雲中君
雲中君(うんちゅうくん)は、中国・楚の祭祀詩『楚辞』「九歌」に登場する雲や気象を司る神格。その神格の解釈を巡っては雲神説・月神説・雷神説などが存在し[注釈 1]、日本では主に中国古代文学研究の文脈で論じられる。性別についても東君との対比から女神説が提起されるが、楚辞本文中の「君」の用法から男性神とする見方が通説である[注釈 2]。
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神格の特性
編集司掌領域の学説
編集九歌本文の分析
編集『九歌』「雲中君」篇は巫女と神の対話形式で構成され[注釈 3]、以下の特徴が指摘される:
信仰の変遷
編集時代 | 解釈の特徴 | 典拠 |
---|---|---|
漢代 | 雲師として雨乞い儀礼と結合 | 『周礼』大宗伯 |
六朝 | 泰山府君信仰と習合し冥界神化 | 『捜神記』巻五 |
江戸時代 | 林羅山が『本朝神社考』で雷神説を紹介 | 『羅山文集』巻三十一 |
現代 | 気象学的解釈と文学象徴論の並立 | 褚斌傑『楚辞要論』 |
日本における受容
編集関連項目
編集参考文献
編集注釈
編集- ^ 江陵天星観1号墓出土の戦国祭祀竹簡に「雲君」の記述があり、これを「雲中君」の略称と解する説が有力(星川清孝『楚辞の研究』による)]。
- ^ 吉川幸次郎「楚辞九歌小考」では「君」が男性神を指す事例を湘君などと比較して論証。
- ^ 「霊連蜷兮既留」(霊の舞い留まる)など祭祀劇の要素が顕著(青木正児「楚辞九歌の舞曲的結構」による)。