阿佐海岸鉄道DMV93形気動車
阿佐海岸鉄道DMV93形気動車(あさかいがんてつどうDMV93がたきどうしゃ)[3]は、2019年(平成31年/令和元年)に製作された阿佐海岸鉄道の車両。世界初の実用デュアル・モード・ビークルである。
阿佐海岸鉄道DMV93形気動車 | |
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鉄道モードのDMV932 (2019年12月 京都鉄道博物館) | |
基本情報 | |
製造所 |
トヨタ自動車(車体)[注釈 1] 日野エンジニアリングアネックス(シャシ改造)[1] 東京特殊車体(車体改造)[1] NICHIJO(軌陸装置設置)[2] |
製造年 | 2019年[3] |
製造数 | 3両[3] |
主要諸元 | |
軌間 | 1,067 mm |
最高運転速度 | 70[5] km/h |
車両定員 | 23名(座席18名+立席4名+乗務員1名)[4] |
自重 | 5.85 t[4] |
全長 | 8,060[4] mm |
全幅 | 2,090[4] mm |
全高 | 2,780[4] mm |
機関 | 日野・N04C(直列4気筒OHVディーゼルエンジン) |
変速機 | 6速AT |
制動装置 |
前:ベンチレーテッドディスク 後:リーディング・トレーリング |
保安装置 | DMV運転保安システム[5] |
備考 | ホイールベース:3,935 mm |
導入の経緯
編集阿佐海岸鉄道阿佐東線においては、1992年の開業以来、ASA-100形、ASA-300形等の気動車を運用していたが、沿線地域の過疎化、少子化が進んだことで、定期券発売数は2018年には開業時の2パーセントまで落ち込み、ラッシュ時に100名以上乗車できる気動車では需要に対して過大な輸送力を持て余すこととなった[6]。そこで、DMVを導入することで、ランニングコストの削減、室戸岬への観光輸送、DMVによる世界初の車両自体を観光資源化、高齢化が進む沿線地域の交通潤滑化、また、近い将来起こると予想される南海トラフ巨大地震からの迅速な復旧を、道路と鉄道を組み合わせるDMVを利用することで加速することなど、多くの利点が考えられている[7]。
構造
編集トヨタ自動車製のマイクロバス「コースター」(4代目・XZB70型、2018年6月マイナーチェンジモデル)をベースとして、日野エンジニアリングアネックスがシャーシ・フレームの補強、サスペンションの改造、東京特殊車体がワンマンバス化、車内の不燃化改造、NICHIJOが軌陸装置の設置を担当した[1][2]。
ベースとなったコースターの車体を生かし、車内にはシートベルト付きの座席と握り棒が設けられ、通常の路線バスのように降車ボタンも設置されている。運転席横の助手席には運行補助や、車輪のモードチェンジに使用する機器が置かれているため、乗客の利用は不可能[4]。乗車駅を証明する整理券発行機と料金箱は搭載されているが、両替機はスペースの問題から設置されていない[4]。また、通常のディーゼルカーよりも床面が低く、車体幅も小さいため、乗降時にはステップが展開されてホームとの隙間を小さくする。ボンネット部分には鉄道モードで使用する前輪が収納されており、その分だけ元となったコースターより1.07メートル長くなっている[8]。バスとしてのゴムタイヤは、バスモードの際にはフロント・リア共に通常のバスと同様に走行に供され、鉄道モードの際には鉄輪によりレールに沿って進むため、フロントタイヤは浮き上がらせており、ハンドル操作も必要としない。リアタイヤは、鉄道モードにおいても駆動輪として利用され、レールの上で推進力を伝える。リアタイヤの後ろにも鉄道車輪があるが、これはレールから車両が落ちないようにするためのガイドであり、推進力は持たない。
各車両の相違点
編集3両各車に使われている青、緑、赤の三色は、ASA-100形で利用されていたカラーリングを基にしている[4]。公道を走る為、全車両にナンバープレートを付けている。試験走行中は自家用自動車扱いの白ナンバーだったが、開業を前に事業用自動車の緑ナンバーに付け替え、さらに開業時点では希望ナンバー(徳島県版図柄入りナンバープレート)に付け替えている。
1号車(DMV931)
編集- ナンバー:徳島200 さ 862 → 徳島200 あ 184 → 徳島230 あ 931
- 車体色:青
- 愛称:「未来への波乗り」
- 宍喰駅の「イセエビ駅長」が、阿佐東地域で盛んなサーフィンにチャレンジしている姿が青い車体に描かれている。
2号車(DMV932)
編集- ナンバー:徳島200 さ 866 → 徳島200 あ 183 → 徳島230 あ 932
- 車体色:緑
- 愛称:「すだちの風」
- 徳島県名産のスダチの果実と葉、徳島県の鳥であるしらさぎが風に舞う姿が緑の車体に描かれている。
3号車(DMV933)
編集沿革
編集ブルーリボン賞・ローレル賞での扱い
編集2021年選定のブルーリボン賞・ローレル賞の選考において、本形式[注釈 2]は選考規定第5条の「2020年内に営業運転を開始していること」を満たしていないことから選考の対象外とし、また、営業開始しても鉄道モードでの走行距離10キロに対して道路上の走行距離40キロ程度と、選考規定第2条の「専ら鉄道事業または軌道事業に供されるもの」に当たらないことから、「鉄道車両」として含めないと明記している[19]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c “改造車 ピックアップ”. 日野エンジニアリングアネックス. 2020年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月4日閲覧。
- ^ a b “会社の歩みと製品の歴史”. 株式会社NICHIJO. 2019年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月4日閲覧。
- ^ a b c d e “鉄道ファン2021年5月号 世界初!DMVが線路も走る,道路も走る 新生阿佐海岸鉄道の営業運転は目前だ”. 交友社 (2021年3月19日). 2021年4月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “DMV(デュアル・モード・ビークル)とは?”. 阿佐海岸鉄道. 2021年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月4日閲覧。
- ^ a b “DMVに関する技術評価検討会” (PDF). 国土交通省・阿佐海岸鉄道 (2020年12月18日). 2021年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月4日閲覧。
- ^ “第6回阿佐東線DMV導入協議会” (PDF). 阿佐海岸鉄道 (2020年8月19日). 2021年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月4日閲覧。
- ^ “第2回阿佐東線DMV導入協議会” (PDF). 阿佐海岸鉄道 (2017年2月3日). 2021年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月4日閲覧。
- ^ “車体NEWS 2020春” (PDF). 日本自動車車体工業会 (2020年3月15日). 2021年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月4日閲覧。
- ^ “DMV車両を公開、阿佐海岸鉄道 2020年運行目指す”. 四国新聞. 四国新聞社 (2020年3月9日). 2020年7月17日閲覧。
- ^ “阿佐海岸鉄道のDMV、全3両が出揃う…10月5日の完成イベントで公開”. レスポンス(Response.jp). 2021年4月30日閲覧。
- ^ “鉄道モード」→「バスモード」へチェンジ! 線路&道路両対応のマイクロバス「DMV」、京都鉄道博物館で特別公開”. トラベル Watch. インプレス (2019年12月2日). 2021年4月4日閲覧。
- ^ “阿佐海岸鉄道 DMV初のオンレール動作確認”. 交通新聞. (2020年12月21日)
- ^ “DMV車両「性能試験」の公開について”. 阿佐海岸鉄道. 2021年1月20日閲覧。
- ^ “阿佐鉄のDMV 性能試験開始|NHK 徳島県のニュース”. NHK NEWS WEB. 日本放送協会 (2021年1月20日). 2021年1月21日閲覧。
- ^ “阿佐海岸鉄道のDMV、1月20日から性能試験…初日は沿線住民へ限定公開”. レスポンス (2021年1月17日). 2021年1月21日閲覧。
- ^ “安全が第一 DMV試走 : ニュース : 高知 : 地域”. 読売新聞オンライン. 読売新聞社 (2021年1月21日). 2021年1月21日閲覧。
- ^ “DMV今夏営業運行断念 国交省検討会「アームの補強必要」”. 徳島新聞Web. 徳島新聞 (2021年6月26日). 2021年6月26日閲覧。
- ^ “阿佐鉄DMV営業運行開始日決定!!”. 阿佐海岸鉄道 (2021年11月10日). 2021年11月10日閲覧。
- ^ RAILFAN 2021年4月号 No.783 p3
関連項目
編集- デュアル・モード・ビークル
- 軌陸車/ガイドウェイバス
- 国鉄キハ01系気動車 - 本形式同様、日野自動車製のディーゼルエンジンを搭載した気動車(レールバス)。
- 南部縦貫鉄道キハ10形気動車#キハ101・キハ102 - 同上。