湘君(しょうくん)は、中国楚地の水神で、『楚辞』九歌の祭神の一柱。湘江の主神として湘夫人と対を成す存在であり、古代楚文化における河川崇拝と貴族祭祀が融合した神格である。その解釈をめぐっては歴史的に「舜帝説」「湘水男神説」「河伯混同説」など諸説が存在する。
湘君(張渥九歌図)
- 『楚辞』九歌「湘君」篇:「君不行兮夷猶」で始まる祭祀詩。巫が神を迎える形で湘君の渡航情景を描写[1]
- 後漢王逸『楚辞章句』:湘君を「湘水之神」と注釈[2]
- 宋代洪興祖『楚辞補注』:湘君を舜帝、湘夫人を娥皇女英とする説を整理[3]
- 司掌領域:湘江水運・漁業豊穣・渡航安全
- 表象物:桂舟(桂の木の船)、龍飾りの旗(「駕飛龍兮北征」)
- 祭祀方法:玉璫を捧げる水中祭祀(「捐余玦兮江中」)
- 地理的関連:洞庭湖周辺の祭祀遺跡(屈子祠等)
- 郭沫若『屈原研究』(1935):湘君を沅湘流域の部族長の神格化と解釈
- 青木正児『九歌の研究』(1943):水神信仰と巫覡文化の融合を指摘
- 藤野岩友『巫系文学論』(1951):祭祀詩としての構造分析
- 絵画:文徴明『湘君湘夫人図』(1517年)など多数の書画題材
- 詩歌:李白「遠別離」で帝舜伝説と結び付けられる
- 現代:湖南省岳陽市の湘君文化祭(2006年 - )
- ^ 屈原 (前3世紀). “九歌・湘君”. 楚辞
- ^ 王逸 (2世紀). 楚辞章句
- ^ 洪興祖 (12世紀). 楚辞補注
- ^ 司馬遷 (前1世紀). “秦始皇本紀”. 史記
- ^ 朱熹 (1195). 楚辞集注