、より大きなマグナム弾を使った方が良い。しかし、.357マグナムは、小型から中型の獲物に対しては適している。また、正しいロード(140グレーン (9.1 g)以上の重さのホローポイント弾か、ソリッドなセミワッドカッター弾英語版)を優秀な射手が注意深く用いれば、適切な距離では、鹿を倒すこともできる[14]。さらに、.357マグナムの100ヤード (91 m)の距離における速度は、もとの.38スペシャルの銃口の速度よりも速い。獲物に対するストッピング・パワーは.45ロング・コルト弾とほぼ同じだが、より平らな弾道を持っている。.357マグナムは非常に汎用性に富んだ弾薬で、護身、プリンキング英語版、狩猟、標的射撃などの分野で成功している[15]

.357マグナムのリボルバーは、.357マグナムより安価で、リコイル、銃声、およびマズルフラッシュ英語版が小さい.38スペシャル弾薬を発射できるという点で、非常に便利である。この特徴によって、.357マグナム・リボルバーは、通常の.357マグナムを撃ったことはないが、より威力が低い練習用の銃を購入したくはない初心者には、理想的な銃である。

.357マグナムは、西部開拓時代レバーアクション・ライフルのような短くて軽いライフルに使う「二つの用途(dual use)」の弾薬としても人気になった。ライフルの場合、.357マグナム弾は銃口初速1,800 ft/s (550 m/s)まで加速される[16]ので、.30カービン弾.32-20ウィンチェスター弾よりもはるかに汎用性に富んでいる。1930年代、鋼板を入れたボディーアーマーに対して非常に有効であることが判明し、金属貫通弾はハイウェイ・パトロールなどの警察組織で一時流行した。.357マグナム・リボルバーは、警察用としては、ほとんどが現代の装弾数の多い自動拳銃に置き換えられたが、バックアップ用に、市民の護身や狩猟用に、また、野外活動家(outdoorsman)や警備員の間で、今でも非常に人気がある。

.357マグナム弾薬のいくつかについて、一般的な性能をあらわすパラメータのいくつかを下の表に示す。 弾頭の重さは、110 - 180グレーン (7.1 - 11.7 g)が一般的である。125グレインの JHP(ジャケッテッド・ホロー・ポイント) は護身用に人気があり、それより重いものは狩猟によく用いられる[要出典]。用途とリスク評価に応じて、初活力は400から700 ft·lbf (540から950 J)、貫通力は9インチ (23 cm)から27インチ (69 cm)以上の弾薬が入手可能である。

メーカー 弾薬 弾頭重量 速度 エネルギー エキスパンション 貫通力 PC[17] TSC[17]
American Quik-Shok JHP 125グレーン (8.1 g) 1,409 ft/s (429 m/s) 551 ft•lbf (747 J) 破片 9.0インチ (23 cm) 2.7 in3 (44.2 cm3) 47.5 in3 (778 cm3)
ATOMIC Ammunition Bonded Match Hollow Point 158グレーン (10.2 g) 1,350 ft/s (410 m/s) 640 ft•lbf (868 J) 0.71インチ (18 mm) 15インチ (38 cm) X X
Double Tap Gold Dot JHP 125グレーン (8.1 g) 1,600 ft/s (490 m/s) 711 ft•lbf (964 J) 0.69インチ (18 mm) 12.75インチ (32.4 cm) 4.8 in3 (78.7 cm3) 69.3 in3 (1137 cm3) (概算)
Federal Classic JHP 125グレーン (8.1 g) 1,450 ft/s (440 m/s) 584 ft•lbf (792 J) 0.65インチ (17 mm) 12.0インチ (30 cm) 4.0 in3 (65.5 cm3) 79.8 in3 (1300 cm3)
Remington Golden Saber JHP 125グレーン (8.1 g) 1,220 ft/s (370 m/s) 413 ft•lbf (560 J) 0.60インチ (15 mm) 13.0インチ (33 cm) 3.7 in3 (60.6 cm3) 30.4 in3 (498 cm3)
Remington Semiwadcutter 158グレーン (10.2 g) 1,235 ft/s (376 m/s) 535 ft•lbf (725 J) 0.36インチ (9.1 mm) 27.5インチ (70 cm) 2.8 in3 (45.9 cm3) 12.9 in3 (211 cm3)
Winchester Silvertip JHP 145グレーン (9.4 g) 1,290 ft/s (390 m/s) 536 ft•lbf (727 J) 0.65インチ (17 mm) 14.3インチ (36 cm) 4.7 in3 (77.0 cm3) 33.7 in3 (552 cm3)

注) エキスパンション – (着弾して)拡がった弾頭の直径(バリスティック・ゼラチン) 貫通力 – 貫通する深さ(バリスティック・ゼラチン) PC (permanent cavity volume) – 永続的な空洞の容積(バリスティック・ゼラチン、FBI方式) TSC (temporary stretch cavity volume) – 一時的な空洞の容積(バリスティック・ゼラチン)

比較

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コルト・パイソン8インチ (200 mm)銃身と6インチ (150 mm)銃身
 
コルト "357" マグナム 1956年製造

.357マグナムの直接の競合相手は、自動拳銃用に設計された.38スーパー弾である。この二つの弾薬の弾道特性は非常に似ている。しかし、.357マグナムは通常はリボルバーの口径であり、リボルバーは通常の自動拳銃の銃身よりも長い銃身にすることができるので、そのようなリボルバーから発射された.357マグナム弾薬は、より良い性能を発揮することができる。

精度の面では、.357マグナム弾は精密射撃において、最低でも、その基準となる.38スペシャル・ワッドカッター英語版弾と同じ潜在能力を持っている。 良い.357マグナム・リボルバーは、.38スペシャル・ワッドカッター弾を発射しても、良好な結果を得られる。このような精度と威力、それに、より安価で扱いやすい.38スペシャル弾薬を使える汎用性によって、.357マグナム・リボルバーは、20ヤード (18 m)の精密射撃から長距離のフォーリング・プレート(en:The Bianchi Cup#Factも参照)まで、様々な練習に使うのに非常に適している。また、ハンドロードにも適しており、これは経済的なのでよくおこなわれる。

これまで述べた通り、.357マグナムは.38スペシャルをもとに開発された。これが可能だったのは、.38スペシャルがもともと黒色火薬を使っていたので、同じ弾頭で同じ速度を発揮させるには、より効率的な無煙火薬の2倍から5倍が必要だったからである。つまり、.38スペシャルは薬莢が比較的大きかった。9x19mmパラベラム弾は、同じ年(1902年)に発表されたが、最初から無煙火薬を使い、高い圧力(最大39,200psi)[要出典]になるように設計されていた。したがって、.38スペシャルよりかなり大きなエネルギーを発揮するが、その反面、薬莢の容量は1/2以下しかない。ほとんどの9mmパラベラムの火薬は、弾頭の底面までいっぱいにロードされており、圧縮されているものさえある[要出典]。 多くの.38スペシャルは同じ火薬を使っており、同じような量がロードされているが、薬莢が大きいので、薬莢のほぼ半分にしかならない。速燃性の火薬を用いた標的射撃用のライト・ロードは、薬莢の1/8しかロードされていないこともある。遅燃性の火薬をいっぱいにロードすると、より大きな威力が得られるが、同時に圧力も高くなる。これは、古くて小さなフレームの.38スペシャル・リボルバーに対しては、かなり高すぎる。このような高圧と高威力に耐えられるように、より長い.357マグナム弾と、それを扱うためのより頑丈なリボルバーが、一緒に開発されたのである。

別名

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  • .357 Mag
  • .357 S&W Magnum
  • 9x33mmR (ヨーロッパ式)

関連項目

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出典

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  1. ^ Handloads.com SAAMI pressure specs Archived 2007年06月21日, at WebCite
  2. ^ Leverguns.com SAAMI pressures Archived 2007年11月16日, at WebCite
  3. ^ Federal Cartridge Co. ballistics page Archived 2007年09月22日, at the Wayback Machine.
  4. ^ DoubleTap Ammunition”. 2009年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年5月13日閲覧。
  5. ^ a b Sharpe, Phillip B. (1937). Complete Guide to Handloading. Funk & Wagnalls. pp. 405–406 
  6. ^ a b Metcalf,, Dick (February 2000). “The 20th Century's Top Handgun Cartridges”. Shooting Times. http://hunting.about.com/od/guns/l/aasthandguncara.htm. 
  7. ^ Barnes, Frank C. (2006) [1965]. Skinner, Stan. ed. Cartridges of the World (11th ed.). Iola, Wisconsin: Gun Digest Books. p. 299. ISBN 0-89689-297-2 
  8. ^ Hawks, Chuck. “The .357 Magnum” (英語). Reloading Information. Guns and Shooting Online. 2019年1月2日閲覧。
  9. ^ Marshall EP and Sanow EJ: Stopping Power. Paladin,Boulder, CO, 2001. ISBN 978-1-58160-128-2
  10. ^ Ayoob, Massad (March 2001). “.38 Super”. Guns Magazine. オリジナルの2008年06月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080621175305/http://findarticles.com/p/articles/mi_m0BQY/is_3_47/ai_70650308 2008年9月5日閲覧。. 
  11. ^ Taylor, Chuck (May 2000). “.38-44 HV: The Original Magnum - revolver round”. Guns Magazine. http://www.findarticles.com/p/articles/mi_m0BQY/is_5_46/ai_60897647/pg_2. [リンク切れ]
  12. ^ Sharpe, Phillip B. (1937). Complete Guide to Handloading. Funk & Wagnalls. pp. 293–294 
  13. ^ Chuck Hawks shares his conclusions about handgun stopping power.”. 2009年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年4月3日閲覧。
  14. ^ Taylor, Jim. “The Three-Fifty-Seven Magnum's in My Life” (英語). Leverguns.com. 2019年2月1日閲覧。
  15. ^ "The Versatile .357 Magnum" by Chuck Hawks (subscription required)
  16. ^ Ballistics By The Inch .357 magnum results
  17. ^ a b Marshall and Sanow, Street Stoppers, Appendix A, Paladin 2006 ISBN 0-87364-872-2

外部リンク

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